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代物弁済とは?お金の代わりに物で回収する方法と税金

代物弁済とは?お金の代わりに物で回収する方法と税金

この記事で分かること

  • 代物返済は債務の返済の代わりに特定の資産を債権者へ譲渡する手続きです。
  • 債権回収のための代物返済にはいくつか4つの要件があります。
  • 対象物の評価の価格と債権の価格に差が出たときの清算についても考えておく必要があります。

代物弁済では、動産や不動産、債権など代物返済における資産の対象になります。

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お金の代わりに「物」で払ってもらうという選択

取引先に何度請求しても、「お金はない」の一点張り。けれども、倉庫には在庫の商品が積まれているし、会社名義の車も何台かある。社長個人は土地も持っているらしい。現金がなくても、財産はある。そんな相手から回収する方法の一つが、代物弁済です。

代物弁済とは、本来はお金で払うべき債務を、お金以外の物で払うことです。昔から商取引で使われてきた、身近な回収の方法です。相手が持っている商品、車、機械、不動産、あるいは相手が第三者に対して持っている売掛金などを、支払いの代わりに受け取ります。当事者が合意すれば、裁判所の手続きを経ずに、すぐに回収できるのが大きな利点です。

ただし、代物弁済には注意すべき点もあります。手軽に見えて、実は落とし穴の多い回収の方法です。受け取る物の価値をどう評価するか、債権額より価値の高い物を受け取ったらどうなるか、相手が倒産した場合に取り消されないか、そして税金の扱いです。とくに不動産の代物弁済では、登記の手続きや税金の負担を見落とすと、思わぬ出費につながります。

この記事では、債権回収の相談を受ける弁護士の立場から、代物弁済の仕組み、使える場面、手続きの流れ、価値の評価、倒産や税金との関係までを、具体例を交えて説明していきます。

代物弁済は、相手と話し合って決める回収の方法です。相手の協力が得られるうちであれば、裁判所の手続きより早く、柔軟に回収できる可能性があります。回収の手段の一つとして、仕組みと注意点を押さえておいてください。

代物弁済とは|本来の支払いに代えて別の物で払う

代物弁済は、民法482条に定められた制度です。会社どうしの取引でも、個人の貸し借りでも使えます。債務者と債権者が、本来の支払いに代えて別の物を給付することを合意し、その物を実際に給付したときに、債務が消えます。

2020年4月の民法改正で、代物弁済は、当事者の合意だけで契約として成立することが明らかにされました。そのうえで、債務が消える効果が生じるのは、実際に物が給付されたとき、たとえば不動産なら所有権移転の登記が完了したときです。合意しただけでは、まだ債務は消えていない点に注意が必要です。

段階 起きること
代物弁済の合意 契約が成立する。債務者は物を給付する義務を負う
物の給付(引渡し、登記、債権譲渡の通知など) 本来の債務が消える

保証人や担保への影響

代物弁済で元の債務が消えれば、その債務のための保証や担保も一緒に消えます。一部だけが消える場合は、残った債務について保証や担保が続きます。代物弁済の後も保証人への請求を続けたい場合は、消える債務の範囲を契約書ではっきりさせておくことが大切です。

代物弁済に使える物

  • 土地、建物、マンションなどの不動産
  • 自動車、機械、設備
  • 在庫の商品、原材料
  • 相手が第三者に対して持っている売掛金などの債権
  • 株式、ゴルフ会員権など

価値があり、換金できる物であれば、何でも代物弁済に使えます。相手の財産を一覧にして、候補を探してみましょう。ただし、受け取った物をお金に換えるまでには手間がかかるので、自社で使える物か、換金しやすい物を選ぶことが大切です。

相手の売掛金で代物弁済を受ける

相手に目立った財産がなくても、相手が取引先に対して売掛金を持っていれば、その売掛金を代物弁済として譲り受けることができます。この場合、譲り受けた時点で元の債権が消えるので、譲り受けた売掛金が実際に払われなかったときに、元の債権を請求できなくなる危険があります。売掛金の債務者が確実に払える相手かを確かめ、心配があれば、代物弁済ではなく、回収できた分だけ元の債権に充てる形で譲り受けるほうが安全です。

