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借用書の書き方と、返してもらえないときの回収方法

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貸したお金、きちんと返ってくる形になっていますか

友人から「来月には必ず返すから」と頼まれて、50万円を貸した。親戚の事業を助けるために、まとまったお金を用立てた。信頼している相手だからこそ、書面を交わすのは水くさい気がして、口約束だけで済ませてしまう。こうした貸し借りは、どこにでもあるものです。

ところが、返済の約束の日を過ぎても一向に返ってこない。催促すると「そんな約束はしていない」「あれはもらったお金だ」と言われる。こうなってから、借用書を作っておけばよかったと後悔する方は少なくありません。

借用書は、お金を貸したという事実と、返してもらう約束の中身を形に残すための書面です。相手を疑っているから作るのではなく、お互いの記憶違いを防ぎ、関係を壊さないために作るものだと考えてください。いざ返してもらえなくなったときには、裁判で貸した事実を証明する、最も強い証拠にもなります。

この記事では、債権回収の相談を受ける弁護士の立場から、借用書に書くべき項目、印紙や利息の決まり、借用書を強制執行に使える形にする方法、そして実際に返してもらえないときの回収の手順まで、順を追って説明します。これからお金を貸す方も、すでに貸していて不安を感じている方も、手元の状況に当てはめながら読み進めてください。

借用書を頼むときの切り出し方

親しい相手に借用書を頼むのは、気まずいものです。けれども、書面を交わしておくことは、相手のためにもなります。貸した側が後で金額を多く言い出したり、もう返したはずの分を請求したりする心配がなくなるからです。

「お互いに忘れないように、簡単に書いておこう」「家族にも説明しなければならないから」と伝えれば、角を立てずに頼みやすくなります。書面を嫌がる相手であれば、そもそも返済の意思が弱い可能性もあり、貸すかどうかを考え直すきっかけにもなります。

借用書とは|金銭消費貸借契約を形に残す書面

お金の貸し借りは、法律上は金銭消費貸借契約と呼ばれます。借主がお金を受け取り、同じ額を返すことを約束する契約です。借用書は、この契約の内容を書面にしたものです。

法律上、お金の貸し借りの契約は、書面がなくても成り立ちます。口約束でも契約は有効です。ただ、口約束では、いくら貸したのか、いつ返す約束だったのか、そもそも貸したのかあげたのかを、後で証明するのが難しくなります。裁判では、お金を渡した側が「貸した」ことを証明しなければならず、その証明ができなければ、返済を求めることができません。

2020年4月の民法改正で、書面で貸し借りの約束をした場合には、お金を渡す前の段階でも契約が成立するというルールが設けられました。「来月1日に100万円を貸す」と書面で約束すれば、その時点で貸主には貸す義務、借主には受け取って返す義務が生まれます。借主は、お金を受け取る前であれば契約を解除できますが、そのことで貸主に損害が出れば賠償しなければなりません。

借用書と金銭消費貸借契約書の違い

借用書と金銭消費貸借契約書は、どちらもお金の貸し借りを記録する書面です。違いは、誰が署名するかにあります。

書面 署名する人 特徴
借用書(借用証書) 借主だけ 借主が「借りました」と差し入れる形。簡単に作れる
金銭消費貸借契約書 貸主と借主の両方 双方の権利と義務を細かく定められる。金額が大きい場合に向く
公正証書 公証人が作成し、双方が署名 強制執行を受け入れる文言を入れれば、裁判を経ずに差押えができる

個人間の数十万円程度の貸し借りであれば、借主が署名した借用書で十分なことが多いでしょう。書面の形式よりも、書かれている中身がはっきりしていることのほうが、後で役に立ちます。一方、数百万円を超える貸し借りや、分割で長く返してもらう場合には、双方が署名する契約書や、公正証書にしておくことをおすすめします。

どの形を選ぶにしても、大切なのは、貸した金額、渡した日、返す日、返し方の四つが、後から誰が見ても分かる形で残っていることです。この四つがそろっていれば、相手が約束を忘れたふりをしても、落ち着いて返済を求めることができます。

