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ある日突然、自分や家族が警察に逮捕されたら——頭が真っ白になり、これから何が起きるのか想像もつかない、というのが正直なところではないでしょうか。逮捕は人生でそう何度も経験するものではありません。だからこそ、正しい知識がないまま不安だけが膨らみ、取り返しのつかない対応をしてしまう人が後を絶たないのです。
この記事では、逮捕された直後から起訴・不起訴が決まるまでの流れを、時系列にそって弁護士の視点でわかりやすく解説します。やってはいけないこと、すぐにとるべき対処法、そして家族にできることまで、現場で実際に役立つ知識を一通りお伝えします。落ち着いて読み進めてください。きっと、次に何をすべきかが見えてくるはずです。
逮捕されたら、最初の72時間で何が起きるのか
逮捕されてまず知っておいてほしいのは、「逮捕されたからといって、すぐに刑務所に入るわけではない」ということです。逮捕は、あくまで捜査の入口にすぎません。テレビドラマの印象から「逮捕=有罪・服役」と思い込んでいる方が多いのですが、実際の手続きはまったく違います。
日本の刑事手続きでは、逮捕された人の身柄をいつまでも警察が拘束し続けることはできません。法律によって時間が厳格に区切られているのです。最初の山場が、逮捕から最大72時間という時間制限です。
逮捕された人は、まず警察署の留置場に身柄を置かれます。警察は48時間以内に取り調べを行い、事件を検察官に引き継ぐ(送致する)かどうかを決めます。送致を受けた検察官は、さらに24時間以内に、引き続き身柄を拘束する必要があるか(勾留を請求するか)を判断します。この合計72時間のあいだ、原則として家族でさえ自由に面会することはできません。会えるのは弁護士だけ、という状況が生まれるのはこのためです。
たとえば、金曜日の夜に逮捕されたケースを考えてみましょう。本人は留置場で週末を過ごし、家族は連絡が取れないまま不安な時間を過ごすことになります。「土日だから手続きが止まる」ということはなく、時間制限は休日でも進みます。こうした状況で家族が真っ先にできるのは、弁護士に連絡を取ることです。弁護士であれば土日であっても接見に向かい、本人の様子を家族に伝えられます。何の情報もないまま週末を過ごすのと、専門家から見通しを聞けるのとでは、精神的な負担がまるで違います。
そもそも逮捕とは?3つの種類を知っておこう
ひとくちに逮捕といっても、法律上は3つの種類があります。どの逮捕にあたるかによって、手続きの入口が少し変わってきます。まずはこの違いを整理しておきましょう。
通常逮捕(後日逮捕)
もっとも一般的なのが通常逮捕です。裁判官があらかじめ発付した逮捕状にもとづいて行われます。捜査機関が証拠を集め、「この人が犯人である」と裁判官を説得できるだけの理由(嫌疑)がそろった段階で、逮捕状が出されます。事件から時間が経ってから、ある日突然自宅に警察が来る、というケースの多くはこの通常逮捕です。
現行犯逮捕
犯罪をまさに行っている、あるいは行い終わった直後の人を、その場で逮捕するのが現行犯逮捕です。現行犯の場合は犯人であることが明らかなため、逮捕状は不要とされています。さらに現行犯逮捕には大きな特徴があります。警察官だけでなく、一般の私人でも逮捕できるという点です。万引きの現場で店員に取り押さえられる、痴漢を疑われて被害者や周囲の人に取り押さえられる、といったケースがこれにあたります。
緊急逮捕
重大な犯罪について、犯人だと疑うに足りる十分な理由があり、かつ逮捕状を待っていては逃げられてしまうおそれがある——そんな緊急の場面で、先に身柄を確保してから直ちに逮捕状を求めるのが緊急逮捕です。例外的な手続きであり、対象となる犯罪も死刑・無期・長期3年以上の懲役にあたる重い罪に限られています。
逮捕から勾留までの流れ|タイムライン
ここからが、もっとも重要なパートです。逮捕されてから、起訴・不起訴が決まるまでの流れを時系列で見ていきましょう。全体像をつかんでおくと、「いま自分(家族)はどの段階にいるのか」が分かり、不安がぐっと和らぎます。
- 逮捕(0時間):警察に身柄を確保され、留置場に入ります。弁護士を呼ぶ権利、黙秘する権利が告げられます。
- 警察の取り調べ(〜48時間):警察は48時間以内に、事件を検察官へ送致するか釈放するかを決めます。軽微な事件では、ここで釈放され在宅で捜査が続くこともあります。
- 検察官送致・送検(48時間前後):身柄と事件記録が検察官へ引き継がれます。検察官も改めて取り調べを行います。
