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会社の活動と著作権のつながり
社内の資料に、ほかで見つけた画像を貼り付けた。自社の広告に、気に入った文章を引いてきた。仕入れ先の写真を、そのまま自社の案内に載せた。どれもよくある光景ですが、実はどれも、著作権をめぐる問題をはらんでいます。
著作権と聞くと、音楽や小説の世界の話だと感じる方がいるかもしれません。けれども、会社の日々の活動は、他人が作ったものに囲まれています。文章、写真、図、設計、資料。そのほとんどに、作った人の権利が及んでいます。
自社が何かを生み出す会社でなくても、事情は変わりません。案内文を作る、掲示物を貼る、社内で資料を配る。こうした日常の作業のなかに、他人の表現を扱う場面は必ず紛れ込んでいます。無縁でいられる会社は、まずないと考えてください。
しかも、著作権の問題はある日突然、通知の形でやってきます。無断で使っているという指摘とともに、使用の中止と金銭の支払いを求められる。そのとき初めて、自社の使い方が問題だったと気づく。そういう相談は少なくありません。
やっかいなのは、使い始めてから時が経つほど、影響が広がっている点です。印刷物として配ってしまった、複数の媒体に載せてしまった。回収の手間も、その間の使用に対する責任も、後になるほど重くなっていきます。
他方で、会社は使う側であるだけではありません。自社で作った資料や記事、写真や図面が、他社に勝手に使われることもあります。守る側に回る場面も、当然にあります。この記事では、その両面を見ていきます。
自社の案内文がそっくりそのまま他社の頁に載っていた、というご相談も珍しくありません。手間をかけて作ったものが、労せず持っていかれる。悔しさもさることながら、顧客が混同してしまう点でも見過ごせない問題です。
ここで押さえておきたいのは、著作権は登録などの手続きをしなくても作った時点で自然に生じる権利だという点です。特別な届出をしていないから権利がない、という理屈は通りません。この点が、ほかの権利との大きな違いです。
つまり、目の前にある文章や画像には、たいてい誰かの権利がついていると考えるべきです。自由に使ってよいものは、思っているより少ない。この前提に立つだけでも、危うい使い方はかなり減らせます。
この記事では、著作権とはどのような権利なのか、どこからが侵害になるのか、会社がやりがちな失敗はどこか、そして自社のものが使われたときにどう動くべきかまでを、弁護士の視点から順にお伝えします。
細かな条文の解説をするつもりはありません。経営者や現場の担当者が、これは確かめたほうがよさそうだと気づける程度の勘どころをお伝えします。すべてを理解する必要はなく、危うい場面が分かれば十分です。
読んでくださっている方のなかには、まさに今、使い方に迷っているという方もいるでしょう。あるいは、自社の資料が無断で使われているのを見つけて、どうすべきか考えている方もいるかもしれません。どちらの立場にも役立つ内容を心がけました。
なお、ここでお伝えするのは一般的な考え方です。実際の判断は、その表現の中身や使われ方によって変わります。判断に迷う場面に出会ったら、自己流で結論を出さず、専門家に確かめていただくのが安全です。
著作権とはどのような権利か
まず、著作権という権利の輪郭を押さえておきましょう。ここを理解しておくと、後の判断がずいぶん楽になります。
著作権とは、人が考えや気持ちを、なんらかの形で表したものについて、その作った人に与えられる権利です。文章、写真、図、絵、音楽、動画、そして計算の手順を書いたものまで、幅広いものが対象になります。
もっとも、表したものであれば何でも対象になるわけではありません。ありふれた表現や、事実をそのまま並べただけのものは、対象から外れることがあります。短い言い回しや、単なる数値の一覧などがその例です。
大切なのは、作られた時点で自然に権利が生じるという点です。どこかに登録する必要も、権利があると明記する必要もありません。名前が書かれていないから自由に使える、というのは大きな誤解です。
