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債権譲渡とは?相手の売掛金から回収する方法と注意点

債権譲渡とは?相手の売掛金から回収する方法と注意点

この記事で分かること

  • 債権譲渡とは、債権者の意思で債権の同一性を変えずに他人に移転させる手段です。
  • 債権譲渡は債権の譲渡人と譲受人の合意で成立します
  • 債権譲渡の事実について債務者へ通知する必要があります。

債権譲渡とは、債権者が債権を第三者に譲渡する行為で、債権者の裁量で判断することができます。しかし、債務者にとっては、急に債権者が変わるのでは不安に感じるでしょう。そこで、債権譲渡では、譲渡人が債務者にその旨を通知するか、債務者が承諾をしなければ、債務者その他の第三者に対抗できないことになっています。

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相手が払えないなら、相手の「売掛金」から回収する

取引先から「今は手元にお金がない。でも、うちも別の会社に売掛金があって、来月には入ってくる予定なんだ」と言われたことはありませんか。相手に現金がなくても、相手が第三者からお金を受け取る権利を持っているなら、その権利を譲り受けることで回収できることがあります。これが、債権譲渡を使った回収です。

債権譲渡とは、お金を請求する権利を、ほかの人に譲り渡すことです。物を売り買いするのと同じように、権利そのものを売り買いするイメージです。取引先が持っている売掛金を、支払いの代わりに譲ってもらえば、自社はその売掛金の支払いを、取引先の取引先から直接受けることができます。

債権譲渡は、回収の手段としてだけでなく、担保や資金調達の手段としても広く使われています。会社の実務では、とても身近な取引です。一方で、譲り受けたことを相手や第三者に主張するための手続き(対抗要件)を誤ると、せっかく譲り受けた債権をほかの債権者に奪われてしまうこともあります。また、2020年4月の民法改正で、債権譲渡のルールは大きく変わりました。

この記事では、債権回収の相談を受ける弁護士の立場から、債権譲渡の仕組み、回収の手段としての使い方、対抗要件の備え方、譲渡を禁止する特約の扱い、トラブルになりやすい場面までを、具体例を交えて説明していきます。

債権譲渡は、相手の協力があって初めて使える手段です。相手が支払いを完全に拒んでいる場合は使えませんが、払う意思はあるのに現金がない、という相手に対しては、差押えよりも早く、穏やかに回収できる方法になります。相手と話し合いができるうちに、選択肢の一つとして検討してください。

債権譲渡とは|三人が登場する取引

債権譲渡には、三人の当事者が登場します。誰がどの立場にあたるかを最初に整理しておくと、この先の説明が分かりやすくなります。

立場 役割 回収の場面での例
譲渡人 債権を譲り渡す人 自社に代金を払えない取引先
譲受人 債権を譲り受ける人 自社
債務者 譲り渡される債権の支払い義務を負う人 取引先の取引先

債権譲渡は、譲渡人と譲受人の合意だけで成立します。書面がなくても成立しますが、後の争いを防ぐため、必ず契約書を交わします。債務者の同意は必要ありません。債務者から見れば、支払う相手が変わるだけで、支払う額や条件は変わらないからです。

債権譲渡が使われる場面

  • 代金を払えない相手から、相手の売掛金を支払いの代わりに譲り受ける(回収)
  • 相手の現在と将来の売掛金を、担保として譲り受けておく(担保)
  • 自社の売掛金を、期日前に売却して現金化する(資金調達)
  • 回収が難しい債権を、専門の業者に売却する(債権の処理)

このうち債権回収の場面では、最初の二つがよく使われます。相手に現金がなくても、相手の取引先が支払い能力のある会社であれば、その売掛金を譲り受けることで、確実に回収できる見込みが高まります。

差押えとの違い

相手の売掛金から回収する方法には、債権譲渡のほかに、判決などを取って売掛金を差し押さえる方法もあります。二つの違いを整理しておきます。

比べる点 債権譲渡 差押え(債権執行)
相手の協力 必要(相手との合意) 不要
判決などの債務名義 不要 必要
手続きの早さ 合意ができればすぐ 債務名義を取るまで時間がかかる
向いている場面 相手に支払う意思はあるが現金がない 相手が支払いを拒んでいる