借用書に書くべき項目

借用書に決まった書式はありません。手書きでも、パソコンで作っても有効で、便箋一枚に書いたものでも証拠としての力は変わりません。ただし、次の項目が抜けていると、後で約束の中身をめぐって争いになりやすくなります。

項目 書き方のポイント
表題 「借用書」「金銭消費貸借契約書」など、書面の性格が分かるもの
作成日 書面を作った日付を西暦または和暦で正確に
貸主と借主 氏名と住所を正確に。会社なら商号、本店所在地、代表者名
金額 漢数字の大字(壱、弐、参など)か、算用数字に「金」と「円」を添えて改ざんを防ぐ
受け渡しの日と方法 現金で手渡したか、どの口座に振り込んだか
返済期日 「令和8年12月31日限り」など具体的な日付で
返済方法 一括か分割か、分割なら毎月の額と支払日、振込先
利息 つけるならその利率。つけないなら「無利息」と明記
遅延損害金 返済が遅れたときの損害金の利率
期限の利益の喪失 分割払いを怠ったときに、残りを一括で返す旨
署名と押印 借主が自筆で署名し、できれば実印で押印して印鑑証明書を添える

金額の書き方で改ざんを防ぐ

金額は、後から書き足されないように書くのが基本です。「100,000円」と書いた場合、先頭に「1」を書き足されれば1,100,000円になってしまいます。「金壱拾萬円也」のように大字で書くか、「金100,000円」と前後を「金」と「円」で挟むと、書き足しを防げます。

お金を渡した証拠を残す

借用書があっても、借主から「書面にはサインしたが、お金は受け取っていない」と言われることがあります。これを防ぐには、お金の受け渡しを振込で行い、振込の記録を残すのが確実です。現金で渡す場合は、借用書に「本日、上記金額を現金で受領しました」と書き、借主に署名してもらってください。

ワンポイントアドバイス
借用書は2通作り、貸主と借主が1通ずつ持つのが理想です。作った日のうちに、内容を二人で読み合わせておきましょう。少なくとも貸主は原本を保管し、コピーを借主に渡しましょう。原本がなくなると、証拠としての力が大きく下がります。

借用書の文例

個人間の貸し借りで使える、シンプルな借用書の文例を示しておきます。実際の貸し借りの内容に合わせて書き換えて使ってください。

借用書の文例
借用書
金 800,000円
私は、貸主○○○○から、上記の金額を令和8年4月1日に、私名義の○○銀行○○支店の普通預金口座への振込により借り受けました。
1.返済期日 令和8年12月31日限り、貸主の指定する口座に振り込んで一括で返済します。
2.利息 無利息とします。
3.遅延損害金 返済期日を過ぎたときは、年14.6%の割合による遅延損害金を支払います。
令和8年4月1日
借主 住所 氏名(自署) 印

分割で返してもらう場合は、返済の条項を「令和8年5月から令和9年4月まで、毎月末日限り金6万6千円ずつ(最終回は7万4千円)返済する。支払いを2回以上怠ったときは、残額を直ちに一括で返済する」のように書き換えます。

保証人をつけるときの注意

借主の返済に不安があるときは、親族などに保証人になってもらう方法があります。保証の約束は書面でしなければ効力がないため、借用書に保証人の欄を設け、保証人本人に署名と押印をしてもらいます。保証人には、ただの保証ではなく、借主と同じ責任を負う連帯保証人になってもらうのが通常です。

借主が事業のためにお金を借りる場合で、経営者以外の個人が保証人になるときは、2020年4月の民法改正により、保証契約の前1か月以内に、公証人の前で保証の意思を確認する公正証書を作っておかなければ、保証が無効になります。友人の事業資金を貸すときに、その家族に保証人になってもらう、といった場面では、この手続きを忘れないようにしてください。

