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暴行・傷害トラブルの解決法 示談の流れと示談金の相場とは?

この記事で分かること

  • 刑事事件を穏便に解決するための、「示談」という方法についてご説明してきます。
  • 示談成立すれば必ず不起訴になるわけではない。
  • 示談金については弁護士と十分に相談する方がよい。

暴行や傷害でトラブルに巻き込まれたら、できるだけ早い段階で弁護士に相談することが大切です。もし、逮捕されてしまったら、勾留される前、もしくは起訴される前に示談成立を目指すことで、不起訴になることもあります。示談金の額については、弁護士と相談して交渉してもらいましょう。

暴行罪と傷害罪の違いとは何か

まず、示談について話をする前に、暴行罪と傷害罪の違いについて説明します。そして、暴力と密接な関係にある正当防衛について説明します。

暴行罪とは

最初に、人に対して暴力をふるうことで精ちるする、暴行罪(刑法、以後条文番号のみの場合は同法、208条)について詳しく見てみましょう。

暴行罪の構成要件と法定刑

暴行罪の構成要件(犯罪として法律上規定されている行為)は以下の通りです。

  1. 暴行を加えた者が
  2. 人を傷害するに至らなかった場合。

簡単に言えば、相手を殴ったり蹴ったりしたけど、ケガをさせるまでには至らなかった場合に、暴行罪が成立します。

法定刑(条文で定められた刑)は2年以下の懲役若しくは30万円以下の罰金又は拘留もしくは科料です。拘留は1日以上30日未満の自由刑(16条)で、科料は1000円以上1万円未満の財産刑(17条)です。

接触しなくても暴行

暴行罪での暴行とは通常は殴ったり、蹴ったりということです。「人の身体に対する不法な有形力の行使」と定義されます。ただし、殴ったり蹴ったりだけではなく、たとえば人の前で日本刀を振り下ろしたりする行為も暴行とされます。直接身体に接触しなくても暴行は成立します。通行人の数歩手前を狙って石を投げつける行為なども暴行罪となります。

暴行罪は最高でも懲役2年ですから軽い部類の罪と言えます。以前、暴行罪は親告罪でしたが、1947年に懲役1年以下だったものが懲役2年以下とされ、非親告罪になりました。

傷害罪とは

非常にわかりやすく言えば、相手を殴っただけなら暴行罪、それによってケガをさせたら傷害罪というのが、両罪の違いと言えるでしょう。

傷害罪の構成要件と法定刑

傷害罪の構成要件は①人の身体を、②傷害させたこと、です。法定刑は15年以下の懲役又は50万円以下の罰金です。暴行罪から最高刑が一気に7.5倍になっています。

傷害とは

傷害とは一般的には「ケガ」のことで、アザになったり、骨折したり、血を流したりすることです。ただし、法律の世界ではそれでは曖昧です。そこで通常、傷害とは「人の生理機能に障害を与えること、又は人の健康状態を不良に変更すること」と説明されます。

たとえば、大音響を毎日ベランダから隣家に向かって鳴らして、相手を慢性頭痛症にさせるのも生理機能に障害を与える、あるいは健康状態を不良にすることに変わりありませんから、傷害罪になる可能性があります。(最決平成17年3月29日)。

「ケガをさせるつもりはなかった」は通用しない

暴行罪と傷害罪の関係を考える時に、暴行罪の条文を読むと関係がよくわかります。すなわち「暴行を加えた者が人を傷害するに至らなかったとき」に暴行罪となるわけです。

そうなると、ケガをさせようと思って殴ったが相手がケガをしない場合には「傷害未遂罪」が成立しそうですが、傷害罪に未遂はなく、暴行罪が成立するにとどまります。

逆にケガをさせるつもりがなくて殴って、相手がケガをした場合には傷害罪が成立します。傷害罪の成立には傷害させる故意までは必要なく、暴行する故意だけで足りるということです。このことは傷害罪において「ケガをさせるつもりはなかったんです」という言い訳は通用しないことを意味します。

正当防衛の成立

暴行罪、傷害罪に問われた時に問題になるのが正当防衛(36条1項)です。

正当防衛は「違法性阻却事由」と呼ばれます。つまり「これをすれば犯罪になるという行為」(構成要件)は満たしていても、反撃することが社会的に相当と認められる場合等には、犯罪は成立しないというものです。

双方が攻撃し合う喧嘩では正当防衛が成立することは稀ですが(決してゼロではありません)、一方的に絡まれて暴力をふるわれた時に反撃した場合には正当防衛が成立する可能性があります。

正当防衛の成立要件

正当防衛が成立するための要件は、次のようなものです。

  1. 急迫、不正の侵害の存在
  2. 自己又は他人の権利を防衛するためであること
  3. やむを得ずにした行為であること。

これらの要件が該当するかどうか、簡単にはわかりませんが、防衛手段として必要最小限度のものであったかという点においては、「やむを得ずにした行為」であるか否かの1つの目安となるでしょう。

ワンポイントアドバイス
正当防衛が認められなかった場合、傷害罪として判決されるかもしれません。傷害罪になった場合、懲役刑か罰金刑1ヶ月以上15年以下の懲役か1万円以上50万円以下の罰金が法定刑になります。

暴行・傷害で逮捕後の手続き

暴行・傷害事件で逮捕された場合の手続きを簡単に見ておきましょう。もちろん、在宅で捜査が続くこともあります。

逮捕から検察官送致

暴行・傷害事件が発生し逮捕された場合、手続きは手際よく進められていきます。

48時間以内に検察官送致の手続き

逮捕は通常逮捕(刑事訴訟法、以下、刑訴法199条1項=逮捕令状を示して逮捕する方法)でも、現行犯逮捕(刑訴法213条)でも、留置の必要があると司法警察員(巡査を除く警察官と考えていいでしょう)が考えた場合、身体を拘束されてから48時間以内に検察官に送致する手続きがとられます(刑訴法203条1項)。通常は、留置の必要があるかどうかは、犯罪の嫌疑のほか、逃亡や罪証隠滅のおそれの有無などで判断されます。

