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性格の不一致は離婚の理由として認められる?

この記事で分かること

  • 性格の不一致で離婚したい場合、まずは話し合いから
  • 調停・裁判で離婚を争う場合は、「夫婦関係の破綻」を証明することが重要
  • 「性格の不一致」とほかの離婚理由を組み合わせるのが効果的
  • ひとまず別居して、冷却期間をおく選択肢も

「性格の不一致」は法律に定められた離婚理由には該当しないため、確実に離婚するためには、価値観や考え方、性格などの違いが、夫婦関係を継続できないほど重大であることを証明しなければなりません。

性格の不一致を理由に離婚できる?

「性格の不一致」は、どちらが悪いともいえない離婚の理由ですが、価値観や考え方が異なる人と長く生活をともにすることは、相手に許容できる部分がなければ耐え難いものになるのかもしれません。まずは、そもそも性格の不一致で離婚が可能なのかどうかを見ていきます。

離婚の動機の第1位は男女ともに「性格の不一致」

「婚姻関係事件数」という裁判所の司法統計(2016年度)によると、離婚の申し立ての動機は夫・妻ともに「性格が合わない」が第1位、その件数は夫が18,135件、妻が18,994件でした。第2位の離婚の申し立ての動機は、夫では「異性関係」で2,594件、妻では「暴力を振るう」で10,461件であり、これらの数字を見ても、2位との圧倒的な差をつけて性格の不一致による離婚が多いことがわかります。

法律で認められている離婚理由

このように、離婚理由としてはもっとも多い「性格の不一致」ですが、性格の不一致は法律上明確に定められている離婚理由ではありません。法律で定められている離婚理由には、次の5つがあります。

不貞行為

夫婦にはお互いに貞操を守る義務があり、配偶者が別の異性と肉体的な関係を持った場合は離婚が可能です。ただし、「異性に恋愛感情を持っているが、まだ関係は持っていない」「異性と手をつないだり、キスをしたりした」といった程度では、離婚が認められないケースもあります。

悪意の遺棄

夫婦には、お互いに貞操を守る以外にも、以下のような義務があります。

  • 同居義務:ともに生活を送ること
  • 扶助義務:生活費を出し合って、お互いに同じ程度の生活水準を保つこと。一方が専業主婦などで無収入、または、収入が少ないなどの場合は、もう一方が生活費を多く出さなければなりません。
  • 協力義務:お互いに協力し合って生活を送ること

これら夫婦としての義務を意図的に怠ることを、法律上は「悪意の遺棄」といいます。具体的には、配偶者の同意なしに勝手に家出をする、配偶者を家から追い出す、働いているにもかかわらず生活費をまったく家に入れない、健康なのに働く意志がない、などが悪意の遺棄にあたり、法律上離婚が可能となります。

3年以上の生死不明

配偶者の行方が知れず、3年以上生死不明の状態が続くことも、正当な離婚理由として認められています。

回復の見込みのない重い精神病

配偶者が双極性障害、アルツハイマー、認知症などに起因する精神病を患っていることも、法律上の正当な離婚理由と認められる可能性があります。ただし、精神疾患を理由に離婚する場合は、長期間にわたって治療を行ってきたけれども回復の見込みがないこと、離婚に至るまでに配偶者の献身的な看病があったことなどから、妥当性が総合的に判断されます。

そのほか婚姻を継続し難い重大な事由

上記のいずれにも当てはまらないけれども、夫婦としての関係が破綻してしまい将来にわたって回復も見込めない場合は、「婚姻を継続し難い重大な事由」として離婚が認められる場合があります。性格の不一致で離婚する場合は、「互いの価値観や考え方などの違いが、夫婦関係の破綻につながるほど重大であるかどうか」がポイントになります。

離婚には主に3つの方法がある

離婚には主に、協議離婚、調停離婚、裁判離婚の3つの方法があります。もっとも一般的な方法は協議離婚で、夫婦で話し合い納得したうえで離婚届を提出すれば離婚が成立します。

調停離婚も夫婦が話し合う離婚の方法ですが、協議離婚と異なるのは、夫婦が直接やり取りを行うのではなく、調停委員と呼ばれる第三者を通して話し合いを行うことです。また、調停終了後に作成される調停調書には強制執行力があります。

協議離婚、調停離婚でも離婚に関してお互いの同意が得られなかった場合の最終手段が、裁判離婚です。裁判離婚では離婚にお互いの同意は必要なく、裁判官の判断によって離婚できるかできないかが決まります。

3つの離婚方法のうち、先にご紹介した5つに該当する離婚理由がなければ、裁判離婚はできません。価値観や考え方などは人それぞれで性格が一致しないのは当たり前のことだと考えられるため、性格の不一致は基本的に、婚姻を継続し難いほど重大な事由にあたるとまではいえない、と解されるのが一般的です。

そのため性格の不一致を理由に離婚したい場合は原則として、協議離婚か調停離婚の方法を取ることになります。

ワンポイントアドバイス
離婚調停は法廷離婚理由がなくても申し立てられますが、主張に調停委員を納得させるだけの根拠がなければ、離婚が不成立となる可能性も。調停を有利に進めるための具体的な方法を、以下より見ていきましょう。

性格の不一致で離婚する具体的な3つの方法

協議離婚、あるいは調停離婚という方法を取り、性格の不一致で離婚するための具体的な方策は次の3つです。

【1】根気よく話し合って相手を納得させる

協議離婚であれば、どのような理由であれ夫婦が互いに納得すれば離婚は成立しますから、まずは2人の今後について根気よく話し合ってみるのも一つの方法です。ただし、話し合いがスムーズに進みお互いに納得したうえで離婚する場合も、慰謝料や財産分与など離婚時に発生する問題は必ず離婚の成立前に話し合い、取り決めた内容を強制執行力のある公正証書に残すことをおすすめします。

