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送信防止措置依頼書とは?作成する場合のポイントを紹介
この記事で分かること
- ネット上の誹謗中傷被害の対処法のひとつが送信防止措置をとることです。
- 送信防止措置依頼書には主張する権利侵害や、侵害に当たる理由を明記する必要があります。
- 送信防止措置依頼書を出したからと言っても必ずしも応じてもらえるわけではありません。
ネット上の誹謗中傷被害の対処法のひとつが送信防止措置です。送信防止措置請求権はプロバイダ責任制限法によって誹謗中傷被害者に認められた権利です。送信防止措置依頼書を出したからと言っても必ずしも応じてもらえるわけではない点に留意が必要です。
目次[非表示]
ネット上での誹謗中傷被害の実態
ネット社会に生きる我々ですから、ネット上での誹謗・中傷を受けた経験がある人も少なくないでしょう。
この手の被害はどうしても泣き寝入りになりがちですが、実は対処法が存在するのです。そのひとつが「送信防止措置」をとることです。
送信防止措置とはどんなものなのでしょうか。ネット上の権利侵害の実情を踏まえた上で見ていきましょう。
ネット上での誹謗中傷被害が年々増えている
近年、ネット上での誹謗中傷被害が増えています。しかしインターネットのその高い匿名性ゆえに解決するのは難しく、泣き寝入りになりがちなのが実情です。
インターネットの功罪
電子メールや通信販売、ホテルの予約に情報共有SNS…。インターネットによって私たちは様々な利益を享受しているのは紛れもない事実でしょう。
しかし利便性の一方で、弊害も生み出しているのも確かです。例えばネット上での誹謗中傷問題です。
インターネットは匿名性が高く、誰でも簡単に書き込み出来てしまいます。そしてそれゆえに悪口や他を貶める投稿など、現実社会ではとても口に出せないような無責任な書き込みがなされることも少なくないわけです。
ネット上での誹謗中傷の対処は難しいので泣き寝入りになりがち
こうしたネット上での誹謗中傷被害は年々増加していますが、問題なのがこの手の被害は対処が極めて難しい点です。何故なら書き込みの発信者情報は通常のユーザーには特定できないためです。
サイト管理者に依頼し、削除してもらえればそれでよいのですが、必ずしも申請が通るわけではありません。管理者としても何でもかんでも削除していたらサイト利用者が減ってしまうので、応じてもらえないこともあります。
送信防止措置で対処が可能!
けれども、実は諦める必要はありません。対処法が存在します。そのひとつが近年制定された“プロバイダ責任制限法”に基づいて「送信防止措置」をとることです。
送信防止措置とは
近年のこうしたネット上の誹謗中傷の実情を受けて2001年に新たに「プロバイダ責任制限法」が制定されました。この法律はプロバイダの責任を制限し、被害者側が発信者情報の開示請求をする権利について規定したものです。
サイト管理者に削除依頼をしたのに応じてもらえなかった場合、この法律に基づいて“送信防止措置”をとることが可能なのです。
プロバイダに依頼書を送り応じてもらえれば投稿を削除してもらえる
送信防止措置をとるためにはプロバイダ側に送信防止措置依頼書を送らなければいけません。プロバイダが依頼に応じてくれれば、書き込みは削除されることとなります。次章から送信防止措置依頼書について詳しく解説していきます。
送信防止措置依頼書~プロバイダ責任制限法との関係~
一昔前まで一旦ネット上に誹謗中傷が投稿されれば対処は極めて困難で、事態の収拾はまず不可能とされていました。
しかし2002年5月から施行されたプロバイダ責任法により、被害者は送信防止措置で解決を図ることが可能になったのです。
送信防止措置を行える根拠や、依頼書作成の基本について解説します。
プロバイダ責任制限法とは
送信防止措置は、プロバイダ責任制限法に基づく措置です。ですから送信防止措置依頼書の書き方の前にそもそもプロバイダ責任制限法とはどんなものなのか押さえておく必要があります。
発信者情報の開示について一律の基準を設けた
これまではネット上で権利侵害があった場合の発信者情報の開示について明確な法規定はなく、賠償責任の所在も曖昧でした。ですからプロバイダ側も対処に困っていたのです。
と言うのも明確な法規定がないため、発信者情報の開示要請を拒否すれば被害者から、要請に応じれば逆に発信者に訴えられる可能性があったからです。
しかしプロバイダ責任制限法が制定され、発信者情報の開示について一律の基準が設けられたのです。
被害者に発信者情報の開示請求権と送信防止措置請求権を認めている
そしてこの法律では被害者に「発信者情報開示請求権」の他、「送信防止措置請求権」を認めています。
発信者情報開示請求権とは読んで字のごとく、誹謗中傷する書き込みを行った発信者の情報(氏名や住所・登録されたメールアドレス電話番号など)の開示をプロバイダに請求する権利で、送信防止措置請求権とは誹謗中傷記事を削除するようプロバイダに請求する権利です。
共に誹謗中傷侵害が明らかである証拠が存在する場合のみに行えます。発信者情報開示請求が差し止め・賠償請求のために行うものであるのに対し、送信防止措置依頼は差し止めのために行うものである点が両者の違いと捉えて差支えないでしょう。
送信防止措置依頼書を作成する上で基本となること
次に、送信防止措置依頼書を作成する上で基本となるポイントについて見ていきましょう。
主張する権利侵害は何かを明確にする
まず、どんな権利を侵されたのかを明確に記す必要があります。