微罪処分の可能性

微罪処分とは軽微な事件について、検察官が特に指定して司法警察員による検察官への送致義務を免除するものです(刑訴法246条参照)。司法警察員は毎月、微罪処分事件報告書で一括して検察官に報告します。暴行罪で軽微なものは微罪処分で終わるものも少なくないようです。

勾留と起訴

事件が検察官に送致されると、検察官は24時間以内に勾留請求するか釈放するかを決定しなければなりません。

勾留請求と時間制限

事件が検察官に送致されると、検察官は留置の必要があると考えれば被疑者を受け取った時から24時間以内に裁判官に被疑者の勾留を請求しなければなりません。留置の必要がないと考えた時は釈放しなければなりません(刑訴法205条1項)。そして勾留請求の時間は被疑者の最初の身柄拘束から72時間を超えることはできません(同2項)。

勾留は延長の可能性

警察官が犯罪の嫌疑があって、留置の必要があると考えて検察官に送致した被疑者を、検察官が留置の必要性はないと判断することは常識的に考えて少ないでしょう。検察官に送致されたらほとんどが勾留請求されると思った方がいいでしょう。そして裁判官が勾留決定をしたら(刑訴法207条1項)、請求の日から10日間、勾留が可能です(刑訴法208条1項)。さらにやむを得ない事情がある場合には検察官の請求で10日以内の勾留の延長が可能です(同2項)。以上のように逮捕からの72時間と勾留とその延長で20日間、身柄を拘束される可能性があります。それがいわゆる「逮捕から最大で23日間の身柄拘束」と呼ばれるものです。

ワンポイントアドバイス
日本の刑事事件では起訴されるとほとんどが有罪になり、前科がつくことになります。逮捕されると72時間以内に検察官に引き渡され、起訴、不起訴が決まります。起訴を避けるためにも起訴される前に弁護士に相談し対策を考えることが大切です。

暴行や傷害での示談の流れ

前述のように起訴されると100%近く有罪判決が出る日本の司法制度の下では、いかに起訴されないかが重要なポイントになります。そのためには起訴前に示談を成立させることが大事です。

示談の成否が持つ意味

示談は裁判によらずに事件を解決することと言えるでしょう。被疑者・被告人が被害者に真摯に謝罪し、被害者に生じた損害を補償し、被害者が被疑者・被告人をもうそれ以上、罰することを望んでいない、宥恕を示すものと言えるでしょう。具体的には告訴を取り下げる、被害届を取り下げることが多いです(公訴提起後、告訴は取り下げられません=刑訴法237条1項)。

示談の成立=不起訴ではない

示談が当事者間での事件の解決をはかるものとはいえ、示談が成立したからといって、不起訴が確約されるというものではありません。刑事責任は国家の刑罰権の発動ですから、個人間の交渉でその発動の有無を決定できないのは当然です。もちろん、親告罪のように告訴がなければ公訴提起ができない犯罪(強姦罪、強制わいせつ罪等)であれば、示談が成立して被害者が告訴を取り下げれば、検察官は公訴提起できなくなります。

示談の成否が起訴・不起訴を分ける

公訴提起をするか否かは、検察官の裁量に委ねられています(刑訴法248条=起訴便宜主義)。事案の性質や、被疑者の常習性、犯情などから起訴すべき案件かどうか、判断をすることになります。示談が成立しているからといって起訴されないわけではありませんが、被害者による宥恕があると判断されますから、示談の成立によって起訴しない方向へ働くのは確かでしょう。

示談金の相場

示談には示談金が必要になります。暴行罪、傷害罪の場合、どの程度、用意すればいいのでしょうか。

示談金の中身

まず、示談金の内訳としては犯罪被害によって生じた損害の補償は必ず必要になります。傷害罪であれば、病院でかかった費用ですとか、休業の補償などは当然です。後遺症が出るようなら、それも補償の対象となります。また、精神的な損害に対する賠償、慰謝料も必要です。

様々な条件で変わる示談金

示談金の金額は当事者間の話し合いによります。暴行や傷害の程度にもよって違いは出るでしょうし、被疑者が経済的に恵まれた状況にあれば、相対的に高くなる傾向があるのは確かです。傷害罪であれば、打撲傷程度で済んだ場合と生命の危険まで生じるほどの重篤なものではおのずと示談金にも差が出ます。後遺症が出た場合、慰謝料の増額ということも考えられます。そうした後遺症等がない状況であれば、傷害罪では20万円から60万円程度、暴行罪なら10万円から、高くても30万円程度で収まる場合が多いようです。

ワンポイントアドバイス
示談の金額は、弁護士と一緒に相談して決めるようにしましょう。示談金の相場は状況によって違うので一概には言えませんが、有名人や大企業の役員など経済力がある人は多くなる傾向にあります。

参考:暴行罪で捕まったら弁護士に相談、示談交渉のポイントと慰謝料の相場

暴力や傷害でトラブル!示談成立のためにも弁護士に依頼を

暴力や傷害事件を起こしてしまった場合、放置していると逮捕されて起訴され、前科がついてしまうかもしれません。前科を避けるためにも、できるだけ早く弁護士を依頼することが重要です
少しでも穏便に刑事事件を終わらせるためには、示談成立が重要なポイントになります。もし、逮捕されても、逮捕直後から弁護士を依頼することができるので、できればその段階で弁護士を呼んだ方がよいでしょう。

刑事事件はスピードが重要!
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