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妊娠を伝えたら、契約は更新できないと言われた
安定期に入って、そろそろ報告しようと決めた。上司に伝えた数日後、呼び出されて告げられたのは、来期の契約は更新できないという話でした。報告した数日後です。それまで更新を疑ったこともなかったのに、話が急に変わりました。
この順序を、偶然として片づけないでください。報告さえしなければ更新されていたのではないか。その疑いには、根拠があります。そして、その疑いは法律の枠組みのなかで主張できます。
あるいは、産休に入る直前になって解雇を通知された。育休から戻ろうとしたら、戻る席はないと言われた。準備を整えて休みに入ろうとした矢先の通知は、こたえます。心の準備も、生活の準備も間に合いません。それでも、打てる手は残されています。告げられた日から数日が勝負になります。
いずれも、実際に起きている話です。そして、こうした扱いを受けた方の多くが、仕方のないことだと受け止めてしまいます。
これから出産を控えているのだから、争っている場合ではない。そう考えて飲み込んでしまいます。その気持ちは分かります。ですが、飲み込んだ結果として失うものは小さくありません。
収入も、復職の道も、休業中の給付も、まとめて失われます。金額に換算すれば、相当な規模になります。育児にかかる費用を考えれば、なおさら軽く扱えません。
そうではありません。妊娠や出産、産休や育休の取得を理由とする解雇は、法律ではっきりと禁じられています。
それだけではありません。妊娠中と出産後一年を経過しない間になされた解雇は、原則として無効とされます。まず無効という結論があり、そこから会社が覆しにいく。そういう構造になっています。
通常の解雇とは、出発点がまるで違うのです。この違いを知っているかどうかで、会社への伝え方も変わります。強い立場から話せるということです。
覆すには、会社の側で妊娠とは無関係の理由によるものだと示さなければなりません。この証明は、決して簡単ではありません。証明する責任が会社にある。この一点だけでも、立場は大きく違ってきます。
あなたが妊娠を理由だと証明しなければならない、という順序ではありません。体調がすぐれない時期に、証明の負担まで背負わずに済みます。制度がそこまで配慮しているということです。使わない手はありません。
つまり、この時期のあなたは、法律上とりわけ強く守られている立場にあるということです。ほかのどの場面よりも手厚い、と言ってもよいでしょう。
母体と子を守るという趣旨が、そこまで強く働いています。働く人の権利であると同時に、社会全体の要請でもあります。
ですから、会社の都合で押し切れるものではありません。ですから、告げられたその日に諦めてしまうのは、あまりにもったいないことです。
むしろ、争える余地がこれほど広い場面はそう多くありません。知らずに諦めるには、惜しすぎる立場です。まずは何に守られているのかを知ってください。知れば、伝える言葉も見つかります。根拠を示して話せば、相手の態度も変わります。
この記事では、法律の定め、有期契約で働く方の扱い、会社が持ち出してくる別の理由、告げられた直後にすべきこと、撤回を求める進め方、そして争いながら生活を守る方法をお話しします。
むずかしい言葉は避けて書きました。条文を覚える必要はありません。何に守られているのかが分かれば十分です。気分がすぐれないときは、関心のあるところだけ目を通してください。
いま告げられたばかりの方は、手順の章から先に読んでください。署名する前に読んでいただけたなら、それだけで価値があります。
出産を控えた大切な時期です。ひとりで抱え込まず、まず状況を整理してください。整理といっても、日付と出来事を並べるだけで足ります。その一枚が、後の相談でそのまま使えます。弁護士に事情を伝える時間も短くて済みます。短く済めば、そのぶん中身の相談に時間を使えます。
この時期の解雇は原則として無効になる
まず、保護の中身を確かめておきましょう。三つの定めが重なって働いています。
