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暴力、傷害事件で逮捕された!その後の手続きや処罰について解説

この記事で分かること

  • 逮捕後の72時間に弁護士に相談を。当番弁護士制度も利用可能。
  • 身柄を拘束されていても、弁護士と接見し、書類や物品を受け取ることは可能。
  • 起訴されるとほぼ有罪。不起訴の可能性を上げる努力が大切。

もし暴力事件や障害罪で逮捕されたら、逮捕から起訴不起訴が決まるまでの72時間の行動がとても重要になってきます。障害罪の場合、起訴されればほとんどが有罪になります。少しでも不起訴になる可能性を考え、知り合いの弁護士や当番弁護士に相談しましょう。

逮捕されてから検察へ。48時間のリミット

暴力事件に限らず警察に逮捕された場合、留置の必要があると判断されれば、48時間以内に検察に送致されます。

まずは被疑者の取調

逮捕されると、被疑者は警察で48時間以内をリミットとして取調を受けることになります。速やかに指紋を採取され、写真その他鑑識資料を作成され、余罪や指名手配の有無を照会されます。身体の拘束がされていれば、これらに令状は必要ありません。またこの期間は家族にも会うことができません。

当番弁護士制度の利用も可能

家族に会えなくても、弁護士には会うことができます。被疑者が弁護士の選任の申し出をした場合、司法警察員は直ちに指定した弁護士、または弁護士会にその旨を通知しなければなりません。警察がこの通知を果たさない間に被疑者が供述をした事件ありましたが、自白の任意性に疑いがあるとして、結果的に無罪とされた判例がありました。(大阪高判昭和35年5月26日)

。知り合いの弁護士がいなくても、身柄を拘束された直後から、当番弁護士制度を利用することができませす。当番弁護士を警察に要請すると、被疑者と接見してくれ、1回無料で相談にのってくれます。

黙秘権の告知が必要

逮捕されたら、通常は弁解を録取した後に取調が行われます。取調では、何もかも話さなければいけないわけではなく、あらかじめ、自己の意思に反して供述をしなくてもいい黙秘権があります(198条2項)。

取調と弁解の機会

逮捕された後、被疑者は弁解の機会を与えられ、その内容は弁解録取書に記載されます。

弁解の機会と弁解録取書

逮捕後、被疑者は弁解の機会を与えられます(203条1項)。取調では黙秘権があることを告知されますが、弁解では黙秘権の告知は必要ないとされています。

送検されない微罪処分 犯罪捜査規範に詳細

逮捕された場合、必ず検察に送致されるとは限りません。司法警察員が留置の必要なしと判断すれば送致はされません(203条1項)。また軽微な事件の場合は、微罪処分として身柄を釈放されることがあります。

微罪処分とは?

微罪処分とは、検察官指定事件の一つで、極めて軽微な事件について、検察への送致が免除されます(犯罪捜査規範198条)。

ワンポイントアドバイス
知り合いの弁護士がいない場合、警察に当番弁護士を要請すれば、1回だけ当番弁護士に無料で相談することができます。それ以降は費用が発生しますが、少しでも有利に事件手続きを進めるためには、弁護士に依頼することは大切です。

検察官への送致から起訴まで

事件が検察官に送致されると、検察官は通常は勾留請求をして、取調を行い起訴するか否かを決定します。

検察官送致と勾留請求

警察での捜査が終わると、被疑者は検察に送致されます。検察での捜査は原則24時間以内とされていますが、長引く場合は最大20日間の勾留処分を受けることになります。

検察官もする弁解の機会の付与

検察でも被疑者は弁解の機会を与えられます。これは被疑者の身柄をどうするか決定する上で必要なためです。

弁護士選任権の通知は義務ではない

警察に逮捕された時は、直ちに犯罪事実の要旨と弁護人の選任ができる旨を伝えられますが、検察ではその義務がないため、告げられないことがあります。

勾留請求の時間制限

検察官は被疑者を留置する必要がないと判断したときは直ちに釈放されます。逆に留置が必要な場合は、24時間以内に裁判所に勾留請求がされます。

被疑者勾留の可否

検察官から勾留請求を受ければ、裁判官は速やかに勾留状を発しますが、勾留の理由がなければ直ちに釈放されます。勾留期間は原則として勾留請求の日から10日以内ですが、やむを得ない事情がある時はさらに10日を超えない、つまり最大20日間拘留できることになります。
 

弁護士との接見

逮捕された被疑者にとって、自らを守ってくれる心強い存在が弁護士です。弁護士と接見してアドバイスを受けたりする権利は当然、認められます。

弁護人との接見交通権

身柄を拘束されている被疑者は、立会人がない状態で弁護士と接見し、書類や物品を受け取ることができます。

初回の接見は最重要!

