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妊娠による産休(育休)切り|契約・派遣社員やパートの産休で知るべき知識

この記事で分かること

  • 産休を取得させることは会社の義務だが、現実には産休の申し出を理由に解雇されるケースも。
  • 産休中と産休明け30日間の解雇は法律で禁止されている。労働組合や労働基準監督署に相談を。
  • 産休取得の事実ははっきり書面に残しておけば、トラブル時に役に立つ。

産休は正社員だけでなく契約社員・派遣社員・パート社員など誰でも取得できます。もし産休を理由に解雇される、あるいは産休の解雇制限期間中に解雇されるといったトラブルにあったら、一人で解決しようとせず、労働組合・専門機関・弁護士に相談しましょう。

妊娠・産休をきっかけに解雇されてはいけない

結婚後も退職せず共働きを選ぶ女性が増えています。妊娠・出産・子育てと仕事の両立は、本人の努力だけでなく職場の理解と協力が欠かせません。

しかし一部には契約・派遣のような非正規の女性従業員の妊娠や産休をきっかけに解雇したり退職を勧める会社も存在するのです。

産休制度と職場の実態

産休(産前産後休業)とは妊娠した女性従業員が希望すれば取得できる休業です。期間は、産前休業は出産予定日の6週間前(双子など多胎妊娠の場合は14週間前)からで、産後休業は出産の翌日から8週間です。

産休は誰でも取得できる

産休がとれるのは正社員だけではありません。契約社員・派遣社員・パート社員の女性も取得できるのです。注意したいのは、産休中の給料の扱いです。会社は産休中の給料を支払う義務がありません。産休者は加入している健康保険から出産手当金の給付を受けるケースが多いようです。ただしパート社員など社会保険に加入していない人は給付を受けることができません。

妊娠が分かったら会社に相談すること

妊娠が分かったら、出産の予定日や産休取得の希望と期間を上司に早めに相談します。この時、出産後も働き続けたいという意思を明確に伝えることが重要です。妊娠中の働き方については、時間外労働や深夜業の制限や、経緯な業務への転換などを請求することも可能です。また、妊娠中は妊婦健康検査を受ける時間が必要になりますが、会社は検査に必要な時間を確保する義務があります。

産休を申し出たら解雇!?

女性の出産・子育てと仕事の両立をサポートするために法律で様々な取り決めがありますが、残念なことに実社会では産休切りの憂き目にあう人もいます。その一例が、産休を申し出たら解雇されたというケースです。従業員が産休を取得すると、会社にとっては長期の欠員が発生し他の従業員の業務負担が増えます。

このため会社は、出産する女性には辞めてもらい、休まず働ける代わりの従業員を雇いたいと考えることがあるのです。産休を申し出たら解雇された、あるいは退職を勧められたというケースは少なくありません。

切迫流産で仕事を休んだら解雇!?

妊娠は様々な体調の変化を伴います。個人によって症状は異なりますが、入院が必要になる切迫流産になる人もいます。このように妊娠による体調の変化で長期間休んだ場合、上司が解雇や退職の話を切り出すケースがあります。就業規則の病気欠勤に関する規定をそのまま当てはめ、「休んだ日数が所定の期間に到達すれば退職してもらうことになる」と持ちかけてくるのです。

ワンポイントアドバイス
働く女性の妊娠・出産をサポートする法律は、当事者になるまでよく分かっていない人がほとんどです。不当な扱いを受けても、法律の知識がなければ泣き寝入りするしかありません。まずは正しい知識を身につけることから始めましょう。

もし産休・育休を理由に切られたら会社に解雇撤回を求める

では、もし産休を理由に解雇されてしまった場合、どのように対処すればいいのでしょうか。ここでは会社側に解雇を撤回させたい時の対抗策を説明します。

妊娠した女性の雇用は法律で守られている

会社側にとって女性の妊娠・出産は、「働き手が減るリスク」とも言えます。しかし妊娠・出産する女性の雇用はきちんと法律で守られています。

産休を取得させることは会社の義務

労働基準法第65条は、出産前後の女性従業員が希望した場合、会社は産前6週間(双子など多胎妊娠なら14週間)の休業を与えなければならないと定めています。

また、産後8週間はたとえ女性従業員が希望しても就労させることはできません。つまり、産休の取得を認めることは会社に課された義務なのです。

出産前後の解雇は禁止

労働基準法第19条は、産休中(産前6週間と産後8週間)と産休明けの30日間は従業員を解雇することを禁止しています。ただし、天変地異など止むを得ない理由で会社の事業を続けられなくなった時は例外とされています。

出産を理由に解雇されそうになったら、機関に相談

出産を理由に解雇されそうになったり、産休を認めてもらえない事態が生じた場合は、労働組合や労働基準監督に相談できます。

労働組合に相談する

もし「うちは産休制度がないから辞めてもらう」と言われたり、法律上の解雇制限期間中に解雇を言い渡されても、法律に基づき解雇は無効だと会社側に対抗しましょう。しかし1人の声だけではまともにそれでも取り合ってもらえないかもしれません。その場合は加入している労働組合に相談し、組合から会社側に掛け合ってもらうと有効です。

