2019/3/1 109view

将来の退職金を財産分与でもらう方法

この記事で分かること
  1. 財産分与として分ける「財産」には「退職金」も含まれ、将来の退職金についても、支給がかなり先で不確定でない限り、含まれる可能性が高い
  2. 財産分与の対象となる「将来の退職金」の金額を算出する方法は、別居時点での退職金をベースにするか、定年時の退職金をベースにするか、2つ方法がある
  3. 財産を分与するには、当事者間での協議を行い、合意に至らなければ調停や審判を利用する

離婚において、これまで夫婦で協力して形成・維持してきた財産を分割することを「財産分与」といいます。対象の「財産」には「退職金」はもちろん、退職がかなり先で支給が不確定でない限り、「将来の退職金」も含まれる可能性が高いと解されています。 実際に「将来の退職金」を算出する方法や、財産分与の流れまで、財産分与の基礎知識とともに解説していきます。

離婚における財産分与の「財産」に退職金は含まれる?

離婚は、これから別々の人生を歩むという合意だけでなく、諸々の条件も併せて考えていかなければなりません。特に、これまで夫婦で協力して得た財産、つまり「夫婦の財産」をどのように分けるかが重要となってきます。

そこで、財産分与とは何か、今回のテーマである「退職金」が分けるべき「財産」に含まれるのか、分ける割合など、ここでまとめて解説します。

財産分与とは?

民法768条には、「協議上の離婚をした者の一方は、相手方に対して財産の分与を請求することができる」と財産分与請求権を認めています。

これは、公平の見地から、夫婦が協力して形成・維持されたと考えられる財産であれば、離婚の際に分けて清算するのが妥当という趣旨です。ですから、形式的な名義などは関係がなく、夫婦の一方の名義となっている財産であっても分けることになります。

また、単純に協力してできた財産を分けるだけですから、離婚に至った原因は関係ありません。離婚原因を生じさせた側からも、財産分与を請求することはできます。また、分割の割合も、財産を形成・維持した貢献度で判断されます。

「財産」を分ける割合は?

当事者間の話し合いで決める場合は、どのように分けるかを自由に決定することができます。ただ、調停や裁判所が決する場合には、財産分与の割合は一般的に1/2が多いとされています。

そもそも割合は、財産の形成や維持にどの程度貢献したかで判断されますが、実質的に貢献度合いを測ることは困難であるため、折衷的に1/2にしていると解されています。

財産分与請求の「財産」の内容

離婚における財産分与で分ける「夫婦の財産」とは、具体的にどのような財産を含むのでしょうか。その範囲を説明します。

「財産」と判断する基準とは?

形式的に判断するのではなく、実質的に「夫婦の財産」といえるか判断します。つまり、「結婚生活において、夫婦で協力して形成・維持した財産」に該当すれば、分与の対象となります。例えば、預貯金や自宅などの不動産、有価証券や保険、年金などが該当するでしょう。

一方、該当しない場合は、財産分与の対象とはなりません。例えば、

  • 結婚前から所有していた財産
  • どちらか一方のみでなしえた財産

結婚前から自分で貯めていた預貯金や、親からの相続によって得た財産などは、結婚生活と何ら関係がありません。もとは自身が持っていた財産ですから、いくら金額が大きかったとしても、相手方に分与する必要はありません。

また、これは、消極財産である借金にも同じ判断基準が適用されます。夫婦生活のためになされた借金であれば、夫婦のマイナスの財産として分与の対象となりますが、個人の趣味や浪費などで借りた借金は含まれません。

「退職金」は?

それでは、「退職金」はどうでしょうか。「夫婦の財産」として分与の対象となるのでしょうか。

「退職金」は、給与の後払い的な性格があり、結婚生活において夫婦が協力して得た財産に該当します。そのため、既に支払われている退職金も財産分与の対象となります。

将来に支払われる予定の「退職金」は?

