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交通事故の慰謝料は、早見表を使えばおおよその相場をすぐに確認できます。ただし、自賠責・任意保険・弁護士の3つの基準で金額は大きく変わり、通院日数や過失割合によっても増減します。この記事では、入通院・後遺障害・死亡それぞれの早見表と計算方法を、弁護士の視点でわかりやすく解説します。ご自身のケースの金額は、ページ内の自動計算シミュレーターでもすぐに試算できます。
交通事故 慰謝料の3基準比較シミュレーター
自賠責基準
¥120,000
任意保険基準
¥150,000
弁護士基準
¥530,000
※ 簡易計算です。実際の金額は治療実日数・後遺障害の有無・休業損害などにより異なります。任意保険基準は各社非公開のため業界平均値で算出しています。
「保険会社から提示された金額が本当に妥当なのか分からない」「むちうちで通院しているけれど、いくらもらえるのか知りたい」——交通事故に遭われた方からは、こうした声をよく聞きます。慰謝料は人生でそう何度も関わるものではないだけに、相場が分からず不安になるのは当然のことです。この記事を読み終えるころには、ご自身のケースのおおよその金額と、それを適正額に近づけるための考え方がつかめるはずです。
交通事故の慰謝料には3つの種類がある
「慰謝料」とひとことで言っても、交通事故の慰謝料は内容によって3種類に分かれています。早見表を正しく読むには、まずこの違いを押さえておくことが大切です。あなたがいま請求できるのはどの慰謝料なのか、確認しながら読み進めてください。
| 慰謝料の種類 | 対象となる損害 | 主な対象者 |
|---|---|---|
| 入通院慰謝料(傷害慰謝料) | ケガの治療で入院・通院した精神的苦痛 | ケガをした被害者 |
| 後遺障害慰謝料 | 後遺症が残ったことによる精神的苦痛 | 後遺障害等級が認定された被害者 |
| 死亡慰謝料 | 死亡による本人と遺族の精神的苦痛 | 亡くなった被害者本人・遺族 |
入通院慰謝料(傷害慰謝料)
入通院慰謝料は、交通事故のケガを治療するために入院や通院をしたことに対して支払われる慰謝料です。治療にかかった期間が長いほど、また通院の頻度が高いほど金額は上がります。むちうちや打撲、骨折など、ケガをした被害者であれば誰でも請求できる、もっとも基本的な慰謝料です。
事故直後は痛みがなくても、数日後に首や腰に症状が出ることは珍しくありません。「軽い事故だから」と通院をためらっていると、本来もらえたはずの入通院慰謝料を取り逃すことになります。たとえば追突された直後は気が張っていて痛みを感じず、翌朝になって首が回らなくなった、というのはむちうちでよくあるパターンです。こうしたときに事故から日が空いてから受診すると、「事故とケガの因果関係があいまい」と判断され、慰謝料の対象期間が短くなってしまうことがあります。
後遺障害慰謝料
治療を続けても症状が完全には治らず、後遺症が残ってしまうことがあります。この後遺症が一定の基準を満たして「後遺障害」として等級認定されると、入通院慰謝料とは別に後遺障害慰謝料を請求できます。等級は重い方から1級〜14級まであり、等級が上がるほど慰謝料は高額になります。
ここで重要なのは、後遺症が残っただけでは後遺障害慰謝料はもらえない、という点です。あくまで「後遺障害等級の認定を受けること」が条件になります。同じむちうちでも、14級に認定されるかどうかで賠償の規模は大きく変わります。認定を受けられるかどうかが、そのまま結果を左右するということです。むちうちが治りきらずに残った痛みやしびれは、画像所見があれば12級、自覚症状が中心であれば14級に認定されるケースが多く見られます。
死亡慰謝料
被害者が亡くなった場合に支払われるのが死亡慰謝料です。亡くなった本人の慰謝料と、配偶者・子・親など近親者固有の慰謝料を合わせて算定します。被害者が一家の支柱だったか、配偶者・母親だったか、それ以外かによって相場が変わるのが特徴です。
3種類の慰謝料は、必ずしもどれか一つだけというわけではありません。たとえば、長く入通院した末に後遺障害が残った被害者なら、入通院慰謝料と後遺障害慰謝料の両方を受け取れます。ご自身のケースで何が請求できるのかを整理しておくことが、適正な賠償への第一歩です。
