ビジネスロイヤーとは~企業法務弁護士の仕事とビジネスにおける役割

この記事で分かること
  1. ビジネスロイヤーとは、主として企業法務を行う弁護士
  2. 企業法務とは、企業の事業活動に関わる法律上の問題全般を取り扱う業務
  3. 企業法務には、企業内弁護士と外部の弁護士事務所の両方をうまく活用する必要がある

近年では、コンプライアンスを遵守することが重要視され、ビジネスロイヤーの必要性がますます高まっています。今回は、ビジネスロイヤーとはどのような職業かをご紹介いたします。

ビジネスロイヤーとは

ビジネスロイヤーとは、主として企業法務を行う弁護士のことをいいます。現在大きな企業のほとんどは、名前は異なりますが、法務部、法務本部、法務室、法規部など企業法務関連のセクションを用意しています。

また、中小規模の会社でも、総務部門の中に法務グループや法務課などを設け、法務業務に専念する者を配属させているということが多くみられます。これらの部門やグループでは、主に企業法務を行っていますが、そもそも企業法務とはどのようなものをいうのでしょうか 。

企業法務とは

企業法務を簡単に説明すると、「企業の事業活動に関わる法律上の問題全般を取り扱う業務」と定義することができるでしょう。一般に企業の活動には、会社の設立から労働者の雇用、商品の販売まで、様々な局面があることが知られています。

企業は、その局面ごとに、様々な法律や規則などに携わらなければなりません。次に、局面ごとにどのような法務が必要になるのかについて簡単にみていきましょう。

設立時や組織運営に関わる法務

会社が事業を行うということは、意識するかしないかに関わらず、ある程度法的な行為を含みます。例えばオフィスを借りたり、備品を購入したり、従業員を雇うという行為自体、法律に規定された行為ということができるでしょう。

会社設立時には、会社の立ち上げや組織運営、管理一般について定めている会社法、そして商行為について定めた法律である商法に関わることが多いでしょう。

また、複数の人数で会社を設立する場合には、会社を辞める際の競業行為の禁止や株の取り扱いに関して法的効力のある合意書を作成しておくなどの、リスク管理をあらかじめ行っていた方がいいと考えられます。

さらに、会社を設立する理由となった新しいサービスに関する法律、雇用に関する法律など、幅広い法務が必要になります。こういった問題に対処するためには、事前に弁護士に相談し、意見を仰いでおく必要があります。

商業的取引に関する法務

商業的な取引に関しては主に商法が適用されますが、商法に規定がない場合は、民法が適用されることになります。 また場合によっては割賦販売法や借地借家法なども、関係してくることがあるでしょう。

商業的な取引や契約に関しては、これらの法律を踏まえた契約書の作成が必要であり、たとえ外国語であっても日本語であっても、その契約書が法律に則っているかを確認する「リーガルチェック」を受ける必要があります。契約書のリーガルチェックは、企業法務の重要な仕事のひとつです。

人事・労務に関する法務

例えば、人を雇う際には雇用契約書を結ぶ必要がありますが、この雇用契約書も法律に則っている必要があります。就業時間や休憩の有無、残業代の規定、また産休などの項目を決める際に、基準となるのが労働法です。近年では働き方改革の名のもとに、法律が次々と変わっています。

これらの法律を踏まえて、新しい就業体制を作ることも法務のひとつになります。さらに最近では、LGBTへの配慮や、セクハラ、パワハラなどの問題に注目が集まっており、違反者への罰則規定の周知や予防など、社内の体制を整える必要があります。

M&Aに関する法務

M&Aとは、平たくいえば企業買収のことです。ここでもやはり株式譲渡契約書や事業譲渡契約書といわれる通称最終契約書の作成が重要になってきますが、その前に「法務デューデリジェンス(DD)」と呼ばれる、法務上の問題点の調査が必要になります。

法務DDの対象となるのは、会社組織・株式に関する事柄から、許認可、知的財産権、人事・労務、訴訟などに至るまで、かなり幅広いです。ここでもし問題がみつかった場合は、M&Aの条件などについて、再考する必要が出てきます。

倒産に関する法務

倒産に関する法務は、自社が倒産する場合と、取引先が倒産する場合とで異なってきます。自社が倒産する場合は、会社財産の清算手続きなどを、管財人と共に行うといったことが必要になってくるでしょう。取引先が倒産する場合には、債権回収を法律に則って素早く回収するにはどうするか、といったことが問題になります。

また、事前に取引先が倒産しそうだということが予測される場合には、危機に対応できるように、支払日や支払い方法などの契約内容を詳細に決めておくことはもちろんのこと、利益喪失条項も盛り込んでおくことなどが、法務には求められます。

国際活動に関する法務

国際的な活動をする上では、活動先の国々の法律を踏まえておく必要があります。取引や契約を行う際にも、国際的な事情に詳しい者によるリーガルチェックは欠かせません。また、外国で社内の労働者を働かせる場合や、国内での活動の場合でも外国人を雇う際には、就業ビザなどの手続が必要になります。これらの手続を行うのも、法務の役割になるでしょう。