ネット上の書き込みトラブルでは著作権の侵害などもよく問題となりますが、誹謗中傷なら「名誉棄損」や「侮辱罪」あるいは「プライバシーの侵害」のいずれかが争点になることがほとんどでしょう。
権利侵害に当たる理由も記載する
そして当然ながら権利を侵されたとするならば、その理由も必要です。
例えば名誉棄損を主張する場合その成立要件は“公然と事実を摘示し、人の名誉を毀損”すること(刑法第230条)ですから、「会社の金を横領した」と書き込みをされ社会的名誉を貶められた、などと記載するわけです。
送信防止措置依頼書の作成方法は
このように、送信防止措置依頼書をプロバイダに送ることで削除に応じてもらうことができます。しかし、ただ単に依頼書を出せばよいというものではなく、依頼書作成のポイントが存在します。
ここでは誹謗中傷の書き込みを削除してもらうための送信防止措置依頼書の作成方法におけるポイントや注意点を具体的に解説します。
送信防止措置依頼書には何を書けばよいのか
依頼書をプロバイダに送ることで誹謗中傷が書き込まれた記事の削除をしてもらえる可能性があるわけですが、送信防止措置依頼書を作成した経験がある人は少ないでしょう。
そこでまず送信防止措置依頼書に記載すべき内容を詳しく紹介します。
被害者の情報、権利侵害の事実を証明する情報が必要
送信防止措置を依頼するには被害者の情報も記載しなければなりません。ですからまず
- 申請人の氏名・住所・連絡先
は必要になります。
そして権利侵害の事実をプロバイダ側が確認するための情報として
- 誹謗中傷記事のURL、もしくは該当画面のキャプチャ
- ページのタイトル(ブログならブログ名、掲示板なら掲示板名)
- 該当箇所(権利侵害があるのはどの行のどの箇所か)
も必須です。
加えて前述の通り
- 主張する権利侵害は何か
- その根拠
も記載しなければなりません。
送信防止措置依頼書に関して気を付けるべきポイント
次に、送信防止措置依頼書に関して気を付けなければならないポイントを見ていきましょう。
主張する権利侵害と侵害を主張する根拠の整合をとる
送信防止措置依頼書作成における最大のポイントは、主張する権利侵害とそれを主張する根拠の整合をとることです。
例えば、プライバシーの侵害を主張しているにも関わらず、権利侵害の理由として“自分が書いた絵を無断で使用された”などと著作権違反の要件を記載した場合、整合がとれなくなってしまいます。
主張する権利侵害と侵害を主張する根拠に整合性を持たせるよう記載することが大切なのです。
依頼書の送付方法はプロバイダによって異なる点に注意
また依頼書の送付方法は、プロバイダによって異なる点に注意が必要です。サイトの問い合わせフォームからの受付のみのプロバイダもあれば、送付を郵送に限定しているところもあります。必ず指定された方法を確認するようにしましょう。
送信防止措置依頼書に関して知っておきたいこと
ここまでをまとめると「ネット上の誹謗中傷被害に遭っても泣き寝入りする必要はない。対処法のひとつがプロバイダ責任制限法に基づいてプロバイダに“送信防止措置依頼書”を送り該当記事の削除をしてもらうこと。送信防止措置依頼書には主張する権利侵害や、侵害に当たる理由を明記する必要がある。依頼書作成において最も重要な点はこれらに整合性を持たせるよう記載すること」となります。
最後に送信防止措置依頼書の作成において知っておきたいポイントを解説します。
依頼書を送れば必ず削除してもらえるわけではない
送信防止措置依頼書を送るに際して事前に必ず知っておくべき点、それは「依頼書をプロバイダに送ったからといって必ずしも削除に応じてもらえるわけではない」点です。
プロバイダに送信防止措置依頼に応じる義務はない
一般的に送信防止措置依頼書を受けたプロバイダは、削除依頼が来た旨を書き込み主に通知、該当箇所の削除に対する意思確認をします。
そして同意を得れば約1週間を目途に措置を講じます。
しかしながら実はプロバイダ責任制限法では送信防止措置依頼に対応する義務は定められていないのです。
削除に応じてもらえないことも
つまり最終的に記事を削除するか否かの判断はプロバイダに委ねられているのです。従って削除に応じてもらえないこともあります。例え該当記事が実際に権利侵害に該当するものであっても、です。
送信防止措置依頼書は自分でも作成可能だが弁護士に依頼するのも手段
ここまでの解説の通り、送信防止措置依頼書の作成そのものは特段難しいわけではなく、法的知識に乏しい素人でも独力で行えます。とは言え、不備があれば依頼に応じてもらえる可能性が下がるので弁護士に依頼するのも手です。
権利に関する法律は複雑
既に説明した通り、送信防止措置依頼書作成で肝心なのは主張する権利侵害とその根拠の整合をとることです。
しかしそのためには根拠となる法律を把握しておかなければなりません。特にこの辺りの権利に関する法律は成立要件も複雑で、免責要件も存在します。ですから素人ではどこが権利侵害に当たり、それによりどのような被害が生じているのかを法律に基づいて理論立てて記載するのは難しい場合があります。
けれども弁護士に依頼した方が確実に抜けのない依頼書を作成可能なので、削除に応じてもらえる可能性が高まります。
送信防止措置を依頼するなら弁護士に相談を
送信防止措置の効果は記事の削除だけではありません。送信防止措置を依頼すると、発信者の元に記事削除に対する意思を問う通達が届くわけですが、これにより被害者側の覚悟を示すことができます。そしてその結果、発信者が更なる誹謗中傷の書き込みを躊躇する可能性が高まります。
もし、あなたがネット上で誹謗中傷被害に遭ったら、弁護士に相談・依頼することをおすすめします。送信防止措置をふくめ、問題解決に必要な対応を行ってくれるでしょう。