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交通事故の保険会社対応|示談が進まない時の対処

この記事で分かること

  • 交通事故被害者が不満を抱きやすい保険会社の対応には、「治療費の支払い打ち切りを主張する」「慰謝料や過失割合を被害者に不利に算定する」などがある
  • 交通事故で加害者側保険会社の対応が悪い理由は、加害者側保険会社は加害者の代理人であり、支払う損害賠償金を極力減らしたいと考えているから
  • 被害者に過失がない事故では、被害者の加入先保険会社は示談代行できない
  • 自分や家族の自動車保険に弁護士費用特約が付帯していれば、弁護士費用が保険でカバーできる
  • 対応の悪い保険会社への対処法でベストなのは、弁護士への相談
  • 弁護士に相談すれば、被害者に有利な条件で損害賠償金を算定し示談交渉してくれる

交通事故被害者は、加害者側保険会社の対応の悪さに悩まされるケースが多く見受けられます。このような場合の対処法には、そんぽADRセンターへの相談などいくつかの方法がありますが、ベストなのは、法律の専門家として被害者の味方になってくれる弁護士への相談です。より有利な解決を目指すなら、弁護士に相談しましょう。

交通事故に強い弁護士を探す

保険会社の対応に困っている人は少なくない

連絡すると言われた日に電話が来ない。折り返しを頼んでも返ってこない。ようやくつながったと思えば、こちらの言い分をひととおり聞いた後で「社内で確認します」と言われて終わる。交通事故の被害に遭った方から、こうした話を本当によく聞きます。

痛みを抱えたまま、こちらは仕事も生活も抱えています。その状態で連絡を待たされ続けるのは、想像以上に消耗します。相手の担当者に悪気があるようには見えないだけに、どこに怒りを向ければよいのかも分かりません。

ここで大切なのは、担当者を責めても状況は変わらないという点です。むしろ、関係が悪くなることで、確認に必要なやり取りまで滞ってしまいます。感情を抑えるという話ではなく、効く手段を選ぶという話です。

想像してみてください。事故から二か月が経ち、通院を続けている。担当者から「そろそろ治療の終了時期を」と切り出され、返事を保留したまま二週間。こちらから連絡しても折り返しがなく、治療費の支払いが止まるのではないかという不安だけが膨らんでいく。

こういう状態が続くと、判断も鈍ります。早く終わらせたいという気持ちが先に立ち、内容を確かめないまま応じてしまう。相手方にとっては、それが最も都合のよい展開です。

この記事では、担当者がどういう立場で動いているのかを整理したうえで、よくある困りごとごとの対処法、やり取りの基本、そして話が進まないときに取れる手続きまでを説明します。感情的にぶつかっても状況は動きません。動かし方には、型があります。

先にお伝えしておくと、ここで紹介する対処法は、どれも特別なものではありません。期限を切る、記録に残す、その場で答えない。この三つを徹底するだけで、多くの場面は改善します。

それでも動かない場合には、窓口を上に上げる、社外の機関を使う、代理人を立てるという段階が控えています。手詰まりに見えても、次の一手は必ず残っています。

なお、ここで扱うのは相手方の保険会社とのやり取りです。自分が契約している保険会社への対応は、また別の話になります。両者は立場が違いますので、混同しないようにしてください。

担当者は何をしている人なのか

対処法を考える前に、相手の立場を理解しておくと、話が早くなります。

支払う側の基準で動いている

相手方の保険会社の担当者は、被害者の代理人ではありません。加害者側が加入する保険から、いくら支払うかを判断する立場です。会社が定めた基準に沿って計算し、社内の決裁を通して金額を決めています。

ですから、担当者個人に対して「もっと出せるはずだ」と迫っても、動かせる余地は多くありません。逆に、根拠を示して基準の当てはめが誤っていると指摘すれば、検討の対象になります。相手が動ける場所を狙う、という発想が要ります。

たとえば「慰謝料が安すぎる」という抗議には、担当者は基準どおりですと答えるほかありません。一方、「通院にかかった交通費が計上されていない」という指摘には、確認して追加するという対応が可能です。同じ不満でも、伝え方によって返ってくるものが変わります。

