掲載弁護士・法律事務所 2,000以上件/全国対応

固定残業代とは|みなし残業の正しい運用と違法になるケース

この記事で分かること

  • 固定残業代は一定の残業代をあらかじめ給与に含めて払う仕組み
  • 払っていても超えた分は追加の支払いが必要になる
  • 有効には金額の区別と対応時間の明示と差額精算がいる
  • 区別があいまいだと無効とされ未払いを請求されうる
  • 実態とかけ離れた長時間を前提にすると合理性が問われる
  • 導入時は就業規則や契約書に内容を明確に定める
  • 不安があれば労働問題にくわしい弁護士に相談するとよい

固定残業代は、あらかじめ一定の残業代を給与に含めて支払う仕組みです。ただし払っていれば追加不要というわけではなく、決めた時間を超えた残業には差額を支払う必要があります。有効と認められるには、金額の区別、対応時間の明示、超過分の精算という条件が欠かせません。あいまいな運用は無効と判断され、多額の未払い残業代を請求されるおそれがあります。導入や見直しに迷うときは、労働問題にくわしい弁護士に相談しながら進めると安心です。

企業法務に強い弁護士を探す

固定残業代とは|あらかじめ残業代を含めて支払う仕組み

毎月の給与のなかに、はじめから一定の残業代を含めて支払う。そうした仕組みを、固定残業代と呼びます。求人票や給与明細で「みなし残業代」や「固定残業手当」といった言葉を見かけたことのある方も多いのではないでしょうか。人件費の見通しを立てやすくする狙いから、この制度を取り入れている会社は少なくありません。

とはいえ、この仕組みは正しく設計しないと、思わぬ落とし穴にはまります。導入したつもりでいても、要件を満たしていなければ、後になって多額の未払い残業代を請求されることもあるのです。会社を守るはずの制度が、かえって会社を苦しめる。そんな事態を避けるためには、固定残業代がどういうものかを、きちんと理解しておく必要があります。

固定残業代とは、実際に残業をしたかどうかにかかわらず、あらかじめ決めた一定の残業代を、毎月の給与に含めて支払う方法をいいます。たとえば、月にいくらかの残業が見込まれる職場で、その分の残業代をあらかじめ給与に組み込んでおく、といった形です。残業が少なかった月でも、その固定分は支払われます。従業員にとっては収入が安定し、会社にとっては毎月の人件費が読みやすくなる、という面があります。

ここで一点、注意しておきたいことがあります。固定分が支払われるからといって、残業がまったくない月にもその額が支払われるのは、あくまで固定残業代の性質によるものです。裏を返せば、会社はその分を毎月の固定的な負担として見込んでおく必要があります。導入にあたっては、こうした支払いの前提も含めて、制度全体を理解しておくことが求められます。

身近な例で考えてみましょう。営業職のように、時期によって残業の量が変わりやすい仕事があります。繁忙期には残業が増え、閑散期には減る。そうした職場で、毎月の残業代がその都度変わると、従業員は収入の見通しが立てにくくなります。固定残業代を組み込んでおけば、残業の多い月も少ない月も一定の収入が確保されるため、働くうえでの安心感につながります。会社側も、給与計算の手間をいくらか軽くできるという利点があります。

ただし、ここで誤解してはいけない点があります。固定残業代を払っているからといって、いくら残業をさせても追加の残業代を払わなくてよい、というわけでは決してありません。あくまで、あらかじめ定めた時間分の残業代を先に払っているにすぎないのです。この基本を取り違えると、制度そのものが無効と判断されかねません。

実際、固定残業代をめぐる争いの多くは、この基本の取り違えから生じています。会社が「先払いしている」という意識を持たず、「残業代はもう払わなくてよい」と考えてしまうと、超過分の精算が抜け落ちます。その積み重ねが、後の大きな請求へとつながるのです。制度の入り口で正しい理解を持つことが、何より大切だと言えます。

この記事では、固定残業代の仕組みから、有効と認められるための条件、違法になってしまうケース、そして正しい運用の進め方までを、弁護士の視点から順を追って見ていきます。制度の導入を考えている経営者の方や、すでに運用しているけれど不安がある、という方の参考になれば幸いです。