この仕組みは、作る側にとっては心強いものです。手続きを踏まなくても守られるからです。一方、使う側から見れば、権利の有無が外から見えにくいということでもあります。だからこそ、慎重な確認が求められます。
もう一つ知っておきたいのが、権利が及ぶのは表された形であって、その中にある考えそのものではないという点です。同じ着想から別の表現を作ることは妨げられません。この区別が、実務ではしばしば争点になります。
たとえば、他社の資料を読んで、その説明の仕方が分かりやすいと感じたとします。同じ考え方を自社の言葉で書き直すのであれば問題ありません。しかし、言い回しや図の構成までなぞってしまえば、話は別になります。
著作権は、いくつかの内容が束になった権利です。複製すること、公に伝えること、改変すること。それぞれについて、作った人の許しが必要になります。使い方の種類によって、必要な許しの中身も変わってきます。
ここを取り違えると、思わぬ行き違いが生じます。社内で使う許しは得ていたが、社外への公開までは含まれていなかった。手を加えずに使う前提だったのに、作り替えてしまった。許された範囲を確かめる癖をつけてください。
さらに、作った人の人格に関わる権利も認められています。名前を表示してもらう、意に沿わない改変をされない。こうした側面は、金銭で譲り渡すことができません。使う側としては、この点にも気を配る必要があります。
権利そのものを譲り受けた場合でも、この側面は元の作り手に残ります。自由に作り替えてよいと考えていると、思わぬ苦情を受けることがあります。改変の可能性がある使い方をするなら、その点も取り決めておきましょう。
権利が続く期間は法律で定められており、その期間を過ぎたものは自由に使えるようになります。ただし、その判断は簡単ではありません。古いものだから大丈夫だろうという思い込みで使うのは、危うい判断だといえます。
どこからが著作権侵害になるのか
では、実際にどこからが侵害になるのでしょうか。ここが最も気になる点だと思います。判断の枠組みを整理しておきます。
大まかにいえば、他人が作ったものを、その人の許しなく、権利の及ぶ形で使えば侵害になります。ここでいう使うとは、写して使うこと、社外に向けて示すこと、手を加えて別の形にすることなどを指します。
加えて、まったく同じでなければ大丈夫だという考え方も改める必要があります。手を加えたうえで使う行為も、権利の及ぶ使い方に含まれるからです。少し変えたから別物だという説明は、通らないことのほうが多いのです。
よくある誤解として、少しだけなら大丈夫、出所を書けば大丈夫、営利目的でなければ大丈夫、といった考え方があります。いずれも、そのままでは通用しません。量の多寡や目的だけで判断できる問題ではありません。
こうした思い込みは、社内でひとりでに広まっていきます。前任者がそうしていた、他社もやっている。その積み重ねが、いつの間にか社内の常識になってしまいます。折を見て、根拠を確かめ直すことをおすすめします。
- 一部だけを使ったから問題ないとは限らない。
- 出所を書き添えれば自由に使えるわけではない。
- 営利を目的としない使い方であっても許しは要る。
- 社内での利用であれば無制限に許されるわけでもない。
- ネット上で公開されているものにも権利は及んでいる。
ただし、法律は一定の場合に、許しがなくても使える道を認めています。引用と呼ばれる使い方が、その代表です。自社の主張を述べるなかで、その裏づけとして他人の文章の一部を示すような場面がこれにあたります。
この仕組みがあるのは、表現を発展させるために、先行するものに触れる必要があるからです。ただし、あくまで例外的な取り扱いです。自社の表現を作るうえで本当に必要な範囲かどうかを、その都度考えてください。
もっとも、引用として認められるには、いくつもの条件を満たす必要があります。自社の記述が主で、引いてきた部分が従であること。どこからどこまでが引用かがはっきり分かること。出所を示すこと。改変しないこと。