抱えている件数が多い

一人の担当者が同時に扱っている案件は、決して少なくありません。連絡が遅れる背景には、悪意ではなく単純な処理量の問題があることも多いのです。

この事情を知っておくと、対応が変わります。「いつまでに回答をいただけますか」と期限を切って尋ねるほうが、抗議を重ねるより効きます。相手の予定表に自分の案件を書き込ませる、というイメージです。

担当者の側にも、進めたい事情はあります。案件が長引けば、その分だけ手元に残り続けるからです。こちらが求めているものを明確にすれば、処理しやすい案件として優先されることもあります。

逆に、こちらの求めが曖昧なままだと、後回しにされやすくなります。「納得できない」だけでは、担当者は何をすればよいのか分かりません。何について、どういう対応を求めているのかを、一文で言えるように整理しておいてください。

ワンポイントアドバイス
やり取りは、必ず日付と内容を記録に残してください。誰と話し、何を言われ、こちらが何を求めたか。一行で構いません。この記録が、後で認識のずれが起きたときの拠りどころになります。

困りごと1:連絡が来ない、対応が遅い

最も多い相談がこれです。放置されているように感じて、不安が募ります。

期限を切って求める

「いつでもいいので教えてください」では、後回しにされます。「今週中に回答をお願いします」「来週の月曜までにご連絡ください」と、日付を明示して求めてください。

それでも返答がない場合は、電話ではなく書面やメールで求めます。記録が残る形にすると、対応の優先度が上がることがあります。文面は簡潔で構いません。何について、いつまでに、どういう回答がほしいのかを書けば足ります。

連絡の手段も、あらかじめ決めておくと楽になります。日中は仕事で電話に出られないのであれば、その旨を伝えて、メールか書面でのやり取りに切り替えてもらってください。折り返しがつかないまま何日も過ぎる、という事態を防げます。

家族に窓口を代わってもらうこともできます。入院中や、体調がすぐれない時期には、この方法が現実的です。誰が対応するのかを最初に伝えておけば、やり取りが混乱しません。

窓口を上に上げる

担当者に連絡しても動かないときは、その上司に取り次いでもらうよう頼めます。「担当の方に何度かお願いしていますが回答がないので、責任者の方とお話ししたい」と伝えれば、通常は対応されます。

保険会社には、苦情を受け付ける窓口も設けられています。契約者ではない被害者からの申し出も受け付けているのが通常です。社内の窓口で解決しない場合には、業界団体が設けている相談・苦情の受付機関もあります。

もっとも、これらは対応の姿勢を改めさせる手段であって、賠償額そのものを動かす手段ではありません。金額に不服があるのなら、別の道を検討することになります。

この区別は大切です。対応の遅さと、金額の不当さは別の問題であり、使うべき手段も違います。両方を同じ窓口に持ち込むと、どちらも中途半端に終わってしまいます。

対応の遅さについては、社内の窓口や苦情の受付機関へ。金額については、紛争処理の機関や調停、訴訟へ。まず自分の不満がどちらなのかを整理してから動いてください。

困りごと2:治療費の打ち切りを打診される

事故から一定の期間が経つと、「そろそろ治療を終了しませんか」という連絡が入ります。医学的な結論というより、支払いをいつまで続けるかという社内の判断だと考えてください。

時期の目安は、ケガの内容によって変わります。いずれ来るものだと構えておけば、切り出されたときに動揺せずに済みます。あらかじめ医師と、あとどれくらい治療が必要かを話しておくのも有効です。

打診を受けたときに取れる道は、いくつかあります。医師の見解を示して継続を求める、健康保険に切り替えて通院を続ける、症状固定として次の段階に進む。選択肢があること自体を知らないと、言われるままに治療を終えることになります。

その場で返事をしない

電話口で「分かりました」と答えてしまうと、それが同意として扱われかねません。まだ症状が残っているなら、「医師に確認してから回答します」と伝えてください。突き放した言い方に聞こえるかもしれませんが、実務では当たり前のやり取りです。

