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交通事故によるPTSDは後遺障害に認められる?うつ・精神的ダメージへの慰謝料相場
この記事で分かること
- PTSDとは強烈な恐怖体験によって精神的なダメージを負ってしまう病気のことである
- PTSDは抑うつや不安など多彩な精神症状が出現する
- 交通事故後のPTSDが後遺障害として認定されるためには医師の診断と治療を適切に行い、交通事故との因果関係を証明する必要がある
- 交通事故後のPTSDが後遺障害に認定された場合は入通院慰謝料・後遺障害慰謝料を受け取ることができる
- PTSDが後遺障害に認められなかった場合も他の精神障害に該当するなどの主張を行うことができる
- 交通事故後のPTSDが後遺障害に認定されずにお困りの方は弁護士への相談がおすすめ
交通事故のPTSDが後遺障害として認定を受けるためには、交通事故とPTSDの因果関係を証明しなければなりません。そのため、適切に医師によるPTSDの診断と治療を継続しつつ、自らの意見を主張していく必要があります。
目次[非表示]
交通事故でのPTSDは後遺障害に認められるのか
PTSDとは恐怖体験による精神的な障害
PTSD(Post Traumatic Stress Disorder)とは、強烈な恐怖体験によって精神的なダメージを負ってしまう病気のことです。PTSDの代表的な症状としては、フラッシュバック症状や事故に関連することを回避しようとする行為などが挙げられます。PTSDは非器質性精神障害に分類されます。
交通事故でPTSDが後遺障害に認められるケースは存在する
交通事故においてPTSDが後遺障害に認められるためのハードルは高いです。しかし、なかにはPTSDが後遺障害に認められるケースも存在します。次に、交通事故でPTSDが後遺障害に認められた判例について解説していきます。
交通事故でPTSDが後遺障害に認められた裁判例
平成20年、交通事故とPTSDの因果関係の有無について争われた裁判において、京都地方裁判所はPTSDを後遺障害として認める判決を下しました。
裁判において交通事故とPTSDの因果関係が認められたポイントは以下の3点です。
- 精神科医がPTSDの3主徴である侵入・過覚醒・回避の症状を認めている
- 心療内科医がPTSDの専門的療法であるEMDR療法を継続している
- 交通事故の内容が生命の危機に直面する体験であり、トラウマとなり得ると認められた
交通事故の後遺障害によるPTSDの精神症状
交通事故の後遺障害によるPTSDの症状は多岐に渡ります。次に、PTSDの代表的な精神症状について解説していきます。
抑うつ
交通事故後の後遺障害によるPTSDでは、一定期間継続して「悲しい」「憂鬱」「寂しい」などの感情になります。特に、未来に対して希望がなく現実を絶望的に捉える抑うつ状態はPTSDの特徴的な精神症状の一つです。抑うつ状態では、何か新しいことにチャレンジしたり、楽しんだりすることに対して気が進まなくなってしまいます。
不安
交通事故の後遺障害によるPTSDでは、色々なことに対して不安や恐怖を感じます。場合によっては、強迫など強い不安が続いてしまうことがあります。
意欲低下
交通事故の後遺障害によるPTSDでは、以前は興味・関心があったことに対しても関心が沸いたり、自分から積極的に行動したりすることがなくなります。一次的に行動を起こしたとしても長続きしないことがほとんどです。PTSDにより意欲低下になっている人は、周りの人からすべてに対して無気力にみえることがあります。
幻覚・妄想
交通事故の後遺障害によるPTSDの精神的な症状として、自分の噂や悪口・命令が聞こえるなどの症状があります。また、現実的には存在しない物が見える幻覚が生じることもあります。その他にも、他社が自分に対して害を与えていたり、自分が特殊能力を持っていたりするなどと認識してしまうこともあります。幻覚や妄想の状態では、他社からの助言を受け入れることは困難であることが多いと言われています。
記憶・知的能力の障害