それぞれ根拠となる法律が異なりますが、覚える必要はありません。三つあるという事実だけ、頭に入れておいてください。重なっているぶん、守りは厚くなります。順に見ていきます。
ひとつめの定めが、理由による禁止です。妊娠したこと、出産したこと、産前産後の休業を請求または取得したこと。これらを理由とする解雇は禁じられています。解雇だけでなく、降格や減給、望まない配置転換も同じように禁じられています。
賞与の算定で不利に扱うことや、契約を更新しないことも含まれます。不利益な扱いという言葉は、広く捉えられています。就業環境を悪くする言動も、これに含まれます。
育児のための休業を申し出たこと、取得したことも同じです。時間外労働の免除を求めたこと、短時間勤務の制度を利用したことについても、不利益な扱いは許されません。制度を使ったことで損をするのであれば、制度そのものが意味を失ってしまうからです。
使える制度として置かれている以上、使ったことを咎められる筋合いはありません。ここは、遠慮の要らない場面です。
迷惑をかけているという負い目を、持つ必要はありません。制度は、使われることを前提に作られています。
二つめの定めが、時期による保護です。妊娠中の女性と、出産後一年を経過しない女性に対してなされた解雇は、無効とされます。妊娠を報告していたかどうかも問われません。事実として妊娠中であれば足ります。
報告する前に告げられた場合でも、保護は働きます。後から妊娠していたことが分かった場合も同じです。
時期に着目した保護だからです。ここが強力なところです。理由が何であれ、まずは無効という結論から出発します。
争いの出発点が有利だということです。ここまで強い立場に置かれる場面は、労働の分野でも限られています。この立場を、自分から手放さないでください。手放す唯一の方法が、自ら辞めると言うことです。逆に言えば、言わなければ守られ続けます。
会社がこれを覆すには、妊娠や出産とは関係のない理由によるものであることを示さなければなりません。そして、その理由が本当に妥当なものかどうかも、あわせて問われます。
形だけ別の理由を掲げても、それだけでは通らないということです。掲げた理由の中身まで踏み込んで見られます。ですから、説明を求めることに意味があります。
三つめとして、産前産後の休業期間と、その後の三十日間についても解雇が制限されています。この期間中は、原則として解雇できないという定めです。休んでいる間に一方的に切られることを防ぐための仕組みです。
戻ってきたら席がなかった、という事態を防ぐ意味もあります。安心して休めるようにするための定めです。
休む前に確かめておくと、心づもりができます。これら三つが重なって働きますので、この時期の解雇はきわめて認められにくいと言えます。
会社の側から見れば、極めて分の悪い場面だということでもあります。だからこそ、次にお話しするような別の理由を掲げてきます。
その理由が本物かどうかを、こちらから確かめていくことになります。尋ねてみると、説明が揺らぐこともあります。そのやり取りも、記録に残しておいてください。
有期契約の雇止めも同じように守られる
次に、期間の定めがある契約で働く方についてです。そして、いちばん諦められやすい形でもあります。
ですから、丁寧に説明しておきたいところです。諦めるかどうかは、知ったうえで決めてください。知らずに諦めるのとは、意味がまったく違います。
契約期間が満了するのだから仕方ない。そう説明されることがありますが、必ずしもそうではありません。この説明を受けて諦めてしまう方が、本当に少なくありません。
期間が決まっていた以上、仕方ないと思ってしまうからです。ですが、期間の定めがあることと、更新しないことが自由であることは別の話です。期間が来たから終わり、とは限りません。これまでの経緯によって、結論は変わってきます。
まず、これまで何度も更新されてきた、あるいは更新が当然のこととして扱われてきた。そうした事情があれば、更新されると期待することに理由があると評価されます。
更新の手続きが形だけだった、契約書を交わさないまま続いていた。そうした事情も同じ方向に働きます。会社自身が期間を重視していなかったことの表れになるからです。