そのうえで、次の診察のときに医師へ相談します。あとどれくらい治療が必要か、症状が固定したといえる状態か。医師の見解を確かめてから返事をすれば、根拠のある回答になります。

医師に伝えるときは、保険会社から終了を打診されている旨をそのまま話して構いません。医学的にまだ必要だと判断されるなら、その根拠を書面にしてもらえることもあります。

打ち切られた後にも道はある

相手方が支払いを止めても、治療をやめる必要はありません。健康保険を使って自己負担を抑えながら通院を続け、後から相手方に請求する方法があります。

ここで通院をやめてしまうと、記録の上では治療の必要がなくなったと読まれます。症状が残っているなら、通い続けたという事実を残すことに意味があります。

もう一つの道が、症状固定として後遺障害の申請に進む方法です。これ以上よくならない状態だと判断されるなら、治療を続けるより、残った症状の評価に移るほうが合理的な場合があります。どちらを選ぶかは、症状の推移によります。

判断に迷うなら、医師の見立てを聞いたうえで決めてください。治療の必要性を判断できるのは医師であって、保険会社の担当者ではありません。ここは譲る必要のない部分です。

診察のときは、症状の変化を具体的に伝えてください。どの動作で痛むのか、仕事や家事のどこに支障が出ているのか。「変わりません」とだけ答え続けると、経過の記載がほとんど残らず、後で症状の重さを説明しにくくなります。

困りごと3:提示された金額が低い

治療が終わり、賠償額の提示書が届いた。思っていたより低い。この段階の相談も多く寄せられます。

まず何が計上されているかを見る

提示書が届いたら、次の項目が入っているかを一つずつ確かめてください。

  • 治療費と、通院にかかった交通費
  • 仕事を休んだ分の収入の減少
  • 家事ができなかった期間の損害
  • 入通院に付き添った家族の費用
  • 装具や器具を購入した費用
  • 通院期間と日数に応じた慰謝料
  • 後遺障害が認定された場合の慰謝料と将来の減収

金額の総額だけを見ても判断できません。どの費目が、どういう計算で入っているのかを確かめてください。治療費、通院交通費、休業損害、慰謝料。この四つが基本で、後遺障害が認定されていればさらに加わります。

それぞれの費目について、金額の根拠を尋ねてよいのです。どの資料に基づいて計算したのか、日数や単価はどこから出したのか。説明を求めること自体は、何ら非常識な行動ではありません。

むしろ、根拠を示せない項目があるとすれば、そこに検討の余地があるということです。すべてに納得できる説明が返ってくるなら、その提示は妥当な水準にある可能性が高いと考えてよいでしょう。

抜けやすいのは、通院にかかった交通費、家事ができなかった期間の損害、付き添いの費用、装具の購入費です。これらは、こちらが指摘しなければ足されません。

休業損害も、算定の方法によって差が出やすい費目です。給与所得者、自営業の方、家事に従事している方、会社の役員。立場によって計算の考え方が変わりますから、画一的に当てはめられていないかを確かめてください。

事故の前後で収入が変動していた方、複数の勤務先から収入を得ていた方、開業して間もない方は、単純な計算では実態を反映しきれません。こうした事情があるなら、資料を添えて説明する必要があります。

提示書の計算に誤りが見つかることもあります。通院した日数が実際と違う、休んだ期間が短く見積もられている。単純な数え間違いであれば、指摘すれば訂正されます。まずは自分の記録と突き合わせてみてください。

通院した日を手元で数えておくと、この確認が早く済みます。診察券の記録や領収書を月ごとにまとめておけば、突き合わせに手間はかかりません。

基準の違いを踏まえる

慰謝料の算定には複数の基準があり、保険会社が最初に提示してくるのは、その中でも低めの水準にあたることが一般的です。ここを知らないまま「相場なのだろう」と受け止めてしまうと、検討の機会を失います。

提示書を見ても、どの基準を当てはめたのかが書かれているとは限りません。数字が妥当かどうかは、比べる相手があって初めて分かるものです。

ここで気をつけたいのが、示談書が同封されている場合です。署名して返送すれば、それで合意が成立します。内容を検討する前に返送してしまうと、後からやり直せません。

返送を急かされても、応じる義務はありません。「内容を確認してから返送します」と伝えれば足ります。期限が書かれていても、それは相手方が事務処理の都合で設けたものにすぎない場合がほとんどです。