「退職金」といっても、現在勤務している企業を退職する際に支払われる予定の「将来の退職金」は含まれるのでしょうか。

夫婦の「財産」として範囲を決定する時期は、一般的に「別居時」と解されています。別居していれば夫婦の協力関係がないと判断されるからです。とすれば、支給時に既に離婚し別居している場合は、協力関係がないとも捉えられます。

しかし、退職金の性質に鑑みれば、これまでの勤務年数や実績、態度などを考慮して支給されます。支給時の給与を基準にするとしても、積み上げられた長年の勤務の結果だといえるのです。そうであれば、結婚していた期間については、「退職金」の形成に貢献していたともいえ、将来支払われるであろう「退職金」も対象と考えられます。

ただ、支払われる「将来」が、かなり先の場合は、対象とするのは難しいといえます。例えば10年先などであれば予測不可能な側面が大きく、退職金の支払いが確実とは言い難い状況です。このような場合は、財産分与の対象外となる可能性が高いので、注意が必要です。

ワンポイントアドバイス
夫婦で協力して形成・維持した財産のみが、財産分与の対象となるのがポイントです。「退職金」は給与の後払い的な性格があり、既に支払われているものはもちろん対象となりますが、将来支払われるであろう「退職金」は、結婚していた期間のみ貢献したといえ、その割合で夫婦の財産と認められる可能性が高いです。ただ、退職金が支給される「将来」がかなり先の場合は、支払われる確実性も少なく認めにくいので注意が必要です。将来に支払われる退職金が財産分与の対象となるのか、不安がある方は、早期に弁護士などの専門家に相談するのが確実でしょう。

財産分与の対象となる将来の「退職金」の算定方法

それでは、将来支払われる予定の退職金について、具体的にどのように算定するのでしょうか。ここでは、算定方法や注意すべき「清算条項」にも触れて説明します。

将来の「退職金」の算定方法は2つ

将来の「退職金」から、分与される金額を算出する方法は大きく分けて2つあります。現時点での退職金をベースにするか、将来に支払われる満額の退職金をベースにするかで分かれます。

前提として、退職金の支給要件を確認する必要があります。雇用契約の際の労働契約書や就業規則などに記載されている内容を確認しましょう。

現時点で退職したと仮定して計算する方法

「財産」の範囲を決める基準日が「別居日」なので、別居の時点で、退職(自己都合)したと仮定します。その時点で支給されるであろう「退職金」の金額を算出します。そして、同居して結婚生活を送っていた期間は貢献していたと判断できるので、その期間の割合に応じて、退職金を分けるという方法です。

例)22歳から入社して働き、32歳で結婚、52歳で別居して離婚する場合

52歳の別居時に自己都合退職すれば「退職金」は2100万円(仮定)

30年間働いたうち、結婚していた期間は32歳~52歳までの20年間

この結婚期間の20年間は、勤務について貢献したと考えられる
退職金 ÷ 働いた年数 × 結婚していた年数 = 財産分与の対象財産
2100万円 ÷ 30年 × 20年 =1400万円

上記の場合は、1400万円が財産分与の対象となる将来の「退職金」の金額となります。

将来に支払われる「退職金」で計算する方法

来るべき定年時に、満額の退職金を受給する前提で「退職金」を計算する方法です。将来の「退職金」を算出したあと、結婚していた期間分の割合に応じて財産分与の対象となる「退職金」の金額を算出します。計算式は前項と同じです。

ただ、注意しなければならないのは、中間利息の控除です。本来であれば、この満額の退職金は、定年時に受け取ることが前提で算出されています。定年時であれば、そのままの金額で問題ないですが、実際受け取るのは現在なので、時差が生じます。

つまり、その期間分の利息を早めに受け取る分、差し引くという考え方なのです。ですから、最後に中間利息を引くことを忘れずに行う必要があります。

清算条項との関係

将来支払われる退職金について、注意すべき事項があります。それが「清算条項」です。

清算条項とは

「清算条項」とは、離婚に際して記載した権利・義務以外に何らの債権債務もないと当事者双方で確認したものです。

そもそも、離婚の際には、条件など記載された書面を交わすのが慣習です。あとから、離婚の条件などで争いを蒸し返さないためにも、この離婚協議書や離婚公正証書に、「清算条項」を入れることが一般的なのです具体的には「今後一切金銭を求めない」などの文言で表されます。