ワンポイントアドバイス
現在では、コンプライアンスの遵守が重要視されており、社内ルールの明文化や研修などによるコンプライアンスの周知の取り組みが重要視されています。社内の環境を、法律に則って保つことも、企業法務の仕事です。もし、社内のコンプライアンスに不安がある場合は、顧問弁護士などを活用し、早急に体制を整えることをおすすめします。

ビジネスロイヤーの仕事内容

端的にいえば、ビジネスロイヤーの仕事は、上記の法律上の問題に対処することです。 ビジネスロイヤーの中には、企業の中で、従業員として働く企業内弁護士(インハウスロイヤー)や、社外の弁護士事務所に所属し、顧問弁護士として働く弁護士がいます。

企業内弁護士の場合には、所属する会社が新規ビジネスを行う際に、法的なリスクを踏まえてそのビジネスを行うべきか、行わないべきかという判断を要求されることがあります。一般に、企業内弁護士だけではすべての企業法務をまかなうことはできないため、手におえない分は外部の弁護士事務所に依頼するという棲み分けがなされています。

ビジネスロイヤーの収入

日本組織内弁護士協会が2016年に発表した企業内弁護士のアンケート調査によれば、企業内弁護士の年収は、500万〜750万が一番多く、次いで750万〜1000万となっています。一般的には、弁護士事務所に所属する弁護士の方の給与が高くなりがちですが、福利厚生などをみると、企業内弁護士の方がワークライフバランスが比較的とりやすいといったこともあるようです。

このように書くと、弁護士事務所のビジネスロイヤーに依頼すると高くつくと思われるかもしれません。しかし、一般的には顧問料月3~5万に加え、その都度必要な分を支払うという形になるため、専門家を企業内弁護士として雇うよりも、安くなる傾向があります。

ビジネスロイヤーの勤務時間

一般的に弁護士は多忙なことで知られていますが、企業内弁護士の場合、平均して8時間から9時間が一番多いようです。次に9時間から10時間、そして10時間から12時間が多くなっています。割合としては少ないのですが、中には8時間未満の方や、14時間以上働く方もいるようです。

休日出勤に関しては、ほとんどない方が一番多いですが、月に1回から2回程度という方も16%ですが存在します。弁護士事務所に勤めるビジネスロイヤーの場合は、これよりも勤務時間が多くなることがほとんどです。

企業法務に関する資格

企業法務を行う上で役に立つ資格には、弁護士、司法書士、行政書士、ビジネス実務法務検定、ビジネスコンプライアンス検定、個人情報保護士などがあります。

ビジネス実務法務や、コンプライアンス検定、個人情報保護士は、特にビジネスの場での活用を目指したものであり、所有していると転職の際に評価してもらえる機会が多くなるでしょう。最近はコンプライアンス重視や個人情報保護の観点から、これらの資格の需要が高くなりつつあります。

ワンポイントアドバイス
近年では、資格を持たない法務部員の数が減り、企業内弁護士の数が増えてきているという傾向があります。しかし、現在はビジネスも多様化しており、これまでなかったような問題が発生したり、新規事業に参入したりするといった場合に、新たに専門家に相談する必要が出てくるでしょう。そのような場合は、弁護士事務所に所属している、その道の専門であるビジネスロイヤーに依頼することも考えたほうがいいでしょう。

ビジネスロイヤーのメリット・デメリット

ビジネスロイヤーのメリット・デメリットは、企業内弁護士か弁護士事務所に所属する弁護士かで異なってきます。ここでは、企業内弁護士のメリット、弁護士事務所のメリットに注目して説明します。

企業内弁護士のメリット

企業内弁護士のメリットは、企画運営の段階から関わってもらうことが可能なため、実情がわかっており、身近な存在として相談がしやすいところにあります。

また、たとえ企業内弁護士だけでは手におえない案件が出てきたとしても、どの弁護士事務所ならば信頼がおけるか、実力があるかなどを判断する目を持っているため、対応に右往左往しないという点があげられます。

弁護士事務所のメリット

弁護士事務所のビジネスロイヤーのメリットは、何といってもその専門性にあります。上でも述べましたが、企業内弁護士だけですべての企業法務に対応できるというわけではありません。実際、企業内弁護士が法廷に立つ機会はあまりないため、実際の裁判に慣れている弁護士を雇いたいのならば、一般の弁護士事務所に所属するビジネスロイヤーに依頼することになります。

ワンポイントアドバイス
最近では、ワークライフバランスに注目が集まっており、企業内弁護士は魅力的な職業のひとつかもしれません。しかし、やはり企業内弁護士の手におえない案件も出てくるため、そのような問題の解決には、弁護士事務所の活用をおすすめいたします。

企業法務の強化にはビジネスロイヤー導入の検討を

以上みてきたように、ビジネスロイヤーは企業活動の様々な局面で活躍します。現在ではコンプライアンスが重要視され、ビジネスロイヤーの重要性はますます高まっているといえるでしょう。裁判になりそうな場合でも、速やかに対応をすることで、社のブランドを保護することもできます。

現在、新しい技術が次々と出てくる過程で、企業法務は複雑化しつつあります。上記のように、企業内弁護士ですべての問題を解決することは難しいため、弁護士事務所に依頼するということを考慮して初めて企業法務全般がうまくいくと考えたほうがいいでしょう。

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