困りごと4:過失割合を一方的に決められる

「今回は八対二です」とだけ告げられ、根拠の説明がない。納得がいかないまま話が進む。これも典型的な場面です。

どの類型を前提にしているか尋ねる

過失割合は、過去の裁判例を整理した資料をもとに、事故の状況に応じて修正しながら決められます。ですから、まずどの類型を出発点にしているのかを聞いてください。次に、どんな修正が加えられているのかを確かめます。

説明できない、あるいは説明を避けるようであれば、その数字の根拠は薄いと考えてよいでしょう。割合は感覚で決めるものではありません。

また、こちらに過失がまったくない事故では、自分の保険会社が交渉を代行できません。示談代行が使えるのは、自分の側にも賠償責任が生じうる場合に限られるためです。追突された事案などでは、この点も踏まえて動き方を考える必要があります。

過失がないというのは、本来であればこちらに有利な事情のはずです。一方で、交渉を代わってもらえないぶん、負担は重くなります。なぜ自分の保険会社が動いてくれないのかと戸惑う方が多いのは、この構造によるものです。

資料を早く確保する

割合を動かすには、こちらの言い分を裏づける材料が要ります。映像記録、目撃者、車両の損傷の位置。とくに周辺の防犯カメラは、一定の期間で上書きされてしまいます。争いになりそうだと感じたら、その日のうちに動いてください。

自分の車のドライブレコーダーも、早めにデータを取り出しておいてください。衝撃を受けた記録が自動で保存されていると思い込み、確認しないまま走り続けて消してしまう例があります。

目撃者がいた場合も、その場で連絡先を聞いておいてください。後から探し出すのは、まず不可能です。名前と電話番号だけでも構いません。

相手方が提示してきた割合に納得できないまま、示談だけ先に進めることは避けてください。割合は賠償額に掛け算で効きますから、ここが決まると全体の金額もほぼ固まります。

注意
過失割合は警察が決めるものではありません。「警察がこう言っていた」という説明を根拠に示された数字を、そのまま受け入れる必要はありません。実況見分の記録は資料として使われますが、割合そのものは当事者間の話し合いか裁判で決まります。

やり取りの基本ルール

個別の場面に入る前に、共通して押さえておきたい進め方があります。次の五つを守るだけで、状況はかなり変わります。

どれも当たり前のことに見えますが、実際にはできていない方が多い部分です。とくに治療中は体調がすぐれず、細かい記録まで手が回らないのが実情でしょう。それでも、この五つは効きます。

すべてを完璧にこなす必要もありません。できるものから始めてください。記録を残すことと、その場で答えないこと。まずはこの二つだけでも十分に意味があります。

ご家族に協力してもらうのも一つの手です。通話の後に内容を聞き取って書き留めてもらう、届いた書面を整理してもらう。本人が治療に専念できる環境をつくることが、結果として交渉の質にもつながります。

  1. その場で即答しない。持ち帰って確認すると伝える
  2. やり取りは日付と内容を記録する
  3. 重要な事項は、書面かメールで残る形にする
  4. 回答を求めるときは期限を明示する
  5. 感情ではなく、根拠を示して求める

即答しないことの意味

電話は、その場で答えを引き出しやすい手段です。治療の終了、過失割合、示談の金額。いずれも、その場で判断するには重すぎる事柄です。「確認して折り返します」と言えば済みます。数日待たせたことで不利になる場面は、まずありません。

逆に、その場で答えを求められる場面があれば、それ自体が注意すべき合図です。急がせる理由をこちらから尋ねてみてください。合理的な説明が返ってこないなら、なおさら持ち帰るべきです。

記録の残し方

手帳でも、携帯電話のメモでも構いません。日付、担当者の名前、話した内容、こちらが求めたこと。これだけで十分です。後から「そんなことは言っていない」となったときに、記録があるかないかで話の重みが変わります。