相手が協力的なら債権譲渡のほうが早く、費用もかかりません。相手が協力しないなら、差押えを使うことになります。

回収の手段としての債権譲渡

支払いが滞っている取引先から債権を譲り受けて回収する方法には、いくつかの形があります。形によって、元の債権がどうなるかが違うので注意が必要です。

形 内容 元の債権の扱い
代物弁済としての譲渡 支払いの代わりに、相手の売掛金を譲り受ける 譲渡の時点で、譲り受けた額に応じて消える
支払いのための譲渡 譲り受けた売掛金を取り立て、回収できた分だけ元の債権に充てる 取り立てができた分だけ消える
担保としての譲渡 支払いが止まったときに備えて、売掛金を担保に取る 支払いが止まるまではそのまま残る

どの形で譲り受けるかは、契約書にはっきり書いておく必要があります。書き方があいまいだと、後で「支払いに代えて譲ったのだから、元の債権はもう消えている」と主張されることもあります。とくに、譲り受けた売掛金が回収できなかった場合の扱いは、必ず決めておきましょう。

支払いのための譲渡が安全

代物弁済として譲り受けると、譲り受けた時点で元の債権は消えます。その後、譲り受けた売掛金が実際には払われなかった場合、元の取引先に請求できなくなるおそれがあります。

これに対して、支払いのための譲渡であれば、譲り受けた売掛金を取り立てて回収できた分だけ元の債権が消え、回収できなかった分は、元の取引先に引き続き請求できます。譲り受ける売掛金が確実に払われるか分からない場合は、支払いのための譲渡として契約しておくのが安全です。

支払いのための譲渡では、譲り受けた売掛金を取り立てる手間は譲受人が負います。債務者が支払いを遅らせたり、減額を求めてきたりした場合も、譲受人が対応することになります。その手間を考えても、相手に現金がない以上、確実な債務者の売掛金を押さえることには大きな価値があります。

譲り受ける債権を確かめる

譲り受ける前に、その売掛金が本当に存在するか、いくらか、いつ払われる予定か、すでにほかの人に譲られていないか、差し押さえられていないかを確かめます。取引先の言葉だけで判断せず、請求書や契約書の写しを出してもらい、可能であれば債務者にも確認をとります。

債務者との関係への配慮

債権譲渡の通知が届くと、債務者、つまり取引先の取引先は、取引先が資金繰りに困っていることを知ることになります。取引先にとっては、自社の信用に関わる事態です。そのため、取引先が譲渡を嫌がることもあります。取引先の協力を得るには、差押えを受けるよりは信用への影響が小さいことや、支払いが済めば取引は正常に戻ることを説明するとよいでしょう。

譲り受けた債権の時効

譲り受けた債権の時効は、譲渡によって振り出しに戻るわけではありません。譲渡人が債権を持っていたときから進んでいた時効は、そのまま引き継がれます。古い売掛金を譲り受ける場合は、支払日と時効の完成日を確かめ、必要なら早めに債務者に請求してください。

資金調達としてのファクタリング

債権譲渡は、自社の資金繰りの手段としても使われます。自社の売掛金を専門の業者に売って、支払期日の前に現金を受け取る取引をファクタリングといいます。取引先に通知して取引先から業者に直接支払ってもらう形と、取引先には知らせずに、自社が回収した代金を業者に渡す形があります。後者は取引先に知られずに済む反面、手数料が高くなる傾向があります。

債権譲渡の契約書と通知書に書くこと

回収の手段として債権を譲り受ける場合は、次の手順で進めます。

  1. 取引先から、譲り受ける売掛金の契約書や請求書の写しを出してもらう。
  2. 譲渡制限特約の有無、支払日、ほかの譲渡や差押えの有無を確かめる。
  3. 取引先と債権譲渡契約書を交わす。
  4. 取引先が署名押印した譲渡通知書を、内容証明郵便で債務者に送る。
  5. 支払日に、債務者から直接支払いを受ける。

債権譲渡契約書に書くこと

  • 譲り渡す債権の特定(債務者、取引の内容、金額、支払日、請求書の番号)
  • 譲渡の目的(支払いに代えてか、支払いのためか、担保のためか)
  • 譲渡人が、債権が存在し、ほかに譲渡や差押えがないことを約束する旨
  • 債務者が支払わなかった場合の、元の債権の扱い
  • 譲渡人が譲渡通知を出すこと、またはその手続きを譲受人に委ねること