逮捕されたばかりのときは、動揺し、また刑事事件がどう処理されていくのか分からないまま取り調べを受けることになります。そのため、事実とは異なる、または被疑者が必要以上に不利になる調書が作成されてしまうこともあります。そういった事態が起こらないように、警察の取り調べでは何を注意するべきか等も含めて、弁護士と打ち合わせをしておくことは、とても重要です。

起訴か不起訴か、決定権は検察官

勾留請求が認められた場合、身柄を拘束されたまま検察官の取調を受けることになります。検察の捜査が終われば、起訴か不起訴が決まります。これらの処分は、逮捕されてから検察に引き渡されるまでの48時間、検察での24時間以内、拘留の20日間を合わせた最大23日以内に決まることになります。

取調前の黙秘権の告知

検察官による取調に際し被疑者に対して黙秘権の告知をしなければならないのは、警察での取調と同様です。

起訴猶予の条件、その比率

勾留請求から10日以内に公訴提起しない時、被疑者は釈放されます。つまり、検察官は10日以内に起訴するか否かを決定しなければなりません。犯罪の嫌疑が十分で証拠も揃っているからといって必ず起訴されるとは限りません。犯人の性格、年齢及び境遇、犯罪の軽重及び情状並びに犯罪後の情況により起訴しない、起訴猶予処分ができます)。

ワンポイントアドバイス
警察に逮捕されたら、重要なのはできるだけ早く弁護士に相談することです。特に逮捕から72時間以内に弁護士と打ち合わせをきちんとしているかどうかで、今後の事件の結果に大きな影響を与えます。まずは冷静になって、弁護士からアドバイスを受けましょう。

簡易・迅速な手続での事件処理

すべての事件が通常第一審手続するわけではありません。事件が軽微であれば書面審理だけの略式手続きの請求ができる可能性があります。

略式手続きとは?

略式手続とは、は簡易裁判所が公判の代わりに、書面審理のみで刑罰を言い渡す迅速な裁判手続です。

簡易裁判所だけで行われる略式手続き

略式手続きは被疑者の同意を得た上で請求でき、簡易裁判所が公判手続によらずに書面審理だけで刑罰を言い渡すことができます。簡易裁判所だけで行われ、100万円以下の罰金又は科料を科すことができます。

略式手続の迅速性の限界

略式手続は通常の公判手続きよりスピーディーに事件の処理を終わらせることができ、被疑者も事件から早期に解放されるメリットがあります。規定では略式命令は、遅くとも請求があった日から14日以内にしなければならないとされています(刑事訴訟規則290条1項)。

通常審判への移行、不服の申立て

略式命令の請求があっても、すべて認められるわけではありません。不適法、不相当である場合には通常の審判が行われます。略式命令を受けた場合でも、命令を受けた者又は検察官は14日以内に正式裁判の請求ができます(465条1項)。

争いのない事件なら即決裁判手続も

即決裁判手続は手続の合理化・効率化を目的として平成16年に創設されました。簡易裁判所だけでなく地方裁判所でも行われます。

即決裁判手続にされる事件

事案が明白で軽微、証拠調べが速やかに終わることが見込まれる場合、被疑者、および弁護士の同意があれば、即決裁判手続きで審判になることがあります。原則14日以内に公判期日が開かれ簡略な証拠調べの上、その日のうちに判決されます。

懲役刑も言い渡し可、ただし執行猶予付き

即決裁判手続では略式手続と異なり100万円を超える罰金や、懲役・禁錮の自由刑が言い渡される可能性があります。ただし、自由刑には必ず執行猶予が付きます。

通常の公判手続から簡易公判手続へ

簡易公判手続制度は証拠調べ手続きを簡易化した公判手続で、昭和28年に設けられました。

簡易公判手続と即決裁判手続の違い

簡易公判手続は通常の公判手続の中で、被告人が有罪を認めた場合、簡略な証拠調べだけで事件を処理する手続きで、比較的軽微な事件について迅速な処理を図ることができます。

裁判所による取消の可能性も

簡易公判手続の決定があった場合でも、裁判所は不適法、不相当と認めた場合、その決定を取り消さなければなりません(291条の3)。不相当な場合とは、たとえば有罪の陳述が真意でないという疑いが生じた場合などです。

