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拘禁刑とは?2025年6月に始まった新しい刑罰
ニュースで「拘禁刑2年」「拘禁刑の判決」という言葉を聞く機会が増えました。以前なら「懲役2年」と報じられていた場面です。拘禁刑とは、2025年6月1日に施行された改正刑法によって、それまでの懲役と禁錮を一本化して新しく設けられた刑罰です。明治時代に刑法ができて以来、刑罰の種類が変わるのは初めてで、日本の刑事司法にとって大きな転換点といえます。
「懲役と何が違うのか」「刑務所での生活は変わるのか」「改正前の事件はどうなるのか」。家族が刑事事件の当事者になった方や、裁判を控えている方からは、こうした質問が多く寄せられます。この記事では、拘禁刑の仕組み、懲役・禁錮との違い、改正の背景、刑の重さの考え方、執行猶予や仮釈放との関係、改正前の事件への適用までを、弁護士の視点で詳しく解説します。
結論を先にいえば、拘禁刑は「刑務所に収容する刑」という点では懲役と同じです。大きく変わったのは、収容中に何をするかです。懲役では刑務作業が義務でしたが、拘禁刑では、一人ひとりの特性に合わせて、作業だけでなく教育や指導、治療的な処遇を柔軟に組み合わせられるようになりました。罰を与えることよりも、再び罪を犯さないよう立ち直らせることに重点を移した刑罰です。
たとえば、覚醒剤の使用で服役する人を考えてみましょう。懲役の時代は、刑務所での一日の大半を作業に費やし、薬物依存から抜け出すための指導は限られた時間しか受けられませんでした。拘禁刑では、作業の時間を減らしてでも、依存症の回復プログラムに多くの時間を充てることができます。出所した後に再び薬物に手を出さないよう、刑務所にいる間から治療に取り組めるようになったわけです。
同じように、読み書きや計算が苦手な若い受刑者には教科指導を、仕事の経験が乏しい人には職業訓練を、高齢で体力の衰えた人には健康の維持や福祉的な支援を、といった具合に、受刑者の事情に合わせて刑務所での過ごし方を変えられるようになりました。一律に同じ作業をさせるのではなく、一人ひとりに必要なことを行わせる。これが拘禁刑の基本的な考え方です。
日本の刑罰の種類
改正後の刑法が定める主な刑罰は、重い順に次のとおりです。
| 刑罰 | 内容 | 期間・金額 |
|---|---|---|
| 死刑 | 生命を奪う刑 | なし |
| 拘禁刑 | 刑事施設に収容し、必要な作業や指導を行わせる | 無期、または1か月以上20年以下(加重で30年まで) |
| 罰金 | 金銭を国に納めさせる | 1万円以上 |
| 拘留 | 刑事施設に短期間収容する | 1日以上30日未満 |
| 科料 | 少額の金銭を納めさせる | 1,000円以上1万円未満 |
このほか、主な刑に付け加えて科される没収があります。改正前は、死刑の次に懲役、禁錮の順でしたが、この二つがまとめられて拘禁刑になりました。
拘禁刑という言葉の意味
「拘禁」とは、人の身体を一定の場所に閉じ込めて自由を奪うことを意味します。拘禁刑という名前には、刑の本質は自由を奪うことにあり、その間に何をさせるかは本人の立ち直りに合わせて決める、という考え方が込められています。懲役の「懲」には懲らしめる、「役」には労役を課すという意味がありましたから、名前からも刑罰の考え方の変化が読み取れます。
なお、拘禁刑と似た言葉に、勾留や拘留があります。勾留は捜査や裁判のための身柄拘束で、刑罰ではありません。拘留は30日未満の短い刑罰です。拘禁刑はこれらとはまったく別の、刑務所に収容する本格的な刑罰である点を押さえておいてください。
| 言葉 | 性質 | 期間 |
|---|---|---|
| 拘禁刑 | 判決で言い渡される刑罰 | 1か月以上20年以下、または無期 |
| 拘留 | 判決で言い渡される軽い刑罰 | 1日以上30日未満 |
| 勾留 | 捜査・裁判のための身柄拘束(刑罰ではない) | 起訴前は最大20日、起訴後は更新あり |
懲役・禁錮と拘禁刑の違い
拘禁刑を理解するには、改正前の懲役と禁錮がどのような刑だったかを知っておくとわかりやすくなります。
