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侮辱罪とは?2022年の厳罰化と示談・対処法

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侮辱罪とは?2022年の厳罰化で何が変わったか

SNSに書き込まれた一言で深く傷ついた。あるいは、感情的に投稿した言葉で警察から連絡が来た。侮辱罪は、いまやインターネット上のトラブルとして、誰の身にも起こりうる犯罪になりました。

侮辱罪は、刑法231条に定められた犯罪です。事実を示さずに、公然と人を侮辱した場合に成立します。2022年7月7日に施行された改正によって、法定刑が大きく引き上げられました。

時期 法定刑 公訴時効
2022年7月6日まで 拘留または科料のみ 1年
2022年7月7日から 1年以下の拘禁刑もしくは30万円以下の罰金または拘留もしくは科料 3年

改正前は、刑法の中でもっとも軽い刑しか定められていませんでした。改正によって拘禁刑と罰金が加わり、侮辱罪でも前科がつき、逮捕・勾留の対象にもなりうる犯罪へと位置づけが変わりました。公訴時効も1年から3年に延び、時間が経ってから立件される可能性も高まっています。

この記事では、侮辱罪の成立要件、名誉毀損罪との違い、実際に問題になりやすい言動、書き込んでしまった場合の対応、被害を受けた場合に取れる手段を、弁護士の視点で解説します。

なぜ厳罰化されたのか

侮辱罪の厳罰化は、インターネット上の誹謗中傷が深刻な社会問題になったことを受けた見直しです。SNSでの中傷を苦に命を絶つ事案が相次ぎ、従来の拘留または科料という刑では、抑止力として不十分だという指摘が強まりました。

法制審議会の議論では、表現の自由との関係が慎重に検討され、正当な批判が萎縮しないよう、改正法には施行から3年後に運用状況を検証するという規定も設けられました。処罰の範囲そのものが広がったわけではなく、あくまで刑の重さが引き上げられたという点が重要です。

この改正によって、侮辱罪でも被疑者を逮捕・勾留できるようになり、捜査機関が積極的に動きやすくなりました。実際、改正後は書類送検や罰金の事例が報じられる機会も増えています。

改正が実務に与えた影響

厳罰化によって、捜査機関の対応にも変化が見られます。改正前は、法定刑が軽いために逮捕ができず、捜査に消極的だとの指摘もありました。改正後は、逮捕・勾留が可能になり、悪質な事案では身柄を拘束したうえで捜査が進められるようになっています。

また、公訴時効が1年から3年に延びたことで、被害者が投稿者を特定してから告訴するまでの時間に余裕が生まれました。開示請求には数か月を要することも多く、従来は特定が済む前に時効が完成してしまう例もありました。時効の延長は、被害者救済の面で大きな意味を持ちます。

一方で、正当な批判まで萎縮するのではないかという懸念もあります。改正法には、施行から3年を経過した時点で表現の自由への影響を検証する規定が置かれ、運用の妥当性が検討されることになっています。

侮辱罪が成立する要件

要件 内容
公然性 不特定または多数の人が知りうる状態で行われたこと
侮辱 具体的な事実を示さずに、人の社会的評価を下げる表現をすること
対象が特定できること 誰に向けられた表現かがわかること

公然性は、SNSや掲示板への投稿であれば通常認められます。閲覧できる人が限られていても、そこから広まる可能性があれば認められることがあります。対象の特定は、実名でなくても、勤務先や地域、アカウント名などから誰のことかわかれば足ります。

名誉毀損罪との違い

侮辱罪と名誉毀損罪の違いは、具体的な事実を示したかどうかです。

比べる点 侮辱罪 名誉毀損罪
事実の摘示 なし(評価や罵倒のみ) あり(具体的な事実を示す)
法定刑 1年以下の拘禁刑または30万円以下の罰金など 3年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金
公訴時効 3年 3年
親告罪 該当する 該当する
例 「バカ」「無能」「気持ち悪い」 「会社の金を横領した」「不倫している」

