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秘密保持契約書(NDA)とは?作成する目的と書き方、作成時の注意ポイント

この記事で分かること

  • 秘密保持契約書(NDA)とは、業務上知り得た秘密を第三者に漏らさないとする契約のこと
  • 秘密保持契約書には、目的や秘密情報の性質、管理方法、罰則などを忘れずに記すことが重要
  • 秘密保持契約書の内容で困ったことがあれば、専門の弁護士に相談すること

IT技術の高まりと同時に、情報の重要性が認識されるにつれて、秘密保持契約書に触れる機会も多くなってきました。ここでは、秘密保持契約書について解説します。

秘密保持契約書とは

秘密保持契約書は「NDA」と略されることがありますが、これはNon-disclosure agreementの頭文字をとったものです。秘密保持契約とはその名の通り、業務上知り得た秘密を、第三者に漏らさないとする契約のことを言います。

機密保持契約や守秘義務契約という言葉が用いられることもあります。どちらも似たような意味を持ちますが、「機密」は国家などの、より大きな組織の秘密の意味で用いられることが多く、守秘義務は契約するしないに関わらず発生する義務のことを指すことが多いです。まずこれらの契約が結ばれることになる目的についてみていきましょう。

秘密保持契約書の目的

現代では個人情報の取扱いに厳しく、また情報戦が一般的であることから、他者と取引をする際には秘密保持契約書を交わし、安心して情報交換ができるようにするということが行われています。秘密保持契約書の目的は、 第三者に情報を漏らさないことですが、これは様々なリスク管理の一環として行われています。

誰と秘密保持契約書を交わすか?

また、誰と秘密保持契約書を交わすかですが、対象としては主に以下の3者があり得ます。

  • 他社
  • 従業員
  • 個人

他社

現代では、他社に業務委託をする場合に、秘密保持契約書が交わされるのが一般的になっています。秘密保持契約書を交わす際に重要なのが、他社のどのレベルの人まで情報を開示するか、あるいは他社が従業員と秘密保持契約を結んでいるか、ということを確認することです。

もし他社にアルバイトなどの人が出入りしている場合は、それらの人とも秘密保持契約を交わしているか、を確認した方が良いでしょう。また、自分が情報提供する側なのか受ける側なのかも確認し、しっかりと契約書の内容を確認しながらサインをするようにしましょう。

従業員

企業の秘密の保持は、自社に勤務する従業員との間でも問題になります。また秘密保持契約に関連して、退職後に同業他社に勤めないことや、同業の会社の設立を禁止する契約を結ぶこともあります。

従業員との間で秘密保持契約を結ぶタイミングとしては、入社時や、特定のプロジェクトに参加する時、また退社時などがあげられます。退職時の秘密保持契約に関しては、その後の職業選択の自由などを阻害しないように配慮する必要がありますが、より細かな秘密保持契約を結ぶことが可能です。

個人

個人と結ぶ場合でも、内容はほとんど変わらないと言えるでしょう。この場合も、従業員の場合と同様に、契約時に秘密保持契約を交わすと言ったことや、辞めるタイミングで秘密保持契約を交わすことがあり得ます。

しかし、個人と秘密保持契約を結ぶ場合、相手の連絡先や住所、所属などを把握しておく必要があり、さらに、重要な情報は伝えないなどの共有意識を、社内で持っておく必要があります。個人の場合、いなくなるということも想定できるので、リスク管理を厳重にしておく必要があります。

ワンポイントアドバイス
誰と秘密保持契約を結ぶにせよ、契約書が法律に従っている必要があります。さらに、罰則の規定などを設けるにも、法的な効力が発揮できるようにしなければなりません。もしこのようなことに不安があるのであれば、専門の弁護士に相談するのが一番です。

秘密保持契約書の書き方

秘密保持契約書の書き方としては、現在インターネット上に雛形が公開されていることも多く、これを参考にすることもできます。経済産業省も、契約書の参考例を公開しています。しかしこれらはあくまで雛形であり、自社の事情に合わせた秘密保持契約書を作成する必要があります。次に、契約書作成上の注意点についてみていきましょう。

秘密保持契約書作成の注意点

秘密保持契約書の雛形はとても便利ですが、内容が定型的で、その目的が見失われがちです。作成するにあたっては、まず何のためにどんな情報を秘密保持の対象とするのか、誰がどのような扱いをすることを禁じるのか、どのような管理が求められるのかなどを、明確にしておくことが必要です。 また、罰則に関する規定も盛り込んだ方がよいでしょう。

  • 何のために秘密保持契約を結ぶのか
  • どのような情報を秘密保持契約の対象にするのか
  • 誰がどのような扱いをすることを禁じるのか
  • 罰則や損害賠償はどうするか

何のために秘密保持契約を結ぶのか目的を明確に

秘密保持契約とは、そもそもある情報に関する目的外の利用を制限するためのものです。そのため目的が書かれていなければ、どこまでが制限の範囲なのかわからなくなってしまいます。

