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支払いが遅れた分、上乗せして請求できることをご存じですか
取引先からの入金が、約束の日から2か月遅れてようやく届いた。ほっとする一方で、その間に自社が借入れでしのいだ利息や、ほかの支払いを遅らせた手間は、どこにも埋め合わされていない。そんなもやもやを感じたことはないでしょうか。
お金の支払いが約束の日より遅れた場合、支払う側は、元の金額に加えて、遅れた日数に応じた損害を払わなければなりません。これが遅延損害金です。契約で何も決めていなくても、法律が定める利率で当然に発生します。
それでも、実際に遅延損害金まで請求している会社は多くありません。金額が小さいから、取引先との関係を考えて、そもそも請求できると知らなかった。理由はさまざまです。ただ、支払いが大きく遅れた場合や、裁判で回収する場合には、遅延損害金の額が無視できない大きさになることがあります。
この記事では、債権回収の相談を受けている弁護士の立場から、遅延損害金とは何か、今の法定利率と計算の方法、契約で定める場合の上限、請求の進め方を、具体的な数字を使って説明していきます。未回収の請求を抱えているなら、遅れた日数を思い浮かべながら読んでみてください。
なお、ここでいう遅延損害金は、請求する側の立場から見たものです。支払う側の方にとっても、何がいくら上乗せされるのかを知っておくことは、支払いの優先順位を決めるうえで役に立ちます。遅れるほど負担が増える支払いから先に片づける、という判断の材料にしてください。
遅延損害金とは|利息との違い
遅延損害金は、支払期日を過ぎたことによって生じる損害の賠償です。期日までに払われるべきお金が払われなかった以上、その間に債権者が被った不利益を、一定の率でまとめて埋め合わせる、という考え方です。
よく似た言葉に利息があります。どちらも元の金額に一定の率をかけて計算するので混同されがちですが、性格はまったく違います。
| 比べる点 | 利息 | 遅延損害金 |
|---|---|---|
| 何の対価か | お金を借りて使うことの対価 | 期日に払わなかったことによる損害の賠償 |
| 発生する期間 | 借りた日から返す日まで | 支払期日の翌日から実際に払う日まで |
| 契約での定め | 定めがなければ原則として発生しない(商人間の貸付などを除く) | 定めがなくても法定利率で発生する |
| 損害の証明 | 不要 | 不要(遅れたことだけで請求できる) |
大切なのは、遅延損害金は損害の証明がいらないという点です。債権者は、実際にいくらの損害が出たのかを示す必要はありません。支払いが遅れたという事実だけで、決められた率の損害金を請求できます。反対に、実際の損害がそれより大きくても、原則として法定利率を超える額は請求できません。
また、支払う側が「お金がなかった」という事情を持ち出しても、遅延損害金を免れることはできません。お金の支払いについては、不可抗力を理由に責任を逃れることが法律で認められていないからです。
遅れていても損害金がつかない場面
支払期日を過ぎていても、遅延損害金を請求できない場面があります。代表的なのが、債権者の側が自分の義務を果たしていない場合です。たとえば、商品の代金を請求しているのに、約束した商品の一部をまだ納品していないなら、相手は「残りを納品するまで払わない」と主張できます。これを同時履行の抗弁といい、この主張が認められる間は、支払いが遅れても遅延損害金は発生しません。
請求の前に、自社の納品や工事の完了、検収の手続きがきちんと終わっているかを確かめておくことが、損害金まで確実に請求するための前提になります。
どんな支払いに遅延損害金が生じるか
遅延損害金は、お金の支払いが遅れたときには原則としていつでも生じます。代表的なものを挙げておきます。
- 商品やサービスの代金、工事の請負代金
- 貸したお金の返済
- 家賃や地代の支払い
- 交通事故や不法行為による損害賠償金