どちらも親告罪であり、被害者の告訴がなければ起訴されません。起訴される前に示談をまとめ、告訴を取り消してもらえれば、起訴されることはありません。

公然性が問題になる場面

場面 公然性の判断
SNS・掲示板・レビューサイト 不特定多数が見られるため認められる
鍵付きアカウント フォロワーの人数や関係によって判断が分かれる
グループチャット 参加人数や、そこから広まる可能性によって判断される
職場や学校での発言 周囲に多数の人がいれば認められる
本人に直接送るメッセージ 原則として公然性は認められない(脅迫罪などは別)

本人だけに送ったメッセージは、公然性がないため侮辱罪にはあたりません。ただし、内容によっては脅迫罪や強要罪、ストーカー規制法違反などが問題になることがあります。公然性がなければ何を送ってもよい、ということではない点に注意してください。

被害者が特定できることの意味

侮辱罪が成立するには、その表現が誰に向けられたものかがわかる必要があります。実名が書かれていなくても、アカウント名、顔写真、勤務先、居住地域、過去の投稿との組み合わせなどから、対象者が特定できれば足ります。

反対に、特定の個人を指していない漠然とした表現、たとえば職業や属性一般への批判は、侮辱罪の対象にはなりません。ただし、内容によっては差別的表現として別の問題が生じることもあります。名前を出していないから大丈夫、という理解は成り立たないと考えてください。

どのような言動が侮辱罪になるのか

侮辱罪にあたるかどうかは、表現の内容だけでなく、繰り返しの程度や文脈によっても判断されます。実際に問題になりやすいのは、次のような場面です。

  • SNSで特定の人物に対し、容姿や能力をおとしめる言葉を繰り返し投稿する
  • 掲示板に、特定の店舗の従業員を罵倒する書き込みをする
  • 配信中のコメント欄で、出演者に人格を否定する言葉を浴びせる
  • 職場や学校で、多数の人がいる場で相手を罵倒する
  • 匿名アカウントから、同じ相手に執拗に暴言を送り続ける

一度の投稿でも成立しますが、実務では、繰り返しの投稿や、複数人による集中的な中傷が立件されやすい傾向があります。「みんなが書いているから」という意識が、責任を軽くすることはありません。

批判と侮辱の境目

意見や批評そのものは、表現の自由として保護されます。商品やサービスへの不満、政治的な主張、作品への批評などは、内容が厳しくても直ちに侮辱罪になるわけではありません。

問題になるのは、議論の対象を離れて、相手の人格を否定する表現に踏み込んだ場合です。「この対応には納得できない」は批判ですが、「こんな店員は人間として終わっている」となれば侮辱の領域です。意見を述べるなら、人ではなく事柄について語ることが、トラブルを避ける基本になります。

侮辱罪と関連する罪

罪名 成立する場面 法定刑
侮辱罪 事実を示さずに公然と侮辱した 1年以下の拘禁刑もしくは30万円以下の罰金または拘留もしくは科料
名誉毀損罪 公然と事実を摘示した 3年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金
脅迫罪 生命や身体などへの害悪を告知した 2年以下の拘禁刑または30万円以下の罰金
業務妨害罪 虚偽の風説や偽計で業務を妨害した 3年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金
ストーカー規制法違反 つきまといや中傷を繰り返した 1年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金

一つの投稿が、複数の罪にあたることもあります。たとえば、事実を交えて罵倒すれば名誉毀損罪と侮辱罪の両方が問題になり、危害を加えるような表現が含まれれば脅迫罪も成立しえます。

繰り返しの投稿が重く見られる理由

侮辱罪の事件では、投稿の回数と期間が、処分を大きく左右します。一度きりの感情的な投稿と、数か月にわたって同じ相手を攻撃し続けた場合とでは、被害者が受ける負担がまったく違うからです。

また、同じ人物に対して複数のアカウントから投稿していた場合や、他人の投稿を拡散して被害を広げていた場合も、悪質と評価されます。投稿を続けている限り、被害は拡大し、処分は重くなっていくため、まずは投稿をやめることが最優先です。

侮辱罪で逮捕されることはあるか

改正前の侮辱罪は、拘留または科料しか定められていなかったため、住居が定まっている人を逮捕することは原則としてできませんでした。改正によって拘禁刑が加わり、通常の犯罪と同じ要件で逮捕できるようになりました。

