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住居侵入(不法侵入)罪とは?逮捕されるケースや判例を紹介!
この記事で分かること
- 住居侵入罪は正当な理由がないのに他人の住居などに侵入すること
- 住居侵入罪に未遂はない
- 住居侵入罪には2つ以上の犯罪行為を行う牽連犯が多い
住居侵入罪は住居の中に侵入したときだけに、成立するわけではありません。また、店舗など、通常他人が立ち入ることが認められている場所においても犯罪になってしまうことがあります。
住居侵入(不法侵入)罪とは?基本知識を紹介
住居侵入(不法侵入)罪とは、法定刑は3年以下の懲役、10万円以下の罰金です。
構成要件(犯罪として法律上規定された行為の類型)としては、①正当な理由がないのに、②人の住居若しくは人の看守する邸宅、建造物若しくは艦船に、③侵入することです。
一方、不退去罪の構成要件は、①正当な理由がないのに、②人の住居若しくは人の看守する邸宅、建造物若しくは艦船から、③要求を受けたにもかかわらず、これらの場所から退去しなかったことです。
住居侵入(不法侵入)罪の住居権説と平穏説
住居侵入(不法侵入)罪では住居権説と平穏説の対立があり、判例も大きく変わってきています。
住居権説・管理権説とは
そもそも住居侵入等罪は何を保護するのかというのかということです。住居権説は「住居や建物への事実上の支配・管理権、つまり誰を入れるかを決める自由」こそが保護法益とするものです。
平穏説とは
平穏説とは「事実上の住居の平穏」を保護法益とするものです。この説では条文にある「侵入」の意義も「平穏を害する立ち入り」と理解します。
戦前は、その住居に住む人の意思に反すして立ち入ると住居侵入罪が成立しました。代表的な例で、人妻と不倫関係にある男が住居に立ち入り、それを家父長たる夫が発見したところ、たとえ人妻が招き入れたものであっても、家父長たる夫はそれを許すことはないから住居侵入罪が成立した判例があります。
しかし、戦後、平穏説が台頭し、最高裁も「住居侵入罪の保護すべき法律上の利益は、住居等の事実上の平穏である」(最判昭和49年5月31日)とするに至りました。
しかし、その後「平穏」が曖昧であることから、新たな住居権説(管理権説)が唱えられるようになり、最高裁は「刑法130条前段にいう『侵入し』とは、他人の看守する建造物等に管理権者の意思に反して立ち入ること」(最判昭和58年4月8日)と判示しました。
住居侵入(不法侵入)罪が成立するための詳細
住居侵入(不法侵入)罪は正当な理由がなく、人の住居や人が看守する邸宅、船等に侵入することをいいます。つまり、正当な理由がある時には同罪は成立しません。
住居侵入罪の成立のための要件を、もう少し詳しく見てみましょう。
ここでいう住居とは人が日常生活をおくる場所のことです。日常生活をおくっているのであれば、艦船やトレーラーハウスも住居となり、住居の周囲を塀で囲った場合、庭なども住居にあたります。オフシーズンの別荘などは日常生活をおくっていないため、「邸宅」もしくは「建造物」となります。
侵入行為と承諾
「侵入」とは「住居権者・管理権者の意思に反して、住居等に立ち入ること」と定義できます。したがって、住居権者・管理権者が住居への立ち入りを承諾した場合には、かりに住居の平穏が害されても住居侵入罪は成立しません。
なお、承諾できる居住者は、日常でそこに居住している人のことを言いますが、住居を管理する能力のない児童等は該当しません。
瑕疵ある承諾と推定的承諾、包括的承諾
ここでいう承諾とは真意から出たものでなければならず、錯誤や脅された状況での承諾であれば無効になります。また、居住者が立ち入りの場にいて承諾したと推測される場合や営業中の店舗に入る場合なども承諾とみなされます。
不退去罪
不退去罪は犯罪の性質から、人の住居等に立ち入った人だけが主体となります。つまり構成身分犯(真正身分犯)です。適法に立ち入った場合に限られ、違法に侵入した場合は含まれません。
不法に侵入して立ち退かない場合
前述のように不法に侵入した場合は住居侵入等罪が成立します。そして退去するまで犯罪が継続しますから、不退去罪が成立する余地はありません。
不退去罪が既遂に達する時
管理権を持つ者から退去を命じられると直ちに犯罪を犯したことになるわけではありません。退去するのに必要な、合理的な時間が経過して初めて既遂に達します。