- 従業員への未払いの給料や残業代
損害賠償金の場合は、事故や不法行為が起きた日から遅延損害金が生じるのが原則です。交通事故の賠償金で、事故の日から支払いの日までの損害金が加算されるのは、このためです。
延滞税や延滞金とは別のもの
税金や社会保険料の支払いが遅れたときにかかる延滞税や延滞金は、国や自治体が法律に基づいて課すもので、民間の取引で生じる遅延損害金とは仕組みが異なります。率も法律ごとに決められていて、法定利率とは連動していません。
取引先との間で問題になるのは、あくまで民法や契約に基づく遅延損害金です。社内で「延滞金」と呼んでいる場合でも、取引先に請求するときは、契約の定めか法定利率に基づく遅延損害金として整理しておくと、相手とのやり取りで混乱が生じません。
遅延損害金に消費税はかかるか
遅延損害金は、商品やサービスの対価ではなく、損害の賠償として受け取るお金です。そのため、消費税はかかりません。請求書では、元本(税込の代金)と遅延損害金を分けて書き、遅延損害金には消費税を加えないようにしてください。
法定利率は年3%|3年ごとに見直される
契約で遅延損害金の率を決めていない場合は、法律が定める利率が使われます。これが法定利率です。
2020年4月1日に施行された改正民法で、法定利率は年5%から年3%に引き下げられ、3年ごとに見直す変動制になりました。これまでの見直しでは据え置きが続いており、2026年4月1日から2029年3月31日までの期間も年3%と決まっています。
| 期間 | 法定利率 |
|---|---|
| 2020年3月31日まで(改正前の民法) | 年5%(会社どうしの取引などの商事法定利率は年6%) |
| 2020年4月1日〜2023年3月31日 | 年3% |
| 2023年4月1日〜2026年3月31日 | 年3% |
| 2026年4月1日〜2029年3月31日 | 年3% |
改正前にあった商事法定利率の6%は廃止され、会社どうしの取引でも、個人の取引でも、同じ法定利率を使うことになりました。
どの時点の利率を使うか
法定利率が変わる可能性があるため、どの時点の利率を使うかが決められています。遅延損害金の場合は、支払いが遅れ始めた時点の法定利率が使われ、その後に利率が見直されても、その債権については最初の利率のままです。
たとえば、2025年に支払期日を迎えた代金であれば年3%が使われ、仮に2029年に法定利率が上がったとしても、この代金の遅延損害金は年3%のまま計算されます。
2020年3月以前の支払遅れには古い利率が使われる
2020年3月31日までに支払いが遅れ始めていた債権には、改正前の年5%や年6%がそのまま使われます。何年も前から回収できていない債権を請求するときは、支払期日がいつだったのかを確かめて、利率を取り違えないようにしてください。
とくに会社どうしの取引では、改正前の商事法定利率6%と今の3%とで、請求できる額が倍違います。古い取引が混じっている場合、期日ごとに利率を分けて計算する必要があります。
法定利率が上がる可能性はあるか
法定利率は、銀行の短期貸付の平均金利をもとに、3年ごとに見直されます。基準となる数値が前回の見直し時から1%以上動いたときに限り、1%刻みで変わる仕組みです。金利が上がる局面では、次の見直しで法定利率が上がる可能性もあります。
もっとも、前に書いたとおり、一つの債権に使われる利率は、支払いが遅れ始めた時点のものに固定されます。すでに遅れている債権の損害金が、見直しによって途中から増えることはありません。
継続取引で改正前後の請求が混じる例
たとえば、2019年から取引が続いている卸売先に、2020年2月末期日の代金200万円と、2020年5月末期日の代金300万円が残っているとします。2月末期日の200万円は、改正前に遅れ始めているので、会社どうしの取引として年6%で計算します。5月末期日の300万円は、改正後に遅れ始めているので年3%です。
一つの取引先に対する請求でも、期日ごとに利率が分かれることになります。請求書や訴状では、期日ごとに元本と利率、起算日を並べて書くと、計算の根拠がはっきりします。