事情 逮捕の可能性
投稿を繰り返し、警告を受けても続けている 高まる
被害者に接触している 高まる
呼び出しに応じない 高まる
初めての投稿で、削除と謝罪をしている 低い

実際には、在宅で捜査が進むことが多いものの、悪質な事案では身柄を拘束される可能性があります。捜査が始まったと感じたら、投稿をやめ、被害者への接触を控えることが何より大切です。

捜査が始まるまでの流れ

  1. 被害者が投稿を保存し、証拠を確保する
  2. サイト運営者への削除請求や、発信者情報開示請求が行われる
  3. プロバイダから投稿者に意見照会書が届く
  4. 投稿者が特定され、民事の請求や刑事告訴がなされる
  5. 告訴が受理されると、警察の捜査が始まる

侮辱罪の事件は、いきなり警察から連絡が来るとは限らず、多くは開示請求の意見照会書が最初の接点になります。この段階で対応を始められれば、示談による解決の余地は大きく広がります。

職場や学校での侮辱

侮辱罪は、インターネット上の投稿に限られません。職場の会議で多数の同僚がいる前で罵倒する、学校で生徒の前で人格を否定する言葉を浴びせるといった行為も、公然性が認められれば侮辱罪にあたります。

職場の場合は、刑事責任とは別に、パワーハラスメントとして会社の懲戒処分の対象になったり、民事の損害賠償を求められたりすることもあります。労働施策総合推進法によって、事業主にはハラスメントの防止措置が義務づけられており、社内での対応も求められます。

感情的な言葉が出そうになったときは、その場を離れる、文書で冷静に指摘するなど、別の方法を選んでください。一時の怒りが、刑事責任と職を失うリスクに直結することもあります。

書き込んでしまった場合の対応

  1. これ以上の投稿をやめる
  2. 削除するかどうか、弁護士と相談して決める
  3. 被害者に直接連絡せず、弁護士を通じて謝罪の意思を伝える
  4. 示談の条件として、削除、謝罪、解決金、再投稿の禁止、告訴の取消しを検討する
  5. 警察から連絡があれば、事前に弁護士と対応を打ち合わせる

投稿の削除は、被害の拡大を止めるうえで重要ですが、捜査が始まった後では証拠隠滅を疑われることもあります。判断に迷ったら、削除の前に弁護士へ相談してください。

意見照会書が届いたら
匿名で投稿していても、被害者が発信者情報開示請求を行えば、プロバイダから意見照会書が届きます。これは、投稿者としてあなたの情報が特定されつつあるという合図です。回答の内容はその後の交渉にも影響するため、届いた時点で弁護士に相談してください。

示談で決めておきたいこと

条項 内容
投稿の削除 対象の投稿をすべて削除することを約束する
再投稿の禁止 今後、同様の投稿をしないことと、違反した場合の違約金を定める
謝罪 謝罪の事実を書面に残す
解決金 金額と支払期日を明記する
告訴の取消し 親告罪であるため、起訴前の取消しが決定的な意味を持つ
秘密保持・清算条項 内容を口外しないこと、ほかに請求し合わないことを確認する

被害者にとっては、金銭よりも「二度と書かれないこと」が重要な場合も多くあります。再投稿の禁止と違約金を定めることで、実効性のある解決になります。

開示請求にかかる時間と費用

手続き 期間の目安 費用の目安
サイト運営者への削除請求 数日〜数週間 数万円〜
発信者情報開示命令(2022年10月開始) 数か月 20万〜40万円程度
従来の二段階の手続き 半年〜1年 40万〜60万円程度
損害賠償請求(交渉・訴訟) 数か月〜1年 事案による

2022年10月に始まった発信者情報開示命令は、これまで二段階に分かれていた手続きを一つにまとめたもので、期間も費用も抑えられるようになりました。それでも一定の負担はかかるため、費用と得られる結果を見比べて判断することになります。開示にかかった費用は、加害者への損害賠償請求に含めることができます。