更新のたびに何をしていたかを思い出してみてください。書類を交わした記憶がないのであれば、それも一つの事実です。その場合、更新しないという扱いにも、解雇と同じように合理的な理由と相当性が求められます。
加えて、妊娠や出産を持ち出して更新を打ち切るのであれば、それは法律が許していない不利益な扱いそのものです。
ここで確かめてほしいのが、時期の重なりです。妊娠を報告した直後に更新しないと告げられたのであれば、その符合は偶然とは言いにくいでしょう。
それまで何の問題もなく更新されてきたのに、報告した途端に方針が変わった。その順序に意味があります。報告した日と、告げられた日。この二つを正確に押さえてください。
手帳や母子健康手帳を見返せば、日付は特定できるはずです。受診の記録から、報告した時期をたどることもできます。
これまでの更新の回数、通算して働いてきた期間、更新の手続きが形式的だったかどうか。これらを整理しておいてください。担当者から今後も続けてほしいと言われていたのであれば、それも書き留めておきましょう。
言われた時期と場面まで思い出せると、なお説得力が増します。面談の場だったのか、日常の会話だったのかも書き添えてください。同席者がいたのであれば、その名前も控えておきましょう。
あわせて、同じ時期に他の方の契約がどう扱われたかも見ておきましょう。自分だけが更新されていないのであれば、有力な材料になります。同僚に尋ねられる状況であれば、確かめてみる価値があります。
ほかの方は全員更新されているのに自分だけ、という状況であれば、説明を求める根拠になります。
期間の途中で終わらせられた場合は、さらに厳しく判断されます。約束した期間を一方的に破ることになるからです。契約書を開いて、期間がいつまでと書かれているかを確かめてください。
期間が残っているのであれば、争える見込みはさらに高くなります。途中で終わらせるには、より重い理由が必要とされるからです。残っていた期間の賃金を求められる場合もあります。
妊娠・出産をめぐる解雇を制限する決まりを、表にまとめました。
| 決まり | 内容 |
|---|---|
| 労働基準法19条 | 産前産後休業の期間と、その後30日間は解雇できない |
| 男女雇用機会均等法9条3項 | 妊娠・出産、産休の取得などを理由とする解雇その他の不利益な扱いを禁止 |
| 男女雇用機会均等法9条4項 | 妊娠中と出産後1年以内の解雇は、会社が妊娠などを理由とする解雇でないと証明しない限り無効 |
| 育児・介護休業法10条 | 育休の申出や取得を理由とする解雇その他の不利益な扱いを禁止 |
とくに9条4項は、証明の責任を会社に負わせている点が大きな意味を持ちます。「能力不足だ」「業績が悪い」と会社が主張しても、それが本当の理由であることを会社の側が示さなければなりません。
会社が持ち出してくる別の理由
会社も、妊娠を理由にしたとは言いません。別の理由を掲げてきます。禁じられていることを知っているからこそ、別の看板を立てるのです。四つの型に分けて見ていきます。いずれも、実際によく持ち出される説明です。
言われた覚えがあるものを、確かめながら読んでみてください。複数を組み合わせて説明されることもあります。
もっとも多いのが、業績の悪化です。人員を減らさざるを得ない、という説明です。数字を示されると、反論しにくく感じるかもしれません。
ですが、赤字であることと、あなたを選んだことは別の問題です。なぜ自分だったのか。そこを問い返してください。答えられないのであれば、そこに弱点があります。
この場合、人員削減としての厳しい条件で判断されます。削減の必要性があったか、避けるための努力を尽くしたか、対象者を選ぶ基準が公平だったか、説明を尽くしたか。本人に落ち度がない解雇ですから、会社には重い説明責任が課されます。
この四つのうち、ひとつでも説明できなければ効力は揺らぎます。会社に対して、順に尋ねてみる価値があります。書面で尋ねれば、答えも記録として残ります。
とくに問われるのが、三つめの基準です。妊娠している方だけが対象になっているのであれば、公平とは言えません。同じ時期に何人が対象になり、そのうち何人が妊娠していたか。数字で示せると効果的です。