慰謝料を決める3つの基準と早見表の前提
同じケガでも、どの「基準」で計算するかによって慰謝料の金額はまったく違ってきます。早見表を見る前に、この3基準の違いを知っておきましょう。ここを理解しないまま保険会社の提示額を受け入れてしまうと、本来の半額以下で示談してしまうことすらあります。
| 基準 | 金額の水準 | 誰が使う基準か |
|---|---|---|
| 自賠責基準 | もっとも低い | 自賠責保険(最低限の補償) |
| 任意保険基準 | 自賠責よりやや高い程度 | 各任意保険会社(非公開) |
| 弁護士基準(裁判基準) | もっとも高い | 弁護士・裁判所 |
自賠責基準
自賠責基準は、すべての車に加入が義務づけられている自賠責保険から支払われる、最低限の補償額です。法令で計算方法が決まっており、入通院慰謝料は日額4,300円で算定します(2020年4月1日以降に発生した事故の場合。それ以前は日額4,200円)。3つの基準のなかでもっとも金額が低くなります。
任意保険基準
任意保険基準は、各保険会社が独自に定めている社内基準です。内容は公開されていませんが、おおむね自賠責基準を少し上回る程度の水準にとどまることが多いとされています。保険会社が最初に提示してくる示談金は、この任意保険基準で計算されているのが一般的です。
注意したいのは、任意保険基準は会社ごとに異なり、しかも外部からは検証できないという点です。被害者には「どういう計算でこの金額になったのか」が見えにくいため、提示された金額が妥当なのかどうかを自分で判断するのは困難です。だからこそ、公開されている自賠責基準や弁護士基準の早見表と照らし合わせて、おおよその位置づけを確認することが大切になります。
弁護士基準(裁判基準)
弁護士基準は、過去の裁判例をもとにした、法律上本来請求できる適正な金額の目安です。裁判基準とも呼ばれ、日弁連交通事故相談センターが発行する通称「赤い本」などに掲載された算定表を使います。3つの基準のなかでもっとも高額になるため、被害者にとっては弁護士基準での解決を目指すのが理想です。
弁護士に依頼すると、この弁護士基準をもとに保険会社と交渉してもらえます。なぜ被害者本人が「弁護士基準で払ってほしい」と求めても応じてもらいにくいのかというと、保険会社は「弁護士がついていなければ裁判まで進む可能性は低い」と見ているからです。つまり、弁護士が代理人として交渉に入ることそのものが、弁護士基準を引き出す力になります。
3つの基準で同じケースを計算すると、どれだけ差が出るのか具体的に見てみましょう。むちうちで通院6ヶ月(実通院60日)のケースなら、おおよそ次のようになります。
| 基準 | 算定の方法 | 水準 |
|---|---|---|
| 自賠責基準 | 告示の日額に対象日数を掛ける | 三つのなかで最も低い |
| 任意保険基準 | 各社が独自に設定。非公開 | 自賠責よりやや高い程度 |
| 弁護士基準 | 入院期間と通院期間の算定表から読み取る | 最も高い |
三つの基準がどう使い分けられているかは、次の記事で整理しています。
入通院慰謝料の算定表【基準別の読み方】
ここからは具体的な早見表を見ていきましょう。まずは、ケガをした人なら必ず関係する入通院慰謝料です。自賠責基準と弁護士基準を比べると、その差は一目瞭然です。
自賠責基準の対象日数の求め方
自賠責基準の入通院慰謝料は、次の計算式で求めます。
- 日額4,300円 × 対象日数
ここでいう「対象日数」は、①治療期間(初診から治療終了までの総日数)と、②実通院日数 × 2のうち、少ない方を採用します。たとえば治療期間100日で実際の通院が25日だった場合、100日と50日(25日×2)を比べて少ない50日が対象日数となり、慰謝料は4,300円×50日=21万5,000円です。
| 通院期間 | 実通院日数の目安 | 自賠責基準の対象日数 |
|---|---|---|
| 1ヶ月 | 10日 | 通院日数の2倍にあたる20日 |
| 3ヶ月 | 30日 | 通院日数の2倍にあたる60日 |
| 6ヶ月 | 60日 | 治療期間の180日(2倍が上限を超えるため) |