画像や写真については、とりわけ慎重さが求められます。文章と違って、一部だけを引いてくるという形をとりにくいためです。全体をそのまま使うことになりがちで、引用として認められにくい場面が多くなります。
図表についても同じことがいえます。数値そのものには権利が及ばなくても、それを見せるための工夫には権利が及ぶことがあります。数字を借りて自社で作り直すという進め方であれば、危うさは小さくなります。
また、ネット上で見つけたものは自由に使ってよい、という考え方も改めてください。公開されていることと、自由に使ってよいこととは、まったく別の話です。むしろ、出どころが分からないものほど、危険は大きくなります。
会社がうっかりやりがちな場面
ここからは、実際に問題になりやすい場面を挙げていきます。心当たりがないか、自社の運用と照らしてみてください。
最も多いのが、自社のホームページや案内資料に、他所から持ってきた画像を使う場面です。見栄えのする写真が欲しい、説明に合う図が欲しい。そう考えて検索で見つけたものを、そのまま貼り付けてしまう。
近ごろは、こうした無断の使用を見つけ出す仕組みも広まっています。公開したその日に気づかれることもあります。見つからないだろうという見込みで進めるのは、もはや通用しないと考えたほうがよいでしょう。
担当者に悪気があるわけではありません。ただ、使ってよいものと悪いものの区別がついていないだけです。会社として基準を示していなければ、現場は判断のしようがありません。ここは、経営の側の課題だといえます。
次に多いのが、他社の資料をもとに自社の資料を作る場面です。参考にすること自体は問題ありませんが、文章や図をほぼそのまま写していれば、話は変わります。どこまでが参考で、どこからが写しなのか。この線引きは難しいものです。
判断に迷ったときは、元の資料を閉じて、自分の言葉で書けるかを試してみてください。見ながらでなければ書けないのであれば、それは写しに近い作業をしているということです。この確かめ方は、現場でも使いやすいはずです。
社内の勉強会で、他所の記事を配ることもあるでしょう。社内だから大丈夫だと考えがちですが、写して配る行為そのものが権利に触れる場合があります。人数の多寡にかかわらず、注意が必要な場面です。
安全なのは、記事そのものを配らず、その所在を伝えて各自に読んでもらう形です。要点だけを自社の言葉でまとめた資料を作るのもよいでしょう。少しの工夫で、危うさを避けながら目的は果たせます。
また、外部の制作者に頼んで作ってもらったものについても、思わぬ落とし穴があります。費用を払って作ってもらったのだから自社のものだ、と考えていませんか。取り決めがなければ、権利は作った側に残ったままです。
この点は、事業を続けるうえで後々まで響きます。作ってもらった図案を別の商品に使いたい、案内文を作り替えて再び使いたい。そのたびに相手方の許しが要るとなれば、手間も時間もかかります。最初の取り決めが肝心です。
会社でよく起こる場面と、気をつけたい点を表にまとめました。
| 場面 | 起こりやすい問題 | 対策 |
|---|---|---|
| ホームページやチラシ | 検索で見つけた写真やイラストを無断で使う | 利用条件を確かめた素材か、自社で撮影したものを使う |
| 社内資料や研修 | 新聞記事や書籍をコピーして配る | 社内利用でも許可が必要な場合があると周知する |
| 外部に制作を依頼 | 納品物の著作権が制作会社に残ったまま | 契約で権利の譲渡と、著作者人格権を行使しない約束を定める |
| SNSでの発信 | 他人の投稿の画像をそのまま転載する | 引用の条件を満たすか、許可を得てから使う |
引用として許されるには、自社の文章が主で引用部分が従であること、引用部分がはっきり区別されていること、出典を示すことなどが必要です。著作権の侵害には、10年以下の拘禁刑または1,000万円以下の罰金が定められており、法人には3億円以下の罰金が科されることもあります。
自社のものが無断で使われたとき
ここまでは使う側の話でしたが、会社は守る側にも立ちます。自社で作った文章、写真、資料、図面が、他社に無断で使われている。そう気づいたとき、どう動けばよいのでしょうか。