自分ひとりだけが対象だったのであれば、なおさらです。公平な基準による選定とは言いにくくなります。基準そのものを示すよう求めてみてください。
次に多いのが、能力や勤務態度を理由とするものです。休みが多い、以前より仕事が遅い、といった説明です。一見もっともらしく聞こえるだけに、反論しにくいと感じるかもしれません。
ですが、その中身をよく見てください。何を根拠に評価が下がったのかを尋ねれば、答えに窮することもあります。
具体的な場面を示せないのであれば、後付けの理由である可能性が高まります。いつ、どの業務について、どう問題があったのか。そこまで求めて構いません。
しかし、体調不良による欠勤や、業務の軽減を求めたことを理由とするのであれば、それは妊娠を理由とすることと変わりません。形を変えただけで、実質は同じだからです。
体調不良で休んだ日が、そのまま評価を下げる材料にされていないかを確かめてください。医師の指導に基づく措置を受けたことを理由にするのも、同じく認められません。制度を使ったことで評価を下げるのでは、制度が機能しなくなるからです。
過去に指導や注意を受けた記録があるかどうかも確かめてください。何もないまま急に評価が下がったのであれば、後付けの理由である可能性が高いでしょう。
直近の評価が悪くなっているのに、それ以前は問題なかった。その落差が、時期の重なりと結びつきます。過去の評価に関する書面が手元にあれば、比べることができます。
表彰を受けたことがある、良い評価をもらっていた。そうした記録も探しておいてください。それまでの働きぶりを示せれば、急な評価の変化が不自然に見えてきます。
三つめが、代わりの人を採用したという説明です。すでに後任が決まっているから戻る席がない、というものです。育休から戻ろうとした方が、よく告げられる言葉です。復帰の日取りまで相談していたのに、直前になって言われることもあります。
休業に入る際に代替の要員を確保するのは、会社が当然に行うべきことです。それを理由に戻る場所を失わせるのでは、制度そのものが成り立ちません。誰が休んでも代わりが要るのですから、休んだ側が席を失う理屈にはなりません。復職の際には、原則として元の職場と同じ地位に戻すことが求められています。
四つめが、本人が納得していたという主張です。辞めることに同意していた、と言われる場面です。その場では言い返せなかっただけなのに、同意したことにされてしまいます。沈黙は同意ではありません。ただ、それを示すのは後から難しくなります。
ですから、同意していないのであれば、そのことをはっきり伝え、記録に残しておく必要があります。面談の後にメールを一通送っておくだけで、状況はまるで変わります。
告げられたらすぐにすること
ここからは実際の手順です。時間との勝負になりますので、順に進めてください。体調がすぐれない日は、できるところからで構いません。ただし、最初のひとつだけは必ず守ってください。
まず、その場で退職届や合意書に署名しないでください。自ら辞めた形になれば、これまでお話しした強い保護が働かなくなります。
会社があらかじめ用紙を用意して面談に臨んでくることもあります。その段取り自体が、何を狙っているかを語っています。体調が優れず判断できないので持ち帰ります、と伝えれば足ります。この一言であれば、無理に引き止められることも少ないはずです。
次に、解雇の理由を記載した証明書の交付を会社に求めてください。会社はこれに応じなければなりません。
求めるときは、口頭ではなく文書か電子メールで行ってください。求めた事実そのものが記録になります。
この書面があると、会社が後から理由を付け足すことが難しくなります。妊娠を理由にしたことを隠すために、別の理由を書いてくることもありますが、それも記録として意味を持ちます。後から説明が変わったときに、その食い違いを指摘できるからです。
三つめに、解雇の効力を認めない旨と、働く意思があることを書面で伝えてください。これを出しておかないと、受け入れたものとして扱われかねません。何も言わずに時間が過ぎるのが、いちばん不利に働きます。
内容証明郵便で出しておけば、送った日付と中身が公の記録として残ります。凝った書き方をする必要はありません。解雇には納得しておらず、引き続き働く意思があるという趣旨が伝わればよいわけです。