この対象日数に、告示で定められた日額4,300円を掛けたものが自賠責基準の慰謝料です。週2回を下回る通院だと、対象日数が通院日数の2倍で頭打ちになるという構造が見て取れます。
なお、自賠責保険の傷害分(治療費・休業損害・慰謝料などの合計)には、120万円という上限が政令で定められています。この枠を超える部分は、相手方の任意保険や加害者本人へ請求していくことになります。治療が長引くと治療費だけで枠が埋まってしまい、慰謝料に回る分が足りなくなることもあります。こうしたときこそ、任意保険会社への請求や弁護士基準での交渉が重要になってきます。
弁護士基準・重傷用の表の読み方
弁護士基準では、赤い本の算定表を使います。骨折など他覚所見のある通常のケガには【重傷用の表】を用い、入院期間と通院期間が交わる金額がそのまま慰謝料の目安となります。下表は重傷用の表の一部を抜き出したものです(単位:万円)。
| 通院期間 | 入院なし | 入院1ヶ月 | 入院2ヶ月 |
|---|---|---|---|
| 1ヶ月 | 28 | 77 | 122 |
| 3ヶ月 | 73 | 115 | 154 |
| 6ヶ月 | 116 | 149 | 181 |
弁護士基準・軽傷用の表の読み方(むちうち等)
むちうちで他覚所見がない場合や、打撲・すり傷など比較的軽傷の場合は【軽傷用の表】を使います。重傷用の表より金額は低めに設定されていますが、それでも自賠責基準を大きく上回ります(単位:万円)。
| 通院期間 | 入院なし | 入院1ヶ月 |
|---|---|---|
| 1ヶ月 | 19 | 52 |
| 3ヶ月 | 53 | 83 |
| 6ヶ月 | 89 | 113 |
通院3ヶ月・6ヶ月のケース別目安
むちうちで通院した場合は軽傷用の表を使います。通院期間が長いほど額は上がりますが、伸び方は次第に緩やかになります。同じ通院期間でも、自賠責基準と弁護士基準では相当な開きが生じます。この差こそ、弁護士に相談する意味だといえます。
読み方を具体的に追ってみましょう。たとえば追突事故でむちうちになり、半年間で60日通院したケースを考えます。自賠責基準では、通院日数60日の2倍である120日と、治療期間180日を比べて少ないほうの120日が対象になります。これに日額4,300円を掛けたものが慰謝料です。一方、弁護士基準の軽傷用の表では、同じ通院期間でもこれを大きく上回る水準になります。基準の違いは、決して侮れません。
もう少し重いケガではどうでしょうか。骨折で1ヶ月入院し、退院後に5ヶ月通院した場合、重傷用の表の入院1ヶ月・通院5ヶ月の交差点を見て額を読み取ります。自賠責基準では治療費なども含めた上限にかかってしまうため、ここでも弁護士基準との差がはっきり出ます。
むちうちで通院した場合の考え方は、こちらの記事でくわしく扱っています。
後遺障害慰謝料は等級で一律に定まる
後遺障害が認定された場合は、入通院慰謝料に加えて後遺障害慰謝料を請求できます。等級ごとの相場を、自賠責基準と弁護士基準で並べたのが次の早見表です(単位:万円)。
| 等級 | 自賠責基準 | 弁護士基準 |
|---|---|---|
| 1級 | 1,150 | 2,800 |
| 3級 | 829 | 1,990 |
| 5級 | 618 | 1,400 |
| 7級 | 419 | 1,000 |
| 9級 | 249 | 690 |
| 12級 | 94 | 290 |
| 14級 | 32 | 110 |
もっとも重い1級では、自賠責基準と弁護士基準の差が最大になります。後遺障害慰謝料は金額が大きいぶん、基準の違いがそのまま手取り額の大きな差につながります。
表を見ると、等級が一つ違うだけでも金額が大きく変わることがわかります。たとえば12級と14級では、労働能力喪失率が14パーセントと5パーセント。慰謝料の水準にも相応の開きがあります。だからこそ、後遺障害の認定では「症状に見合った等級をきちんと得られるか」が決定的に重要になります。書類の準備や検査結果の出し方ひとつで等級が変わることもあるため、認定を申請する前の段階から戦略を立てておきたいところです。
むちうちで多い14級・12級の相場