| 比べる点 | 懲役(改正前) | 禁錮(改正前) | 拘禁刑(改正後) |
|---|---|---|---|
| 刑務所への収容 | あり | あり | あり |
| 刑務作業 | 義務 | 義務なし(希望すれば作業できた) | 一律の義務ではなく、必要に応じて作業を行わせる |
| 教育・指導 | 作業の合間に実施 | 限定的 | 改善更生のために正面から行わせることができる |
| 主な対象 | 窃盗、詐欺、傷害など大半の犯罪 | 過失運転致死傷、業務上過失致死傷など | 懲役・禁錮の対象だった犯罪すべて |
懲役では、受刑者は原則として毎日、刑務作業に従事しなければなりませんでした。作業時間が長く、教育や更生のためのプログラムに十分な時間を割けないことが課題とされてきました。禁錮は作業の義務がない刑でしたが、実際には禁錮の受刑者の多くが自ら希望して作業に従事していて、懲役との区別は形だけになっていました。
拘禁刑では、刑務所は受刑者の年齢、犯罪の内容、依存症の有無、学力などを踏まえて、作業、教科指導、職業訓練、薬物依存の回復プログラム、性犯罪の再犯防止指導などを組み合わせた処遇を行います。作業は「罰」ではなく「立ち直りのための手段の一つ」と位置づけ直されたのが最大の違いです。
拘禁刑の条文のポイント
改正後の刑法12条は、拘禁刑は刑事施設に拘置し、拘禁刑に処せられた者には、改善更生を図るため、必要な作業を行わせ、または必要な指導を行うことができると定めています。懲役の規定にあった「所定の作業を行わせる」という義務づけの表現がなくなり、「改善更生を図るため」という目的が明記された点に、改正の趣旨が表れています。
禁錮はどのような犯罪に科されていたか
改正前、禁錮が定められていたのは、主に政治犯や過失犯でした。交通事故で人を死傷させた過失運転致死傷罪、業務上の不注意で事故を起こした業務上過失致死傷罪、内乱に関する罪などが代表例です。故意に悪いことをしたわけではない、あるいは思想や信条に基づく行為であるため、労役を課して懲らしめるのは適切でない、という考え方から、作業の義務がない禁錮が設けられていました。
しかし実際には、禁錮の受刑者の多くが、刑務所での単調な生活を避けるために自ら作業を希望していました。統計でも、禁錮受刑者の大半が作業に従事している状態が続いており、懲役と禁錮を分ける実益はほとんどなくなっていました。拘禁刑への一本化は、こうした実態を制度に合わせたものでもあります。
なぜ懲役と禁錮は一本化されたのか
刑罰の見直しは、法制審議会での長い議論を経て、2022年6月に改正刑法として成立しました。一本化の理由は、大きく三つあります。
- 再犯の防止:刑務所を出た人が再び罪を犯す割合が高く、作業中心の処遇では立ち直りに必要な教育や治療が不足していた
- 受刑者の高齢化:高齢や障害のある受刑者が増え、一律の刑務作業が実情に合わなくなっていた
- 禁錮の形骸化:禁錮受刑者の大半が作業を希望しており、懲役と区別する意味が薄れていた
特に再犯の問題は深刻です。刑法犯で検挙される人のうち、再犯者が半数前後を占める状態が続いてきました。刑務所で罰を受けるだけでは、出所後に仕事や住まいを見つけられず、再び罪を犯してしまう人が少なくありません。拘禁刑は、刑務所にいる間から社会復帰の準備を進められるようにすることで、この悪循環を断ち切ることを目指しています。
あわせて、執行猶予の制度も見直され、再度の執行猶予を言い渡せる範囲が広がりました。刑務所に入れるかどうかの判断でも、社会の中での立ち直りを重視する方向へ舵が切られたといえます。
海外の刑罰との比較
懲役のように刑務作業を刑の内容として義務づける制度は、国際的には少数派でした。多くの国では、自由を奪うこと自体を刑の本質とし、収容中の処遇は教育や社会復帰の支援を中心に組み立てられています。国連の被拘禁者処遇最低基準規則(マンデラ・ルール)も、刑務所での作業は処罰の手段ではなく、社会復帰のための機会として位置づけるべきだとしています。拘禁刑の導入によって、日本の刑罰は国際的な考え方に近づいたといえます。
拘禁刑になると刑務所での生活はどう変わるか