交通事故の後遺障害によるPTSDの記憶障害としては、解離性(心因性)健忘があります。具体的には、自分自身が何者であるかを忘れてしまいます。過去にどのような生活を送ってきたかを忘れてしまう全生活史健忘や一定の時期や出来事のことを思い出せない状態です。
衝動性の障害・不定愁訴
前述の症状に分類できない交通事故の後遺障害によるPTSDの症状もあります。例えば、落ち着きのない多動や衝動行動、徘徊、身体的な自覚症状や不定愁訴などです。
交通事故の後遺障害によるPTSDで能力に対する判断基準
前述のように、交通事故の後遺障害によるPTSDの精神的な症状は多岐に渡ります。次に、PTSDの能力面の判断基準について解説していきます。
日常生活
交通事故の後遺障害によるPTSDの判断基準のなかに、日常生活の中で着替えをしたり入浴をしたりするなど身辺を清潔に保つことができるかがあります。あた、規則的に十分な食事をすることができるかも大切な判断基準です。
仕事や生活に積極性・関心を持つ
交通事故の後遺障害によるPTSDでは、自分の仕事の内容や職場での生活に興味を持って積極的に関わっているかもポイントとなります。また、世の中の出来事・娯楽などに対して意欲や関心があるかも判断基準の一つになります。
通勤・勤務時間の遵守
交通事故の後遺障害によるPTSDでは、規則的に仕事に出勤したり、他者との約束の時間を守ったりすることができるかについて判定がなされます。
作業を持続する
交通事故の後遺障害によるPTSDでは、通常の就業規則に則った就労が可能かどうかも判断基準となります。集中力や持続力を保ちながら業務を遂行できるかがポイントになります。
他人との意思伝達
交通事故の後遺障害によるPTSDではその他にも、家庭や職場で上司や同僚へ自分の意思を伝えることができるかを判断していきます。他人とのコミュニケーションに何か問題が生じていないかについてもポイントとなります。
対人関係・協調性
交通事故の後遺障害によるPTSDでは、職場やコミュニティのなかで上司や同僚と円滑な共同作業・社会的行動ができるかを判断していきます。
安全保持・危機の回避
交通事故の後遺障害によるPTSDでは、日常生活や職場において危険から適切に身を守れるかどうかが判断されます。
困難・失敗への対応
交通事故の後遺障害によるPTSDでは、日常生活や職場において新しい業務やトラブルが生じたときにパニックになることなく冷静に対処できるかが判断されます。
PTSDが認められる条件
後遺障害等級認定基準
PTSDなどの精神障害は症状の程度について、後遺障害等級認定基準に合わせて評価を行います。
等級 | 基準 |
---|---|
9級10号 | 通常の労務に服することはできるが、非器質性精神障害のため、就労可能な職種が相当な程度に制限されるもの |
12級相当 | 通常の労務に服することはできるが、非器質性精神障害のため、多少の障害を残すもの |
14級相当 | 通常の労務に服することはできるが、非器質性精神障害のため、軽微な障害を残すもの |
非器質性精神障害と後遺障害の認定ポイント
PTSDのような非器質性精神障害は上記の基準によって等級が認定されます。しかし、この認定基準に該当する場合であっても後遺障害として認定を受けるためにはいくつかのハードルを乗り越える必要があります。
交通事故との因果関係
非器質性精神障害の場合は、交通事故が原因で精神障害が発症したのかの因果関係を証明することが大切なポイントです。なかでも交通事故後のPTSDの場合、交通事故とPTSDの因果関係を証明することが難しいと言われています。目に見える怪我の場合は、医学的な観点から障害の発生を認定することが容易でしょう。しかし、精神面の障害を客観的かつ明確に把握することは難しいです。交通事故とPTSDの因果関係を認定する際には、発症時期や精神障害の症状、他の要因の有無などの総合的に判断していきます。
医師の診断と治療
交通事故後にPTSDの症状が出現した場合、できるだけ早く精神科医の適切な診断と治療を受けることが大切になります。なぜならば、専門医による適切な治療を受けてもなお症状が改善しない場合にはじめて後遺障害として認められる可能性があるからです。医療機関での治療歴がない場合、PTSDが後遺障害として認定されることはより困難を極めます。