交通事故のなかでも件数が多いのが、むちうちによる後遺障害です。痛みやしびれなどの神経症状が残った場合、画像所見などの裏づけがあれば12級、自覚症状が中心であれば14級に認定されることが一般的です。労働能力喪失率は14級が5パーセント、12級が14パーセント。慰謝料の水準にも、これに対応した開きがあります。
ここで知っておきたいのは、14級と12級の違いが「他覚所見の有無」で大きく分かれるという点です。レントゲンやMRIで異常がはっきり写れば12級に近づき、画像では分からず本人の訴えが中心だと14級にとどまりやすくなります。つまり、適切な検査を受け、その結果をきちんと残しておくことが、認定される等級、ひいては慰謝料額に直結します。
どの等級がどういう位置づけなのかを一覧で見たい方は、次の記事を参照してください。
死亡慰謝料は立場で区分される
被害者が亡くなった場合の死亡慰謝料は、本人の立場によって弁護士基準の相場が変わります。下表は本人分と近親者分を合わせた、弁護士基準のおおよその目安です。
| 被害者の立場 | 水準の考え方 |
|---|---|
| 一家の支柱 | 最も高い区分。遺族の生活基盤が失われるため |
| 配偶者・母親 | 次に高い区分 |
| その他(独身者・子ども・高齢者など) | 幅をもって判断される |
一方、自賠責基準の死亡慰謝料は、本人分400万円に、遺族の人数や扶養の有無に応じた額を加える仕組みです。遺族が1人なら550万円、2人なら650万円、3人以上なら750万円。被扶養者がいれば、さらに200万円が上乗せされます。いずれも告示で定まった額で、弁護士基準の水準を下回ります。死亡事故では損害額が非常に大きくなるため、遺族だけで示談を進めるのは危険です。
死亡事故では、慰謝料に加えて逸失利益も大きな柱になります。被害者が働き盛りであれば、将来得られたはずの収入は数千万円にのぼることもあり、慰謝料と合わせた賠償総額は1億円を超えるケースもあります。それだけに、保険会社の提示額が適正かどうかの判断は難しく、専門家のチェックが欠かせません。大切なご家族を失った直後に交渉まで担うのは、精神的にも大きな負担になります。こうしたケースこそ、早い段階で弁護士に相談しておく意味が大きいといえます。
骨折で重傷用の表を使う場合については、こちらの記事で解説しています。
早見表を使った慰謝料の計算方法
早見表の見方がわかったら、次は自分のケースに当てはめてみましょう。ここでは入通院慰謝料を例に、具体的な計算の流れを説明します。
入通院慰謝料の計算手順
弁護士基準で入通院慰謝料を求める手順は、次のとおりです。
- ケガの内容を確認し、重傷用の表(重傷)か軽傷用の表(軽傷・むちうち)かを選ぶ。
- 入院期間と通院期間を月単位で把握する。
- 算定表の入院月数と通院月数が交わるマス目の金額を読み取る。
たとえば「入院なし・通院3ヶ月・むちうち」なら、軽傷用の表で通院3ヶ月にあたるマスを見る、という手順になります。月の途中で治療が終わった場合は日割りで調整します。
もう一例見てみましょう。「入院なし・通院4ヶ月・骨折」のケースなら、骨折は重傷なので重傷用の表を使います。重傷用の表で通院4ヶ月にあたるマスを読みます。同じ通院4ヶ月でも、むちうちで軽傷用の表を使う場合とは水準が違います。ケガの種類によって使う表が変わり、結論も変わるということです。自分のケガがどちらの表に当たるのか迷ったら、診断書の傷病名を確認するか、弁護士に尋ねてみるとよいでしょう。
自賠責基準の計算式(日額4,300円)
自賠責基準では算定表を使わず、計算式で求めます。あらためて整理すると次のとおりです。
- 慰謝料 = 日額4,300円 × 対象日数
- 対象日数 =「治療期間」と「実通院日数×2」のうち少ない方
通院がまばらだと「実通院日数×2」の方が少なくなり、慰謝料も下がります。逆にこまめに通院していれば対象日数が増えるため、適切な頻度での通院が大切です。たとえば治療期間90日のあいだに20日しか通院しなかった場合、20日×2=40日と90日を比べて少ない40日が対象となり、4,300円×40日=17万2,000円にとどまります。同じ90日の治療期間でも、45日通院していれば90日が対象となり、慰謝料は38万7,000円。通院の仕方ひとつで2倍以上の差が出ることがわかります。