拘禁刑の受刑者は、入所後に心理や能力の調査を受け、一人ひとりに合った処遇の計画が立てられます。作業にどれだけの時間を充てるか、どのような教育や指導を受けるかは、その計画に基づいて決まります。
| 受刑者の特性 | 重点を置く処遇の例 |
|---|---|
| 若年で学力が不十分 | 教科指導、高校卒業程度認定試験の受験支援 |
| 薬物依存がある | 薬物依存離脱指導、医療的な支援 |
| 性犯罪を繰り返している | 性犯罪再犯防止指導 |
| 高齢・障害がある | 体力に応じた作業、福祉的な支援、出所後の生活調整 |
| 就労経験が乏しい | 職業訓練、資格取得の支援 |
作業がなくなるわけではありません。規則正しい生活習慣や働く力を身につけるために、多くの受刑者にとって作業は引き続き処遇の中心の一つです。ただし、作業の時間を減らして、そのぶん教育やプログラムに充てるといった柔軟な運用が可能になりました。作業に対して支払われる作業報奨金は、拘禁刑でも引き続き支給されます。
受刑者から見た変化
受刑者にとっての変化は、刑務所の中で「何のために何をするのか」が明確になった点にあります。
作業は懲らしめのためではなく、働く習慣や技能を身につけるためのものとされ、教育や指導も含めて、すべてが社会復帰に向けた準備として組み立てられます。刑務所での取り組みの様子は、仮釈放を判断するうえでも考慮されるため、処遇に前向きに取り組むことは、本人にとって早期の社会復帰につながります。出所後の仕事につながる訓練を受けられる、依存症の治療に取り組める、といった機会が広がることで、社会に戻った後の見通しを持ちやすくなります。家族にとっても、本人が刑務所で立ち直りに向けた取り組みをしていることは、出所後の生活を支えるうえで心強い材料になるでしょう。
出所後の生活への影響
拘禁刑の狙いは、刑務所を出た後に再び罪を犯さず、社会の一員として暮らしていけるようにすることです。そのため、刑務所の中で職業訓練を受けて資格を取る、出所後に働ける職場を刑務所と地域が連携して探す、住まいのない人には更生保護施設や福祉の支援につなげる、といった取り組みが重視されています。
家族にとっても、本人の出所後の生活をどう支えるかは大きな課題です。仮釈放を受けるには、出所後の住まいと身元を引き受ける人が決まっていることが大切な条件になります。家族が身元を引き受ける場合は、保護観察所の調査に協力し、本人との面会や手紙で出所後の生活について話し合っておくと、仮釈放の判断にも良い影響を与えます。
受刑者の家族が知っておきたいこと
家族が拘禁刑の実刑判決を受けて刑務所に収容された場合、面会や手紙のやり取りは続けられます。刑務所での面会は、受刑者の処遇の段階に応じて回数が決まっていて、一般に月に数回程度です。面会の時間は30分程度で、刑務官が立ち会うのが原則です。手紙も、処遇の段階に応じて出せる回数が決まっています。
| 項目 | 刑務所での扱い |
|---|---|
| 面会 | 処遇の段階に応じて月に数回。親族が中心 |
| 手紙 | 回数の制限あり。内容は職員が確認する |
| 差し入れ | 現金、書籍、衣類など。施設のルールによる |
| 電話 | 処遇の段階が進んだ受刑者に限り認められることがある |
家族との交流は、受刑者が社会とのつながりを保ち、出所後の生活を具体的に思い描くための大切な支えです。拘禁刑のもとでは、家族との関係を維持することも社会復帰の準備の一環として重視されています。遠方で面会が難しい場合も、手紙を通じて近況を伝え合うことをおすすめします。
拘禁刑の重さと期間
拘禁刑には、期間の定めのない無期拘禁刑と、期間の定めのある有期拘禁刑があります。有期拘禁刑の期間は1か月以上20年以下で、罪が重なったり刑が加重されたりすると30年まで、減軽されると1か月未満にすることもできます。
各犯罪の法定刑も、懲役・禁錮の表記がそのまま拘禁刑に置き換えられました。刑の長さそのものは変わっていません。
つまり、改正によって刑が軽くなったり重くなったりしたわけではありません。変わったのは刑罰の名前と、刑務所での処遇の中身です。「拘禁刑になって刑が軽くなるのでは」と期待する声や、反対に「新しい刑で重くなるのでは」と心配する声を聞くことがありますが、法定刑の上限や下限は改正前と同じです。