遅延損害金の計算方法
遅延損害金は、次の式で計算します。
遅れた日数は、支払期日の翌日から、実際に支払われた日までを数えます。支払われた当日も日数に含めるのが通常です。うるう年であっても、実務では365日で割るのが一般的です。
計算の具体例
いくつかの例で、実際の金額を確かめてみましょう。
| 元本 | 利率 | 遅れた日数 | 遅延損害金 |
|---|---|---|---|
| 100万円 | 年3%(法定利率) | 60日 | 4,931円 |
| 100万円 | 年3%(法定利率) | 365日 | 30,000円 |
| 500万円 | 年3%(法定利率) | 2年(730日) | 300,000円 |
| 500万円 | 年14.6%(契約で定めた率) | 2年(730日) | 1,460,000円 |
数か月の遅れであれば、法定利率では大きな金額にはなりません。けれども、回収に何年もかかる場合や、契約で高い率を定めている場合には、元本の3割近くにまで膨らむこともあります。
表の最後の行のように、契約で年14.6%と定めていると、同じ2年でも法定利率の場合の5倍近い損害金になります。支払いが遅れがちな取引先ほど、損害金の率が高いことを意識してもらうだけで、期日を守る動機が強まります。契約書に率を書いておく意味は、実際に請求すること以上に、遅れを防ぐ抑止の効果にあるといってよいでしょう。
一部だけ支払われたときの計算
元本の一部が支払われた場合は、支払われた日を区切りにして、それぞれの期間の残高で計算します。たとえば、100万円の代金のうち、期日から90日後に40万円が支払われ、さらに120日後に残りの60万円が支払われたとします。
- 最初の90日分は、100万円に年3%をかけ、90日分で計算する(7,397円)。
- 次の120日分は、残りの60万円に年3%をかけ、120日分で計算する(5,917円)。
- 二つを合わせた13,314円が、この取引の遅延損害金になる。
なお、支払われたお金は、法律上、まず遅延損害金に、次に元本に充てられるのが原則です。相手が「元本の一部として払った」と言っても、当事者で別の取り決めをしていなければ、先に遅延損害金に充てて計算することができます。
判決の後も損害金は増え続ける
判決で支払いが命じられても、相手がすぐに払うとは限りません。判決の主文が「支払済みまで年3%の割合による金員を支払え」となっていれば、判決が出た後も、実際に回収できる日まで損害金は増え続けます。
たとえば、元本1,000万円について、支払期日から判決まで1年半、判決から差押えによる回収まで1年かかったとすると、法定利率でも2年半分、およそ75万円の損害金になります。差押えを申し立てるときには、申立ての日までの損害金を計算して請求額に含め、それ以降の分は配当や取立ての段階で精算します。
端数の扱い
遅延損害金の計算で1円未満の端数が出たときは、切り捨てるのが一般的です。何回かに分けて計算する場合も、期間ごとに端数を切り捨ててから合計します。請求書に計算の内訳を載せておくと、相手も確かめやすく、無用な争いを避けられます。
遅延損害金はいつから発生するか
遅延損害金が発生し始める日は、支払期日の決め方によって変わります。ここを誤ると、請求額が大きくずれることになります。
| 支払期日の決め方 | 遅延損害金が発生する日 |
|---|---|
| 「3月31日までに支払う」など確定した日を決めた | その日の翌日 |
| 「商品の検収後30日以内」など、出来事を起点に決めた | 期限が来たことを知った日(または請求を受けた日)の翌日 |
| 支払期日を決めていない | 請求を受けた日の翌日 |
| 不法行為による損害賠償 | 不法行為の日 |
支払期日を決めずに取引をしている場合は、請求しない限り遅延損害金は発生しません。請求書を送ったつもりでも、届いた日が分からなければ、起算点を示すことが難しくなります。期日を決めていない取引で損害金まで請求したいなら、内容証明郵便で請求し、届いた日を記録に残しておくのが確実です。
