忘れられる権利とは?日本でも認められる?

この記事で分かること
  1. ネットの検索結果に特定の情報を表示させない措置を請求する権利がある。
  2. 日本ではプロバイダ責任制限法により権利侵害の書き込みやプライバシー情報の削除依頼ができる。
  3. 誹謗中傷・プライバシー侵害被害に遭ったら、自力で何とかしようとせず、プロに任せる方がよい。

忘れられる権利とはネットの検索結果に特定の情報を表示させない措置をとるよう請求する権利ですが、「表現の自由」や「知る権利」との兼ね合いが難しく日本では議論が成熟しにくい状態にあります。我が国では、プロバイダ責任制限法により権利侵害の書き込みやプライバシー情報の削除依頼をする権利が認められています。誹謗中傷・プライバシー侵害被害に遭ったら弁護士に相談するのが得策です。

忘れられる権利とは

『忘れられる権利』をご存知でしょうか。忘れられる権利とはインターネット上のプライバシー保護のあり方についての概念で、その必要性などについて近年議論が繰り広げられています。まずは忘れられる権利について大まかに解説します。

プライバシー保護の必要性が叫ばれている

インターネットは今や私たちの暮らしに欠かせないものです。しかし、同時に深刻なプライバシー侵害を引き起こしているのも事実です。

そこでプライバシー保護の観点から提唱されている考え方が、“忘れられる権利”です。まずはその必要性が訴えられる背景と共に、忘れられる権利について説明します。

一度ネット上に掲載された情報は自動的に消えることはない

インターネット上に流された情報は自動的に消えることはありません。

例えば特定個人が犯罪行為をした事実がひとたびネットに晒されれば、その情報は半永久的に掲載され続けます。そして、検索すれば誰でも当該情報にたどり着くことできるので、就職や結婚の際に不利益を被る可能性があります。

つまり、一旦ネットに書き込まれたネガティブな情報は、書き込み対象の人物を長きに渡って苦しめ続けるのです。

そこで提唱されているのが「忘れられる権利」

そこで、検索結果に特定の情報を表示させない措置をとってもらう権利の必要性が叫ばれています。

それが近年提唱されている「忘れられる権利」です。

「表現の自由」や「知る権利」との兼ね合いが難しい

プライバシー保護の必要性がある一方で、「表現の自由」や「知る権利」といった守られるべき既存の権利も存在します。この辺りのバランスをいかにとるかが議論されているのです。

「表現の自由」「知る権利」とは

プライバシーの保護も大切ですが、これと相反する位置関係に「表現の自由」や「知る権利」が存在します。これらはあらゆる見解を検閲・抑制されることなく表現し、知る権利です。

ネット上の情報には個人情報でありながら社会利益に資するものが存在するので、「表現の自由」や「知る権利」は守られるべきといえます。

例えば性犯罪など再犯率が高い罪を犯した人物の個人情報を公開することは、公の利益にズバリかなっているのです。

安易に措置をとるとこれらの権利を侵しかねない

しかし、忘れられる権利を認め、安易に検索結果に特定の情報を表示させない措置をとってしまうと、表現の自由や知る権利を侵害することになり兼ねません。

そこで忘れられる権利を認める必要があるのか、また仮にあるならば表現の自由や知る権利とのバランスをいかにとるかが議論されているわけです。

ワンポイントアドバイス
忘れられる権利とはネットの検索結果に特定の情報を表示させない措置をとるよう請求する権利ですが、「表現の自由」や「知る権利」との兼ね合いが難しく必要性について議論されています。

忘れられる権利 日本でも認められる?