代物弁済と似た言葉に、更改や相殺があります。更改は、古い債務を消して新しい債務に置き換える契約で、たとえば売掛金を消して新たに貸付金として返してもらう場合などです。代物弁済は、別の物を実際に給付することで債務を消す点で、これらと異なります。

株式や会員権で受け取る場合

相手が上場会社の株式やゴルフ会員権を持っていれば、それを代物弁済で受け取ることもできます。上場株式は市場の価格で評価しやすく、換金もしやすいのが利点です。非上場の株式は、評価が難しく、会社の承認がなければ譲渡できないこともあるので、慎重に検討する必要があります。

代物弁済が向いている場面

代物弁済は、次のような場面で力を発揮します。相手の状況が当てはまるか、照らし合わせてみてください。

場面 代物弁済が向いている理由
相手に現金はないが、価値のある財産がある 財産そのものを受け取れば、すぐに回収の実を上げられる
相手が支払う意思を持ち、協力的である 合意ができれば、裁判の手続きが要らない
相手の経営が悪化しつつあり、急いで回収したい 訴訟や差押えより早く財産を確保できる
納めた商品が相手の倉庫に残っている 自社の商品を引き揚げて代金に充てられる
相手の財産が自社の事業で使える 換金しなくても、そのまま活用できる

売却代金で払ってもらう方法との違い

代物弁済のほかに、相手に財産を売ってもらい、その代金で支払ってもらう方法もあります。たとえば、相手が持っている不動産を、相手自身が市場で売却し、売却代金から支払いを受ける形です。この方法なら、自社が物を受け取って換金する手間はかかりませんが、売却までに時間がかかり、その間に相手が代金をほかの支払いに回してしまうおそれがあります。売却代金を確実に受け取るため、売却の決済の場に立ち会う、売却代金の振込先を自社にするなどの手当てが必要です。

訴訟や差押えとの比較

訴訟を起こして判決を取り、相手の財産を差し押さえて競売にかける、という手順を踏むと、回収までに半年から1年以上かかることもあります。競売では市場の価格より安く売れることが多く、費用もかかります。代物弁済であれば、相手と合意できた時点で財産を受け取れ、売り方も自社で選べます。

その反面、代物弁済は相手の協力がなければできません。相手が財産を手放すことを拒めば、訴訟や差押えに進むしかありません。相手に支払う意思があり、話し合いができるうちに提案することが大切です。

代物弁済の提案の仕方

代物弁済は、相手にとっても、財産を手放す代わりに債務から解放されるという利点があります。訴訟を起こされて財産を差し押さえられ、競売で安く売られるよりは、自分から財産を渡して債務を減らしたほうが、相手にとっても損が小さいのが通常です。こうした相手の利点を伝えながら提案すると、合意に至りやすくなります。財産の評価額を相手と一緒に確かめる姿勢を見せることも、信頼を得るうえで大切です。

代物弁済に向かない物

価値があっても、代物弁済に向かない物もあります。相手の事業に欠かせない機械を受け取ると、相手が事業を続けられなくなり、残りの債務の支払いも期待できなくなります。また、処分に費用がかかる物、専門的すぎて買い手が見つからない物、法律で譲渡が制限されている物なども、受け取った後に困ることになります。相手の事業を続けさせながら回収したい場合は、事業に直接関わらない財産を選ぶのが得策です。

代物弁済の手続きの流れ

代物弁済は、次のような流れで進めます。物の種類によって、受け取りの手続きが少しずつ違います。

  1. 相手の財産を確かめ、代物弁済に使う物の候補を決める。
  2. その物の価値を評価する(不動産なら査定や鑑定、在庫なら仕入れ価格や市場価格)。
  3. 物の所有者が相手本人か、担保や差押えがついていないかを確かめる。
  4. 相手と代物弁済契約を結び、物の内容、評価額、消える債務の範囲を決める。
  5. 物を受け取る(不動産なら所有権移転の登記、動産なら引渡し、債権なら譲渡の通知)。
  6. 残った債務があれば、支払いの方法を決める。