まず行うべきは、事実を記録に残すことです。どこで、どのような形で使われているのか。画面の写しや印刷物として、その状態を保存しておきます。相手方が気づいて消してしまえば、後から示すことが難しくなるからです。
記録には、いつの時点のものかが分かる形が望まれます。日付が読み取れる形で残しておく、公開されている場所の情報も一緒に控えておく。こうした一手間が、後の交渉で効いてきます。
あわせて、自社のものがいつ世に出たのかも確かめておきましょう。どちらが先に作ったのかは、話し合いの土台になります。制作の記録や公開の時期が分かる資料を、あらかじめ手元にそろえておくと動きが早くなります。
次に、自社の権利がきちんと自社にあるかを確かめます。外部に作ってもらったものであれば、権利が自社に移っているかどうかが問題になります。取り決めがなければ、自社が権利者だと言い切れないこともあります。
そのうえで、相手方の使い方が本当に権利に触れるものかを見きわめます。似ているというだけでは足りません。自社のものをもとに作られたといえるか、表現として重なっているといえるか。この判断には専門的な目が要ります。
同じ題材を扱えば、表現が似てくるのはある程度避けられません。業界の慣行として決まった言い回しもあります。似ているという印象だけで動くと、かえってこちらの立場が悪くなることもあるため、慎重に見きわめてください。
- 使われている状態を、日付の分かる形で記録に残す。
- 自社にその権利があることを、取り決めや経緯から確かめる。
- 相手方の使い方が権利に触れるものかを、専門家とともに見きわめる。
- 相手方に連絡し、使用の中止や必要な対応を求める。
- 応じない場合は、法的な手続きに進むかどうかを判断する。
相手方への連絡は、いきなり厳しい調子で行う必要はありません。知らずに使っている場合も多く、事情を伝えれば素直に応じてくれることもあります。まずは事実を示し、対応を求めるところから始めましょう。
相手方が取引先であったり、同じ業界の会社であったりする場合はなおさらです。強い調子で切り出せば、その後の関係にひびが入ります。求めたいのは使用の中止なのか、埋め合わせなのか。目的を定めてから連絡してください。
それでも応じない、あるいは事業に大きな影響が出ている。そうした場合には、より強い手立てを検討します。使用をやめるよう正式に求める、生じた損害の埋め合わせを求める。取りうる道はいくつかあります。
どの道を選ぶかは、相手方の姿勢と、自社が受けている影響の程度によって決まります。使用さえ止まればよいのか、被った不利益まで求めたいのか。まずは自社が何を望むのかを、はっきりさせておくことが出発点です。
ただし、どこまでの対応をとるかは、費用と手間、そして得られるものを見比べて決める必要があります。感情に任せて突き進むのではなく、事業にとって何が得策かという視点を持ってください。
社内で整えておきたい備え
著作権をめぐる問題は、起きてから対応するより、起きないようにするほうがはるかに楽です。会社として、どのような備えを整えておくべきでしょうか。
第一に、使ってよい素材の基準を、社内で明らかにしておくことです。どこから取ってきたものなら使ってよいのか、迷ったら誰に聞けばよいのか。この二点が示されているだけで、危うい使い方は大きく減ります。
取り扱う素材の入手先を、あらかじめ絞っておくのも有効です。自社で撮った写真、正式に使用を認められた素材、社内で作った図。この範囲に収めておけば、現場が個別に判断する場面そのものを減らせます。
基準がなければ、現場は自分の感覚で判断せざるを得ません。その感覚は人によって違いますから、どこかで無理が生じます。決まりを作ることは、現場を縛るのではなく、現場を守ることでもあります。
第二に、外部に制作を頼むときの取り決めを整えることです。作ってもらったものの権利をどう扱うのか。自社が自由に使えるようにするのか、権利そのものを移してもらうのか。この点を書面に落としておきます。