譲渡通知書の文例

文例
債権譲渡通知書
当社は、貴社に対して有する下記の債権を、令和8年10月1日付で、○○株式会社に譲渡いたしましたので、ご通知申し上げます。つきましては、今後、下記の債権のお支払いは、○○株式会社に対してなされますようお願い申し上げます。
記 令和8年9月30日付請求書記載の製品代金 金○○円(支払期日 令和8年11月30日)

通知書の差出人は、譲渡人である取引先です。ここを間違えると通知の効力が認められないので注意してください。取引先の代表者の署名押印をもらい、内容証明郵便で送ります。

対抗要件|譲り受けたことを主張するための手続き

債権を譲り受けても、そのことを債務者やほかの債権者に主張するには、法律で決められた手続きが必要です。これを対抗要件といいます。債権譲渡で最も重要なのが、この対抗要件です。

主張する相手 必要な手続き
債務者 譲渡人から債務者への通知、または債務者の承諾
ほかの債権者など第三者 確定日付のある証書による通知や承諾(内容証明郵便など)
法人が譲渡人の場合の第三者 債権譲渡登記でも対抗できる

通知は譲渡人から出す

債務者への通知は、原則として譲渡人、つまり債権を譲り渡した取引先から出す必要があります。譲受人である自社が「債権を譲り受けました」と通知しても、原則として効力はありません。譲受人が勝手に通知できるとすると、嘘の通知で債務者が混乱するからです。

実務では、譲渡の契約を結ぶときに、取引先に通知書に署名押印してもらい、それを自社が預かって、内容証明郵便で債務者に送る、という方法がよくとられます。取引先の協力が得られるうちに、通知の手続きまで済ませておくことが大切です。

譲渡人の協力が得られず、通知書に署名してもらえない場合は、譲渡の契約書で、譲受人に通知を出す権限を与える条項を入れておく方法があります。この場合でも、譲受人が譲渡人の代理人として通知していることを、通知書の中で示す必要があります。

債権譲渡登記という方法

譲渡人が法人の場合は、東京法務局の債権譲渡登記所で、債権譲渡登記をすることもできます。登記をすれば、債務者への通知をしなくても、ほかの債権者に対して譲渡を主張できます。取引先に知られずに担保を確保したい場合や、多数の債務者に対する債権をまとめて譲り受ける場合に便利です。

ただし、登記だけでは債務者に支払いを求めることはできません。債務者から直接支払いを受けるには、登記したことを示す証明書を債務者に渡して通知するか、債務者の承諾を得る必要があります。

確定日付のある通知が必要な理由

同じ売掛金が、二人以上に譲られることがあります。これを二重譲渡といいます。また、ほかの債権者がその売掛金を差し押さえてくることもあります。こうした場合に、誰が優先するかは、確定日付のある通知が債務者に届いた日時の先後で決まります。

内容証明郵便は、郵便局が差し出した日付を証明するので、確定日付のある証書にあたります。普通郵便やメールで通知しただけでは、ほかの債権者に優先を主張できません。回収の手段として債権を譲り受けるなら、必ず内容証明郵便(配達証明付き)で通知してください。

ワンポイントアドバイス
経営が苦しい取引先は、同じ売掛金をほかの債権者にも譲っていることがあります。譲渡の契約を結んだら、その日のうちに内容証明郵便を差し出すくらいの速さが求められます。一日の遅れで、ほかの債権者に先を越されることもあります。

通知が届かなかったときは

内容証明郵便の通知が、債務者の不在などで届かなかった場合は、ほかの債権者に優先を主張できません。配達証明で届いた日を確かめ、戻ってきた場合はすぐに再送するか、債務者に直接届ける方法を考えます。法人が相手なら、債権譲渡登記を併用しておくと、通知の到達に左右されずに第三者への対抗要件を備えられます。

譲渡を禁止する特約|2020年の改正で変わったこと

取引の契約書には、「本契約に基づく債権を第三者に譲渡してはならない」という特約(譲渡制限特約)が入っていることがよくあります。とくに大企業の取引基本契約では、ほぼ必ず入っているといってよいでしょう。改正前の民法では、この特約に反する譲渡は、特約を知っていた譲受人との関係では無効とされていました。