手続きを進める中で、相手の気持ちが変わって、財産を渡すのを渋ることもあります。合意ができたら、契約書の作成から物の受け取りまでを、できるだけ短い期間で済ませることが大切です。とくに不動産は、契約の日に登記の書類をそろえてもらい、その日のうちに申請するくらいの段取りを組んでおくと確実です。

代物弁済契約書に書くこと

  • 消える債務の内容(取引、金額、支払期日)
  • 代物弁済に使う物の特定(不動産の所在と地番、車の登録番号、在庫の品目と数量など)
  • 物の評価額と、それによって消える債務の額
  • 物の引渡しや登記の時期と方法、費用の負担
  • 物に欠陥があった場合の扱い
  • 評価額が債務額に届かない場合の、残りの債務の支払い方法

とくに大切なのは、物の評価額と消える債務の額を明記することです。これがあいまいだと、後で「物を渡したのだから債務は全部消えたはずだ」と主張され、残りの債務を請求できなくなるおそれがあります。

ワンポイントアドバイス
在庫の商品を代物弁済で受け取る場合は、引き揚げる日に相手の立ち会いを求め、品目と数量を一覧にして、双方が署名しておきましょう。相手の同意なく倉庫から持ち出すと、たとえ代金が未払いでも違法になるおそれがあります。

動産や車の受け取り方

在庫や機械などの動産は、実際に引き渡しを受けることで、代物弁済の効果が生じます。相手の倉庫に置いたまま「今後は債権者のものとする」と約束するだけでは、ほかの債権者に対して所有を主張しにくくなります。できるだけ自社の倉庫に運び出すか、少なくとも相手の倉庫の中で区分けして表示し、自社のものであることが分かるようにしておきましょう。

自動車の場合は、運輸支局で名義変更の手続きが必要です。ローンが残っている車は、販売会社や信販会社に所有権が残っていることが多く、その場合は代物弁済に使えません。車検証の所有者の欄を必ず確かめてください。

契約書は、相手と自社がそれぞれ1通ずつ持ちます。不動産の代物弁済では、登記の申請に契約書や相手の印鑑証明書が必要になるので、司法書士と相談しながら書類をそろえてください。

物の価値をどう評価するか

代物弁済で最も争いになりやすいのが、受け取る物の評価です。評価を誤ると、回収の額が大きく変わるだけでなく、後で取り消される原因にもなります。

評価は、代物弁済を受ける時点の価値で行います。受け取った後に値上がりしたり値下がりしたりしても、原則として評価をやり直すことはありません。相場の動きが激しい物を受け取る場合は、評価の時点と受け取りの時点をできるだけ近づけることが大切です。

価値が債権額より低い場合

受け取る物の価値が債権額より低ければ、その分だけ債権が残ります。これが最もよくある形です。たとえば、500万円の売掛金に対して、評価額300万円の車を代物弁済で受け取った場合、残りの200万円は引き続き請求できます。契約書で、300万円分だけが消えることを明記しておきましょう。

価値が債権額より高い場合

反対に、物の価値が債権額を大きく上回る場合は、注意が必要です。債権者が、相手の窮状につけこんで、債権額よりはるかに価値の高い不動産を受け取るような代物弁済は、公序良俗に反するとして無効とされたり、相手が破産した場合に取り消されたりすることがあります。

価値が債権額を上回るなら、差額を相手に支払う(清算する)のが公平です。不動産を担保として代物弁済の予約をしておく仮登記担保の場合は、法律で、差額を清算することが義務づけられています。

物の価値と債権額の関係 扱い
物の価値 < 債権額 評価額の分だけ債権が消え、残りは引き続き請求できる
物の価値 ≒ 債権額 債権が全部消える
物の価値 > 債権額 差額を相手に支払うのが公平。大きな差があると無効や否認のおそれ

評価をめぐる争いを避けるには、第三者に評価してもらうのが効果的です。自社の評価だけで決めると、後で相手から「安く見積もられた」と言われたり、破産管財人から評価の妥当性を問われたりすることがあります。不動産鑑定士の鑑定書や、複数の業者の買取見積もりなど、客観的な根拠を用意しておきましょう。