分割払いと期限の利益の喪失
分割払いの合意をする場合は、支払いが遅れたときの扱いを必ず決めておきます。1回でも遅れたら残りの全額をすぐに支払う、という条項を「期限の利益の喪失」といいます。この条項があれば、遅れた時点で残りの全額が支払期日を迎えたことになり、全額について遅延損害金が発生し始めます。
反対に、この条項がないと、遅れた回の分割金にしか遅延損害金がかからず、残りの分は本来の分割の期日まで請求できません。分割払いの合意書を作るときは、次の点を盛り込んでおくと安心です。
- 残高の総額と、それを債務者が認める旨
- 毎回の支払額、支払日、振込先
- 支払いを1回でも怠ったときは残額を一括で支払う旨
- その場合の遅延損害金の利率
契約で定める遅延損害金と、その上限
遅延損害金の率は、契約で自由に決めるのが原則です。法定利率の3%では抑止の効果が弱いため、取引の基本契約や金銭消費貸借契約では、年14.6%などの高い率を定めることがよくあります。
ただし、どんな率でも認められるわけではありません。取引の種類によって、法律で上限が決まっているものがあります。
| 取引の種類 | 遅延損害金の上限 | 根拠 |
|---|---|---|
| お金の貸し借り(元本10万円未満) | 年29.2% | 利息制限法 |
| お金の貸し借り(元本10万円以上100万円未満) | 年26.28% | 利息制限法 |
| お金の貸し借り(元本100万円以上) | 年21.9% | 利息制限法 |
| 貸金業者による貸付(営業的金銭消費貸借) | 年20% | 利息制限法 |
| 事業者と消費者の契約(代金の支払遅れ) | 年14.6% | 消費者契約法 |
| 退職した従業員への賃金の支払遅れ | 年14.6% | 賃金の支払の確保等に関する法律 |
上限を超える率を定めても、超えた部分は無効になります。とくに一般の消費者との契約では、年14.6%を超える遅延損害金を定めても、その部分は請求できません。
会社どうしの取引では公序良俗に注意
会社どうしの売買や請負では、利息制限法や消費者契約法のような明確な上限はありません。とはいえ、あまりに高い率は、公序良俗に反するとして一部が無効とされることがあります。実務では、年14.6%を目安に定める契約が多く見られます。
違約金との関係
遅延損害金とは別に、違約金を定めている契約もあります。違約金は、契約違反があった場合に支払う金額をあらかじめ決めておくものです。遅延損害金と違約金を両方請求できるかは、契約の書き方次第です。違約金が損害賠償の額の予定として定められていれば、遅延損害金と二重には請求できないのが原則です。
下請取引や家賃では法律が率を決めている
取引の種類によっては、法律が遅延損害金の率そのものを定めているものもあります。たとえば、取適法(2026年1月に下請法から改正)の対象となる委託取引では、委託事業者が代金の支払いを遅らせると、受け取った日から60日を過ぎた日から年14.6%の遅延利息を支払わなければなりません。受託する側の会社は、この遅延利息を当然に請求できます。
居住用の賃貸住宅のように、事業者である家主と、一般の消費者である借主との契約では、消費者契約法の上限が当てはまります。家賃の滞納に年14.6%を超える損害金を定めていても、超える部分は請求できないので、契約書のひな形を確かめておいてください。
家賃の滞納で計算してみる
事業用の店舗を月額30万円で貸していて、契約書に年14.6%の遅延損害金の定めがある場合を考えます。4月分の家賃が支払期日から90日遅れて支払われたとすると、30万円×14.6%×90日÷365日で、10,800円の遅延損害金になります。
滞納が数か月分たまっている場合は、月ごとに支払期日が違うため、それぞれの月の家賃について、期日の翌日から実際に払われた日までを計算して合計します。滞納が続く借主には、損害金の額を示すことが、早めの支払いを促すきっかけにもなります。