固定残業代は、うまく使えば会社にとっても従業員にとっても利点のある仕組みです。しかし、その利点を得られるのは、あくまで正しく設計し、正しく運用した場合に限られます。制度の名前や表面的な形だけをまねても、中身が伴っていなければ意味がありません。むしろ、不十分な制度は会社にとって大きなリスクになります。だからこそ、仕組みの一つひとつを理解したうえで取り入れることが大切なのです。

固定残業代の仕組み|「みなし残業」と呼ばれる理由

固定残業代は、しばしば「みなし残業代」とも呼ばれます。なぜ「みなし」という言葉が使われるのでしょうか。ここには、この制度の本質があらわれています。

みなし残業とは、あらかじめ一定の時間の残業があったものと「みなして」、その分の残業代を先に支払っておく、という考え方です。実際の残業がその時間より少なくても、決めた固定分は支払われます。反対に、その時間を超えて残業が発生した場合には、超えた分については別途、残業代を追加で支払わなければなりません。ここが、制度を運用するうえで最も大切なところです。

具体的なイメージを持っていただくために、一つ例を挙げてみましょう。ある会社が、月に一定時間分の残業代を固定残業代として給与に組み込んでいたとします。ある月、従業員の残業がその時間の範囲内に収まったなら、追加の支払いは生じません。しかし、別の月に残業がその時間を大きく超えたなら、超えた分の残業代を上乗せして払う必要があります。固定残業代は、あくまで「ここまでの残業分は先払いしておく」という約束であって、残業のすべてを覆い隠すものではないのです。

もう一つ、押さえておきたいことがあります。固定残業代を設定していても、深夜や休日の労働については、別に考える必要がある場合があります。時間帯や曜日によって、法律が求める上乗せの内容は変わってきます。固定残業代がどこまでの労働を対象にしているのかをはっきりさせておかないと、想定していなかった部分の支払いが漏れてしまうことがあります。制度を設計する段階で、対象の範囲を明確にしておくことが求められます。

残業代そのものには、法律で定められたルールがあります。法定の労働時間を超えて働いた分には、通常の賃金に一定の割増を加えた金額を支払わなければなりません。この割増分をどう計算するかには決まりがあり、固定残業代を設定する際にも、その水準を満たしているかどうかが問われます。あらかじめ払っておく固定分が、法律の求める残業代の水準に足りていなければ、その差額を支払う義務が残るのです。

つまり、固定残業代は「残業代の支払い方の一つ」であって、「残業代を払わなくてよくする仕組み」ではありません。この違いを正しく押さえておくことが、制度を安全に使ううえでの出発点になります。名前の響きだけで「これを払えば安心」と考えてしまうと、大きな誤りにつながります。

この点は、実務のうえでとても重要です。固定残業代を導入した会社が、いつしか「もう残業代の管理はしなくてよい」と考えてしまうことがあります。しかし、それは大きな勘違いです。固定分を超えた残業があるかどうかを見るためには、結局のところ、日々の労働時間をきちんと把握し続けなければなりません。みなし残業という言葉から、労働時間の管理そのものが不要になると受け取ってしまうと、制度は正しく機能しなくなります。管理をやめてよいということでは、まったくないのです。

固定残業代が有効と認められるための条件

固定残業代は、ただ給与に組み込めば認められる、というものではありません。有効な制度として扱われるためには、いくつかの条件を満たしている必要があります。この条件を欠くと、せっかく設定した固定残業代が無効と判断され、通常の給与とみなされてしまうおそれがあります。

裁判などで固定残業代の有効性が争われるとき、おおむね次のような点が重視されます。会社としては、これらを一つずつ満たしているかを確認しておくことが欠かせません。

  • 固定残業代がどの部分なのかが、通常の賃金とはっきり区別できること。
  • その固定残業代が、何時間分の残業に対応するものなのかが明らかであること。
  • 固定分を超える残業が生じたときには、その差額をきちんと追加で支払っていること。