簡易公判手続の決定は少数

簡易公判手続の決定は少なく、あまり利用されていないと言っていいでしょう。これは即決裁判手続という、より手続全体の迅速化・合理化を図った制度が導入されたことも影響しているのかもしれません。

ワンポイントアドバイス
事件が軽微で、被告人が有罪を認めていれば、簡易な証拠の調査だけで審判にしてもらうことができます。早期に刑事事件手続きが終わるので、被告人にとってもメリットがあります。詳しい即決裁判や簡易後半手続については、弁護士に相談してみましょう。

暴行罪と傷害罪、その処罰はどのようなものか

「15年以下の懲役」のように、法律の条文で規定された刑を法定刑と言います。
暴行罪と傷害罪は法定刑に大きな差があり、実際の量刑は暴行・傷害の程度や被告人がどの程度反省しているか、常習性、被害者の処罰感情など様々な要素の中で決定されます。

暴行罪と傷害罪の違い

暴行罪と傷害罪の違いはどのようなものでしょうか?

障害罪

傷害罪とは、人の身体に対する暴行などで、相手の身体の生理機能や健康状態に障害を与えた罪です。

暴行罪

暴行罪(刑法208条)は暴行をふるったものの、被害者に障害や変更が生じなかった場合の罪です。「殴っただけなら暴行罪」「それでケガをさせたら傷害罪」というのが一つの目安になります。

法定刑に大きな違い

法定刑では、暴行罪は2年以下の懲役若しくは30万円以下の罰金又は科料です。それに対して傷害罪は15年以下の懲役又は50万円以下の罰金です。懲役刑なら長期で暴行罪の7.5倍という重いものになっています。

傷害罪の中にも大きな量刑の違い

傷害にも様々なレベルがあります。浅い創傷で血が少し流れた程度から、生死の境をさまよいかろうじて命を取り留めたという重傷まで、まさにピン・キリです。そのため法定刑で下限が罰金1万円、上限が懲役15年と幅をもたせているのでしょう。

参考:暴行罪と傷害罪を分ける基準~ケンカで相手を傷つけると暴行?傷害?

大事なのは反省、示談の効果

刑事事件において、刑罰の程度(量刑)を決める場合、示談が成立しているか否かは大きな要素となります。これは被害者の処罰感情や、被告人の反省などの判断に影響を与えるためです。

「示談」は法律にない?

刑法、刑事訴訟法等には「示談」という文言は出てきません。そもそも刑事上の責任は個人間の交渉で排除できませんから、示談によって当事者が有罪を無罪にすることはできません。暴行罪、傷害罪の場合、現行犯逮捕の場合は事件として立件されますが、ほとんどの場合、被害届によって立件されます。そのため、示談の場がもたれることも多くあります。

暴行・傷害罪での示談の効果

暴行・傷害罪での示談によって、被害者感情や被疑者の反省の状況等を考慮してもらえる可能性があります。実刑判決に執行猶予がついたり、懲役刑が罰金となったりするなどです。

暴行罪、障害罪は親告罪ではない

暴行罪も傷害罪も親告罪(被害者の告訴がなければ公訴提起できない罪)ではありません。ししかし、被害届が出されているか、示談が成立しているかは重要になってきます。ただし、示談が成立していたとしても非親告罪のため、不起訴になる保証はありません。

暴行罪や障害罪は起訴されると、99%以上が有罪になってしまいます。事件に巻き込まれた時に弁護士がいれば、早期に身柄の拘束を解いてもらったり、不起訴になる可能性もあります。もし、自分や家族が逮捕されたら、まず刑事事件に強い弁護士に連絡をして救済を求めましょう。

ワンポイントアドバイス
暴行・傷害罪の場合、被害の程度や被告人がどれだけ反省しているか、示談は可能かなど、複雑な要素が絡んで判決に至ります。中には冤罪も否定できません。そういったときに弁護士は頼りになる存在です。もし身近な人が逮捕されたら早急に刑事事件に強い弁護士に相談しましょう。
刑事事件はスピードが重要!
刑事事件に巻き込まれたら弁護士へすぐに相談を
  • 逮捕後72時間、自由に面会できるのは弁護士だけ。
  • 23日間以内の迅速な対応が必要
  • 不起訴の可能性を上げることが大事
  • 刑事事件で起訴された場合、日本の有罪率は99.9%
  • 起訴された場合、弁護士なしだと有罪はほぼ確実
上記に当てはまるなら弁護士に相談