評価の方法

不動産であれば、不動産会社の査定や、不動産鑑定士の鑑定で評価します。車や機械は中古市場の相場、在庫の商品は仕入れ価格や、処分した場合に見込める価格で評価します。評価の根拠を資料として残しておくと、後で評価が妥当だったことを示せます。

差額の清算の仕方

物の価値が債権額を上回る場合、差額を現金で相手に支払う方法のほか、相手に対する別の債権と差し引く方法や、相手の今後の取引の代金に充てる方法もあります。どの方法をとるにしても、差額の額と清算の方法を契約書に書いておきましょう。清算をきちんとしておけば、代物弁済が不当だと後で争われるおそれも小さくなります。

評価をめぐって相手と意見が合わない場合は、双方がそれぞれ業者に見積もりを取り、その平均をとる、中立の鑑定士に依頼して費用を折半する、といった方法で折り合いをつけることもあります。評価の方法そのものを先に合意しておけば、金額の争いは小さくなります。

不動産で代物弁済を受けるときの注意点

不動産は価値が大きく、代物弁済で受け取れば、まとまった額の債権を一度に回収できます。中小企業の経営者が個人で不動産を持っていることも多く、よく検討される方法です。その反面、手続きや確認すべき点も多く、慎重に進める必要があります。

確認すること 理由
登記簿上の所有者 相手本人の名義でなければ、所有者にも契約に加わってもらう必要がある
抵当権や差押えの登記 抵当権が残ったまま受け取ると、後で競売にかけられるおそれがある
住んでいる人や借りている人 借主がいれば、受け取った後も賃貸借が続き、すぐには使えない
固定資産税などの滞納 滞納があれば、税務署や自治体による差押えの対象になっていることがある
土地の境界や建物の状態 売却するときに問題にならないかを確かめる

不動産を受け取るかどうかを判断するときは、受け取った後に自社で使うのか、売却して現金にするのかを決めておきます。売却するなら、不動産会社に相談して、どのくらいの期間で、いくらで売れそうかの見通しを立ててから受け取るようにしましょう。売れにくい土地を受け取ってしまうと、固定資産税や管理の費用ばかりがかかることになります。

登記まで済ませて初めて回収が完了する

不動産の代物弁済では、所有権移転の登記が完了した時点で、債務が消えます。登記を後回しにしていると、その間に相手が別の人に不動産を売ったり、ほかの債権者が差し押さえたりすることがあります。代物弁済の契約を結んだら、司法書士に依頼して、すぐに登記の手続きを進めてください。

抵当権がついている不動産

銀行の抵当権がついている不動産を代物弁済で受け取っても、抵当権は消えません。銀行への返済が滞れば、受け取った不動産が競売にかけられてしまいます。抵当権のついた不動産を受け取る場合は、受け取る前に銀行と話し合い、残りの借入れを誰がどう返すのかを決めておく必要があります。多くの場合、不動産を売却し、その代金から銀行に返済した残りで回収する、という形のほうが現実的です。

代物弁済の予約と仮登記担保

取引の段階で、将来支払いが止まったときに不動産で代物弁済を受けるという約束をし、仮登記をしておく方法もあります。これを仮登記担保といいます。仮登記担保では、支払いが止まったときに、不動産の価値と債権額の差額を相手に清算する義務があり、清算金の額を相手に通知してから2か月が過ぎなければ、所有権を取得できません。担保として使う場合は、法律の手続きに沿って進めることが欠かせません。

借主がいる不動産を受け取るとき

アパートや貸しビルなど、借主がいる不動産を代物弁済で受け取ると、賃貸人の立場を引き継ぐことになります。家賃を受け取れるようになる一方で、敷金を返す義務も引き継ぐのが原則です。借主の一覧、家賃の額、敷金の額、滞納の有無を事前に確かめ、代物弁済の評価に反映させてください。