PTSDにおける症状固定の判断時期
PTSDなどの非器質性精神障害の場合、ある程度症状が継続したとしてもその後に治癒する可能性があると考えられています。医療機関での治療を継続することで回復の余地が認められると後遺障害とは認められにくくなります。精神科などの専門医が適切な診断と治療を継続してもなお症状が残存し能力の低下が認められると症状固定の診断を受けます。怪我などの外傷に比べて、PTSDの様な精神的な障害の場合は症状固定の判断時期は遅くなる傾向があります。
交通事故後のPTSDが認定された場合の慰謝料
交通事故後のPTSDで請求することのできる後遺障害慰謝料
次に、交通事故後のPTSDで認定される等級別の後遺障害慰謝料について解説していきます。
等級 | 自賠責基準 | 弁護士基準 |
---|---|---|
9級10号 | 245万円 | 690万円 |
12級相当 | 93万円 | 290万円 |
14級相当 | 32万円 | 110万円 |
PTSDになった際の慰謝料内訳
交通事故後にPTSDになった場合、認められる可能性のある慰謝料の内訳は入通院慰謝料と後遺障害慰謝料です。
入通院慰謝料
交通事故後のPTSDにおいて、交通事故が原因で入通院した治療期間に応じて入通院慰謝料が支払われます。そのため、治療期間が長くなれば入通院慰謝料も上がります。
後遺障害慰謝料
PTSDについて治療を行ったとしても、症状が軽快しないという状態となって、その時点の症状が後遺障害と認められれば、通院治療とは別に補償を受けることが可能です。慰謝料の額は後遺障害として認められる等級によって異なってきます。
PTSDが後遺障害として認められなかった場合どう対応すべきか
交通事故後のPTSDは後遺障害として認められにくい
交通事故後のPTSDが後遺障害であると医師が診断していても、裁判所が追認するとは限りません。また、PTSDは回復可能性がある障害である、身体的機能に障害がないという特徴から、9級を超える障害等級認定はハードルが高くなっているためです。また、認定されたとしても労働能力期間を限定して判断される傾向にあるため注意が必要です。
他の精神障害に該当するなどの主張を行う
もしPTSDと認定されない場合であっても、身体表現性障害などの他の精神障害に該当するなどの主張をすることができます。他の精神障害に該当することを主張する場合には、症状について具体的に主張することが大切になります。
交通事故をきっかけにPTSD・うつに苦しんでいる方は早めに弁護士に相談
PTSDに悩んでいる人が弁護士に相談するメリット
PTSDが交通事故の後遺障害として認定されるためには、交通事故とPTSDの因果関係を証明することが重要になります。因果関係を立証できない場合、賠償額が減額されてしまう可能性もあります。 後遺障害として認定を受ける主張や交渉を行っていくために、交通事故後のPTSDやうつに悩んでいる方は弁護士に相談することがおすすめです。次に弁護士に相談するメリットについて解説していきます。
後遺障害認定を受けやすくなる
PTSDで後遺障害認定を受けるのは、容易なことではありません。たとえ医師がPTSDと診断していても後遺障害認定は非該当となることもあります。弁護士に依頼することで、被害者請求などの方法を使って後遺障害等級を受けやすくなります。
賠償金を増額させられる可能性が高まる
弁護士が示談交渉に対応すると弁護士基準が適用されるので賠償金が大きく増額される可能性が高まります。
ストレスを受けずに申請や交渉を行うことができる
交通事故でPTSDになった被害者の方はこれ以上ストレスを受けることは治療の視点からも避けた方がよいでしょう。弁護士に依頼することで被害者は基本的に自分では保険会社と話をする必要はなくなりストレスが大きく軽減され治療に専念することができます。
無料相談を活用し、十分な慰謝料獲得を
- 保険会社が提示した慰謝料・過失割合に納得が行かない
- 保険会社が治療打ち切りを通告してきた
- 適正な後遺障害認定を受けたい
- 交通事故の加害者が許せない