- 勾留請求(〜送致から24時間):検察官が「引き続き身柄拘束が必要」と判断すると、裁判官に勾留を請求します。逮捕から通算で最大72時間です。
- 勾留質問・勾留決定:裁判官が本人に話を聞いたうえで、勾留するかどうかを決めます。勾留が認められると、長期の身柄拘束が始まります。
逮捕後の身柄拘束について、より詳しい仕組みは次の記事でも解説しています。あわせて読むと理解が深まります。
この72時間の流れの中で、本人ができることは実はそれほど多くありません。だからこそ、外部とつながる唯一の窓口である弁護士の存在が決定的に重要になります。逆に言えば、ここで弁護士がつくかどうかで、その後の展開が大きく変わるのです。
勾留されると最長20日間拘束される
勾留が決定すると、身柄拘束は一気に長期化します。これが、被疑者本人にとっても家族にとっても、最大の負担となる局面です。
勾留の期間は、まず原則10日間。そして、捜査が終わらない場合には、検察官の請求によってさらに最大10日間延長されます。つまり、勾留だけで最長20日間。逮捕からの72時間と合わせると、起訴・不起訴が決まるまでに最長で23日間にわたって身柄を拘束されることになります。
23日間と聞いて、長いと感じた方は多いはずです。実際、この期間は社会生活に深刻な影響を与えます。会社に出勤できず、学校にも行けません。理由を説明できないまま長期間姿を消すことになり、勤務先や学校に事件を知られてしまうリスクも高まります。だからこそ、一日でも早く身柄を解放してもらうための弁護活動が重要になるのです。
勾留が認められる3つの要件
勾留は自動的に決まるわけではありません。裁判官が次の要件をチェックし、必要性があると判断したときにだけ認められます。
- 住居不定:決まった住まいがない場合
- 罪証隠滅のおそれ:証拠を隠したり、関係者と口裏を合わせたりする可能性がある場合
- 逃亡のおそれ:逃げてしまう可能性がある場合
裏を返せば、弁護人がこれらの「おそれ」がないことを具体的に示すことができれば、勾留を回避できる可能性があります。例えば、家族が身元を引き受けて監督することを約束する、被害者とすでに示談が進んでいることを示す、といった主張が有効に働く場面があります。
起訴されるかどうかが運命の分かれ目
身柄拘束の期間が終わると、検察官は「起訴」するか「不起訴」にするかを決めます。この判断こそが、刑事事件における最大の分岐点です。
ここで誤解されがちなのですが、逮捕されたからといって必ず裁判になるわけではありません。検察官には、証拠が十分でも、被疑者の反省や被害者との示談状況などを考慮して、あえて起訴しない(起訴猶予)という選択肢が与えられています。
起訴と不起訴で、その後の人生はまるで変わってきます。起訴されれば刑事裁判となり、有罪になれば前科がつきます。一方、不起訴であれば前科はつきません。この違いがどれほど大きいか、就職や資格、海外渡航などへの影響を考えれば想像にかたくないでしょう。両者の違いについては、こちらの記事で詳しく整理しています。
そして、不起訴を勝ち取るうえで決定的な役割を果たすのが、被害者がいる事件における示談です。検察官は、被害者が加害者を許している(宥恕している)という事実を非常に重視します。示談が成立しているかどうかで、起訴・不起訴の結論が変わることは珍しくありません。
具体的にイメージしてみましょう。たとえば、口論の末に相手を殴ってけがをさせてしまった傷害事件で、加害者が被害者にきちんと謝罪し、治療費や慰謝料を支払って示談が成立したとします。被害者が「もう処罰を望まない」という意思を示せば、検察官はそれを重く受け止め、不起訴(起訴猶予)とする可能性が高まります。逆に、被害感情が強く残ったまま示談ができなければ、同じような事件でも起訴に踏み切られることがあります。この差は、本人や家族にとって計り知れないほど大きいものです。
逮捕後にやってはいけない5つのこと
逮捕という極限状態では、冷静な判断が難しくなります。しかし、ここでの一つひとつの選択が、結果を大きく左右します。弁護士として数多くの事件を見てきた経験から、特に避けてほしい行動を5つ挙げます。
1. その場しのぎの嘘をつく
「とにかくこの場を切り抜けたい」という思いから、事実と違う説明をしてしまう人がいます。しかし、捜査機関は客観的な証拠を握っていることが多く、嘘はほぼ確実に見抜かれます。一度嘘がばれると、本当のことを話しても信用されにくくなり、かえって不利になります。
2. 取り調べで安易に署名・押印する