一つ目は、いわば「区別できること」です。給与のうち、どこからどこまでが基本給で、どこからが固定残業代なのかが、明確に分かれている必要があります。基本給のなかに残業代が漠然と含まれている、という状態では、そもそも残業代を払ったと認められません。給与明細や契約書のうえで、固定残業代の金額が独立して示されていることが求められます。

二つ目は、「対応する残業時間が示されていること」です。固定残業代が何時間分の残業に相当するのかが分からなければ、その固定分で足りているのかどうかを判断できません。たとえば「月あたり一定時間分の残業に対する手当」といった形で、時間数と金額の関係がはっきりしていることが望まれます。

この二つ目の点について、もう少し補足しておきましょう。対応する残業時間が明らかであることは、従業員が自分の待遇を理解するうえでも大切です。自分の給与に何時間分の残業代が含まれているのかが分かれば、実際の残業がそれを超えたときに、追加の支払いを受けられることも理解できます。逆に、この時間があいまいだと、固定分でどこまでカバーされているのかが誰にも分からなくなり、トラブルの温床になります。時間と金額を明示しておくことは、会社と従業員の双方を守ることにつながるのです。

三つ目は、「差額を精算していること」です。固定分でカバーされる時間を超えて残業が発生したのに、その超過分を支払っていなければ、制度は実質的に機能していません。超えた分は必ず追加で支払う、という運用が伴ってはじめて、固定残業代は有効なものとして扱われます。

この三つの条件は、それぞれが独立しているようでいて、実は深くつながっています。金額を区別していなければ、対応する時間も示しようがありません。時間が示されていなければ、超過分がいくらなのかも計算できず、精算のしようがありません。つまり、区別・明示・精算は、順を追って積み上がっていく関係にあります。どこか一つでも土台が欠けると、その上に立つものも崩れてしまう。そう考えると、三つをそろえることの意味がよく分かります。

これらの条件は、どれか一つでも欠けると制度全体の有効性が揺らぎます。固定残業代を導入するなら、区別・明示・精算の三点をそろえて運用することが不可欠です。形だけ整えて中身が伴っていなければ、いざというときに会社を守ってくれません。

固定残業代が違法・無効になるケース

固定残業代をめぐるトラブルの多くは、制度の設計や運用に問題があったために起こります。どのような場合に無効と判断されやすいのかを知っておくと、自社の運用を点検する手がかりになります。

よくあるのは、固定残業代と基本給の区別があいまいなケースです。「この給与には残業代も含む」とだけ記載され、いくらが残業代なのかが分からない。こうした状態では、残業代を支払ったとは認められにくく、あらためて残業代を請求されるおそれがあります。会社としては払ったつもりでも、法的には払っていないのと同じ扱いになりかねないのです。

この「払ったつもり」という感覚こそが、固定残業代をめぐる最も危うい落とし穴です。会社としては、給与に残業代を含めているのだから支払い済みだ、と考えます。しかし、区別があいまいであれば、その主張は通りません。結果として、含めていたはずの残業代を、あらためてまるごと請求されることになりかねません。感覚と法的な扱いのあいだにあるこのずれを理解しておくことが、リスクを避ける第一歩になります。

また、固定分を超える残業が発生しているのに、その差額を支払っていないケースも問題になります。固定残業代は、あくまで一定時間分の先払いです。それを超えた残業には、追加の支払いが必要です。ここを怠ると、制度そのものが「残業代を払わないための口実」とみなされ、無効と判断されることもあります。

注意
固定残業代を払っているからといって、どれだけ残業させても追加の支払いが不要になるわけではありません。固定分を超えた残業には、必ず差額を支払う必要があります。この点を見落とすと、後から多額の未払い残業代を請求されるおそれがあります。

さらに、固定残業代として設定した金額が、あまりに長い残業時間を前提にしている場合も注意が必要です。実態とかけ離れた長時間の残業を織り込んでいると、従業員の健康を害する働き方を助長するものとして、制度の合理性が問われることがあります。固定残業代は、あくまで無理のない範囲の残業を前提とすべきものです。