四つめに、経緯を時系列で書き出します。いつ妊娠を報告し、誰に伝え、その後どう扱われ、いつ告げられたのか。報告した相手が複数いるのであれば、それぞれの日付を分けて書いてください。
報告から告知までの日数が短いほど、時期の重なりは意味を持ちます。何日後だったのかを、はっきり示せるようにしておいてください。
五つめに、手元の書類をそろえてください。雇用契約書、就業規則、給与明細、会社とのやり取り。会社の設備にしかないものは、いまのうちに確保しておきましょう。
そろえておきたいものを並べておきます。
- 雇用契約書と労働条件通知書。契約の期間と更新についての定めを確かめます。
- 就業規則。休業や復職についてどう定められているかを見ます。
- 給与明細。請求の基礎になる額が分かります。
- 解雇や更新しない旨を伝える書面。日付が入っているはずです。
- 妊娠を報告した時期が分かるもの。メールや連絡の記録があれば理想的です。
- 母子健康手帳。受診の日付から、時期の対応を示せます。
すべてが揃わなくても構いません。あるものを持って相談してください。
撤回を求める進め方
材料が整ったら、会社に対して撤回を求める段階です。いきなり裁判所へ行く必要はありません。順序があります。まずは会社に直接伝えるところからです。
まずは書面での請求から始めます。妊娠を理由とする解雇は禁じられていること、この時期の解雇は原則として無効であること。これらを示したうえで、撤回を求めてください。感情を書き連ねるより、根拠を淡々と並べたほうが効きます。
会社が制度を正しく理解していないだけ、という場合もあります。根拠を示すことで態度が変わることは、決して珍しくありません。担当者が知らなかった、という結末も実際にあります。
労務を専任で担う人がいない職場では、とりわけ起きやすいことです。それでも応じないのであれば、外部の力を借りることになります。二つの道があります。
ひとつめが、都道府県の労働局です。妊娠や出産に関する取り扱いについて、会社への助言や指導を行ってもらえます。話し合いの仲立ちをする仕組みも用意されています。妊娠や出産をめぐる相談を日常的に受けている部署ですので、話が通じやすいはずです。
お金がかからず、動きも早い。最初に頼る先として向いています。電話での相談も受け付けていますので、外出がつらい時期でも使えます。
二つめが、裁判所の手続きです。短い期間での解決を目指す枠組みも用意されていますので、出産までに決着を図れる場合もあります。期日に出向く負担はありますが、事情を伝えれば日程の調整に応じてもらえることもあります。
求める内容としては、従業員としての地位があることの確認と、その間の賃金の支払いが基本になります。
解雇が無効であれば働けなかった期間の賃金が発生していることになりますので、その分も求められます。
解決の形としては、復職に至る場合もありますし、会社が解決金を支払って合意により退職するという着地もあります。どちらの形でも、法的な効力を持つ形で決着します。
どちらを目指すかは、ご自身の状況によって決めてください。出産と育児を控えた時期に、争いを長く続けることの負担も考える必要があります。代理人を立てれば、会社とのやり取りは引き受けてもらえます。負担はかなり軽くなります。
費用の心配で足が止まる方もいるでしょう。収入によっては立替えの制度も使えますので、まず尋ねてみてください。
争いながら生活を守る
最後に、当面の暮らしについてお話しします。ここが定まらなければ、争いを続けることもできません。
解雇されてしまうと、収入が途絶えます。出産の費用も、これからの育児にかかる費用も控えているなかで、これは深刻な問題です。加えて、健康保険の扱いも変わりますので、確かめておく必要があります。任意で継続する道もあれば、家族の扶養に入る道もあります。ですが、使える仕組みがあります。四つ挙げますので、当てはまるものを確かめてください。
まず、健康保険からの出産に関する給付です。出産にかかる費用を賄うための一時金は、退職していても条件を満たせば受け取れる場合があります。加入していた期間と、退職からの日数によって決まりますので、窓口で確かめてください。