利息と遅延損害金の決まり

個人間の貸し借りでは、利息をつけないことも多いでしょう。利息をつけるかどうかは自由ですが、つける場合には、法律で上限が決まっています。

元本の額 利息の上限(年) 遅延損害金の上限(年)
10万円未満 20% 29.2%
10万円以上100万円未満 18% 26.28%
100万円以上 15% 21.9%

この上限は利息制限法で定められたもので、個人間の貸し借りにも当てはまります。上限を超える利息を約束しても、超えた部分は無効です。さらに、出資法では、年109.5%を超える利息を受け取る契約をした場合、たとえ個人間の一度きりの貸し借りでも刑事罰の対象になります。

借用書に利息の定めがない場合、個人間の貸し借りでは原則として利息は発生しません。一方、返済期日を過ぎた場合の遅延損害金は、定めがなくても法定利率の年3%で発生します。遅延損害金を高めに定めておくと、期日を守ってもらう動機づけになります。

家族間の貸し借りと税金

親から子へ、あるいは親族の間でお金を貸す場合には、税金の面にも注意が必要です。借用書がなく、返済もされていないと、税務署から実際には贈与だったとみなされ、贈与税がかかることがあります。

家族間の貸し借りであっても、借用書を作り、返済期日と返済方法を決め、実際に振込で返済してもらう。この三つがそろっていれば、贈与ではなく貸し借りであることを示しやすくなります。

会社が従業員にお金を貸すとき

会社が従業員に貸付をする場合も、借用書や金銭消費貸借契約書を作ります。注意したいのは、返済を給料から天引きする方法です。給料は全額を支払うのが原則なので、天引きするには、従業員の過半数の代表などとの労使協定と、本人の同意が必要です。

また、退職したら給料や退職金から残りを一括で差し引く、という定めを置いても、本人が自由な意思で同意していなければ、一方的に差し引くことはできません。退職時の精算を確実にしたいなら、退職の際にあらためて本人と精算の合意書を交わすのが安全です。

利息をつけるかどうかの考え方

友人や親族への貸し借りでは、利息をつけないのが一般的です。ただ、返済が長期にわたる場合や、事業資金として貸す場合には、少額でも利息を定めておくと、借主が早く返そうとする動機になります。利息をつけるなら、上限の範囲内で、双方が無理のない率を借用書に明記してください。利息をつけないのであれば、「無利息」と書いておくことで、後で利息の有無をめぐる争いを防げます。

担保を取っておく方法

まとまった金額を貸す場合は、保証人のほかに、借主の財産を担保に取る方法もあります。不動産に抵当権を設定すれば、返済が止まったときに競売で回収できます。自動車などの動産を担保にする場合は、譲渡担保という形を取ることがあります。担保の設定には登記などの手続きが必要で、書き方を誤ると効力が認められないこともあるため、弁護士や司法書士に相談しながら進めてください。

印紙は必要か

借用書や金銭消費貸借契約書は、印紙税法上の課税文書(第1号文書)にあたります。個人間の貸し借りでも、1万円以上の金額を記載した借用書には、金額に応じた収入印紙を貼る必要があります。

借用書に記載した金額 印紙税額
1万円未満 非課税
1万円以上10万円以下 200円
10万円を超え50万円以下 400円
50万円を超え100万円以下 1,000円
100万円を超え500万円以下 2,000円
500万円を超え1,000万円以下 1万円

印紙税を納めるのは、書面を作成した人です。借主だけが署名する借用書であれば借主が、双方が署名する契約書であれば双方が連帯して納める義務を負います。

印紙を貼らなかったり、消印をしなかったりしても、借用書そのものの効力はなくなりません。裁判でも証拠として使えます。ただし、本来の印紙税の3倍にあたる過怠税がかかる場合があるので、きちんと貼っておきましょう。

なお、借用書を2通作って貸主と借主が1通ずつ持つ場合は、2通とも課税文書になるため、それぞれに印紙が必要です。借主が差し入れる形の借用書を1通だけ作り、貸主が保管する形にすれば、印紙は1通分で済みます。