2020年4月の改正で、この扱いが大きく変わりました。

比べる点 改正前 2020年4月以降
特約に反する譲渡の効力 特約を知っていた譲受人には無効 有効
債務者の立場 譲受人への支払いを拒める 特約を知っていたか、重大な過失で知らなかった譲受人には支払いを拒み、元の債権者に払うことができる
債務者の供託 限られた場合のみ 譲渡があれば供託できる
預貯金債権 特約を知っていた譲受人には無効 特約を知っていた譲受人には無効(例外として従来どおり)

改正によって、譲渡制限特約があっても、債権の譲渡そのものは有効になりました。ただし、特約を知っていた譲受人に対しては、債務者は支払いを拒み、元の債権者に支払うことができます。そのため、回収の手段として債権を譲り受ける場合は、譲渡制限特約があるかどうかを必ず確かめ、あれば債務者の承諾を得ておくのが確実です。

債務者が支払いを拒んだ場合

譲渡制限特約を知っていた譲受人に対して、債務者が支払いを拒み、元の債権者にも払わないまま放置している場合、譲受人は、債務者に対して、相当の期間を定めて元の債権者に支払うよう求めることができます。その期間内に債務者が支払わなければ、債務者は以後、譲受人への支払いを拒めなくなります。債務者が支払いを先延ばしにする口実として特約を使うことを防ぐための仕組みです。

債務者は供託もできる

譲渡制限特約のある債権が譲渡された場合、債務者は、誰に払えばよいか迷うことなく、支払うべきお金を法務局に供託することができます。供託されたお金は、譲受人が受け取ることができます。債務者から供託した旨の通知が届いたら、供託所で払い渡しの手続きをしてください。

相手が倒産したときの特例

譲渡制限特約のある債権を譲り受けた後に、譲渡人が破産した場合、譲受人は、債務者に対して、支払うべきお金を供託するよう求めることができます。供託されたお金は譲受人が受け取れるので、譲渡人の破産手続に巻き込まれずに回収できます。

改正後のルールは、債務者にとっても、譲渡を理由に支払い相手が分からなくなる不安を減らす仕組みになっています。譲受人としては、特約の有無を確かめ、特約があれば債務者の承諾を得る、という基本を守れば、改正後のルールのもとでも確実に回収を進められます。

将来の売掛金も譲り受けられる

まだ発生していない将来の売掛金を、今の時点で譲り受けることもできます。継続的な取引をしている相手に対して、とくに有効な方法です。以前から判例で認められていた考え方が、法律に書き込まれました。2020年の改正で、このことが民法に明記されました。

継続的な取引をしている相手に対しては、相手が取引先から毎月受け取る将来の売掛金を、まとめて担保として譲り受けておく方法がよく使われます。支払いが順調な間は、相手がそのまま売掛金を回収して事業に使い、支払いが止まったときに、債権者が取引先に通知して、以後の売掛金を直接受け取ります。

  • どの取引先に対する、どの期間の、どんな取引の売掛金かを特定する
  • 譲渡の範囲が広すぎて、相手の事業が成り立たなくなるような内容は避ける
  • 法人が相手なら債権譲渡登記を使い、取引先に知られずに対抗要件を備える
  • 支払いが止まったときに、取引先に通知する手順を決めておく

範囲の特定があいまいだと、譲渡の効力そのものが争われることがあります。契約書は、弁護士に確認してもらいながら作ることをおすすめします。

担保として譲り受けた売掛金の実行

担保として将来の売掛金を譲り受けていた場合、相手の支払いが止まったら、次の手順で回収します。まず、相手に対して、担保を実行する旨を通知します。次に、相手の取引先に、債権譲渡の通知(債権譲渡登記をしていれば登記の証明書を添えた通知)を送り、以後の代金を自社に支払うよう求めます。取引先から支払いを受けたら、その額を元の債権に充て、余りがあれば相手に返します。