取り調べでは、供述内容をまとめた調書が作成され、署名・押印を求められます。この調書は、後の裁判で極めて重い証拠となります。内容をよく確認しないまま、あるいは納得できないまま署名してしまうと、後から「言っていない」と覆すのは非常に困難です。
3. 家族や関係者に連絡を取ろうとする
心配をかけたくない、口裏を合わせたい——理由はさまざまですが、勝手に関係者へ連絡を取ろうとする行為は「罪証隠滅のおそれあり」と判断され、勾留や起訴につながりやすくなります。
4. 感情的になって捜査官と対立する
不当な扱いに腹が立つ気持ちは分かります。しかし、捜査官と感情的に衝突しても得るものはありません。反省の態度が見られないと評価され、処分が重くなる方向に働くこともあります。
5. 弁護士をつけずに我慢する
「お金がかかるから」「自分は悪くないから」と、弁護士を呼ばずに耐えようとする人がいます。これが最も避けてほしい選択です。逮捕直後の72時間は、外部と切り離された孤独な時間です。法律の専門家のサポートなしに乗り切ろうとするのは、あまりにリスクが大きいといえます。
逮捕されたとき・された直後にとるべき対処法
では、逮捕されたとき、あるいは逮捕されそうなとき、本人は何をすればよいのでしょうか。やってはいけないことの裏返しでもありますが、改めて整理します。
黙秘権を正しく使う
誰にでも、自分に不利なことを話さなくてよい権利(黙秘権)が保障されています。取り調べで何を話すべきか判断がつかないときは、無理に話さず「弁護士と相談してから答えます」と伝えるのが安全です。これは決して後ろめたいことではなく、法律で認められた正当な権利です。
当番弁護士・国選弁護人の制度を使う
「弁護士に頼むお金がない」という方のために、逮捕された人が一度だけ無料で弁護士を呼べる当番弁護士という制度があります。また、一定の要件を満たせば、費用を国が負担する国選弁護人を選任することもできます。まずは弁護士と接見し、見通しを聞くことから始めましょう。
記憶が新しいうちに事実を整理する
事件の前後で何があったのか、自分の認識を時系列で正確に整理しておくことは、弁護活動の出発点になります。あいまいな記憶のまま取り調べに臨むと、誘導に乗ってしまうおそれがあります。
身柄拘束が長引きそうなときには、保釈という制度を使って早期の解放を目指す道もあります。保釈は起訴後に認められる制度ですが、仕組みを知っておくと見通しが立てやすくなります。
家族が逮捕されたと連絡が来たら
逮捕される本人だけでなく、その家族もまた、大きな不安と混乱の中に置かれます。「警察から連絡が来たが、何をすればいいのか分からない」という相談は本当に多いものです。家族にできることを整理しておきましょう。
まず知っておいてほしいのは、先ほど述べたとおり、逮捕直後の72時間は家族でも面会できないのが原則だということです。差し入れも制限されます。「会いに行けば話せる」と思って警察署に駆けつけても、会えないまま帰されることが少なくありません。
この段階で家族にできる最も効果的なことは、弁護士に依頼することです。弁護士であれば、72時間の間でも本人と接見し、状況を確認したうえで、家族に見通しを伝えることができます。本人を励まし、取り調べへの対応をアドバイスし、早期の身柄解放に向けて動き出せます。
家族の立場でとるべき具体的な対応については、こちらの記事でさらに詳しく解説しています。
早期の弁護士依頼が結果を大きく変える
ここまで読んで、「とにかく早く弁護士に相談することが大事だ」と感じていただけたなら、それがこの記事で最もお伝えしたかったことです。刑事事件は、時間との勝負だからです。
弁護士が早期に介入することで、次のような活動が可能になります。
| 局面 | 弁護士ができること |
|---|---|
| 逮捕直後 | 本人と接見し、取り調べへの対応を助言。黙秘権の行使などを支える |
| 勾留前 | 検察官・裁判官に意見し、勾留の回避や早期釈放を求める |
| 捜査中 | 被害者と示談交渉を進め、宥恕を得る。再発防止策を整える |
| 処分前 | 検察官に不起訴を働きかけ、有利な事情を主張する |
| 起訴後 | 保釈を請求し、公判で執行猶予などを目指す |
とくに、被害者との示談は、加害者本人や家族が直接行うのは現実的に困難です。被害者の連絡先が分からなかったり、感情的な対立から交渉が成立しなかったりするためです。弁護士が間に入ることで、はじめて冷静な話し合いが可能になります。どの弁護士に相談すればよいか迷ったら、刑事事件の経験が豊富な弁護士を選ぶことが大切です。
逮捕に関するよくある質問
逮捕されたら必ず会社にばれますか?