印紙を貼らずに電子で交わす方法

借用書を紙ではなく、電子契約のサービスを使って電子データで交わした場合は、印紙税はかかりません。印紙税は紙の文書にかかる税金だからです。金額の大きな貸し借りで、印紙代を抑えたい場合には、電子で交わす方法も選択肢になります。ただし、相手が電子契約に慣れていない場合は、署名の手順を丁寧に案内する必要があります。

強制執行に使える借用書にするには

借用書があれば、裁判で貸した事実を証明するのはぐっと楽になります。けれども、借用書だけでは、相手の財産を差し押さえることはできません。差押えをするには、判決や支払督促など、強制執行の根拠となる書面(債務名義)が必要です。

裁判を経ずに差押えができるようにしたいなら、借用書の内容を公正証書にしておく方法があります。公正証書に「返済を怠ったときは直ちに強制執行を受けても異議がない」という文言(強制執行認諾文言)を入れておけば、返済が滞った時点で、裁判を起こさずに相手の給料や預金を差し押さえることができます。

  1. 貸主と借主で、金額、返済期日、返済方法、利息などの内容を決める。
  2. 公証役場に連絡し、必要な書類(本人確認書類、印鑑証明書など)を確かめる。
  3. 貸主と借主がそろって公証役場に行き、公証人が作成した公正証書に署名する。
  4. 公正証書の正本を受け取り、大切に保管する。

公正証書を作るには、公証人の手数料がかかります。金額は、貸した額に応じて法令で決まっています。数百万円を超える貸し借りや、長期の分割返済であれば、手数料をかけても公正証書にしておく価値は十分にあります。

公正証書にしておくと差押えまでが早い

公正証書にしておいた場合と、借用書だけの場合とで、返済が止まってから差押えに進むまでの流れを比べると、違いがよく分かります。借用書だけの場合は、支払督促や訴訟で債務名義を取るまでに、早くても1〜2か月、相手が争えば半年以上かかることもあります。公正証書であれば、その手続きを飛ばして、すぐに差押えの申立てができます。

相手の給料を差し押さえる場合、手取り額の4分の1まで(手取りが44万円を超える場合は33万円を超える部分の全額)を、毎月の給料日に勤務先から直接受け取ることができます。相手が同じ勤務先で働き続けている限り、完済まで差押えの効力が続く点も大きな利点です。

公正証書にしない場合でも作っておきたい書類

公正証書にするほどの金額ではないけれど、少しでも回収を確実にしたいという場合は、借主の本人確認書類の写しと、勤務先や口座の情報を控えておくとよいでしょう。後で訴訟や差押えが必要になったとき、相手の住所や勤務先、口座が分かっているかどうかで、回収のしやすさが大きく変わります。借用書の余白に、借主の勤務先を書いてもらっておくのも一つの方法です。

返してもらえないときの回収の手順

返済期日を過ぎても返ってこない場合は、次の順で回収を進めます。段階を踏むほど相手への圧力は強まりますが、費用と時間もかかります。相手の状況を見ながら、どこまで進むかを決めていきます。

段階 内容 ポイント
電話やメッセージでの催促 返済期日を過ぎたことを伝え、返済の予定を尋ねる 相手の返事は必ず記録に残す
内容証明郵便での請求 金額、返済期日、支払いの期限を書いて正式に請求する 時効の完成を6か月猶予できる
支払督促 簡易裁判所の書記官が書類の審査だけで支払いを命じる 相手が異議を出さなければ差押えに進める
少額訴訟 60万円以下の請求を、原則1回の審理で判決まで進める 借用書があれば短期間で決着しやすい
通常の訴訟 金額に制限なく、判決で支払いを命じてもらう 相手が争う場合に向く
強制執行 判決などに基づいて相手の給料や預金を差し押さえる 相手の勤務先や口座を把握していると進めやすい

支払督促と少額訴訟の選び方

借用書があって、相手が借りたこと自体を争わない見込みなら、支払督促が手軽です。書類を簡易裁判所に出すだけで、相手が2週間以内に異議を出さなければ、差押えに使える書面が手に入ります。ただし、相手が異議を出すと、相手の住所地の裁判所での訴訟に移ります。