あわせて、届いた書面はすべて保管してください。封筒ごと残しておくと、届いた日付が分かります。読まずに置いてある書面の中に返送の期限が書かれていることもありますので、一度は目を通しておいてください。

根拠を示すという姿勢

強く出れば動く、というものではありません。担当者は基準に沿って処理していますから、基準の当てはめが違うと示すのが最も効きます。医師の見解、実際の中古車価格、通院の記録。こうした材料を添えて求めてください。

材料がそろわないうちは、無理に交渉を進める必要もありません。治療が続いている段階では、そもそも損害の全体が確定していません。整えるべきものを整えてから交渉に入る、という順序も一つの戦い方です。

担当者を替えてもらうことはできるのか

相性が合わない、対応が不誠実だと感じる。こうした場合、担当者の変更を求めることは可能です。

ただし、必ず応じてもらえるわけではありません。求めるなら、感情ではなく具体的な事実を挙げてください。回答期限を三度過ぎている、こちらの質問に答えないまま話を進めようとしている、といった形です。

変更しても、判断の基準そのものは変わりません。担当者が替われば提示額が上がる、ということは期待しないほうがよいでしょう。改善するのは、やり取りのしやすさの部分です。

それでも、意思疎通が成り立たない相手と何か月もやり取りを続けるのは、大きな負担です。改善が見込めないと感じたら、遠慮なく申し出てください。

変更を申し出たことで、その後の対応が悪くなるのではないかと心配される方もいます。担当者が替われば、以前の経緯は引き継がれたうえで新しい担当者が対応します。不利益な扱いを受けることは、通常ありません。

ただし、変更には時間がかかることもあります。急いで進めたい事情があるなら、変更を求めるより、上司を交えて話す形のほうが早い場合もあります。

どちらを選ぶにせよ、これまでのやり取りを整理して伝えられる状態にしておいてください。記録があれば、説明にかかる時間そのものが短くなります。

社外の窓口を使う

社内での対応に納得できない場合、業界団体が設けている相談・苦情の受付機関に申し出る方法があります。ここでは、苦情の受付だけでなく、当事者間の話し合いを仲介する手続きも用意されています。

費用がかからず、訴訟より負担が軽いのが利点です。ただし、扱える範囲には限りがありますので、事案の内容によっては別の手続きを選ぶことになります。

交通事故に特化した紛争処理の機関もあります。相談だけでなく、和解のあっせんや審査まで扱う窓口があり、審査の結論については相手方の保険会社が尊重する扱いになっています。争点が絞られている事案では、有力な選択肢です。

話が進まないときに取れる手続き

やり取りを続けても平行線のまま、という状態が続くことがあります。その場合、話し合い以外の道を検討します。

手続き 特徴 向いている場面
紛争処理の機関 費用がかからず、あっせんや審査を受けられる 争点が絞られている事案
民事調停 裁判所で話し合う。訴訟より手続きが簡易 相手が話し合いに応じる姿勢がある事案
訴訟 裁判所が判断を示す。期間はかかる 争点が大きく、譲歩の余地がない事案

調停は、相手が応じなければ成立しません。相手方が話し合いに前向きでない場合には、時間を費やしたうえで訴訟に移ることになり、かえって遠回りになることもあります。

訴訟についても、判決まで進むとは限りません。途中の和解で終わることが多く、その場合は判決を待つより早く決着します。手続きを起こすこと自体が、話を動かす契機になる面もあります。

ただし、どの手続きも相応の時間がかかります。数か月から、事案によっては年単位です。進めるかどうかは、見込まれる結果と、費やす時間や手間を比べて決めることになります。

どの手続きを選ぶにせよ、期限の存在は意識してください。損害賠償を求める権利には期間の制限があり、これを過ぎると請求できなくなります。交渉が長引いているときほど、残りの期間を確かめておく必要があります。

期間の数え方は、何についての請求かによって変わります。ケガについての請求と、後遺障害についての請求とでは起算点が異なる扱いになっていますので、自分の事案でいつまでなのかを確認しておいてください。