| 罪名 | 改正前の法定刑 | 改正後の法定刑 |
|---|---|---|
| 窃盗罪 | 10年以下の懲役または50万円以下の罰金 | 10年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金 |
| 詐欺罪 | 10年以下の懲役 | 10年以下の拘禁刑 |
| 傷害罪 | 15年以下の懲役または50万円以下の罰金 | 15年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金 |
| 過失運転致死傷罪 | 7年以下の懲役もしくは禁錮または100万円以下の罰金 | 7年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金 |
| 強盗罪 | 5年以上の有期懲役 | 5年以上の有期拘禁刑 |
懲役か禁錮かを選べた罪では、選択肢が拘禁刑に一本化されました。
交通事故の加害者のように、以前なら禁錮が選ばれることの多かった人も、今後は拘禁刑として刑務所に収容され、必要に応じて作業や交通安全に関する指導を受けることになります。被害者の側から見れば、加害者が刑務所で事故の重さと向き合う指導を受けられるようになった点は、一つの変化といえるでしょう。たとえば過失運転致死傷罪は、以前は懲役か禁錮かを裁判官が選んでいましたが、いまは拘禁刑の中で期間を決めることになります。
判決文の読み方
判決では、たとえば「被告人を拘禁刑2年に処する。この裁判が確定した日から4年間その刑の執行を猶予する」と言い渡されます。前半が刑の重さ、後半が執行猶予の期間です。執行猶予がつかない場合は、前半だけが言い渡され、判決が確定すると刑務所に収容されます。未決勾留日数の算入が言い渡されると、判決前に勾留されていた日数の一部が刑期から差し引かれます。判決の意味がわからない場合は、その場で弁護士に確認してください。
判決の内容に納得できない場合は、言渡しの翌日から数えて14日以内に控訴できます。控訴しなければ判決は確定し、実刑であれば刑務所への収容の手続きが進みます。控訴するかどうかは、判決の理由や見通しを弁護士とよく検討して決めてください。控訴審では、第一審の判断に誤りがあるかどうかが審理され、新たに示談が成立したといった事情があれば、刑が軽くなる可能性もあります。
罰金との違いと、罰金を払えない場合
拘禁刑と罰金は、どちらも刑罰ですが、性質は大きく異なります。拘禁刑は身体の自由を奪う刑で、罰金は財産を奪う刑です。同じ罪でも、法定刑に「拘禁刑または罰金」と定められていれば、裁判官は事件の内容に応じてどちらかを選びます。初犯で被害が軽く、示談も成立している事件では罰金が選ばれやすく、悪質な事件や前科がある場合には拘禁刑が選ばれやすくなります。
罰金を納められない場合は、労役場に留置され、1日あたり一定の金額で換算して、罰金を納めたものとみなされるまで作業をすることになります。留置の期間は、罰金の場合は2年が上限です。罰金を払えないからといって拘禁刑に変わるわけではありませんが、労役場での生活は刑務所に近いものになります。
拘禁刑と執行猶予・仮釈放
拘禁刑にも、懲役のときと同じく執行猶予がつくことがあります。3年以下の拘禁刑を言い渡す場合で、一定の条件を満たせば、1年から5年の範囲で刑の執行を猶予できます。猶予期間を無事に過ごせば、刑務所に入ることはありません。
2025年の改正では、再度の執行猶予の範囲も広がりました。執行猶予中に再び罪を犯した場合でも、言い渡す刑が2年以下の拘禁刑で、情状に特に酌量すべきものがあれば、もう一度執行猶予をつけることができます。改正前は1年以下の刑に限られ、保護観察中の再犯では認められませんでした。
刑務所に入った場合の仮釈放の制度も、拘禁刑に引き継がれています。有期拘禁刑では刑期の3分の1、無期拘禁刑では10年を経過した後、改悛の状があれば、地方更生保護委員会の判断で仮釈放が認められることがあります。拘禁刑では、刑務所での処遇と仮釈放後の保護観察を一体的に考え、社会復帰までを切れ目なく支える運用が目指されています。