依頼の段階で切り出しておけば、話はこじれません。作り終えてから権利を移してほしいと言い出せば、条件をめぐるやり取りが生じます。最初に決めておくことが、双方にとって最も穏やかな進め方です。
ここがあいまいなまま進めると、後から使い方を変えたいときに困ります。別の用途に転用したい、一部を作り替えたい。そうした場面で、あらためて許しを求めなければならなくなります。
第三に、自社が作ったものを整理しておくことです。何を、いつ、誰が作ったのか。この記録があれば、無断で使われたときに自社の権利を示しやすくなります。作った経過を残す習慣を、社内に根づかせてください。
担当者が辞めてしまうと、経緯を知る者がいなくなるという問題も起こります。誰が作ったのか分からないまま、自社のものだと言い切れなくなります。制作の記録は、人ではなく組織に残す形にしておきましょう。
第四に、担当者に基本を伝える機会を設けることです。難しい理屈まで知る必要はありません。他人が作ったものにはたいてい権利があること、迷ったら聞くこと。この二つが共有されていれば十分です。
新しく入った社員や、外部に業務を任せる相手にも、同じことを伝えておきましょう。社内の常識は、外から来た人には通じません。伝える場を設けておくことが、思わぬ穴をふさぐことにつながります。
そして第五に、迷ったときにすぐ相談できる相手を持っておくことです。判断に迷う場面は必ず出てきます。そのときに立ち止まって聞ける先があるかどうかで、結果は大きく変わってきます。
公開の直前になって迷いが生じることも多いものです。すぐに聞ける相手がいなければ、時間に押されて見切り発車になりかねません。日ごろから相談できる関係を結んでおくことが、こうした場面で効いてきます。
専門家に相談する意味と会社の向き合い方
著作権をめぐる判断は、思っている以上に微妙なところを含んでいます。似ているかどうか、引用として認められるか、権利が自社にあるか。いずれも、条文を読むだけでは答えが出ません。
とくに難しいのが、どこまでが真似で、どこからが侵害なのかという線引きです。世の中の表現は、多かれ少なかれ先行するものの影響を受けています。そのすべてが問題になるわけではありません。
この線引きは、感覚だけでは決められません。どこが重なっているのか、その部分に作った人の工夫が表れているのか。細かく分けて検討していく作業が必要になります。専門家が時間をかけて見るのは、まさにこの点です。
この見きわめには、過去にどのような判断が積み重ねられてきたかという知識が要ります。専門家に相談する意味は、まさにここにあります。経験に照らして、危ういのか大丈夫なのかを示してもらえるのです。
また、相手方から指摘を受けたときの対応にも、専門的な判断が欠かせません。慌てて非を認めてしまえば、必要以上の負担を引き受けることになりかねません。逆に、無視すれば事態が大きくなります。
指摘を受けたら、まず使用を止めるかどうかを判断し、それから中身の検討に入るのが基本です。止めておけば、その間に生じる負担は広がりません。検討には時間がかかることもあるため、先に手を打っておく意味があります。
実際、指摘の内容を検討すると、相手方の主張がそのままでは通らない場合もあります。まずは落ち着いて、どこまでが認められる指摘なのかを見きわめる。その作業を専門家とともに行うことが大切です。
自社のものが使われている側であっても同じです。どの手立てをとるのが得策か、どこまで求められるのか。見通しを持って進めなければ、労力ばかりかかって成果が伴わないということにもなります。
とくに、相手方が遠方であったり、多数にわたっていたりする場合は、どこまで手を広げるかの判断が要ります。すべてに対応しようとすれば、本業に差し支えます。優先すべき相手を絞る視点も、時には必要になります。
相談の際には、問題になっているものそのものと、それがどう作られたかの経緯を用意しておくとよいでしょう。制作を頼んだ際の書面、やり取りの記録。こうした材料があるほど、的確な助言が得られます。
ここまで、著作権の基本から、侵害となる場面、備え方までを見てきました。あらためて整理しておきます。