必ずばれるわけではありません。ただし、勾留によって長期間出勤できなくなれば、知られてしまう可能性は高まります。早期の身柄解放を目指すことが、社会生活への影響を最小限に抑えるうえで重要です。
逮捕されても前科がつかないことはありますか?
あります。不起訴になれば前科はつきません。前科は、起訴されて有罪が確定したときに初めてつくものです。だからこそ、不起訴を目指す弁護活動が意味を持ちます。
取り調べでは正直にすべてを話したほうがよいですか?
一概にそうとは言えません。話すべきこと、話さないほうがよいことは事件によって異なります。判断に迷うときは、弁護士に相談してから対応するのが安全です。黙秘権を使うこと自体は不利になりません。
逮捕されてから弁護士に連絡するまで、どのくらい時間がかかりますか?
当番弁護士制度を使えば、要請から比較的早く弁護士が接見に来ます。家族が私選で依頼する場合も、対応の早い事務所であれば即日動いてもらえることがあります。一刻も早く連絡することをおすすめします。
身に覚えがないのに逮捕されました。どうすればよいですか?
まず落ち着いて、安易に署名・自白をしないことが大切です。無実を主張するうえでも、弁護士のサポートは欠かせません。記憶が新しいうちに事実を整理し、弁護士と方針を立てましょう。やってもいない罪を「早く帰りたい」という一心で認めてしまうと、その自白が決定的な証拠として扱われ、後から覆すのが極めて難しくなります。
逮捕と勾留は何が違うのですか?
逮捕は最長72時間という短い身柄拘束で、捜査の入口にあたる手続きです。これに対して勾留は、逮捕に続いて行われる長期(最長20日間)の身柄拘束を指します。逮捕がそのまま勾留につながるとは限らず、勾留請求が却下されればこの段階で釈放されることもあります。
勾留を避けて、自宅から捜査を受けることはできますか?
可能な場合があります。身柄を拘束せずに捜査を進める「在宅事件」という形があり、弁護人が逃亡や証拠隠滅のおそれがないことを示せば、勾留を回避できることがあります。仕事や家庭への影響を抑えたい方にとって、在宅で進められるかどうかは大きな分かれ目です。
初犯でも逮捕されますか?また実刑になりますか?
初犯であっても、事件の内容によっては逮捕されます。ただし、初犯であることや反省していること、被害者と示談していることなどは、処分を軽くする方向に働く重要な事情です。初犯で被害も大きくない事件では、不起訴や執行猶予となり、すぐに社会復帰できるケースも多くあります。
弁護士費用はどのくらいかかりますか?
費用は事務所や事件の内容によって幅がありますが、起訴前の弁護活動には数十万円程度が一つの目安となります。経済的に余裕がない場合は、当番弁護士(初回無料)や国選弁護人といった制度を活用できます。まずは費用面も含めて、率直に弁護士へ相談してみてください。
まとめ|逮捕されたら、まず弁護士に相談を
逮捕は、人生を揺るがす重大な出来事です。しかし、逮捕イコール有罪でも、逮捕イコール服役でもありません。逮捕後の72時間、そして最長23日間の身柄拘束という限られた時間の中で、どう動くかによって結果は大きく変わります。
やってはいけないことを避け、黙秘権を正しく使い、何よりも早く弁護士に相談する。この記事でお伝えしたことを思い出してください。あなた自身、あるいは大切な家族が逮捕という事態に直面したとき、落ち着いて正しい一歩を踏み出せるよう願っています。一人で抱え込まず、まずは刑事事件にくわしい弁護士の力を借りることを考えてみてください。最初の一本の電話が、その後の人生を守る大きな分かれ目になることも少なくありません。