清算条項が及ぶ範囲

「清算条項」は、基本的に財産分与請求や慰謝料請求に及び、子どもの「養育費」には及ばないと解されています。

ですから、離婚の際に「清算条項」の記載のある書面を交わした場合には、基本的に新たな財産分与請求や慰謝料請求は認められない可能性が高いでしょう。そろそろ「退職金」が支払われる時期だろうと見込んで、再度、この「退職金」につき財産分与を請求しても、「清算条項」が障害となって認められないことがあります。

そのため、将来の「退職金」について財産分与を求めようと考えている場合は、以下の方法などを検討する必要があります。

  • 離婚条件を決める際に、将来の「退職金」を含める
  • 清算条項の書き方を工夫する
  • 「将来に退職金が支払われた場合は、その時点で支給金額を決める」など話し合うことを予定として入れておく
ワンポイントアドバイス
将来の退職金の算定は、専門的な知識が必要となります。離婚協議書などにどのように記載するか、「清算条項」の文面と併せて、早急に弁護士などの専門家に相談することをお勧めします。

財産分与までの流れ

ここでは、どのようにして財産を分与するか、その流れを説明します。

当事者間での協議で決める

まずは、当事者同士での話し合いにより、財産分与を決めるという方法です。離婚に同意し、続けて離婚する条件について話し合うことは、至って自然な流れともいえます。

当事者間の話し合いで財産分与の内容が決まれば、その通りに財産を分けることになります。ただ、互いが少しでも多く財産を取ろうとの姿勢であれば、合意は難しくなるでしょう。些細なことでも譲らず、結果的に話がまとまらないという事態に陥ります。

調停や審判を利用する

当事者間での話し合いがまとまらない場合は、調停や審判などを利用する方法があります。

調停に関しては、離婚に向けて財産分与などの調整を行うのであれば、「夫婦関係調整調停」の手続きとなります。一方、とにかく先に離婚だけしてあとから、財産分与について話し合うという場合は「財産分与請求調停」の手続きを利用することになります。

裁判所に調停の申し立てをすれば、大体約1ヶ月前後で、第1回調停期日の呼び出しが行われます。調停が開始されると、調停委員が当事者双方より意向や事情を聴取し、夫婦が協力して得た財産はどの財産か、財産の形成や維持に対する当事者双方の貢献度合いはどれくらいか把握します。

そして、当事者双方の意向を総合的にみて、解決案としての第1事案が提案されます。双方の意見を聴きながら修正し第2事案、第3事案に至るという流れです。

当事者双方が合意に至り、調停機関もその合意が相当と認めて調書に記載すれば、調停が成立します。これは判決と同じ効力を有するということで、調停調書に記載されている内容が履行されない場合には、強制執行も可能となります。

残念ながら、合意に至らず調停が不成立となった場合には、自動的に審判手続が開始されます。裁判官が必要な審理を行い、当事者双方の事情を勘案して、審判をすることになります。

ワンポイントアドバイス
当事者間の話し合い、合意に至らない場合は、調停や審判の手続きを利用しますが、どちらにせよ、自分の考えをしっかりと伝えて交渉することが必要となります。また感情的に話を進めないというメリットもあり、弁護士などの専門家の力を借りることも検討してみてはいかがでしょうか。

「将来の退職金」を財産分与されたい場合は弁護士に相談しよう

財産分与が確定したあとで、もっと自分の希望を言えばよかったと後悔しても、後の祭りです。まずは夫婦の「財産」を的確に把握する必要があります。特に将来に支払われるであろう「退職金」は、気付かずに「財産」から抜ける可能性があります。

結婚生活の状況から、夫婦の「財産」を確定し、どのように財産を分けるのが妥当なのかを知るためにも、早めに弁護士などの専門家に相談をし、アドバイスを受けることをお勧めします。

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