自分の保険から先に受け取るという選択

相手方とのやり取りが進まない間も、生活は続きます。治療費、休んだ分の収入、当面の出費。これらを相手方の対応待ちにしなくてよい場合があります。

自分が加入している保険に、ケガを対象とする補償が付いていれば、相手方との交渉とは別に受け取れます。過失割合に関係なく支払われる仕組みもありますので、証券を確認してみてください。

相手方の自賠責に直接請求するという方法もあります。相手方の任意保険会社を通さずに、こちらから手続きを進められる仕組みです。当面の費用を先に受け取る制度も用意されています。

治療費の負担を抑える方法として、健康保険を使う手もあります。交通事故による治療でも、健康保険の利用は認められています。窓口での支払いが軽くなるぶん、立て替えの負担が小さくなります。

先に受け取ったからといって、相手方への請求ができなくなるわけではありません。ただし、後で調整が行われますので、二重に受け取れるものではない点は押さえておいてください。

弁護士に窓口を移すという選択

ここまでの対処を試しても状況が変わらないなら、窓口そのものを移す方法があります。

代理人が入ると、相手方からの連絡はすべて弁護士に届きます。電話も郵便も、直接受ける必要がなくなります。この変化を軽く見る方は多いのですが、実際に依頼した方が最初に挙げるのは、たいていこの点です。

体調がすぐれない時期に交渉の応対まで抱えるのは、想像以上に消耗します。電話が鳴るたびに身構える状態が続けば、治療そのものにも影響しかねません。窓口を移せること自体に、治療上の意味があります。

やり取りの質も変わる

相手方の窓口は、日常的に代理人とやり取りしています。争点を整理して根拠を示すという進め方に慣れているため、感情的な応酬になりにくく、結果として話が早く進むことがあります。

費用が心配であれば、まず弁護士費用特約の有無を確認してください。自分の契約に付いていなくても、同居している家族の契約から使える商品が一般的です。

相談だけでも意味がある

依頼せずに、助言だけを持ち帰るという使い方もできます。いま言われていることが標準的な対応なのか、それとも押し込まれているのか。この線引きを外から示してもらえるだけでも、次の一手が決まります。

相談の際は、届いた書面と通院の記録、そしてやり取りのメモを持参してください。実物があれば、答えも具体的になります。何も持たずに口頭で説明するだけでは、一般論しか返ってきません。

事故の直後にどう動くべきかを整理しておくと、その後のやり取りも楽になります。

よくある質問

担当者から連絡が来ません。どうすればよいですか

期限を明示して回答を求めてください。それでも動かない場合は、書面やメールで記録が残る形にし、さらに上司への取り次ぎを依頼します。社内の苦情窓口に申し出る方法もあります。

治療の終了を打診されました。断ってもよいのですか

その場で答える必要はありません。医師に確認してから回答すると伝えてください。症状が残っているなら、医師の見解を根拠に継続を求めることになります。支払いが止まっても、健康保険を使って通院を続ける道があります。

提示された金額に納得できません

まず費目の内訳を確認してください。抜けている費目がないか、計算の前提が妥当か。そのうえで、どの基準で算定されているのかを尋ねます。検証してみて動かせる余地があるなら、根拠を示して交渉することになります。

担当者の態度が高圧的です

やり取りの内容を記録に残したうえで、上司や苦情窓口に具体的な事実を挙げて申し出てください。担当者の変更を求めることもできます。ただし、変更によって判断の基準が変わるわけではない点は理解しておいてください。

示談を急かされています

急ぐ必要はありません。損害が確定していない段階での合意は避けてください。いったん示談が成立すると、原則としてやり直しはききません。返答を数日待たせたことで不利になることは、まずありません。

直接やり取りしたくありません

代理人を立てれば、以後の連絡はすべて弁護士が受けます。弁護士費用特約が使えるなら、費用の負担なく窓口を移せます。治療に専念したい時期には、有力な選択肢です。

録音してもよいのでしょうか

自分が当事者として参加している会話を記録することに、法的な問題は生じません。ただし、記録を取っていること自体が相手との関係に影響することもありますので、まずはメモで足りるかを考えてみてください。

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