目的が明確でない場合、たとえば「自分は〇〇の範囲だったら大丈夫だと思い、この情報を漏らした」などという言い訳をすることが可能になってしまいます。このような混乱を起こさないためにも目的を明確にすることは重要です。

どのような情報を秘密保持契約の対象にするのか情報の種類や性質を明確に

秘密保持契約書を書くにあたって重要となってくるのが、この情報の種類や性質を明確にするということです。

「本契約において秘密情報とは〇〇をいう」といった文言を用いて、契約書上で用いる「秘密情報」の意味を定義することを行う必要があります。もし秘密となる情報の種類や性質が明確でない場合には、現場の社員が混乱し、思わぬ拍子に情報を漏らしたということにもなりかねません。重要な情報を漏洩から守るためにも、何が秘密情報であるかを、明確に示しておく必要があります。

誰がどのような扱いをすることを禁じるのか契約者や管理方法を明確に

契約をするということは必ず契約者がいるわけですから、契約者を明確にしておく必要があります。また他社と契約を結ぶ場合には、どの範囲までこの情報を広げていいのかを明確にしておかなければなりません。

さらに、情報の扱いに関して、複製の禁止や、秘密情報を含んだUSBメモリー文章などの持ち出しの禁止など、管理方法にも言及しなければなりません。

罰則や損害賠償はどうするか違反した場合の処罰を明確に

罰則や損害賠償の規定を設けることは、単に情報が漏洩した場合の処置を述べるというだけではありません。罰則や損害賠償の規定を設けることで、情報の重要さが伝わり、情報漏洩に関する意識の向上にも役立ちます。

その他に気を付けることは有効期間、準拠法、反社会勢力の排除など

秘密保持契約の有効期間を設けた方がよい理由は、「期間の定めのない契約」は一方的な申し入れで契約解除となる可能性があるためです。そのため、ある一定の期間の期限を設け、必要だったら再度更新するといった方法がとられることもあります。

また、一般に「反社条項」つまり、反社会勢力との関わりがある場合は一方的に契約を解除できること損害賠償請求できることなどの条項を設けることになっています。さらに特に外国との契約の場合は、どこの国の法律に準拠するかなどの、取り決めを行っておく必要があるでしょう。

ワンポイントアドバイス
最近ではわずかな個人情報を取り扱う際にも、秘密保持契約を結ぶことがあります。秘密保持契約を結ぶことで、情報の提供者は安心することができ、より良い関係を結ぶことができます。 しかし、契約とは法律上のことですので、これでしっかりと契約書が作成できているか、不安になることもあると思います。そのような場合は、専門の弁護士にリーガルチェックをお願いすると良いでしょう。

秘密保持契約書作成ちょっとした疑問点

秘密保持契約書を作成するにあたって、よくされる質問があります。ここは主にその疑問点に関して、見ていきます。

秘密保持契約書に印紙は必要?

結果から言えば、必要ありません。 印紙が必要になるのは、その契約書を交わすことによって、何かしらの経済的利益が得られるといった時のみになります。ですので、もし秘密保持契約書に取引の情報などが書いてあれば必要になるかもしれませんが、秘密保持契約だけによって利益が上がるとは考えられないので、通常は印紙が必要ありません。

秘密保持契約書、3社の場合はどうする?

基本的に、2社間の間で取り交わされる秘密保持契約書と変わりはありません。しかし、2社間では甲乙であったものが、甲乙丙になるでしょう。4社間であった場合は、甲乙丙丁になります。少し注意が必要であるのは、3社間での秘密保持契約書の場合、その3社すべてが全てが同じ情報を共有するということを意味しています。

ですので、たとえばA、B、Cのうち、AとBだけしか情報を共有しないのであれば、2社間の機密保持契約で問題ありません。

契約書の中にある秘密保持条項との違いは?

なかには、秘密保持契約書というのではなく、取引契約書の中に秘密保持条項が盛り込まれていることもあります。

一般に秘密保持契約書とは、取引の交渉段階において結ばれることが多いです。どのような内容の取引をするかを、安心して話し合うために結ばれることがあります。それに対し取引契約書の中にある秘密保持条項は、取引後に知り得た情報に関して定めたものになります。

ワンポイントアドバイス
現代では、英語の秘密保持契約の雛形もインターネット上に公開されています。しかし、特に外国の方との契約を交わす場合には、常識的に通じるだろうという意識は捨てて、明確な規定を設ける必要があります。このような場合は、外国との取引に慣れている専門の弁護士に依頼することをお勧めします。

秘密保持契約書作成は弁護士に相談

秘密保持契約書を交わすにあたっては、それがどんな秘密情報に関するもので、何を目的としており、どのような管理をする必要があるのか、また違反した場合にどんな罰則が与えられるのか、などの条項を設ける必要があります。

現代では、秘密保持契約書はなくてはならないものであり、仕事をする上で触れる機会も多いでしょう。このような契約書を交わす上では、自分が情報を受ける側なのか、提供する側なのかを意識し、しっかり内容を把握して契約することが大切です。

秘密保持契約書の作成については、内容に不備があってはいけません。内容に問題がないかは、素人が判断することは難しいため、弁護士に相談するようにしましょう。

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