被害を受けた場合にできること

手段 内容
証拠の保全 投稿の画面を、日時とアドレスがわかる形で保存する
削除請求 サイト運営者に削除を求める。応じなければ仮処分を申し立てる
発信者情報開示請求 投稿者を特定する手続き
損害賠償請求 慰謝料を民事で請求する
刑事告訴 侮辱罪として処罰を求める

まず行うべきは証拠の保全です。投稿が削除されると、その後の手続きが難しくなります。侮辱罪の慰謝料は、名誉毀損に比べると低めで、10万円から30万円程度が一つの目安ですが、投稿の数や悪質さによって変わります。

2022年10月には、発信者情報開示のための新しい裁判手続きが始まり、これまでより短い期間で投稿者を特定できるようになりました。通信記録の保存期間には限りがあるため、被害に気づいたら早く動くことが大切です。

被害者が受ける影響

侮辱の被害は、投稿の一つひとつが短くても、積み重なることで大きな負担になります。眠れない、人の目が怖い、仕事や学校に行けないといった状態になることもあり、心身への影響は深刻です。

被害を受けた方は、法的な手続きと並行して、心身の健康を守ることも考えてください。法務局の人権相談窓口や、総務省が案内する違法・有害情報相談センターなど、公的な相談先もあります。一人で抱え込まず、周囲や専門家を頼ってください。

また、反論の投稿をすると、今度は自分が加害者になってしまうことがあります。感情的な応酬を避け、証拠の保全と手続きに集中するのが、結果として早い解決につながります。

企業や店舗が中傷された場合

店舗や企業に対する中傷も、対象が特定できれば問題になります。ただし、法人には「人格」という観念が当てはまらないため、侮辱罪の成立を認めるかどうかは事案によって判断が分かれます。虚偽の情報によって信用や業務に影響が出た場合は、信用毀損罪や業務妨害罪のほうが問題になります。

店舗としては、口コミサイトへの低評価にどう向き合うかという悩みもあります。事実に基づく批評であれば、削除は認められにくいのが実情です。一方、体験していない内容を交えた投稿や、従業員個人への人格攻撃は、削除や損害賠償の対象になりえます。感想としての批評と、個人への攻撃を切り分けて考えることが対応の出発点です。

民事の損害賠償はどうなるか

刑事の処分とは別に、被害者は民事で慰謝料を請求できます。侮辱による慰謝料は、名誉毀損に比べて低めに算定される傾向があり、10万円から30万円程度が一つの目安です。ただし、投稿の数が多い、期間が長い、被害者が精神的な治療を要したといった事情があれば、増額されます。

民事の請求では、慰謝料に加えて、発信者情報開示にかかった費用や弁護士費用の一部を請求できる場合があります。開示手続きに数十万円かかることもあるため、加害者にとっては慰謝料以上の負担になることもあります。示談で早期に解決すれば、こうした費用が生じる前に終えられます。

民事の時効は、損害と加害者を知った時から3年です。投稿者が特定されてから3年と考えれば足りますが、時間が経つほど証拠が失われるため、早めの対応が望まれます。

侮辱罪の処分の傾向

事案 処分の傾向
初犯、投稿が少数、示談が成立 不起訴となることが多い
投稿を繰り返した 罰金や科料となることがある
集団で執拗に中傷し、被害が重大 起訴され、拘禁刑が求刑されることも
同種の前科がある 処分が重くなる

改正によって罰金が科されるようになったことで、前科がつく場面も増えました。軽い罪だからと放置せず、示談と削除に早く取り組むことが、前科を避ける道です。

子どもが関わった場合

中高生が、同級生への中傷をSNSに書き込むケースも増えています。14歳以上であれば刑事責任を問われ、少年事件として家庭裁判所で扱われます。14歳未満でも、児童相談所の関与や、保護者に対する民事の損害賠償請求という形で責任が問われることがあります。

保護者としては、子どもを責めるだけでなく、何が起きたのかを把握し、被害者への謝罪と削除を進めることが求められます。学校との連携も必要になるでしょう。子ども自身が被害を受けた場合も同様で、証拠を保全したうえで、学校と警察、弁護士に相談する道があります。