遅延損害金を請求する方法
遅延損害金は、元本と一緒に請求するのが基本です。請求の段階ごとに、書き方のポイントを見ておきましょう。
請求書や内容証明郵便での書き方
任意の支払いを求める段階では、元本の額に加えて、遅延損害金の利率と起算日を書いておきます。
- 元本の額と、その内訳(請求書の番号や取引の内容)
- 支払期日と、遅延損害金の利率
- 「支払済みまで年○%の割合による遅延損害金を加えて支払え」という趣旨の文言
- 支払いの期限と振込先
遅延損害金の額を固定の金額で書くと、支払いがさらに遅れた場合に書き直す必要が出てきます。「支払済みまで」と書いておけば、実際に払われる日までの損害金を請求できます。
裁判での請求
支払督促や訴訟では、元本とともに「支払期日の翌日から支払済みまで年3%の割合による遅延損害金」を求めるのが一般的です。判決でもこの形で支払いが命じられ、判決の後も、実際に払われるまで損害金は増え続けます。
強制執行で回収する場合も、差押えを申し立てる時点までの遅延損害金を計算して請求額に含めることができます。回収に時間がかかるほど、この金額は大きくなります。
取引関係を保ちたいときの考え方
継続して取引をしている相手に、遅延損害金まで請求するのはためらわれるかもしれません。そのような場合は、今回の請求では元本だけを求め、遅延損害金は請求を控える代わりに、次の支払いを確実に守ってもらう、という交渉の材料にする方法もあります。
請求を控える場合でも、権利そのものを放棄したことにならないよう、書面では「遅延損害金については別途協議とする」などと書いておくと、後で必要になったときに請求の余地を残せます。
請求書に書き添える文例
任意の支払いを求める段階で使える、簡単な文例を示しておきます。
期限までに支払いがなければ法的な手続きをとる予定であることを書き添えると、相手に本気度が伝わります。ただし、脅しと受け取られるような強い表現は避け、事実と請求の内容を淡々と示すのが得策です。
相手が倒産したときの遅延損害金
相手が破産した場合、破産手続が始まるまでに生じた遅延損害金は、元本と同じ扱いで債権として届け出ることができます。一方、手続きが始まった後に生じる遅延損害金は、ほかの債権より後回しにされる扱いになり、実際に配当を受けられることはまずありません。
相手の経営が危ういと感じたら、損害金が膨らむのを待つのではなく、元本の回収を急ぐことが大切です。仮差押えで財産を押さえる、担保を取るなど、早めの手当てを検討してください。
遅延損害金の減額や免除を求められたら
交渉の場で、相手から「元本は払うので、遅延損害金は勘弁してほしい」と求められることはよくあります。応じるかどうかは自由ですが、免除するなら、元本を一括で支払ってもらう、支払日を確実に守ってもらうなど、見返りを明確にしておくのが得策です。免除の約束は、元本の支払いが実際に終わったことを条件にしておくと、途中で支払いが止まった場合に損害金の請求を復活させられます。
具体例で考える:工事代金が1年半遅れたケース
ある内装工事会社が、元請けの会社から工事代金800万円の支払いを受けられずにいました。支払期日は2024年12月末で、契約書には遅延損害金の定めがありません。元請けは「施主からの入金が遅れている」と繰り返すばかりで、2026年6月末になっても支払いはありません。
この場合、遅延損害金は法定利率の年3%で、2025年1月1日から発生しています。2026年6月末までの546日分を計算すると、800万円×3%×546日÷365日で、およそ35万9千円になります。元本と合わせた請求額は、約836万円です。
工事会社は、内容証明郵便で元本と遅延損害金を請求したうえで、支払いがなければ訴訟を起こすと伝えました。元請けは分割での支払いを申し出たため、元本は全額、遅延損害金は半額を上乗せする形で和解し、1年間で分割して支払ってもらうことになりました。