自動計算シミュレーターで確認する
手計算は手順が多く、過失割合や休業損害まで含めると複雑になりがちです。そこで便利なのが、ページに設置している自動計算シミュレーターです。通院期間や収入などを入力するだけで、自賠責基準・任意保険基準・弁護士基準の3つを自動で比較できます。まずは試算して、保険会社の提示額と比べてみましょう。
シミュレーターのよいところは、三つの基準の差が並べて見える点です。提示額がどのあたりに位置しているかを把握できれば、交渉の方向性が見えてきます。入力はわずか数項目で済むので、難しい知識は必要ありません。気になったその場で、ご自身のケースの目安を確認してみてください。
交通事故 慰謝料の3基準比較シミュレーター
自賠責基準
¥120,000
任意保険基準
¥150,000
弁護士基準
¥530,000
※ 簡易計算です。実際の金額は治療実日数・後遺障害の有無・休業損害などにより異なります。任意保険基準は各社非公開のため業界平均値で算出しています。
早見表どおりにならないケースに注意
早見表はあくまで目安です。実際の金額は、いくつかの事情によって増減します。「表で見た金額より少ない」と感じたときは、次のような要因が関係していないか確認してください。
通院日数が少ないと減額される
通院期間が長くても、実際に通った日数が極端に少ないと、慰謝料が減額されることがあります。弁護士基準でも、通院頻度が低いケースでは「実通院日数×3.5倍」程度を目安に通院期間とみなして計算されることがあります。痛みがあるのに通院を空けすぎると、不利に働く可能性があるのです。
たとえば「半年間病院に通った」と言っても、その間に実際に通院したのが10回だけなら、保険会社からは「実質的な治療期間は短い」と見なされ、慰謝料が低く算定されてしまいます。逆に、医師の指示に従って週に2〜3回コンスタントに通っていれば、通院期間に見合った金額が認められやすくなります。通院の「回数」と「頻度」が、そのまま慰謝料に直結すると覚えておきましょう。
過失割合があると差し引かれる
事故について被害者側にも一定の過失があると、その割合分だけ賠償額が減らされます(過失相殺)。たとえば過失割合が2割あれば、受け取れるのは損害額の8割にとどまります。過失割合は示談金全体に影響するため、納得のいかない割合を提示されたら鵜呑みにしないことが重要です。
過失相殺は慰謝料だけでなく、治療費や休業損害を含めた損害額の全体にかかります。そのため、過失割合が1割違うだけでも、最終的な受取額が数十万円単位で変わることもあります。「自分は被害者なのに過失がつくのはおかしい」と感じたら、まずは事故状況を整理してみてください。
任意保険基準は算定表より低いことが多い
保険会社が提示してくる示談金は、多くの場合、弁護士基準の早見表より低い任意保険基準で計算されています。「早見表で見た金額と違う」と感じるのは、この基準の違いが原因であることがほとんどです。提示額をそのまま受け入れず、弁護士基準ではいくらになるかを必ず確認しましょう。
慰謝料を増額するために被害者ができること
適正な慰謝料を受け取るために、被害者の立場でできることは少なくありません。特別な知識がなくても、日々の通院や記録の取り方を少し意識するだけで、最終的な金額が変わってきます。次のポイントを押さえておきましょう。
- 事故直後から整形外科を受診し、医師の指示どおりに通院を続ける
- 痛みやしびれなどの症状は、毎回もれなく医師に伝えてカルテに残してもらう
- 症状が残った場合は、後遺障害等級の認定を受ける
- 保険会社の提示額を弁護士基準と比較する
- 弁護士費用特約があれば活用し、弁護士に交渉を依頼する
このなかでも特に見落とされがちなのが、「症状を毎回医師に伝える」という点です。痛みを我慢して伝えずにいると、カルテに記録が残らず、後遺障害の認定や慰謝料の算定で不利になることがあります。遠慮せず、その日の状態を率直に伝えることが、結果的にご自身を守ることにつながります。
実際にどれくらい変わるのか、イメージしてみましょう。むちうちで通院6ヶ月のケースで、保険会社の当初提示が任意保険基準にもとづくものだったとします。ここに弁護士が入り、弁護士基準の軽傷用の表で計算し直せば、水準は大きく上がります。さらに過失割合の見直しや休業損害の追加が認められれば、最終的な増額幅はもっと大きくなることもあります。