相手が何かしら言い分を述べてきそうなら、60万円以下の請求であれば少額訴訟が向いています。原則として1回の審理で判決まで進み、裁判官が分割払いの判決を出すこともあります。60万円を超える場合や、相手が強く争う場合は、通常の訴訟を選ぶことになります。

催促の段階で分割払いに切り替える

相手に返す意思はあるものの、一度に返すお金がない、という場合も多いものです。その場合は、無理に一括の返済を求めるより、分割払いの合意書を交わす方が、結果的に回収できる額が大きくなることがあります。

合意書には、残りの総額を相手が認める一文、毎月の返済額と返済日、1回でも遅れたら残りを一括で返す旨を書いておきます。相手が残高を認めて署名すれば、時効もその日から数え直しになります。

借用書がない場合でもあきらめない

借用書を作っていなくても、ほかの証拠で貸した事実を示せれば、返済を求めることはできます。

  • 振込の記録(通帳の写し、振込明細)
  • 相手とのメールやメッセージのやり取り(「借りたお金は来月返す」など)
  • 相手が一部を返済した記録
  • お金を渡した場面に立ち会った人の証言

とくに、相手が借りたことを認めるメッセージは強い証拠になります。今からでも、「先日お貸しした50万円について、返済の予定を教えてください」と送り、相手の返事を残しておくとよいでしょう。相手が金額や借りた事実を否定しなければ、それ自体が証拠になります。

メッセージの証拠の残し方

メッセージアプリのやり取りは、相手が消してしまったり、自分の端末を買い替えたりすると失われることがあります。相手が借りたことを認めた部分は、日付と相手の名前が写るように画面を保存し、パソコンなど別の場所にもコピーを残しておいてください。やり取りの前後も含めて保存しておくと、文脈を切り取ったものではないことを示せます。

返してもらえる期間には限りがある

貸したお金を返してもらう権利は、返済期日から5年で時効にかかります。返済期日を決めていない場合は、貸した時から時効が進み始めます。相手が一部を返したり、返済を約束するメッセージを送ってきたりすれば、時効はその時点から数え直しになるので、そうしたやり取りは必ず残しておいてください。

相手が亡くなったり、破産したりした場合

借主が亡くなった場合、借りたお金を返す義務は相続人に引き継がれます。相続人に対して、相続分に応じた額を請求することになります。ただし、相続人が相続放棄をした場合は、その人には請求できません。相続人が誰かを調べるには戸籍を取り寄せる必要があるため、早めに手を打つことが大切です。

借主が自己破産をして免責が認められると、原則として返済を求めることはできなくなります。破産の手続きが始まったと知ったら、裁判所に債権を届け出て、配当を受けられるかを確かめてください。借主が貸主をだましてお金を借りたような場合には、免責されない債権として扱われる余地もあります。

具体例で考える:友人に貸した80万円

ある会社員の方が、学生時代からの友人に、事業の運転資金として80万円を貸しました。友人は「半年後に一括で返す」と言い、手書きの借用書に署名しましたが、印紙は貼っておらず、返済期日も「半年後」としか書かれていませんでした。

半年が過ぎても返済はなく、連絡をしても「もう少し待ってほしい」と繰り返されるばかりです。1年が過ぎたところで、弁護士に相談に来られました。

まず確かめたのは、借用書の中身です。返済期日が「半年後」という書き方でしたが、借用書の作成日が書かれていたため、期日は作成日から半年後と特定できました。お金は振込で渡しており、振込の記録も残っていました。印紙がないことは、借用書の効力には影響しません。

次に、内容証明郵便で、元本80万円と、期日の翌日からの遅延損害金を請求しました。友人からは返事がなかったため、支払督促を申し立てたところ、友人は異議を出し、通常の訴訟に移りました。訴訟では、借用書と振込の記録がそろっていたため、友人は貸し借りを否定できず、月に4万円ずつ返済する内容で和解が成立しました。

