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少年法の適用年齢は何歳まで?改正や手続きの流れ、少年院についても解説!

この記事で分かること

  • 少年法は罪を犯した少年の立ち直りを重視した法律です。
  • 18歳と19歳を少年法の保護対象から外すべきか議論されています。
  • 14歳未満の少年は刑事責任能力がないとみなされ、犯罪としては扱われません。

成人であっても少年であっても、罪を犯せば刑罰を科されますが、少年法では、少年の立ち直りを重視し、刑罰も成人より軽いものでした。しかし、相次いだ少年による凶悪事件の発生から少年法は度々改正を重ねてきました。選挙権を得られる年齢が18歳になったことから、少年法の保護対象についても、18歳未満への引き下げが議論されています。

【改正を反映】少年法は適用年齢は何歳まで?

少年法における「少年」は20歳未満です。よって適用されるのも2020年時点では20歳までとなっています。

しかし19歳や18歳については十分に大人ではないかという声が強く、法改正の要望は常に出されている状況です。しかしこれは日本弁護士連合会等の組織が強く反対しており、実現には至っておりません。

参考:日本弁護士連合会公式サイト

なお2014年の改正では有期刑の上限が20年に引き上げられ、不定期刑も10年以下から15年以下にするなど厳罰化が進められました。

18歳選挙権導入を受けて、法務省は2017年2月9日に少年法の適用年齢「20歳未満」から「18歳未満」への引き下げの是非を法制審議会に諮問しています。

少年法の適用対象

少年事件の審判対象には犯罪少年以外にもあります。少年事件については次の項目で詳しく紹介しておりますので、まずはぐ犯事件、触法少年について説明します。

ぐ犯事件とは

少年事件の審判対象にぐ犯事件があります。これは、3条3号のイ、ロ、ハ、ニの事由(ぐ犯事由)のいずれか1つに該当し、将来罪を犯し(14歳以上の場合)、又は刑罰法令に触れる行為をする(14歳未満の場合)虞れのある少年(ぐ犯少年)を審判に付すものです。

ぐ犯は犯罪ではありませんが、犯罪を未然に防止する目的で審判に付します。

4つのぐ犯事由は以下の通りです。

  1. 保護者の正当な監督に服しない性癖がある
  2. 正当の理由がなく家庭に寄り付かない
  3. 犯罪性のある人若しくは不道徳な人と交際し、又はいかがわしい場所に出入りすること、
  4. 自己又は他人の徳性を害する行為をする性癖のあること、

触法少年とは

触法少年は3条2号の「14歳に満たないで刑罰法令に触れる行為をした少年」のことで、審判の対象となります。

責任年齢(刑法41条)に満たないため犯罪は成立しませんが、少年法の審判・保護処分の対象となります。年齢の下限はありませんが、実務では10歳前後が下限とされているようです。家裁送致後は犯罪少年とほぼ同じ手続きで、概ね12歳以上なら少年院送致も可能です。

過去に決定時13歳で少年院送致になった事例があります。

これは3つの大型店舗で商品に次々に放火して店舗を焼損しようとした3件の現住建造物等放火未遂(刑法108条、112条)の事案につき「少年には施設内処遇が相当であるが、少年が(児童自立支援施設の)○○学園での指導に反発して何度も同学園を無断外出していることなどの経緯からすると、児童自立支援施設によって少年の更生を図ることは困難であり、少年院に収容して矯正教育を行うことが最も適当であると認められる」(東京高決平成20年11月17日)と判断されました。

ワンポイントアドバイス
14歳未満(0歳~13歳)の少年は罪を犯しても犯罪としては使われず、警察の調査、児童相談所長の措置や家庭裁判所での調査や審判の手続きになります。

少年事件とは?特性や少年法における扱い

少年事件は少年法の規定に沿って処理されます。少年の可塑性を尊重する精神が根底にある法律での処分だけに、成人事件とは様々な面で異なります。

少年事件と成人事件の違い

少年事件は少年の可塑性を尊重し、性格の矯正と環境調整に関する保護処分を講じることを目的としています(少年法、以下法令名なき時は同法、1条)。

成人事件に適用される刑事訴訟法が真相究明や適正手続の実現を目的としている(刑事訴訟法、以下刑訴法、1条)とは大きく違っています。

審判の対象となる少年は3種類

少年法における「少年」は20歳未満です(2条1項)。

少年法は審判の対象となる少年として、①罪を犯した少年(犯罪少年=3条1項1号)、②14歳に満たないで刑罰法令に触れる行為をした少年(触法少年=同2号)、③一定の事由があって、その性格又は環境に照らして、将来、罪を犯し、又は刑罰法令に触れる行為をする虞れのある少年(ぐ犯少年=同3号)の3つを規定しています。ここでは主に犯罪少年の扱いについて触れます。

少年法の特質、矯正の観点

少年法は少年の健全な育成を期し、非行のある少年に対して性格の矯正及び環境の調整に関する保護処分を行うとともに、少年の刑事事件について特別の措置を講ずることを目的としています(1条)。