相手が離婚の話し合いに応じてくれない、相手と会話をしたくない、といった場合には、次のような方法もあります。

【2】夫婦関係の破綻を証明する

相手との話し合いを望まない場合、まずは調停離婚での解決を目指すことになります。調停離婚も話し合いで解決する手段の一つですから、お互いが納得しないことには離婚ができないのは協議離婚と変わりありません。ただし、調停離婚の場合は、間を取り持ってくれる調停委員を納得させ味方につけることで、自分の有利に進めやすいという特徴があります。

性格の不一致で調停離婚を有利に進めるには、価値観や考え方などの違いが結婚生活を維持できないほど決定的なものであることを、調停委員へ印象づけなければなりません。そのための方法は主に以下の2つです。

証拠を集める

性格の不一致から日常的にけんかや口論が起こっている場合、その様子や内容をメモや日記に記録として残しましょう。録画や録音を取れればさらに確実な証拠となります。価値観が合わないことがわかるLINEやメールのやり取りなども証拠となり得るため、メールを保存したり、SNSでのやり取りとなる場合はスクリーンショットを撮っておいたりすると安心です。

加えて、2人の関係を知る第三者の証言も証拠になり得ます。家族・友人など、周囲の人にお願いしてみるのも方法の一つです。

別居する

長期戦にはなりますが、上記の「証拠を集める」よりもより端的に“夫婦関係の破綻”を示す方法として「別居」があります。お互いが離婚に合意せず調停不成立となった場合、最終的には離婚裁判に移行することになります。このとき、別居期間が長くなっていればいるほど、離婚裁判において夫婦の性格の不一致が「婚姻を継続し難い重大な事由」にあたると認められる可能性も高くなります。

また、一定の冷却期間をおくことで、夫婦にとって本当に離婚という選択がベストだといえるのか、冷静に考えることもできます。相手が離婚に応じてくれそうにない場合も、別居により一旦距離をおく選択肢は有効といえるでしょう。

【3】ほかの離婚理由と組み合わせる

性格の不一致だけでは「婚姻を継続し難い重大な事由」として弱いと考えられるとき、「不貞行為」や「悪意の遺棄」などに該当するほかの離婚理由を組み合わせると、離婚が認められる可能性が高くなります。参考として事例を2つ挙げてみましょう。

【事例1】夫が女性にだらしない

離婚理由の一つである「不貞行為」の判断基準となるのは“肉体関係があったかどうか”です。しかし、たとえ肉体関係がなくても、ひんぱんに飲みに出かけては女性と抱き合ったりキスしたりしているといった事実があれば、これをきっかけに結婚生活を続けていくことが難しいほどの価値観の違いが明らかになった、と主張することは可能です。

単なる性格の不一致というよりも、「異性との関係性に対する価値観の違い」であることを示したほうが、離婚が認められる可能性は高くなります。

【事例2】夫の趣味がギャンブル

単に「ギャンブルにお金をかける夫の趣味が理解できない」というだけでは、離婚は難しいといえるでしょう。しかし、趣味の面で価値観が合わないことに加えて、夫がギャンブルにはまり必要な生活費を入れなくなったなどのケースでは、「悪意の遺棄」に当てはまる可能性もあり、離婚が認められやすくなるといえます。

ワンポイントアドバイス
特に離婚調停においては、性格や価値観の違いが「これ以上夫婦関係を続けていくことが難しいと判断できるほど決定的である」という事実を、調停委員に印象付けることが重要です。

性格の不一致での離婚はお金・子どもの問題にどう影響するか

離婚に際してはお金に関すること、子どもに関することなどさまざまな問題が発生します。性格の不一致で離婚する場合、慰謝料や財産分与、養育費、親権などにはどのような影響があるのでしょうか?

慰謝料はもらえない可能性が高い

慰謝料とは、相手に精神的な苦痛を与えた賠償として支払う金銭を意味します。性格の不一致の場合、どちらかだけに原因があるとも、どちらか一方が相手を傷つけたともいえないケースが多く、相手に慰謝料を請求できる可能性は低いと考えられます。

財産分与・養育費などには影響しない

財産分与、養育費支払い、親権の取得など、慰謝料以外のそのほかの問題に関しては、「性格の不一致」で離婚することがおよぼす影響は特にありません。性格の不一致による離婚を申し立てた側であっても、そのことを理由に不利益を被ることはないと考えられます。

ワンポイントアドバイス
性格の不一致での離婚を申し立てた側が、その事実を理由に離婚に際して不利になることはありません。「離婚するなら親権は渡さないといわれた」「どうしても慰謝料を取りたい」などの事情がある場合は、弁護士へ相談してみることをおすすめします。

性格の不一致での離婚こそ弁護士へ相談を

「性格の不一致」は法的に認められた離婚理由ではありませんが、離婚の動機として第1位に挙げられていることからも、夫婦の関係性を決定づける大きな問題であることがうかがえます。「性格の不一致」で離婚するならばまずは話し合いが基本ですが、価値観や考え方が合わない人とじっくり話し合いをすることは非常に大きなストレスですし、そもそも満足に話し合うことすらできないかもしれません。

そのようなときは、一度離婚問題に詳しい弁護士へ相談してみましょう。基本的には夫婦間の話し合いのみで決着する協議離婚でも、弁護士に手伝ってもらうことは可能です。その際は、離婚後にトラブルとならないために話し合いで決めておくべきこと、契約書や公正証書の作成方法なども教えてくれます。一向に話し合いが進まない、離婚協議のストレスから解放されたいとお悩みの方は、選択肢の一つとして考えてみてください。

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