忘れられる権利は「消去権」「削除権」「忘却権」とも呼ばれますが、これを認めるか否かは、現代のこのインターネット社会の在り方全体に大きな影響を与えます。ここでは忘れられる権利の日本における位置づけを、海外のそれと比較しながら掘り下げてみましょう。

欧州における忘れられる権利の位置づけ

忘れられる権利の概念はEUで生まれたものであり、欧州ではその権利が認められるケースも多いです。

欧州では権利が明文で規定されている

そもそも、忘れられる権利はEUで発祥した概念です。2016年に忘れられる権利を明文で規定した“データ保護規則案”が制定、2018年に施行されています。

欧州では認められるケースも多い

2014年にはEU司法判断所が忘れられる権利を許容する判決が出ています。

このケースはスペイン人男性が16年前の1998年に社会保障費の滞納によって家を競売にかけられていた事実が記載されたページへのリンクの削除を求めたもので、裁判所は原告の訴えを認めGoogleに対しリンクの削除を命じています。

またフランスの女性が、昔撮影したヌード写真が氏名と共に流布され続けていることに対してGoogleに削除を求める訴訟を起こした事例でも原告女性の勝訴、Googleが当該データの削除を命じられています。

明確な法規定が存在しない日本では忘れられる権利を認めないケースが多い

一方日本では忘れられる権利についての法規定は存在せず、判例は割れています。

2014年には忘れられる権利を認めた事例も―Googleに削除措置命令

例えば東京地方裁判所は2014年にGoogleに検索結果から削除を命ずる仮処分を出しています。

これは自分の名前を検索すると、過去に犯罪行為をしたかのように連想させる投稿記事が多数表示され人格権が侵害されているとの主張の元、日本人の男性が米グーグルに検索結果を削除するよう求めていたものです。

しかし2016年には忘れられる権利を認めない判断も―削除を認める地方裁判決を棄却

2015年さいたま地方裁判所が出した過去の逮捕歴が表示される検索結果の削除を認める判決を出しますが、翌2016年東京高等裁判所はこの判決を取り消しています。

「法的に定められたものではなく要件や効果が明確でない」とし、「忘れられる権利」に基づく申し立ては従来の名誉毀損やプライバシー侵害に基づく申し立てと変わらず、これを他の権利から独立して判断する必要はないとの判断を下しています。

日本での忘れられる権利の位置づけ

以上のように日本においても忘れられる権利が認められる判決はあるものの、今一つ議論が成熟しにくいのが実情といえます。

自主的な措置が講じられているため忘れられる権利についての議論が成熟しにくい

既に解説の通り、欧州では一定の条件を満たせば忘れられる権利が認容され、法的拘束力で保障されるものとなっています。

他方、我が国ではプロバイダ責任制限法に基づいてページの削除・非表示といった措置がプロバイダによって適宜取られています。またプロバイダだけでなく検索エンジンもネット上のプライバシー侵害問題への対策を講じています。それゆえに今ひとつ議論が進まないのが実際のところなのです。

例えばGoogle検索では、“Googleからの情報の削除”と題し、削除できる情報や削除申請の方法などを記載したウェブページを設けています。Yahoo!Japanにしても公式ページ内に検索結果に情報を表示しないようにする方法を記載しています。

措置をとっても解決しない場合訴訟で解決

こうした救済方法はあくまでも被害者自身が能動的にアクションを起こすことを前提としています。

自主的な対処をしても解決に至らない場合には、権利侵害被害者は訴訟を起こし事態の収拾を図ることとなります。

ワンポイントアドバイス
日本では欧州と比べ、忘れられる権利についての議論は進んでいません。

忘れられる権利-日本でプライバシー侵害の書き込みを消去するには

我が国では議論が成熟しにくい状況にありますが、プロバイダ責任制限法によって削除依頼する権利が被害者には認められています。ですから日本においても情報を削除することが可能です。

そこで、インターネット上の情報を削除する方法やその際の注意点について解説します。

日本では被害者に削除請求権が認められている

忘れられる権利は、いうなれば“検索されない権利”であり、人々が特定の情報にたどり着きにくくすることを目的とした権利といえます。

日本では忘れられる権利についての議論は進んでいないものの、この目的を叶えるための権利は存在します。それがプロバイダ責任制限法に基づく“送信防止措置請求権“です。

権利侵害被害者には「送信防止措置請求権」がある

プロバイダ責任制限法の中で、ネット上の権利侵害被害者には、プロバイダに対して記事の削除や非表示と言った対処(送信防止措置)を講ずるよう依頼する権利が認められているのです。この権利を『送信防止措置請求権』と呼びます。

