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債務整理で考えられるメリットとデメリットを総まとめ!
この記事で分かること
- 債務整理には3つの種類があり、それぞれ特徴が異なる
- 借金の金額や状況によってメリットもさまざま。大きな借金額も、適切な債務整理の方法を選べば返せる額になる
- どの種類にもその後の生活に関わるデメリットがいくつかある
それぞれの特徴を知り、適切な債務整理の方法を選べば、誰でも借金の負担を減らせます。債務整理の3つの特徴とメリット・デメリットを知り、どの手続きをすればよいか迷ったときは、弁護士に相談しましょう。
債務整理には3つの種類がある
債務整理には大きく分けて3つの種類があります。まずはそれぞれの違いや特徴、手続きの方法などを理解しましょう。
最小限のリスクで借金を減らせる「任意整理」
任意整理とは、利息制限法に定められている上限金利(15~20%)にもとづいてお金を借りた当時の金利を引き下げ計算し直すことで、借金の負担額を減額できる方法です。返済するのは減額した借金の元本のみとなり、原則として金利を返済する必要はありません。
金融機関など借入先との交渉は個人の代わりに弁護士や司法書士などが行い、和解が成立した後は、締結した和解内容に従って借金を返済していくことになります。また、残りの借金は毎月の分割になるので、日常生活に支障のない範囲で無理なく返済することが可能です。ただし、任意整理を利用できるのは、再計算した後の借金を3年程度の期間で返済できる人、もしくは今後も継続的に一定の収入が得られる人に限られます。
所有する財産の一部が手元に残る「個人再生」
法律上の手続きである民事再生の中でも、特に個人に適用されるものを「個人再生」といいます。個人再生の大きなメリットは、全額とはいかないまでも、任意整理より大幅な借金の減額ができ、住宅などの一部の財産は引き続き所有できる点にあります。そのため、「マイホームは手放したくないけど、借金を全額返済するのは難しい」という人も利用できる方法です。
減額が適用は住宅ローン以外の借金のみ
ただし、減額が適用されるのは住宅ローン以外の借金に限ります。そのため、減額された借金を原則3年間の分割払いで返済しつつ、これとは別に、住宅ローンはこれまでどおり返済していかなければならない点に注意が必要です。
個人再生を利用できる条件
個人再生を利用できるのは、住宅ローンを除く借金の総額が5,000万円を超えない、将来借金を返済できなくなるおそれがある、今後も継続的に一定の収入が見込める場合に限られます。
ハイリスク・ハイリターンの「自己破産」
自己破産とは、滞納している税金などを除き、原則としてすべての借金を支払う義務が免除される(免責)制度です。保有する財産の状況などから考えて、借金の全額を返済できない状態に陥ったとき、裁判所に申請をして認められれば、以後抱える借金は0になります。ただし、借金がすべて帳消しになる代わりにそれなりのリスクもあり、生活に必要な最低限の財産を除き、ほとんどすべての保有する財産が処分されます。また、利用できる人も、返済不能な状態が認められ、原則として過去7年の間に免責を受けた経歴がない場合に限られます。
自己破産にマイナスのイメージを持っている人は多く、世間でも破産者をまるで「失格者」のように考えている人も少なくありません。しかし、本来ならば、自己破産は人生の再スタートを切るためのポジティブな制度。手続開始後、正式に免責決定が下りるまでの約3~6ヶ月は一部制限もありますが、免責が認められれば、その後は通常どおりの生活を送ることができます。
それぞれの債務整理のメリット
「借金の負担額を減らせる」「弁護士などの専門家に任せれば手続きが簡単」などのメリットは3つの債務整理に共通することですが、各々にしかないメリットもあります。
3つの債務整理のメリットの特徴
任意整理のメリット 自由度が高い
任意整理は、ほかの債務整理と比較すると、お金を借りている側にある程度の自由があります。たとえば、手続きは裁判所に申請するものではないため、保有財産を処分されることも、一定期間一部の職業に就けなくなることもありません。また、整理するローンとしないローンを自由に選択することができ、借金の一部だけに適用することも可能になります。
さらに、過去に払い過ぎていた利息が手元に戻ってくるため、借金返済に充てることができます。加えて、任意整理の手続きは、代理人である弁護士や司法書士が、裁判所を通さず直接借り入れ先と交渉を行う形をとるため、債務整理の事実が外部に漏れることがない点も、メリットといえます。