そのため付添人(主に弁護士が就任)は司法的機能と福祉的機能という2つの役割があると考えるのが普通です。

少年法における少年事件の手続きの流れ

少年事件は教育主義、保護主義の観点から刑事訴訟手続とは異なる手続を採用しています。

まずは家裁へ送致

少年法は、審判対象となる少年は原則として全事件を家裁に送致することにしています(全件送致主義=41条、42条)。

少年事件でも捜査段階においては、成人事件と大差はありません。しかし、勾留については「勾留状は、やむを得ない場合でなければ、少年に対して、これを発することはできない」(48条1項)と原則としてできないこととしています。これは身柄の拘束について成人よりも精神的影響を強く受けやすいことや、少年の環境に悪影響を及ぼす可能性が考えられているためです。

勾留に代わる観護措置

検察官は少年について勾留の要件を満たしていると判断した場合でも、勾留に代わる観護措置(43条1項、17条1項)を請求できます。認められた場合、少年鑑別所に送致されます(17条1項2号)が、調査官の看護に付する(同1号)ことで、身体拘束されない場合もあります。

全件送致主義

少年法の特徴として全件送致主義があります。これは犯罪の嫌疑がある場合又はない場合でも、家裁の審判に付すべき事由がある場合には、すべての事件を家裁に送致することを義務付けているものです(41条、42条)。これは少年法の根底にある教育主義、保護主義の表れと言われます。つまり家裁に全事件を送致し、調査を経て保護処分と刑事処分のいずれが適当か判断させることが望ましいということです。

付添人の選任

少年事件では、捜査段階の弁護人選任の効力が家裁送致時に失われます。弁護人が被疑者、被告人の権利を守る役割なのに対して、付添人は少年保護事件の目的の実現のために家裁に協力、援助する協力者的性格も有していることから、その性質が異なる点に制度趣旨を読み取るべきでしょう。

付添人は家裁の許可を得て選任しますが(10条1項本文)、弁護士を付添人に選任する場合には家裁の許可は不要です(同項但し書き)。

観護措置の決定

少年が家裁に到着してから24時間以内に家裁は観護措置(17条1項)をとるか否かを決定しないといけません(同2項後段)。観護措置は家裁が調査、審判のため、少年の心情を安定させつつ身柄を保全し、終局決定まで保護する趣旨です。実務では、逮捕又は勾留されている少年を引き続き少年鑑別所に収容することが多くなっています。

家裁調査官による調査

家裁は送致された少年についての調査をしなければならず(8条1項)、家裁調査官に命じて必要な調査を行わせることができます(同2項)。

家裁調査官は調査の専門家で、少年や保護者と面接したり、少年の周辺の関係者と連絡をとったりするなどで情報を集め、最終的に調査結果を少年調査票としてまとめます。その際には処遇に関する意見も付されます。

家裁での審判

多くの事件が観護措置決定から4週間以内に処理され、1回の審判で終了します。観護措置終了の数日前に期日が指定されるのが一般的です。

審判は原則非公開

少年事件の審判は原則非公開です(22条2項)。少年の保護目的で、少年時の非行で将来、不利益が及ばないようにすることや、要保護性につき十分に審理して教育的、保護的措置がとれるようにすることなどが理由です。

少年審判での黙秘権

少年法には少年審判における黙秘権についての規定はありません。少年事件が少年の保護目的が大きいとはいえ、犯罪少年の審判では検察官送致(逆送)となって刑事責任を問われる可能性がありますから、黙秘権が保障されるべきと考えるのが一般的です。

第一回の審判期日の冒頭で裁判長は「少年に対し、供述を強いられることはないことを分かりやすく説明」することを義務付けられています(少年審判規則29条の2前段)。

被害者の関与

審判の出席者は裁判官、調査官、書記官の裁判所職員と、本人、保護者、参考人、付添人です。検察官は関与が認められる事件では出席できます(22条の2)。被害者は出席できませんが、意見聴取(9条の2本文)を通じて意見を述べることができます。

また、傍聴が認められる場合があります(22条の4第1項)。審判結果については、被害者から申し出があり、少年の健全な育成を妨げるおそれがあって相当ではないと認められる場合を除き通知されます(31条の2)。

ワンポイントアドバイス
少年事件の審判は、おおよそ1回あたり1時間程度です。審判では裁判官や調査官から質問があり、少年や家族が答える形式で、成人の事件のような証人尋問などは行われないのが通常です。

少年事件の審判による処分

少年審判によって処分が決定されます。成人事件と違って様々な処分があります。

審判不開始、不処分

家裁送致されても少年が処分されない事例があります。

審判不開始

家裁送致の後、家裁は当該少年の調査を行いますが、その結果、審判に付することができず、または審判に付することが相当でない時は、審判を開始しない決定をしなければなりません(19条1項)。

付することができないとは、非行事実がない、所在不明などです。相当でない時とは、要保護性が既に解消している時です。①事案が軽微、②保護的措置で要保護性が解消している、③別件で既に保護処分に付されている、の3パターンがあります。