この例では、遅延損害金を交渉の材料にすることで、元本の全額回収と、支払いの確実性を引き出しています。仮に最初から元本だけを請求していれば、元請けから減額を求められた可能性もあります。請求できるものは漏れなく示したうえで、どこで折り合うかを決めるのが、回収の交渉の基本です。
取引の基本契約に年14.6%の遅延損害金の定めがあれば、同じ期間でおよそ175万円になっていた計算です。契約書に一行書いておくかどうかで、これだけの差が生まれます。これから取引を始める相手とは、遅延損害金の率を契約書に定めておくことをおすすめします。
もう一つ、この例から学べることがあります。元請けの「施主からの入金が遅れている」という説明は、工事会社への支払いを遅らせる正当な理由にはなりません。契約で「施主から入金があり次第支払う」と定めていない限り、元請けは自分の資金で期日に支払う義務を負います。相手の事情を理由に待ち続けるほど、回収の見込みは下がり、時効の期限も近づいていきます。
遅延損害金の請求で迷ったら弁護士に相談を
遅延損害金の計算は、式だけ見れば単純です。けれども、どの利率を使うか、いつから発生するか、一部の支払いをどう充てるかといった点で、判断に迷う場面は少なくありません。改正前後の債権が混じっていたり、契約書の定めがあいまいだったりすると、請求額に大きな差が出ます。
また、遅延損害金をどこまで強く求めるかは、回収の戦略そのものに関わります。訴訟まで見据えて全額を請求するのか、交渉の材料として使うのか。相手の資力や取引関係を踏まえて判断する必要があります。
弁護士に相談すれば、正確な請求額の計算とあわせて、元本の回収を最優先にするための進め方を提案できます。相談には、契約書と請求書の控え、入金の記録、相手とのやり取りを一式お持ちください。
相談の前に、次のものをそろえておくと、請求額の計算と見通しをすぐにお伝えできます。
- 契約書、取引基本契約書、発注書
- 請求書の控えと、支払期日が分かる資料
- 入金の記録と、一部の支払いがあった日付
- 相手とのやり取り(支払いの約束や延期の依頼)
遅延損害金に関するよくある質問
ここまでの要点をまとめると、定めがなければ年3%、契約で決めれば原則その率、ただし取引の種類によって上限がある、ということになります。
契約書に遅延損害金の定めがなくても請求できますか
請求できます。定めがない場合は、法定利率の年3%(2020年4月以降に支払いが遅れた債権)で計算します。支払期日を決めていない取引では、請求した日の翌日から発生します。
相手が「お金がなかったから遅れた」と言っています
お金の支払いについては、資金不足などを理由に遅延の責任を免れることはできません。事情にかかわらず、遅れた日数分の遅延損害金を請求できます。
遅延損害金にも時効はありますか
あります。遅延損害金を請求する権利も、原則として5年で時効にかかります。元本が時効で消えれば、遅延損害金も請求できなくなるので、元本の時効管理とあわせて考えてください。
遅延損害金を請求したら、元本の時効も止まりますか
請求書や内容証明郵便による請求は、元本も含めて6か月だけ時効の完成を猶予する効果があります。相手が遅延損害金の一部でも支払えば、債務を認めたものとして元本の時効も更新されます。
個人に貸したお金にも遅延損害金はつきますか
つきます。返す日を決めていれば、その翌日から年3%(契約で決めていればその率、ただし利息制限法の上限まで)の遅延損害金が発生します。返す日を決めていなければ、返してほしいと求めた日の翌日から発生します。
請求書に遅延損害金を書かなかった場合、後から請求できますか
請求できます。遅延損害金は、請求書に書いたかどうかにかかわらず法律上発生しています。元本を受け取るときに「これで全部精算した」という合意をしていなければ、後から別に請求することも可能です。
契約で決めた率が法定利率より低い場合はどうなりますか
お金の支払いの遅れについては、契約で決めた利率が法定利率を超える場合に限って、その率が使われます。契約で年1%などと低い率を定めていても、法定利率の年3%を下回る場合は、法定利率で請求できます。