もちろん、すべてのケースで必ず増額できるわけではありません。しかし、提示額が低く抑えられているケースほど、見直しの余地は大きいといえます。「自分の場合はどうだろう」と気になったら、まずは試算してみることをおすすめします。
自分の保険に弁護士費用特約が付いていれば、費用倒れの心配なく依頼できます。自動車保険だけでなく、火災保険やクレジットカードに付帯していることもあるため、家族の契約も含めて一度確認してみるとよいでしょう。
慰謝料以外にも請求できるお金がある
早見表で確認できるのは慰謝料の金額ですが、交通事故で被害者が請求できるのは慰謝料だけではありません。慰謝料はあくまで「精神的苦痛」に対する賠償であり、実際に出費した費用や減ってしまった収入は、別の費目として上乗せして請求できます。早見表の金額だけを見て「これが受け取れる総額だ」と思い込まないでください。実際の示談金は、これらの費目を合算した金額になります。
| 費目 | 内容 |
|---|---|
| 治療費 | 入院費・手術費・投薬費など実際にかかった医療費 |
| 通院交通費 | 通院のための電車代・バス代・必要なタクシー代など |
| 休業損害 | ケガで仕事を休んだことによる収入の減少分 |
| 逸失利益 | 後遺障害や死亡で将来得られたはずの収入を失った分 |
| 慰謝料 | 入通院・後遺障害・死亡による精神的苦痛への賠償 |
休業損害は会社員も自営業者も請求できる
ケガの治療で仕事を休めば、その間の収入は減ってしまいます。この減収分が休業損害です。会社員はもちろん、自営業者やパート・アルバイト、さらには専業主婦(主夫)も、家事ができなかった期間について休業損害を請求できる可能性があります。「給料が出たから損害はない」と思われがちですが、有給休暇を使った場合もその分は損害として認められます。
自営業や個人事業主の方の休業損害は、確定申告の所得をもとに計算するため、会社員とは考え方が異なります。前年の所得が低い場合や申告額に争いがある場合は、計算方法をめぐって争点になりやすい部分です。
逸失利益は後遺障害が残ったときの大きな柱
後遺障害が残ると、以前と同じようには働けなくなり、将来の収入が減ってしまうことがあります。この将来の減収分を補うのが逸失利益です。後遺障害慰謝料と並んで金額が大きくなりやすく、等級が重いほど、また被害者が若いほど高額になります。逸失利益の計算には労働能力喪失率や喪失期間といった専門的な要素が絡むため、見落としや計算ミスが起こりやすい費目でもあります。
算定表で読み取った額を提示と照合する手順は、次の記事にまとめました。
保険会社の提示額をそのまま受け入れてはいけない理由
治療が終わるころ、保険会社から示談金の提示書が届きます。金額が並んだ書面を見ると、つい「専門家が計算したのだから正しいのだろう」と考えてしまいがちです。しかし、ここに大きな落とし穴があります。
保険会社の担当者は、被害者を騙そうとしているわけではありません。あくまで自社の基準に従って計算しているだけです。だからこそ、被害者の側で「弁護士基準ならいくらになるのか」を知り、その差を埋める交渉をする必要があります。実際、弁護士が交渉に入っただけで示談金が大きく増えるケースは数多くあります。
通院の頻度が低いと表どおりにならない仕組みは、こちらの記事で扱っています。
示談する前に必ず金額を見直す
一度示談書にサインしてしまうと、原則としてあとから金額を増やすことはできません。「やっぱり少なすぎた」と気づいても手遅れになるのです。だからこそ、示談に応じる前のこのタイミングが、慰謝料を適正額に近づける最後のチャンスになります。提示書が届いたら、すぐにサインせず、まずは早見表とシミュレーターで金額を確認しましょう。
示談を急かされても、焦る必要はありません。慰謝料には時効がありますが、通常は治療終了や症状固定から数年の猶予があります。十分に内容を吟味し、納得したうえで合意することが大切です。少しでも疑問があれば、サインを保留して専門家に相談する——この一手間が、数十万円、場合によっては数百万円の差を生むこともあります。
- 慰謝料はいつもらえますか?