不処分の決定

審判の結果、保護処分に付することができない、あるいはすることが必要でない場合には不処分の決定がされなければなりません(23条2項)。

保護処分に付することができないとは、非行事実なし、所在不明等、審判条件の不存在等があります。必要がない時とは、審判不開始の①〜③と同様です。2015年の少年保護事件の終局決定総数9万6328件のうち、不処分は1万6893件と17.5%を占めています(平成27年度司法統計年報)。

保護処分

審判の結果、保護処分とされることがあります。保護処分には保護観察など3種類があります。

保護観察

少年を施設に収容せずに、保護観察所の行う指導監督及び補導援護により社会生活をさせながら更生を図る制度です。2015年の少年保護事件の終局決定総数9万6328件のうち、保護観察は1万8320件で、19.0%を占めています(平成27年度司法統計年報)。

なお、保護観察中に遵守事項を守らなかった場合には、家裁は保護観察所長の申請を受け、審判の結果、保護観察では更生が図れないと認める時は少年院送致等の処分を決定しなければなりません(26条の4第1項)。

児童自立支援施設又は児童養護施設送致

開放施設である児童自立支援施設、児童養護施設に送致する処分です。入所対象者は18歳未満(児童福祉法4条1項本文)とされていますが、中学生を中心とする低年齢層が多いのが実情です。

2015年の少年保護事件の終局決定総数9万6328件のうち、両施設への送致は186件と、1.9%でした(平成27年度司法統計年報)。

少年院送致

少年院は保護処分の執行及び懲役、禁錮の刑の執行を受ける者を収容して、矯正教育その他必要な処遇を行う施設です(少年院法3条)。

収容期間は原則として少年が20歳に達するまでですが、送致決定時に19歳を超えている時は、決定の日から1年間に限り収容の継続が可能です(少年院法137条1項)。

検察官送致ほか

いわゆる「逆送」「検送」と呼ばれるのが検察官送致です。これにより少年保護事件は終局し、起訴前の被疑者としての扱いとなります。

逆送される場合

家裁が逆送するのは以下の3パターンです。

  1. 少年が20歳以上であることが判明した時(19条2項)
  2. 刑事処分が相当である時(20条1項)
  3. 故意の犯罪行為により被害者を死亡させた事件で、その罪を犯した時に少年が16歳以上だった時(20条2項)

①については基準は調査・審判時です。行為時ではありません。②については保護処分では矯正の見込みがないこと、事案の重大性・悪質性、社会への影響、被害者感情なども重要な判断要素とされます。③は重大事件で原則として逆送するとしたものです。

起訴強制とその例外

検察官は家裁から送致された事件について、公訴提起に足りる犯罪の嫌疑がある時は、公訴の提起をしなければなりません(45条5号本文)。これは起訴便宜主義(刑訴法248条)の例外と言えます。もっとも、情状等について影響を及ぼすべき新たな事情を発見した時等は、起訴強制はされず(同号但し書き)、家裁に再送致しなければなりません(42条1項前段)。

知事又は児童相談所送致

家裁は事件を知事又は児童相談所長に送致することができます。児童福祉法の規定による措置を適当と認める時(18条1項)にとられるのが普通です。

「児童福祉法の規定による措置」とは、児童福祉法26条及び27条に規定される措置です。具体的には児童福祉司もしくは児童委員等による指導、里親等への委託などがあります。

終局処分を保留し中間処分

終局処分の決定を一定期間留保する中間処分が行われることがあります。

試験観察(在宅試験観察)

少年を家庭等に戻して、その経過を観察して終局処分をします。定期的に家裁に出頭して調査官と面接するなど遵守事項が多く決められることが多く、期間は3〜6か月程度です。期間中、特に問題を起こさなければ、2回目の審判で不処分や保護観察になることが多いと言われます。

試験観察(補導委任)

こちらは少年を家庭等には戻さずに適当な施設や、団体、個人に補導を委託する措置です。家庭に戻すと交友関係等で更生に不安が残る場合などに補導委任とされることが多くなっています。通常は6ヶ月程度委託され、その後、終局処分がされます。

ワンポイントアドバイス
少年であっても、凶悪な犯罪には厳しい処罰が必要でしょう。一方で、現在議論になっている、少年法の保護対象年齢を引き下げても、犯罪の減少に単純に結びつくとは言えないという見方もあります。

少年事件で困ったことは弁護士に相談!

少年事件を起こすと少年審判が開かれ、少年院に送致され、保護者や児童相談所と連携をとり、更生を図っていくことになります。

少年は精神的にも未熟で、判断力に乏しく、法的知識もないため、取り調べで間違った内容の供述をしてしまうことがあります。また、被害者がいれば、弁護士と共に謝罪し、内省を深めるのも教育のひとつです。

弁護士がいれば、適切な取り調べでの行動をアドバイスしてもらえ、被害者との示談交渉もサポートしてくれます。また、少年の家庭環境や教育環境を良いものにするために、働きかけてくれるでしょう。少年事件を子供が犯したら、法律に強い弁護士に相談することをおすすめします。

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