従業員の健康という観点は、近年とりわけ重視されるようになっています。長時間労働が心身に与える影響は大きく、会社には従業員が安全に働けるよう配慮する責任があります。固定残業代の設計が、結果として長時間労働を当たり前のものにしてしまっては本末転倒です。制度は、働く人を守る枠組みのなかで運用されるべきものだという視点を、忘れないようにしたいところです。

ここで、読者の状況を少し想像してみます。「求人で示した固定残業代の時間が、実はかなり長かった」という会社もあるかもしれません。人材を集めるために手当の額を大きく見せようとして、結果的に前提となる残業時間が長くなってしまう、というケースです。しかし、そうした設定は、いざ争いになったときに不利にはたらくおそれがあります。見栄えのよさよりも、実態に即した無理のない設計を心がけることが、結局は会社を守ることになります。

もし、こうした問題を抱えたまま運用を続けていると、ある日突然、退職した従業員から未払い残業代を請求される、といった事態にもなりかねません。心当たりがある場合は、早めに制度を見直しておくことをおすすめします。問題が表面化してから対応するよりも、事前に整えておくほうが、はるかに負担は小さくてすみます。

固定残業代を導入・運用するときの流れ

固定残業代を新たに取り入れる場合、思いつきで給与に組み込むのではなく、順序を踏んで進めることが大切です。制度として成り立つように、必要な手続きを一つずつ整えていきましょう。

おおまかな流れは、次のようになります。導入から運用まで、どの段階でも「区別・明示・精算」という基本を意識しておくと、抜け漏れを防ぎやすくなります。

  1. どの職種や部署に、どれくらいの残業が見込まれるのかを整理する。
  2. 固定残業代として支払う金額と、それが対応する残業時間を決める。
  3. 就業規則や賃金規程に、固定残業代の内容を明確に定める。
  4. 雇用契約書や給与明細で、固定残業代の金額を区別して示す。
  5. 毎月の残業時間を記録し、固定分を超えた分は差額を追加で支払う。

まず大切なのは、実態を把握することです。どの仕事にどれくらいの残業が生じているのかを、感覚ではなく記録にもとづいて確認します。この土台があってはじめて、無理のない固定残業代を設計できます。

実態の把握を怠ると、あとの工程がすべて崩れてしまいます。たとえば、実際には多くの残業が発生している部署に、それに見合わない少ない固定残業代を設定してしまうと、毎月のように差額の精算が必要になり、かえって管理が煩雑になります。逆に、ほとんど残業のない部署に長い時間分の固定残業代をあてはめても、実態とかけ離れた不自然な制度になってしまいます。まずは現状を正しく知ることが、適切な設計の第一歩なのです。

次に、制度の内容を規程や契約に落とし込みます。固定残業代の金額、対応する残業時間、そして超過分は別途支払うことを、文書のうえではっきりと定めておきます。ここがあいまいだと、後のトラブルの火種になります。労働条件にかかわる重要な部分ですから、慎重に整える必要があります。

そして、運用が始まってからも、労働時間の管理を怠らないことが肝心です。固定残業代は、労働時間をきちんと把握してこそ機能します。毎月の残業を記録し、固定分を超えたときには差額を支払う。この地道な運用の積み重ねが、制度の有効性を支えます。導入して終わりではなく、続けて管理していく姿勢が求められるのです。

労働時間の記録は、紙でも電子的な方法でもかまいませんが、後から確認できる形で残しておくことが肝心です。誰がいつどれだけ働いたのかが客観的に分かる記録があれば、固定分で足りているのか、差額が必要なのかを、その都度きちんと判断できます。記録は、制度を支える土台であると同時に、トラブルが起きたときに会社の立場を裏づける大切な証拠にもなります。

記録がないと、いざ争いになったときに、会社側は自らの正しさを示す手立てを持ちません。従業員が主張する残業時間に反論できず、言われるままの支払いを迫られることもあります。適正に精算していたとしても、それを裏づける記録がなければ意味をなさないのです。日々の記録は、平時にはその価値が見えにくいものですが、有事にこそ大きな力を発揮します。

就業規則や賃金規程を整えるにあたっては、専門家の確認を受けておくと安心です。労働条件に関する定めは、書き方一つで意味が変わることがあり、素人判断で作成すると、意図せず不備を含んでしまうことがあります。せっかく制度を導入するなら、法的に有効な形にしておきたいものです。文書を整える段階で一度きちんと確認しておけば、後々の安心につながります。