捜査を受けたときの取調べ

侮辱罪の捜査では、投稿の内容、投稿した経緯、相手との関係、繰り返した理由などが聞かれます。記憶があいまいなまま投稿の数や期間を認めると、実際より悪質に評価されることがあります。手元に残っている記録を確認し、事実を正確に伝えることが大切です。

また、投稿の動機についても詳しく聞かれます。個人的な恨みからの中傷なのか、議論の延長で感情的になったのかによって、評価は変わります。反省を示すことと、事実を曲げて認めることは別です。取調べの前に弁護士と方針を確認しておくと、落ち着いて臨めます。

不起訴を目指すためにできること

  1. すべての投稿をやめ、対象の投稿を整理する
  2. 弁護士を通じて被害者に謝罪の意思を伝える
  3. 削除と再投稿の禁止を約束し、示談を申し入れる
  4. 示談書に宥恕と告訴の取消しを盛り込む
  5. 反省文や再発防止の取り組みをあわせて提出する

侮辱罪は親告罪なので、告訴の取消しを得られれば起訴されません。被害者が示談に応じない場合も、投稿の削除、謝罪文の提出、贖罪寄付といった対応を尽くしていれば、起訴猶予となる可能性があります。

侮辱罪で弁護士に相談するメリット

加害者の立場では、被害者との示談交渉、告訴の取消しの働きかけ、捜査機関への対応を任せられます。被害者の立場では、証拠の保全、削除請求、発信者情報開示、損害賠償請求、刑事告訴の準備を進めてもらえます。

どちらの立場でも、当事者同士が直接やり取りすると、感情的な対立が深まります。第三者である弁護士が間に入ることで、冷静な話し合いが可能になります。

家族が投稿してしまったとき

家族が中傷の投稿をしていたと知ったとき、まず確認したいのは、どの投稿が問題になっているのか、被害者は誰か、手続きがどこまで進んでいるのかという点です。そのうえで、投稿をやめること、削除の可否、示談の方針を弁護士と決めていきます。

家族が被害者に直接連絡を取ることは、絶対に避けてください。善意のつもりでも、被害者にとっては新たな負担になり、事態を悪化させます。家族にできるのは、本人が投稿をやめるよう見守ること、示談金の準備を検討すること、弁護士との窓口を担うことです。

削除だけを求めたい場合

被害者の中には、加害者の処罰までは望まず、とにかく投稿を消してほしいという方も多くいます。その場合は、刑事告訴ではなく、削除請求から始めるのが現実的です。サイトの窓口への削除依頼で応じてもらえることもあり、費用と時間を抑えられます。

応じてもらえない場合は、裁判所に削除の仮処分を申し立てます。仮処分は、通常の訴訟より短い期間で結論が出るため、被害の拡大を止める手段として使われます。投稿者を特定しなくても削除だけを求められる点も、負担が小さい理由です。

再発を防ぐために

中傷の投稿をしてしまった人の中には、匿名であることや、画面越しであることで、歯止めが利かなくなってしまう人もいます。相手も自分と同じ生活を送る人間であることを想像できれば、書き込む前に立ち止まれるはずです。

感情が高ぶったときは、投稿画面を閉じて時間を置く、下書きのまま一晩寝かせる、アカウントの通知を切るといった工夫が有効です。SNSとの距離の取り方を見直すことが、自分自身を守ることにもつながります。

被害を受けた側の心構え

中傷を受けたとき、相手に直接反論したくなるのは自然な気持ちです。しかし、応酬になれば投稿はさらに増え、こちらの発言が問題にされることもあります。まずは記録を残し、手続きに進むことを優先してください。

また、すべての投稿に対応しようとすると、時間も費用も大きくなります。とくに悪質なものに絞って手続きを進めるという判断も現実的です。何を優先するかを弁護士と相談しながら決めていきましょう。

投稿が拡散してしまった場合

元の投稿を削除しても、引用やスクリーンショットが拡散していれば、被害は続きます。拡散した投稿それぞれについて削除を求めることになり、手続きは複雑になります。加害者にとっても、自分が削除した後に広まった投稿について、責任を問われることがあります。