次に、出産のために働けなかった期間の手当です。こちらも、退職の時期と加入していた期間によっては受け取れることがあります。受け取れないと思い込んでいる方が多い部分です。必ず確かめてください。
三つめが、失業に関する給付です。ただし、出産や育児ですぐに働けない状態にある場合は、そのままでは対象になりません。働く意思と能力があることが前提の制度だからです。
この場合、受け取れる期間を先へ延ばしてもらう手続きが用意されています。落ち着いてから受け取るという形にできます。
ただし、届け出ないまま放っておくと権利そのものが失われます。忘れずに窓口へ足を運んでください。
四つめが、解雇の効力を争っている場合の取り扱いです。争いながら給付を受けられる仕組みもありますので、あわせて確かめてください。争うか受け取るかの二択ではない、ということです。両立させられるよう、制度の側が配慮しています。
体調を最優先にしてください。手続きは代わりに進められますが、健康は代われません。無理をして体を壊せば、争う力そのものが失われます。まずは無事に出産することを、いちばんに考えてください。
妊娠や出産を理由に解雇を告げられたときの動き方は、次のとおりです。
- 解雇を受け入れない意思を、メールや書面で会社に伝える。
- 解雇理由証明書を請求する。
- 妊娠を報告した日と、その後の会社の対応を時系列で書き出す。
- 都道府県労働局の雇用環境・均等部(室)か、労働問題に取り組む弁護士に相談する。
妊娠を理由とする解雇に関するよくある質問
会社は業績が悪いからだと説明しています
その説明が通るかどうかは、厳しく判断されます。人員削減を理由とする解雇には、削減の必要性があったか、それを避けるための努力を尽くしたか、対象者を選ぶ基準が合理的で公平に運用されたか、説明や協議を尽くしたかという四つの視点が用いられるからです。とくに問われるのが対象者の選び方で、妊娠している方だけが選ばれているのであれば公平とは言えません。同じ時期に他の方がどう扱われたかを確かめてみてください。加えて、妊娠中と出産後一年を経過しない間の解雇は原則として無効とされますので、会社は妊娠と無関係であることを示さなければなりません。
契約社員です。期間満了なので争えないと言われました
そうとは限りません。これまで何度も更新されてきた、更新の手続きが形式的だった、今後も続けてほしいと言われていた。こうした事情があれば、更新されると期待することに理由があると評価され、更新しないという扱いにも合理的な理由と相当性が求められます。そして、妊娠や出産を理由として更新しないのであれば、それは禁じられた不利益な取り扱いにあたります。妊娠を報告した直後に告げられたのであれば、時期の重なりは有力な材料です。これまでの更新の回数と、通算して働いてきた期間を整理してみてください。
育休から戻ろうとしたら、戻る席がないと言われました
休業を理由とする不利益な取り扱いは禁じられていますので、そのまま受け入れる必要はありません。休業に入る際に代わりの要員を確保するのは会社が当然に行うべきことであり、それを理由に戻る場所を失わせるのでは制度が成り立たないからです。職場へ戻る際には、それまでと変わらない立場に復させることが原則として求められます。まずは復職の意思をはっきり伝え、それを書面で残してください。そのうえで、なぜ戻れないのかを書面で説明するよう求めましょう。取り合ってもらえないなら、労働局へ持ち込むという道が残っています。
争っている間の生活費が心配です
使える仕組みがいくつかあります。出産にかかる費用を賄う一時金や、出産のために働けなかった期間の手当は、退職していても条件を満たせば受け取れる場合があります。失業に関する給付については、出産や育児ですぐに働けない状態であればそのままでは対象になりませんが、受け取れる期間を先へ延ばす手続きが用意されています。この手続きを取らないと権利が消えてしまいますので、必ず窓口で相談してください。また、解雇の効力を争っている場合に給付を受けられる仕組みもあります。生活のために争いを諦める必要はありません。