削除請求の方法や要件は

では、削除請求するには具体的にはどうすればいいのでしょうか。手続きの方法や要件を解説します。

送信防止措置依頼書を送付する

削除依頼をするには、プロバイダに「送信防止措置依頼書」を送付する必要があります。この際のポイントは依頼書に記載する権利侵害とそれを主張する根拠に、整合性を持たせることです。

削除を要求するための要件

また、削除を要求するには次の要件を満たす必要があるので注意しましょう。

同定可能性がある

同定可能性とは“その人物であると特定できる”ことです。誹謗中傷などがあっても投稿内容が誰のことを指しているのかが分からなければ違法とは言えず、削除要求は通りません。

例えばイニシャルやハンドルネーム表記の場合、書き込み対象を特定できないので同定可能性はないと判断されます。

権利侵害の事実がある

またいうまでもなく、実際に権利侵害があることが前提となります。

違法性阻却事由がない

同定可能性があり、権利侵害の事実が存在しても当該書き込みに“違法性阻却事由”、つまり違法に当たらない事由があった場合、削除依頼は通りません。

“炎上”する可能性がない

そして措置をとることで非難や批判が殺到すれば、かえって被害が拡大することになり兼ねません。ですから“炎上”する可能性がないことも求められます。

ワンポイントアドバイス
日本ではプロバイダ責任制限法により権利侵害の書き込みやプライバシー情報の削除依頼ができます。

誹謗中傷・プライバシー侵害被害に遭ったら弁護士に相談を

つまり、日本では忘れられる権利については認められないケースが多いもののプロバイダ責任制限法により権利侵害の書き込みやプライバシー情報の削除依頼ができるわけです。

この手の問題の解決は素人には困難なのが実際です。ですから誹謗中傷・プライバシー侵害被害に遭ったら弁護士に相談するのが得策でしょう。

送信防止措置依頼をしても解決に至らないことも

まず押さえておくべきが、送信防止措置依頼をしても解決に至らないケースも少なくない点です。

依頼しても必ずしも応じてくれるわけではない

プロバイダ責任制限法に基づく送信防止措置依頼をすれば、措置に応じてくれることもあります。ところが送信防止措置依頼をとったからといって必ずしも解決に至るとは限りません。

というのも、プロバイダ責任制限法ではプロバイダ側が削除に応じる義務については触れていないためです。

解決に至らない場合は訴訟を起こす

仮に送信防止措置に応じてもらえても、根本的な解決には至らないケースもあります。

というのも、送信防止措置で削除されるのは当該ページのみであり、検索窓で検索した場合の結果一覧の表示まで消去することはプロバイダにはできないからです。この場合、残る手段は検索エンジンを相手どり訴訟、を起こすことです。

弁護士に相談を

ただでさえネット上の権利侵害は、要件などに複雑な部分を含むところ、訴訟ともなれば投稿の違法性を理論立てて立証する必要があります。

法的知識に乏しい素人になせる業ではないでしょう。ですから弁護士に相談するのが賢明といえるのです。

弁護士に依頼すれば解決に至る可能性が高い

この種の問題は事態の収拾を図るのが困難です。特に、素人ではむやみやたらに効果のない対処を講じて事態を悪化させてしまうことだって十分に考え得るのです。

その点“法の番人”弁護士なら、確かな知識と豊富な経験をもって解決に運べる可能性が高いといえます。

ITに強い弁護士に依頼するのがポイント

しかしながら、注意すべき点があります。それは弁護士ならどこの事務所でもいいわけではないことです。何故ならば、法律トラブルの中でもインターネットにまつわる事案は特に高い専門性が要求されるためです。

他の分野に強くてもインターネット関連の事案を手掛けたことがない事務所の場合、満足な成果が得られないかもしれません。ですからインターネットトラブルを法的に解決するにはITに強い弁護士に依頼することが大切です。

ワンポイントアドバイス
誹謗中傷・プライバシー侵害被害に遭ったら弁護士に相談するのが得策です。

日本では被害者自らが積極的に行動するのが大切

日本では忘れられる権利についての議論がまだまだ成熟しておらず、個別の権利として確立していせん。ネット上の誹謗中傷やプライバシー侵害に遭ったら被害者自らが積極的に行動し、弁護士に相談しましょう。

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