個人再生のメリット 住宅が財産として残る
個人再生で免除される金額は借金の金額によって異なり、以下のようになります。右が住宅ローンを除く借金の総額、左が免除される金額です。
免除される額 | 住宅ローンを除く借金の総額 |
---|---|
100万円未満 | 債務全額 |
100~500万円以下 | 100万円 |
500~1,500万円以下 | 総額の1/5 |
1,500~3,000万円以下 | 300万円 |
3,000~5,000万円以下 | 総額の1/10 |
上記の表を見てみると、任意整理よりも大幅な借金の減額が見込めることが分かります。
もちろん、この基準が無条件で適用されるわけではなく、減額後の借金が自己破産の際に処分される資産の換金額よりも少なくなる場合は、基準以下の減額になる制限はあります。しかし、負担が大きく軽減され、住宅などの一部の財産を引き続き所有できることは、個人再生の大きなメリットといえるでしょう。
たとえ借金が浪費やギャンブルに起因するものであっても申請が認められる可能性は高く、特定の職業に就けなくなる制限もありません。
自己破産のメリット 借金がすべてなくなる
自己破産は、ほとんどすべての借金を負う義務がなくなり、マイナスではなく0の状態からスタートできることが最大のメリットだといえます。また、免責が認められるかどうかは裁判所の判断にゆだねられますが、自己破産の申請は借金の金額にかかわらず、誰でもできます。
債務整理のデメリット
借金を返済する義務を免除してもらうからには、もちろんそれなりのリスクもあります。それぞれのデメリットについても知っておきましょう。
債務整理の3つのデメリット
任意整理のデメリット 借金の減額が少ない
任意整理は、借金のうちカットできるのは主に利息分となるため、ほかの債務整理と比較すると、借金の整理後も返済額が大きくなりがちです。加えて、代理人が借り入れ先に直接和解を申し込むため、任意整理には法的な拘束力がなく、相手方が交渉に応じなければ、借金を減らすことは不可能となります。
また、任意整理の手続きをした情報はいわゆるブラックリストと呼ばれる信用情報に記載されるため、5年ほどの期間は新たな借り入れやクレジットカードの契約が制限されます。
個人再生のデメリット 住宅ローンが全額残る
個人再生は、大幅な借金の減額が可能になる反面、住宅ローンに関しては一切の免除がない点が大きなデメリットです。加えて、返済計画どおりに借金の支払いができなくなると、手続きが認められなくなる場合もあります。また、任意整理のように借金の整理を適用する借り入れ先を自分で選択することはできないため、手続きはすべての借り入れ先が対象になります。
個人再生の場合も、手続きの情報は信用情報として記録されます。そのため、10年ほどの期間は新たな借り入れやクレジットカードの契約が困難です。さらに、官報(国が発行する機関紙)に情報が記載されるため、他人に知られる可能性も高くなります(ただし、一般人が読むことはあまりないとされています)。
自己破産のデメリット 財産がほとんど処分される
自己破産の場合、借金が全額免除される代わりに、金額にして20万円を超える価値のある財産(現金の場合は、99万円を超える金額)は、原則すべて処分されてしまいます(生活するのに必要最低限の家具などは対象外)。
また、手続きを開始してから免責が認められるまでのおよそ3~6ヶ月間は、生命保険関係、旅行関係、士業関係などの特定の職業に就くことができません。
さらに、信用情報にも情報が記載されるため、5~7年、長ければ10年ほどは新たな借り入れやクレジットカードの契約が制限されます。個人再生同様、官報にも情報が記載されます。
債務整理で悩んでいるなら、抱え込まず弁護士に相談しよう
国内で借金に関する問題を抱えている人たちは、現在約200~300万人に上るといわれています。しかし、そうした人たちのほとんどが債務整理を利用することはなく、中には深く悩んだ末に、自殺などの取り返しがつかない道を選択してしまう人もいます。債務整理にはメリット、デメリットがありますが、どんなに大きな借金でも適切な手段をとれば解決できる糸口は見えてくるものです。
お金の問題は、家族や恋人、友人など親しい人に相談しにくいものですが、1人で抱え込まず、まずは債務整理に強い弁護士に相談してみてください。
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