手形に代わる電子記録債権

手形に代わる支払いの手段として、電子記録債権が広く使われています。電子記録債権は、電子的な記録によって発生し、譲渡も記録によって行われます。取引先が電子記録債権を持っていれば、その譲渡を受けることで回収に充てることもできます。譲渡の記録によって第三者にも主張できるので、通常の債権譲渡より手続きが簡単です。

譲渡の範囲の決め方の例

将来の売掛金を譲り受ける契約では、たとえば「譲渡人が令和8年10月1日から令和11年9月30日までの間に、○○株式会社に対する製品の売買取引によって取得する売掛債権の全部」のように、債務者、期間、取引の種類で範囲を特定します。債務者を特定しない場合は、「譲渡人が現在および将来有する、特定の種類の商品の売買代金債権」のように、取引の種類と期間で絞り込みます。

自社が債務者になる場合の特約

反対に、自社が代金を支払う側として契約書を作る場合は、譲渡制限特約を入れておくかどうかを考えます。特約があれば、見知らぬ業者から突然支払いを求められることを防げますが、改正後は、特約があっても譲渡そのものは有効です。特約に反する譲渡があったら、支払いを拒んで元の取引先に払うか、供託するかを選べることを覚えておきましょう。

将来の売掛金を担保に取る方法は、相手が不動産などの目立った財産を持っていない場合でも使えるのが大きな利点です。相手の事業そのものが生み出す売掛金を担保にするので、相手が事業を続けている限り、担保の価値が保たれます。一方で、相手の取引先が減ったり、事業が縮小したりすれば、担保の価値も下がるので、定期的に相手の取引の状況を確かめておきましょう。

債権譲渡で起こりやすいトラブル

債権譲渡は便利な手段ですが、トラブルも起こりやすい取引です。典型的なトラブルと、その防ぎ方を整理しておきます。

トラブル 起こる理由 防ぐための対策
二重譲渡 譲渡人が同じ債権をほかの人にも譲った 譲り受けたらすぐに確定日付のある通知を出す
差押えとの競合 ほかの債権者が同じ債権を差し押さえた 差押えより先に通知を債務者に届ける
債務者の反論 債務者が「商品に欠陥があった」「すでに払った」と主張する 譲り受ける前に、債権の内容と支払い状況を確かめる
債務者からの相殺 債務者が譲渡人に対する別の債権と相殺を主張する 債務者と譲渡人の取引関係を確かめる
譲渡の取り消し 譲渡人が破産し、譲渡が否認される 相手が支払不能に陥る前に譲り受ける

債務者からの相殺の主張

債務者が、譲渡人に対して別の債権を持っている場合、譲渡の通知を受ける前から持っていた債権であれば、その債権と譲り受けた売掛金を相殺すると主張できます。たとえば、債務者が譲渡人に対して貸付金を持っていれば、譲り受けた売掛金はその分だけ減ってしまいます。譲り受ける前に、債務者と譲渡人の間に、ほかの取引や貸し借りがないかを確かめておくことが大切です。

債務者が主張できる反論に注意

債務者は、譲渡の通知を受けるまでに譲渡人に対して主張できたことを、譲受人に対しても主張できます。たとえば、譲り受けた売掛金について、債務者が「納品された商品に欠陥があったので代金を減らしてほしい」と主張していれば、譲受人もその主張を受けることになります。

2020年の改正で、債務者が反論を留めずに承諾すれば反論できなくなる、という以前の仕組みはなくなりました。債務者の反論を封じたい場合は、債務者から、反論を放棄する旨をはっきり書いた承諾書をもらう必要があります。

債務者の反論を封じる承諾書をもらう場合は、「本件債権について、譲渡人に対して主張できる一切の抗弁を放棄する」といった文言を明記してもらいます。債務者がこれに応じるかは交渉しだいですが、応じてもらえれば、譲り受けた債権の回収の確実さは大きく高まります。

危機に陥った後の譲渡は否認されることがある

相手が支払いのできない状態に陥った後に、既存の債権の回収のために売掛金を譲り受けた場合、相手が破産すると、破産管財人から譲渡を取り消されることがあります。ほかの債権者との公平を害するからです。回収の手段として債権を譲り受けるなら、相手の経営がまだ持ちこたえている時期に行う必要があります。

