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企業再生の方法と進め方~倒産を避け、経営を立て直す

この記事で分かること

  • 「企業再生」とは、経営が悪化している企業を再建すること
  • 「企業再生」には法的再生と私的再生がある
  • それぞれの状況にあった再生手続を選択することが重要

「企業再生」という言葉には、倒産しそうな企業が行うといった負のイメージと、以前の失敗を生かして新しく再建するといった正のイメージの両方があります。適切な方法を用いて企業再生を行うことは、これらのイメージをうまく利用するために重要になります。ここでは、企業再生の基礎的な知識と、手続の流れについて解説します。

企業再生とは何か

「企業再生」に似た言葉に、「事業再生」という言葉があります。結局のところ「事業」を再生することは「企業」を再生することにもなり、両者は似たような意味を持っていますが、これらには「企業」に着目するか、「事業」に着目するかという違いがあります。ここでは用語を統一し、「企業再生」という言葉を一貫して用いて解説していきます。

「企業再生」の意味

「企業再生」を簡単に言えば、経営が悪化している企業を再建することを意味しています。最近では、企業再生をビジネスとしている企業もあり、様々なメディアで取り上げられることも多いです。この企業再生の手法には、法的再生と私的再生があります。

「企業再生」の種類~法的再生と私的再生~

企業再生の手法には、法的再生と私的再生があります。法的再生には、買掛金の支払いや差し押さえを一時停止することができることや、手続が明瞭かつ公正に行われるといった利点があるのに対し、企業再生を行っていることが公になってしまうといった欠点があります。一方で私的再生は、非公開で進めることができるものの、公正さが疑われたり、再生に関わる債権者全員の合意が必要となるという欠点があるとされています。次に、法的再生と私的再生の具体的な内容について見ていきましょう。

法的再生とは

法的再生とは、企業再生に裁判所が関与する場合のことを言います。その際、裁判所の関与のもとに債権債務を処理する法的整理手続を活用することになりますが、この法的整理手続きは、大きく再建型と清算型とに分けることができます。法的再生に用いられるものは、この再建型がメインになりますが、事業を譲渡するなど、一部清算型手続も用いられることがあります。この再建型手続に関して、簡単に見てみましょう。

再建型手続の種類

  • 民事再生
  • 会社更生
  • 特定調停
  • 個人再生

民事再生

民事再生とは、民事再生法に基づいて、裁判所や監督委員のもとで、経営者自身が主体的にかかわって企業を再生していくことを意味しています。主として中小企業が対象となります。民事再生法は、2000年に施行された、企業再生手続を速やかに行うことを目的とした法律ですが、バブル崩壊後の倒産企業の増加に対応するために制定されました。監督委員には公認会計士が選ばれることが多いようです。

会社更生

民事再生が経営者主体となって進められるのに対し、会社更生法に基づく会社更生では、経営者自身がタッチできず、裁判所が選任した管財人のみが主体となって行われます。株式会社が対象となります。会社更生では、裁判所に選任された管財人のもとで更生計画を立て、組織再編やM&Aなどの手法を駆使しながら更生手続きを実行します。

特定調停

特定調停とは、特定債務者(経済的に破綻する可能性のある債務者)を再生させることを目的として行われるもので、裁判所が金融機関と債務者の間にたって、債務の調整をすることを言います。裁判所が債務を調整するといった簡単な手続きですので、民事再生よりも費用が安く、取引先に知られずに行うこともでき、信用の失墜を最低限に抑えるといった魅力がありますが、前者二つに比べると、耳にする機会は少ないでしょう。

個人再生

個人再生は、正確に言えば民事再生の特例の一つです。個人事業種の場合、通常の民事再生の手続をとると、予納金が高額なことから、この「個人再生」を利用するケースが多いようです。債務者が個人であり、再生後に安定した収入が見込め、住宅ローンの除く負債総額が5000万円未満であると利用することができます。裁判所から再生計画が認められれば、債務金額を五分の一程度に圧縮できるようになります。私的再生と個人再生は似ていますが、まったく異なる概念になります。

私的再生とは

裁判所が介入する法的再生に対し、私的再生は裁判所の加入なしにおこなわれます。主として経営者自身が再建計画を立てたり、弁護士やコンサルタントの援助のもとで行われます。債務者である経営者と債権者の間で話し合いが行われ、再建の支払いをゆるやかにしてもらう等の合意によって再生手続を進めていく手法になりますが、合意に関する特別の手続があるというわけではありません。具体的な再建計画をたて、それを了承してもうことで合意に至るといった形が多いようです。裁判所に支払う予納金が必要ないため、安上がりであり、秘密裏に行うことができますが、合意を取り付けるのが困難であることが欠点とされます。

ワンポイントアドバイス
自力で再生を試みるために、まずは誰かに相談したいとなった場合には、住んでいる都道府県に必ず一つはある中小企業再生支援協議会に相談して見るのも一つの手です。相談は無料であり、簡単なアドバイスや弁護士等の専門家の紹介などをしてくれます。もちろん、最初から弁護士の意見を聞いてみるのもよいでしょう。