仮釈放が認められると、残りの刑期の間は保護観察を受けながら社会で生活します。保護観察官や保護司と定期的に面接し、住居や仕事の状況を報告します。遵守事項に違反すると仮釈放が取り消され、刑務所に戻ることになります。刑務所で身につけたことを、保護観察の期間中に社会の中で実践していく流れが、拘禁刑のもとでの社会復帰の基本的な道筋です。
拘禁刑の受刑者が増える見通し
拘禁刑の導入は、刑務所の運営にも大きな変化をもたらしています。受刑者ごとに処遇の計画を作り、教育や指導の時間を確保するには、刑務官だけでなく、心理の専門家や教育の担当者、福祉の専門職の関わりが欠かせません。制度が始まったばかりの現在は、各地の刑務所で体制づくりが進められている段階です。効果が数字として表れるまでには時間がかかりますが、再犯の減少につながるかどうかが注目されています。
改正前の事件はどうなるのか
拘禁刑は2025年6月1日に施行されました。では、それより前に起きた事件は、懲役と拘禁刑のどちらで裁かれるのでしょうか。
| ケース | 扱い |
|---|---|
| 2025年5月31日までに判決が確定した | 懲役・禁錮のまま執行される(処遇の運用は拘禁刑に準じた見直しが進められる) |
| 2025年5月31日までに犯した罪で、6月1日以降に判決を受ける | 原則として改正前の懲役・禁錮が言い渡される |
| 2025年6月1日以降に犯した罪 | 拘禁刑が言い渡される |
刑罰の法律は、犯罪を行った時点の法律で裁くのが原則です。そのため、施行日の前後にまたがる事件では、しばらくの間、懲役の判決と拘禁刑の判決が並存することになります。報道で「懲役」と「拘禁刑」の両方を見かけるのはこのためです。
前科の扱いにも注意が必要です。資格の欠格事由や、刑の言渡しの効力が失われるまでの期間など、法律で「懲役」や「禁錮」と書かれていた部分は、改正によって「拘禁刑」と読み替えられています。改正前に受けた懲役の前科も、改正後の法律の適用では拘禁刑と同じように扱われます。
たとえば、ある国家資格で「禁錮以上の刑に処せられた者は、刑の執行を終わるまで資格を得られない」と定められていた場合、改正後は「拘禁刑以上の刑」と読み替えられます。改正前に懲役や禁錮の判決を受けた人は、引き続きこの制限の対象になります。資格や就職への影響が気になる場合は、該当する法律の規定を個別に確認することが大切です。
刑罰の変遷を年表で見る
| 年 | 主な出来事 |
|---|---|
| 1907年 | 現行の刑法が制定され、懲役・禁錮などの刑罰が定められる |
| 2016年 | 刑の一部執行猶予の制度が始まる |
| 2022年6月 | 懲役と禁錮を拘禁刑に一本化する改正刑法が成立 |
| 2022年7月 | 侮辱罪の法定刑が引き上げられる |
| 2023年7月 | 性犯罪の規定が改正され、不同意性交等罪などが新設される |
| 2025年6月 | 拘禁刑が施行され、再度の執行猶予の範囲が拡大される |
刑法は、100年以上にわたって大きな骨組みを変えずに運用されてきましたが、この10年ほどの間に、刑罰の中身や性犯罪の規定など、根本的な見直しが相次いでいます。刑事事件の見通しを立てるうえでは、いつの時点の法律が適用されるのかを正確に押さえることが、これまで以上に大切になっています。
拘禁刑が見込まれる事件で弁護士ができること
起訴されると、日本の刑事裁判では多くの場合に有罪判決が出ます。拘禁刑が見込まれる事件では、実刑を避けて執行猶予を得られるか、刑期をどれだけ短くできるかが、本人と家族の人生を大きく左右します。
- 逮捕直後から接見し、取調べへの対応を助言する
- 被害者との示談交渉を進め、不起訴や執行猶予の可能性を高める
- 家族の監督体制や、仕事・住まいなどの生活基盤を整える
- 依存症の治療や再犯防止プログラムへの参加を支援する
- 裁判で情状証人や証拠を用意し、執行猶予が相当であると主張する