2020年3月以前の契約の債権

譲渡制限特約についての新しいルールが当てはまるのは、2020年4月1日以降に発生した債権の原因となる契約に基づく債権です。それより前に結ばれた契約に基づく債権には、改正前のルールが使われ、特約を知っていた譲受人への譲渡は無効とされる可能性があります。長く続いている取引の債権を譲り受けるときは、契約がいつ結ばれたかも確かめてください。

債権譲渡は、手続きの一つ一つは単純でも、どの段階で何を確かめるかによって結果が大きく変わる取引です。とくに、相手の経営が悪化している場面では、否認や二重譲渡の危険が高まるため、弁護士に確認しながら進めることをおすすめします。

具体例で考える|取引先の売掛金を譲り受けて回収したケース

ある電子部品の商社は、機器メーカーに対する売掛金900万円の回収に苦労していました。機器メーカーの社長は「手元に現金はないが、大手の家電メーカーに納めた製品の代金1,200万円が、2か月後に入ってくる」と話していました。

商社は、弁護士と相談し、その家電メーカーに対する売掛金のうち900万円分を、支払いのために譲り受けることにしました。まず、機器メーカーから家電メーカーとの取引基本契約の写しを出してもらい、譲渡制限特約がないことを確かめました。あわせて、請求書の写しで代金の額と支払日を確認しています。

譲渡の契約を結んだその日に、機器メーカーの社長が署名押印した譲渡通知書を、内容証明郵便で家電メーカーに送りました。2か月後、家電メーカーから商社に900万円が直接振り込まれ、回収は完了しました。

その後、機器メーカーの別の債権者が、同じ売掛金を差し押さえようとしましたが、商社の譲渡通知のほうが先に家電メーカーに届いていたため、商社の回収は影響を受けませんでした。支払い能力の高い第三者の債権を見つけ、確実な手続きで譲り受けたことが、回収を成功させた例です。

もう一つ、相手が個人事業主の例も挙げておきます。デザインの仕事を外注していたフリーランスの方に、前渡し金80万円を支払ったものの、仕事が完成しないまま連絡が途絶えがちになった会社がありました。その方は、別の大手企業からの報酬100万円を受け取る予定があると話していました。

会社は、その方と話し合い、前渡し金の返還の代わりに、大手企業からの報酬のうち80万円分を、支払いのために譲り受けました。報酬の支払日に大手企業から直接振り込まれ、前渡し金を取り戻すことができました。相手が会社でなくても、相手の取引先が分かれば、同じ方法を使えます。

二つの例に共通しているのは、相手の取引先が支払い能力のある相手だったことです。譲り受ける債権の価値は、債務者の支払い能力で決まります。どれほど額の大きな売掛金でも、債務者が支払えなければ回収はできません。譲り受ける前に、債務者がどんな会社かを確かめておきましょう。

債権譲渡に関するよくある質問

債権譲渡に、債務者の同意は必要ですか

必要ありません。譲渡人と譲受人の合意だけで譲渡は成立します。ただし、債務者に譲渡を主張するには、譲渡人からの通知か、債務者の承諾が必要です。譲渡制限特約がある場合は、債務者の承諾を得ておくと安心です。

自社の売掛金を売って、早く現金にすることはできますか

できます。売掛金を専門の業者に売却して、支払期日の前に現金化する取引は、ファクタリングと呼ばれ、資金調達の方法として使われています。ただし、手数料が高額になることもあるので、契約の内容はよく確かめてください。

譲り受けた売掛金を、債務者が払ってくれません

譲受人は、債務者に対して、自分の名前で支払いを請求できます。債務者が払わなければ、支払督促や訴訟を起こし、判決などを取って債務者の財産を差し押さえることもできます。

譲渡の通知を、自社から債務者に送ってもよいですか

原則として、譲渡人からの通知でなければ効力がありません。譲受人が通知する場合は、譲渡人から通知の代理を頼まれていることを示す必要があります。実務では、譲渡人が署名押印した通知書を預かって送る方法が一般的です。

回収が難しくなった債権を、業者に売ることはできますか

できます。回収の見込みが低くなった債権を、債権回収会社などに売却して、早めに現金化する方法もあります。売却の価格は、回収の見込みに応じて大きく下がるのが通常ですが、回収にかかる手間や費用を省けるので、会計上の処理とあわせて検討する価値があります。

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