企業再生の手法を決める

以上の基礎的な知識を念頭において、次に企業再生の具体的な流れの中で、まず、考えなくてはならないことについて見ていきましょう。

再生の価値があるかを検討する

まず具体的な手続に入る前に、本当に再生する価値があるのかを冷静に判断してみましょう。再生の目的や利点などを明確にすることは、どのような手続を採用するかということを決定するためにも重要なことです。多くの企業再生は、コア事業や技術力、商業権の価値に加え、社会的意義や従業員の雇用、取引先の保護などの観点から実行されます。場合によっては、経営者交代の可能性があることや、当面は金融機関からの資金調達が難しくなることも考慮しておく必要があります。

法的再生にするか私的再生にするかを選ぶ

企業再生の価値があるという結論に至ったら、法的再生と私的再生のメリット・デメリットを考慮してどちらの手法にするかを考えましょう。先に、法的再生には公正に手続が行われるため、債権者に信頼してもらえるが、公になってしまうといった欠点があると指摘しましたが、それに加えて、債権者や担保権者が再生手続と無関係に権利を行使することが不可能になり、財産の保全が図れるといった利点もあります。私的再生は、自分で計画でき、秘密裏に行うことができる一方で、手続が不透明になってしまい、債権者から信頼されないといったことも出てきます。財産の保全も図ることが困難になります。

法的再生が適するケースの例

債権者が多く、合意が得にくいケースや、担保権等を使用される可能性のある高利金融業者などがいるケース、責任の追及や手続等の公平性が重視されるケースの場合は、法的再生が適していると考えられます。

私的再生が適するケースの例

企業再生手続に入ったことが公になることで事業が悪化するケース、債権者全員の協力・合意が得られやすいケース、裁判所に頼らなくても公正な手続きが可能であるケースなどは、私的再生が適していると考えられます。

ワンポイントアドバイス
法的再生と私的再生にはそれぞれの特徴があります。どちらが適しているかが分からない場合は、企業法務に強い弁護士など、法律の専門家に意見をあおぐことも大切です。

企業再生の手続きの流れ

ここでは、最もケースの多い「民事再生」と「会社更生」の手続の流れを見ていきましょう。

民事再生の流れ

民事再生の手続は、債務者と債権者のどちらかが手続開始の申立てをしたときから始まります。債権者が申立てを行うことは珍しいですが、債務者が不誠実な対応であったり、財産隠匿の危険があるときなどに行われる場合があります。申立てが裁判所に認められると、まずは債務状況や財産状況の調査に加え、担保権の消失など、財産の保全措置が行われます。一方で債務者は、再生計画案を作成し、期間内に提出することが求められます。計画案が認められれば、あとはそれを実行に移すというだけになりますが、その間は監督委員の監督下に置かれることになります。

会社更生の流れ

会社更生手続きの申立ては、「資本金の額の10分の1以上にあたる債権を有する者」など、一定の資格を持った者によって行われます。申立てが行われると、やはり同様に、財産の保全措置がとられます。その後管財人が選定され、負債の状況や財産の状況の調査が行われます。法律を犯して会社に損害を与えた役員に対して損害賠償を追求することもあります。民事再生とは異なり、更生計画案を作成し裁判所に提出するのは管財人となりますが、この更生計画案の是非を問う関係人集会が開かれ、認可されると計画が実行に移されます。更生計画がすべて遂行された時、または遂行が確実であると認められた時に、会社更生手続は終了します。

私的再生の手続の流れ

私的再生の公式の手続というのはありませんが、そのポイントは、債権者に対して債権の支払いをゆるやかにしてもらう合意を取り付けることができるかどうかになります。そのために、まずは現状と経営不振の原因などを取りまとめた資料と、それに基づく再建計画案を債権者に提出することから始めるべきでしょう。債権者会議を開き、その場で説明し、質疑応答を行うといったこともよく行われます。そこで、債権の支払い一時停止期間に関する合意等が行われ、具体的な再建計画を実行するという流れになります。

私的再生の手続の種類

私的再生には、私的再生のルールを定めた「私的整理に関するガイドライン」や「中小企業再生支援協議会スキーム」、「事業再生ADR」、「企業再生支援機構による私的整理手続」「RCC企業再生スキーム」などがよく用いられます。「私的整理に関するガイドライン」は、債権者と債務者が主体となって私的再生手続を行うことが特徴となります。「中小企業再生支援協議会スキーム」は中小企業が対象となっており、「事業再生ADR」は紛争解決事業者が主体となって問題を解決するなど、方法によって様々な特徴があります。私的再生は企業が再建されれば手法は自由だという考えが基礎にあるため、コンサルティングを行っている企業や機構独自の手法がとられることがあり、手法ごとに様々な名称がついています。

ワンポイントアドバイス
企業再生手続には、負債の放棄や返済条件の変更など、法的な要素が多くなります。再建計画案には、どのくらい負債が軽減されると再建することができるかなどを正確に記入する必要がありますが、事前に弁護士に相談することで、法的手続きによる債務のカット等の可能性を探ることができます。企業再生手続を行う際は、一度専門の弁護士に相談してみてはいかがでしょうか。

企業再生へむけて弁護士に相談

企業再生には、法的再生と私的再生があることを見てきました。法的再生とは、裁判所に介入してもらう方法で、私的再生は経営者が弁護士やコンサルティング会社のサポートを受けて行う方法です。法的再生の場合は裁判所が介入するために公正さに信頼があるということを記しましたが、私的再生の場合も、早めに弁護士を入れて進めることで、公正さをアピールすることができます。また、早めに弁護士に依頼すると、とることができる手段が多く、再建に有利になります。企業再生を考えている場合は、まず弁護士に相談してみるのがよいかもしれません。

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