和解は裁判所で和解調書にしてもらったので、友人が返済を怠れば、判決と同じように給料を差し押さえることができます。借用書と振込の記録があったからこそ、短い期間で確実な形にできた例です。

もう一つ、親族間の例も挙げておきます。父親が長男の住宅購入のために500万円を貸しましたが、借用書は作らず、返済もされないまま父親が亡くなりました。次男は、この500万円は遺産の一部として長男に返済を求めるべきだと考えましたが、長男は「あれはもらったお金だ」と主張しています。

借用書がないため、貸し借りだったのか贈与だったのかは、振込の記録、長男が父親に送ったメッセージ、長男が一部でも返済したことがあったかなどから判断されることになります。父親が生前に借用書を作っていれば、相続人どうしの争いは避けられたはずです。家族間の貸し借りこそ、書面を残しておく意味が大きいといえます。

注意
相手の勤務先や自宅に何度も押しかける、周囲に借金のことを言いふらすなどの取り立ては、たとえ正当な請求であっても、名誉毀損や脅迫などの問題を生じさせるおそれがあります。自分で強く取り立てるより、書面と法的な手続きで進めるのが安全です。

返してもらえないときは弁護士に相談を

個人間の貸し借りは、相手との関係があるだけに、自分から強く請求しにくいものです。催促を重ねるうちに関係がこじれ、感情的な言い争いになってしまうこともあります。弁護士が間に入れば、感情を交えずに請求の意思を伝えることができ、相手も返済を真剣に考えるようになります。

また、借用書の書き方に不備がある場合や、借用書がない場合でも、ほかの証拠と組み合わせて貸した事実を示せることは少なくありません。どの手続きを使うのが早く確実か、相手の財産から回収できる見込みはあるかといった点も、弁護士であれば具体的に見通しを立てられます。

相談の際は、借用書(コピーでも可)、振込の記録、相手とのやり取り、相手の住所や勤務先が分かる情報を持参してください。貸したお金が返ってこないとあきらめる前に、一度相談してみることをおすすめします。

弁護士に依頼した場合の費用が気になる方も多いでしょう。貸した額が数十万円程度の場合は、費用とのつり合いを考えて、内容証明郵便の作成だけを依頼する、支払督促の書類作成について助言を受ける、といった部分的な関わり方もあります。どこまで任せるかは、相談の際に費用の見通しとあわせて決めることができます。

借用書に関するよくある質問

借用書は手書きでも有効ですか

有効です。手書きでもパソコンで作ったものでも、必要な項目が書かれ、借主が署名していれば、証拠としての効力に違いはありません。署名は借主本人の自筆でしてもらうのが確実です。

借用書に印鑑は必要ですか

法律上、押印がなくても借用書は有効です。ただ、本人が作ったことを示す力を高めるため、実印で押印し、印鑑証明書を添えてもらうのが望ましいです。認印でも、押印があるほうが本人の意思で作ったことを示しやすくなります。

返済期日を決めずに貸した場合、いつ返してもらえますか

返済期日を決めていない場合、貸主は相当の期間を定めて返済を求めることができます。請求を受けた借主は、その期間内に返さなければなりません。まずは期限を区切って書面で請求してください。

借用書があれば、すぐに差押えができますか

できません。借用書は貸した事実の証拠にはなりますが、差押えには判決や支払督促などの債務名義が必要です。裁判を経ずに差押えをしたい場合は、強制執行認諾文言つきの公正証書にしておく必要があります。

借用書を作った後で、金額や期日を変えたいときは

当初の借用書を書き直すのではなく、変更の内容を書いた覚書を別に作り、貸主と借主が署名するのが確実です。変更前の借用書も捨てずに保管しておくと、貸し借りの経緯を後から示せます。

貸したお金を返してもらえず、相手と連絡も取れません

相手の住所が分かれば、内容証明郵便で請求し、訴訟を起こすことができます。住所が分からない場合でも、住民票の移転先を調べたり、裁判所の手続きで書類を届けたものとみなす方法を使ったりして、判決を取れることがあります。弁護士に相談すれば、相手の所在を調べる方法から助言できます。

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