拘禁刑の導入で、刑罰の目的はより一層「立ち直り」に重きが置かれるようになりました。裁判でも、本人が再び罪を犯さないためにどのような環境を整えているかが、これまで以上に重視されると考えられます。判決の前から更生への具体的な取り組みを示すことが、刑を軽くするための鍵になります。
裁判員裁判と拘禁刑
殺人や強盗致傷など一定の重大な事件は、市民から選ばれた裁判員が参加する裁判員裁判で審理されます。裁判員は、有罪か無罪かだけでなく、刑の重さを決める量刑の判断にも加わります。拘禁刑の導入によって、裁判員が刑の重さを考える際にも、刑務所でどのような処遇が行われるのか、本人の立ち直りの見込みはどうかといった点が、判断の材料として意識されるようになると考えられます。
弁護側としては、本人の生い立ちや依存症の有無、家族の支えなど、立ち直りの可能性を示す事情を丁寧に伝え、裁判員に理解してもらうことが欠かせません。重大な事件ほど、早い段階から弁護士と準備を進める必要があります。
拘禁刑について弁護士に相談するメリット
拘禁刑への移行によって、刑務所での処遇や執行猶予の範囲など、刑事手続きのいくつかの場面でルールが変わりました。施行日の前後にまたがる事件では、どちらの法律が適用されるか、再度の執行猶予の対象になるかといった判断も必要です。こうした点を正確に見極めるには、改正の内容を踏まえた専門家の助言が欠かせません。
弁護士に相談すれば、事件の見通し、示談の進め方、執行猶予の可能性、家族ができる準備を具体的に確認できます。家族が逮捕された、起訴されて裁判を控えている、執行猶予中にまた事件を起こしてしまった、といった場合は、できるだけ早く相談してください。早く動くほど、取れる手段は多くなります。
相談の際は、逮捕や起訴の日付、容疑の内容、これまでの前科の有無、被害者とのやり取りの状況などを整理しておくと、見通しを具体的に聞くことができます。家族が相談する場合でも、わかる範囲の情報で構いません。弁護士は本人と接見して詳しい事情を確認し、今後の方針を一緒に考えます。
拘禁刑について調べている方の多くは、家族や自分自身が刑事事件の当事者になり、今後どうなるのか不安を抱えているはずです。刑罰の仕組みを知ることは、その不安を和らげる第一歩です。一人で抱え込まず、具体的な事情を弁護士に伝えて、見通しを確かめてください。初回の相談を無料にしている事務所もあります。家族からの相談でも受け付けてもらえるので、まず連絡してみてください。
拘禁刑に関するよくある質問
拘禁刑になると、刑務作業はしなくてよいのですか
作業が一律に義務づけられることはなくなりましたが、刑務所が改善更生のために必要と判断すれば、作業を行わせることができます。多くの受刑者は、教育や指導とあわせて、引き続き作業にも取り組むことになります。
拘禁刑と懲役は、どちらが重いのですか
拘禁刑は懲役と禁錮を一本化したもので、刑の重さを比べる関係にはありません。法定刑の長さは、改正前の懲役・禁錮と同じです。改正前の懲役3年と改正後の拘禁刑3年は、刑務所に収容される期間としては同じ重さです。
改正前に懲役の判決を受けて服役中です。拘禁刑に変わりますか
確定した判決の刑名が拘禁刑に書き換わることはありません。ただし、刑務所での処遇は、拘禁刑の考え方に沿った見直しが順次進められています。
禁錮はもう言い渡されないのですか
2025年6月1日以降に犯した罪については、禁錮が言い渡されることはありません。それより前に犯した罪で、改正前の法律が適用される事件では、禁錮が言い渡されることがあります。
拘禁刑でも前科はつきますか
つきます。拘禁刑は刑罰なので、有罪判決が確定すれば前科になります。執行猶予がついた場合も同じです。
拘禁刑でも罰金と一緒に科されることはありますか
罪によっては、拘禁刑と罰金を併せて科すことが定められているものがあります。たとえば、財産上の利益を目的とした一部の犯罪では、拘禁刑に加えて罰金が科されることがあります。どの刑がどう組み合わされるかは、罪名ごとの法定刑で決まります。
少年にも拘禁刑は言い渡されますか
少年事件は原則として家庭裁判所で保護処分を受けますが、重大な事件で検察官に送致され刑事裁判を受けた場合は、拘禁刑が言い渡されることがあります。少年に対する刑事処分には、刑の長さの幅を持たせた不定期刑などの特則があります。