会社が心得ておくべきことは、それほど多くありません。他人が作ったものにはたいてい権利があること。使うなら許しを得るか、認められた形にとどめること。自社のものは記録を残して守ること。この三つが柱になります。
この三つは、いずれも特別な費用をかけずに始められるものばかりです。仕組みを作るというより、考え方を共有することが中心だからです。まずは社内で話題にしてみるところから、取りかかってみてはいかがでしょうか。
このうち最も大切なのは、最初の一つです。目にするものの多くには誰かの権利がついている。この前提さえ共有されていれば、現場は自然と慎重になります。逆に、この前提がなければ、いくら決まりを作っても機能しません。
著作権の問題は、悪意から生じることのほうが少ないものです。ほとんどは、知らなかった、そこまで考えていなかったという場面から生じます。ですから、知っておくことそのものが、最も有効な備えになります。
会社にとって、思わぬ形で指摘を受けることは、費用の面でも信用の面でも痛手になります。とくに、社外に向けて公開しているものに問題があった場合、その影響は広く及びます。
取引先や顧客の目に触れる場所での出来事であれば、なおさらです。事業の中身とは関わりのないところで、会社の姿勢を疑われることにもなりかねません。守りを固めておく意味は、金銭の問題にとどまりません。
一方で、自社が生み出したものは、会社の力を映す財産です。資料も、記事も、写真も、時間と手間をかけて作られたものです。それが勝手に使われるのを見過ごすのは、財産を手放すのと変わりありません。
使う側としての慎重さと、守る側としての備え。この両方を持つことが、会社に求められる姿勢です。どちらか一方に偏らず、両面から見直してみてください。
見直しの入り口は、自社が今どこで他人の表現を使っているかを洗い出すことです。ホームページ、案内資料、社内の配布物。並べてみると、思っていた以上に多いことに気づくはずです。まずは現状を知ることから始めましょう。
迷う場面が出てきたら、自己流で判断せず、知的財産の問題にくわしい弁護士に相談することをおすすめします。早い段階で確かめておけば、多くの問題は避けられます。この記事が、その見直しのきっかけになれば幸いです。
著作権侵害に関するよくある質問
著作権は、登録しなければ生じないのですか
いいえ。著作権は、作られた時点で自然に生じます。役所への届出をしていなくても、権利がないことにはなりません。作者の名前が示されていないものであっても、勝手に使ってよいということにはなりません。逆にいえば、目にする文章や画像には、たいてい誰かの権利がついていると考えるべきです。この前提を社内で共有しておくだけでも、危うい使い方はかなり減らせます。
出所を書けば、他人の文章を使ってもよいのですか
出所を書き添えるだけでは足りません。許しなく使える引用として認められるには、自社の記述が主で引いてきた部分が従であること、どこからどこまでが引いてきた部分かがはっきり分かること、出所を示すこと、内容を改変しないことなど、いくつもの条件を満たす必要があります。とりわけ画像や写真は全体をそのまま使うことになりやすく、引用として認められにくい傾向があります。
外部に作ってもらった資料の権利は、自社のものになりますか
取り決めがなければ、権利は作った側に残ったままになるのが原則です。費用を払って作ってもらったのだから自社のものだ、と考えるのは危険です。制作を頼む際には、その成果を自社がどう使えるのか、権利そのものを移してもらうのかを、あらかじめ書面に落としておいてください。ここがあいまいだと、後から別の用途に転用したいときに、あらためて許しを求める必要が生じます。
自社のものが無断で使われていたら、どうすればよいですか
まず、使われている状態を日付の分かる形で記録に残してください。相手方が気づいて消してしまうと、後から示すことが難しくなります。次に、その権利が確かに自社にあるかを、制作の経緯や取り決めから確かめます。そのうえで、相手方の使い方が本当に権利に触れるものかを専門家とともに見きわめ、使用の中止や必要な対応を求めていく流れになります。