相手が倒産した場合のリスク

代物弁済を受けた後に相手が破産すると、破産管財人から、代物弁済を取り消すよう求められることがあります。これを否認といいます。代物弁済の最大のリスクといえます。

否認の対象になりやすい代物弁済 理由
相手が支払いのできない状態に陥った後に、既存の債務のために行われた代物弁済 一部の債権者だけが優先して回収することになり、債権者の公平を害する
債権額より明らかに価値の高い物を受け取った代物弁済 相手の財産を不当に減らし、ほかの債権者を害する

否認されると、受け取った物を返すか、その価値に相当するお金を払わなければなりません。そのうえで、元の債権は復活し、破産手続の中でほかの債権者と同じ扱いで配当を受けることになります。

否認を避けるには、相手の経営がまだ持ちこたえているうちに代物弁済を受けること、物の価値と債権額が見合っていることを資料で示せるようにしておくことが大切です。相手の経営がすでに危うい場合は、代物弁済より、仮差押えなどの手続きを考えたほうが安全なこともあります。

相手が倒産していなくても取り消されることがある

相手が破産していなくても、ほかの債権者から、代物弁済の取消しを求められることがあります。相手が債務超過に陥っているのに、特定の債権者にだけ価値の高い財産を渡した場合、ほかの債権者は、その代物弁済が自分たちを害するとして、裁判所に取消しを求めることができます。これを詐害行為取消しといいます。代物弁済が妥当な範囲にとどまっていることを示せるよう、評価の根拠と経緯を記録しておくことが大切です。

否認のおそれがあるかどうかの判断は、相手の財務状況、代物弁済の時期、ほかの債権者の状況など、多くの事情を総合して行われます。相手の経営が危うい中で代物弁済を受ける場合は、事前に弁護士に相談し、否認のリスクと、ほかの回収手段との比較をしてもらうことをおすすめします。

反対に、相手の経営が安定しているうちに、取引の条件の一つとして代物弁済の約束をしておく場合は、否認のおそれは小さくなります。代物弁済は、相手の危機が深まってから慌てて行うより、相手に余力があるうちに話し合うほうが、回収の確実さも、相手との関係も保ちやすいのです。

代物弁済と税金

代物弁済は、物のやり取りを伴うため、税金の扱いにも気をつける必要があります。お金で支払う場合には生じない税金がかかることがあるからです。

立場 主な税金 内容
債務者(物を渡す側) 所得税または法人税 物を時価で売って、その代金で支払ったものとして扱われ、値上がりしていれば譲渡益に課税される
債務者(事業者の場合) 消費税 商品や建物などを代物弁済に使うと、資産の譲渡として消費税の対象になる
債権者(物を受け取る側) 登録免許税、不動産取得税 不動産の場合、所有権移転の登記と取得に税金がかかる
債権者(物を受け取る側) 法人税など 受け取った物の時価と債権額に差があれば、損益として処理する

債務者の側では、長く持っていた不動産を代物弁済に使うと、取得したときより値上がりしている分に譲渡所得税がかかることがあります。お金がなくて代物弁済をしたのに、後から税金を請求されて困る、ということにもなりかねません。代物弁済を提案するときは、相手の税負担についても顧問税理士に確認してもらうよう勧めると、話し合いがスムーズに進みます。

債権者の側では、不動産を受け取ると、登録免許税や不動産取得税がかかります。これらの費用も含めて、代物弁済で回収するほうが得かどうかを判断してください。

債権者の会計では、代物弁済で受け取った物を時価で資産に計上し、消えた債権との差額があれば、損失や利益として処理します。受け取った在庫を売却すれば、その代金は売上として計上することになります。会計処理についても、顧問税理士に確かめておきましょう。

代物弁済は弁護士に相談を

代物弁済は、相手との合意さえあれば簡単にできるように見えますが、評価の方法、契約書の書き方、登記の手続き、否認や税金の問題など、確かめるべきことが多い取引です。とくに不動産や、金額の大きな財産を受け取る場合は、弁護士に契約書を確認してもらい、否認や詐害行為取消しのおそれがないかを判断してもらうと安心です。相手の税金の問題は、相手の顧問税理士とも連携して進めます。