労働基準監督署に相談する

労働組合に入っていない、または労働組合がない人は、最寄りの労働基準監督署に相談するのがおすすめです。労働基準監督署は解雇が法律に違反する疑いがある場合、会社に対し是正指導を行います。相談の際は、会社から渡された解雇通知書や本人と会社の間でどのような話をしたかの記録を持参するとスムーズです。会社側がどのような理由で解雇したか、いつ話があったか、などの情報を整理しておきましょう。

妊娠・出産・育児中の社員の解雇が可能な場合もある

注意したいのは、産休中と産休明けの30日間は解雇が制限されていますが、妊娠〜産後の従業員が解雇を言い渡される可能性はゼロではないということです。男女雇用機会均等法第9条は、妊娠中や産後1年以内の女性従業員に対し妊娠・出産・産休取得を理由に解雇することを禁止しています。

しかし解雇の理由が妊娠・出産・産休取得以外であると証明できる場合は、妊娠中や産後1年以内でも解雇が可能です。具体的には、会社の経営不振などで他の社員と同様にリストラの対象とした場合などです。リストラに客観的・合理的な理由があれば「産休切り」にはなりません。

ワンポイントアドバイス
困った時に親身になって対処してくれる味方が欲しい時は、労働問題に強い弁護士に相談してみるのも一つの方法です。無料相談を行なっている弁護士もいるので、上手に活用してみてください。

産休取得による解雇を未然に防ごう

これから妊娠を望む女性の中には、産休切りに遭わず働き続けることができるか不安な方もいるでしょう。特に妊娠中は心身の健康を重視すべき時期ですから、雇用をめぐるトラブルは回避したいものです。

事前に知識をつけていざという時の対策を

自分の身を守るためには事前に知識をつけておくことです。まずは職場で周りの産休経験者を探し、トラブルがなかったか、会社との交渉はどのような点に注意すればいいかなどを聞いておきましょう。産休経験者がいない場合は次のような点に留意してください。

産休取得の事実を書面に残す

万が一産休中に解雇されても後から無効にするためには、産休を取得する期間はいつからいつまでなのか、明確に記録しておくと役立ちます。産休期間は口約束だけにせず、産前産後休業届けを作成して期間を明記しておきます。

退職を勧められても承諾しない

男女雇用機会均等法は、女性の出産を理由に退職を推奨してはならないと定めています。上司から「中途半端に仕事をせず、出産に専念するべきだ」と言われても、それは法に反する行為です。妊娠した女性従業員に産休を与えることは会社の義務で、希望すれば必ず取得できるということを説明しましょう。

ワンポイントアドバイス
これまで産休を取得した前例がない会社や立ち上げたばかりの小規模事業者などは、産休制度を正しく理解していないケースもあります。女性のキャリアにおいて出産は切っても切れないテーマで、産休は女性の雇用継続のためには非常に重要な制度です。

産休切りの危機が終わっても育休トラブルに注意

妊娠・出産の後には、当然ながら子育てが待っています。産休が明けるとそのまま育休に入るケースが一般的ですが、無事に産休を乗り切っても育休中に雇用トラブルに見舞われる可能性はゼロではありません。

育休制度と育休切り

育休(育児休業)とは、1歳未満の子どもを抱える従業員が育児のために仕事を休業できる制度です。会社は取得を希望する従業員に育休を与える義務があります。

育休が取得できる人の要件

育休と産休との違いは、取得できる人の要件が定められていることです。例えば契約社員は1年以上雇用されていれば育休を取得可能ですが、子どもが1歳6か月になるまでに契約更新されないことが明らかな人は対象外となります。

育休取得を理由にした解雇は禁止されている

育児・介護休業法は、育休取得を理由に従業員を解雇することを禁止しています。会社の経営状態が悪く人員をカットすることになっても、「育休で働けないから」という理由で解雇する「育休切り」は認められないのです。しかし実態としては、企業は育休を表立った理由とせず、「勤務年数や成績などを総合的に判断した」として解雇する傾向があります。

ワンポイントアドバイス
「会社はそうは言わないが、自分は育休取得で解雇されたのではないか」と思う方は、労働組合、労働基準監督署、弁護士などに相談してみてください。

1人の力では解決できない問題も、労働分野の知識と経験が豊富な弁護士なら一人一人のケースにあった最善の対処法を提案してくれます。困った時は弁護士に相談してみてください。

残業代未払い・不当解雇など労働問題は弁護士に相談を
  • サービス残業、休日出勤がよくある
  • タイムカードの記録と実際の残業時間が異なる
  • 管理職だから残業代は支給されないと言われた
  • 前職で残業していたが、残業代が出なかった
  • 自主退職しなければ解雇と言われた
  • 突然の雇い止めを宣告された
上記に当てはまるなら弁護士に相談