不退去罪とは承諾を得て立ち入ったものの、住居権者に出ていくように言われたのにも関わらず、そのまま居座る行為を指します。
住居侵入(不法侵入)罪の実情とは
他人の住居に管理者の意思に反して侵入するのが住居侵入(不法侵入)罪ですが、その行為自体を目的とすることはあまり考えられません。
窃盗、強盗、強制わいせつ、強姦、放火などを目的として、住居侵入が犯されることが多いようです。単独で犯行が行われる場合は、会社側の意思に反して労組のメンバーが社内の施設に居座ったりする場合などがあります。
牽連犯も多い
一般的に不法侵入には窃盗やのぞき、強制わいせつなどの目的が別にあることがほとんどではないでしょうか。
たとえば他人の住居に侵入して、財布を盗んできた場合を考えましょう。この場合、住居侵入罪と窃盗罪が成立します。住居侵入が窃盗の手段となり、住居侵入の目的は窃盗というわけです。
このように複数の行為が手段・目的または原因・結果になっている場合を牽連犯(54条1項後段)と呼びます。これは複数の犯罪であっても、科刑上一つの罪として扱われ、最も重い刑で処断されます。
住居に不法侵入すれば未遂でも罪になる
住居侵入罪の未遂と既遂について考えてみましょう。
住居侵入等罪が既遂になるのは、身体全体を入れることを要します。塀を乗り越えようとしている段階では、まだ未遂の段階です。実行の着手は侵入行為に着手した段階です。
不退去罪に未遂はない
不退去罪には未遂は存在しません。管理権者から退去の要求があり、要求後、退去に必要な時間が経過すると直ちに既遂になるため、「未遂が成立する余地はない」ということです。
これも住居に不法侵入したことになる
次に、このような行為も住居侵入にあたるという例を紹介しましょう。
「お入り」と言われたのに犯罪成立
被告人が強盗の意図を隠して「こんばんは」とあいさつし、居住者が「お入り」と答えたのを受けて家に入って強盗を行ったものの、結局目的を達せられなかったという事案がありました。住居人が「お入り」と承諾しているものの、真意ではその承諾を欠くものとして、最高裁はこれを住居侵入等罪と判決しました。(最判昭和24年7月22日)
塀の上に立っても建造物侵入罪
コンクリートの塀の上に立ったことで建造物侵入罪とされた事案があります。
被告人は大阪府警の警察署の捜査車両を確認する目的でコンクリートの塀によじ登りました。一審では「建造物に囲繞地の周囲の塀は含まれない」として無罪を言い渡されました。
しかし、最高裁は「本件塀は、本件庁舎建物とその敷地を他から明確に画するとともに、外部からの干渉を排除する作用を果たしており、正に本件庁舎建物の利用のために供されている工作物であって、刑法130条にいう『建造物』の一部を構成するものとして、建造物侵入罪の客体に当たる」(最決平成21年7月13日)としました。
盗撮目的での銀行支店出張所への侵入
被告人らは銀行のATMを利用する客らのカードの暗証番号等を盗撮する目的で、行員が常駐しない銀行支店出張所に営業中に立ち入って、長時間1台のATMを占拠し続けたという事件がありました。
ここでは、一般に立ち入りが認められている建造物に立ち入る行為に建造物侵入罪が成立するかが問題になりました。
最高裁は「そのような立ち入りが同所の管理権者である銀行支店長の意思に反するものであることは明らかであるから、その立ち入りの外観が一般の現金自動預払機利用客のそれと特に異なるものでなくても、建造物侵入罪が成立するものというべきである」(最決平成19年7月2日)として、同罪の成立を認めました。
住居侵入(不法侵入)罪で逮捕されたら弁護士に依頼
人に住居に不法侵入した逮捕されたら、できるだけ早く弁護士を依頼する必要があります。
刑事事件はほうっておくと、どんどん手続きが進行してしまい、有罪判決が出てしまう可能性が高まりますが、起訴される前に、示談交渉をすることで不起訴になる可能性もあるのです。
難しい示談も法律のプロである弁護士がいれば、本人に代わって交渉してくれます。少なくても逮捕された翌日には弁護士に依頼することをおすすめします。
刑事事件に巻き込まれたら弁護士へすぐに相談を
- 逮捕後72時間、自由に面会できるのは弁護士だけ。
- 23日間以内の迅速な対応が必要
- 不起訴の可能性を上げることが大事
- 刑事事件で起訴された場合、日本の有罪率は99.9%
- 起訴された場合、弁護士なしだと有罪はほぼ確実