具体例で考える|在庫と車で売掛金を回収したケース

ある家具の卸売会社は、地方の家具店に対する売掛金650万円を回収できずにいました。家具店は売上の落ち込みで資金繰りに苦しみ、現金での支払いは難しい状況でした。店を閉じることも考えているという話でした。

弁護士は、家具店の社長と話し合い、財産の状況を確かめました。店舗には、卸売会社が納めた家具を含めて、販売できる在庫が多く残っていました。また、店の名義で配送用のトラックを2台持っていて、ローンはすでに払い終わっていました。

卸売会社は、在庫のうち自社が納めた家具と、それ以外の売れ筋の家具を選び、仕入れ価格をもとに評価して380万円、トラック2台を中古相場で評価して150万円とし、合わせて530万円分を代物弁済で受け取る契約を結びました。引き揚げの日には社長に立ち会ってもらい、品目と数量の一覧に双方が署名しました。トラックは、名義変更の手続きも済ませています。

残りの120万円については、月10万円の分割払いの合意をしました。家具店はその後、規模を縮小して営業を続け、分割払いも完了しました。受け取った家具は自社の販路で売却し、トラックは自社の配送に使っています。訴訟を起こしていれば、判決が出る前に店を閉じられ、回収はほとんどできなかったかもしれません。

個人の間でも、代物弁済は使われます。知人に貸した100万円の返済が滞っていた方が、知人から「お金はないが、車なら渡せる」と申し出を受けました。中古車の買取業者に査定してもらうと80万円だったため、その額で代物弁済を受け、残りの20万円は分割で返してもらう約束をしました。車の名義変更を済ませた後、この方は車を売却して80万円を回収し、残りの20万円も半年で返済を受けています。

個人間の代物弁済でも、評価額と残りの債務を書面に残すことが大切です。この例でも、車の評価額と、残り20万円の支払い方法を書いた合意書を交わしていたことで、後の争いを避けられました。

この二つの例に共通しているのは、受け取る物を自社で使えるか、換金しやすいかを考えて選んだことです。代物弁済で受け取った物が、売れない在庫や使い道のない土地であれば、かえって保管や処分の手間がかかります。回収額だけでなく、受け取った後のことまで考えて、代物弁済に使う物を選びましょう。

代物弁済に関するよくある質問

代物弁済は、相手が同意しなくてもできますか

できません。代物弁済は、債務者と債権者の合意で成り立つものです。相手が同意しなければ、訴訟を起こして判決を取り、相手の財産を差し押さえて競売にかけるという手順を踏むことになります。

代物弁済で受け取った物に欠陥があったらどうなりますか

受け取った物が、契約で約束した内容に合っていなかった場合は、代わりの物を求めたり、評価額を見直したりすることができます。受け取る前に物の状態を確かめ、契約書に物の状態と、欠陥があった場合の扱いを書いておくと安心です。

代物弁済の後、残りの債務はどうなりますか

物の評価額が債務額に届かなければ、その差額は残ります。契約書で、どれだけの債務が消えたのかを明記し、残りの支払い方法を決めておきましょう。書いていないと、債務が全部消えたと主張されるおそれがあります。

保証人の不動産で代物弁済を受けることはできますか

保証人や、相手の家族など、第三者の財産で代物弁済を受けることもできます。その場合は、財産の所有者にも契約に加わってもらう必要があります。所有者が代物弁済に使った財産の分は、相手に対して返してもらう権利を持つことになります。

代物弁済で受け取った物を、すぐに売ってもよいですか

代物弁済で受け取った物は、自社の財産になるので、自由に売ることができます。ただし、相手が後で破産し、代物弁済が否認される可能性がある場合は、売却した後でも、その物の価値に相当するお金を返すよう求められることがあります。相手の経営状態に不安があった場合は、売却代金をすぐに使ってしまわず、状況を見きわめることも考えてください。

代物弁済と相殺は、どう違いますか

相殺は、互いに負っているお金の債務を差し引いて消すもので、相手の同意なく一方的にできます。代物弁済は、相手の物を受け取って債務を消すもので、相手の同意が必要です。自社も相手にお金を払う立場にあるなら、まず相殺を検討し、それでも残る分について代物弁済を考える、という順序も考えられます。

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