拡散を止めるには、早い段階での削除が何より有効です。被害者としては、拡散の状況を記録しつつ、影響の大きいものから順に対応していくことになります。

会社が従業員の投稿を知ったら

従業員が業務外でSNSに中傷を投稿し、それが会社に知られることもあります。会社としては、就業規則に基づく処分を検討することになりますが、業務と関係のない私生活上の行為である以上、処分の範囲は慎重に判断する必要があります。

一方、会社の名前を出して投稿していた場合や、取引先を中傷していた場合は、会社の信用にも関わるため、より重い処分が検討されます。従業員の立場では、刑事の手続きと並行して、職場への説明の仕方も考えなければなりません。弁護士に相談すれば、両方を見通した助言を受けられます。

まとめ|侮辱罪は前科がつく犯罪になった

侮辱罪は、2022年7月の改正で、1年以下の拘禁刑または30万円以下の罰金が加わり、公訴時効も3年に延びました。かつてのように「拘留か科料で終わる軽い罪」ではありません。

侮辱罪も親告罪なので、起訴される前に示談と告訴の取消しを得られれば、前科は残りません。被害を受けた側は、証拠を保全したうえで、削除、特定、賠償の順に手を打つことになります。どちらの立場でも、早く動くほど選べる手段は多くなります。

SNSでのやり取りは、書き手にとっては一瞬でも、書かれた側には長く残ります。投稿する前の一呼吸が、自分と相手の双方を守ります。迷ったときは、書かないという選択も忘れないでください。

相談のときに用意したいもの

  • 問題になっている投稿の保存(日時とアドレスがわかるもの)
  • 投稿の一覧と、いつからいつまで続いたかの記録
  • 意見照会書や告訴状などの書面
  • 相手とのやり取りがあれば、その記録
  • 被害の状況がわかる資料(通院の記録など)

これらがそろっていれば、弁護士は見通しを具体的に示せます。手元にあるものだけでも構いませんので、まずは相談してみてください。

相談では、自分が何を望んでいるのかを率直に伝えることも大切です。処罰を求めたいのか、削除を優先したいのか、穏便に終わらせたいのか。目的がはっきりすれば、弁護士は最短の道筋を示せます。

刑事にするか民事にするか

望むこと 適した手段
投稿を消したい 削除請求・仮処分
誰が書いたか知りたい 発信者情報開示命令
賠償を受けたい 民事の損害賠償請求
処罰を求めたい 刑事告訴
再投稿を止めたい 示談で禁止条項と違約金を定める

刑事告訴は、処罰を求める手段であって、賠償を得る手続きではありません。金銭の回復を望むなら民事、二度と書かせないことを望むなら示談での合意が、それぞれ目的に合っています。両方を組み合わせることもできます。

他人の投稿を拡散した場合

自分で書いた言葉でなくても、他人の中傷投稿を引用したり、コメントを付けて広めたりすれば、責任を問われることがあります。拡散によって被害が広がる以上、単なる伝達とは評価されないからです。

「面白いと思っただけ」「注意喚起のつもりだった」という動機でも、書かれた本人にとっては同じ被害です。真偽の確かめられない中傷は、拡散しないことが基本です。拡散した側にも法的な責任が生じうると知っておいてください。

侮辱罪に関するよくある質問

一度だけの投稿でも罪になりますか

成立しえます。ただし、実務では、繰り返しの投稿や集中的な中傷のほうが立件されやすい傾向があります。一度でも、内容が著しく人格をおとしめるものであれば、対象になります。

匿名でも特定されますか

されます。発信者情報開示請求によって、投稿者の氏名や住所が明らかになります。2022年10月からは手続きが簡素化され、特定までの期間も短くなりました。

削除すれば罪に問われませんか

削除しても、成立した犯罪がなくなるわけではありません。もっとも、すぐに削除して謝罪した事実は、処分を決める際に有利な事情として扱われます。

子どもが書き込んだ場合はどうなりますか

14歳以上であれば刑事責任を問われ、少年事件として家庭裁判所で扱われます。14歳未満でも、民事の損害賠償について保護者が責任を負うことがあります。

示談金の相場はどのくらいですか

事案によりますが、10万円から30万円程度が一つの目安です。投稿の数、内容の悪質さ、拡散の程度、被害者が受けた影響によって変わります。

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