- 原則として、治療が終わって示談がまとまったあとに、示談金の一部としてまとめて支払われます。後遺障害がある場合は等級認定の後になるため、事故から半年〜1年以上かかることもあります。示談成立後はおおむね1〜2週間程度で指定口座に振り込まれるのが一般的です。
- むちうちでも慰謝料はもらえますか?
- もらえます。むちうちは軽傷用の表で計算されます。通院期間が長いほど額は上がりますが、通院の頻度が低いと調整が入ります。後遺症が残れば後遺障害慰謝料も請求できます。ただし、通院をやめてしまうと治療期間が短く扱われ、減額の原因になります。
- 慰謝料に税金はかかりますか?
- 交通事故の慰謝料は精神的損害への賠償であり、原則として非課税です。所得税や住民税の課税対象にはなりません。休業損害や逸失利益も、原則として非課税として扱われます。
- 専業主婦でも慰謝料はもらえますか?
- 入通院慰謝料はケガをした被害者であれば職業を問わず請求できます。さらに家事ができなかった分は休業損害として別途請求できる可能性があります。主婦の休業損害は、賃金センサスの女性平均賃金をもとに計算するのが一般的で、決して「収入がないから請求できない」わけではありません。
- 提示された慰謝料が少ない気がします。増やせますか?
- 提示額が任意保険基準で計算されている場合、弁護士基準に引き直すことで増額できる可能性があります。まずは早見表やシミュレーターで弁護士基準の金額を確認し、その差が大きいようなら弁護士への相談を検討してください。
- 物損だけの事故でも慰謝料はもらえますか?
- 原則として、物が壊れただけの物損事故では慰謝料は認められません。慰謝料はケガなど身体的・精神的な被害に対して支払われるものだからです。事故後に痛みが出た場合は、早めに病院を受診して人身事故への切り替えを検討しましょう。
まとめ
交通事故の慰謝料は、入通院・後遺障害・死亡の3種類に分かれ、自賠責・任意保険・弁護士の3基準によって金額が大きく変わります。早見表を使えば、通院期間や後遺障害等級ごとのおおよその相場をすぐに確認できます。ただし、通院日数や過失割合によって実際の金額は変動し、保険会社の提示額は弁護士基準より低いことがほとんどです。
もっとも高額になりやすいのは弁護士基準です。そして、その弁護士基準を引き出すうえで大きな力になるのが、弁護士への依頼です。慰謝料以外にも治療費・休業損害・逸失利益など請求できる費目があり、これらを漏れなく適正に求めることで、最終的な賠償額は大きく変わってきます。
「提示された金額が妥当なのか分からない」と感じたら、まずはページ内の自動計算シミュレーターで試算し、その金額を持って弁護士に相談してみてください。早見表とシミュレーター、そして専門家のチェック。この3つを組み合わせることが、適正な慰謝料を受け取るための確実な第一歩になります。
あなたの慰謝料はいくら?3基準で比較診断
自賠責基準
¥120,000
任意保険基準
¥150,000
弁護士基準
¥530,000
※ 簡易計算です。実際の金額は治療実日数・後遺障害の有無・休業損害などにより異なります。任意保険基準は各社非公開のため業界平均値で算出しています。