固定残業代をめぐるトラブルと会社が備えるべきこと

固定残業代は、正しく運用すれば会社と従業員の双方にとって使いやすい仕組みですが、扱いを誤るとトラブルの原因になります。どんな争いが起こりうるのかを知り、あらかじめ備えておくことが、会社を守ることにつながります。

典型的なのは、退職した従業員からの未払い残業代の請求です。在職中は特に問題にならなくても、退職を機に「固定残業代では足りていなかった」として、差額を求められることがあります。制度の設計や運用に不備があれば、会社はまとまった金額の支払いを迫られることにもなりかねません。こうした請求は、想定していないタイミングで届くことが少なくないのです。

なぜ退職後に請求が起きやすいのでしょうか。在職中は、会社との関係を保つために、従業員が残業代の問題を口にしにくいという事情があります。ところが、退職して会社との関係が切れると、そうした遠慮がなくなります。過去の労働時間の記録が残っていれば、それをもとにまとまった額を請求できるため、退職を一つの区切りとして問題が表面化するのです。会社としては、在職中から適正に精算しておくことが、こうした請求への最も確実な備えになります。

ワンポイントアドバイス
労働時間を正確に記録しておくことが、固定残業代をめぐるトラブルへの最大の備えになります。誰が、いつ、どれだけ残業したのかがきちんと残っていれば、固定分で足りているのか、差額の支払いが必要なのかを客観的に示せます。記録の積み重ねが、いざというときに会社を守ってくれます。

また、固定残業代の存在や内容を、従業員にきちんと説明していなかったために生じる誤解もあります。自分の給与にどれだけの残業代が含まれているのかを従業員が理解していないと、不信感につながり、思わぬ対立を招くことがあります。制度を導入する際には、その意味をていねいに伝えておくことが大切です。

会社として備えるべきことは、突き詰めれば二つです。一つは、制度そのものを法的に有効な形で設計すること。もう一つは、日々の労働時間管理を徹底し、超過分の精算を確実に行うことです。この二つがそろっていれば、固定残業代をめぐるトラブルの多くは未然に防げます。反対に、どちらかが欠けていると、いつ問題が起きてもおかしくありません。

あわせて意識しておきたいのが、従業員との日ごろのコミュニケーションです。固定残業代の仕組みや、超過分は別途支払われることを、あらかじめていねいに伝えておくと、無用な誤解を避けられます。制度への理解があれば、従業員も安心して働けますし、会社への信頼にもつながります。トラブルは、多くの場合、認識のずれから生まれます。日ごろから風通しよく説明しておくことが、見えないところで会社を支えてくれるのです。

自社の制度に不安がある、あるいは請求を受けてどう対応すべきか分からない。そうした場合には、労働問題にくわしい専門家に相談してみるとよいでしょう。早い段階で状況を整理しておけば、対応の選択肢も広がります。

固定残業代の見直し・運用で気をつけたいこと

すでに固定残業代を運用している会社でも、その中身が今の実態に合っているかどうかは、折にふれて見直す必要があります。制度は一度つくって終わりではなく、状況の変化に合わせて手を入れていくものだからです。

たとえば、業務の内容が変わって残業の量が大きく変化した場合、当初設定した固定残業代が実態と合わなくなることがあります。想定より残業が増えているのに固定分を据え置いたままでは、超過分の精算が追いつかず、未払いが積み重なるおそれがあります。定期的に労働時間の状況を確認し、必要に応じて制度を調整していくことが望まれます。

また、固定残業代の見直しは、従業員の労働条件にかかわる問題でもあります。金額や対応時間を変えることは、待遇の変更につながる場合があるため、進め方には配慮が必要です。一方的に不利益な変更をすると、別のトラブルを生みかねません。変更の必要がある場合には、その理由をていねいに説明し、適切な手順を踏んで進めることが大切です。

読者のなかには、「うちの固定残業代は大丈夫だろうか」と不安を感じている方もいるかもしれません。そうしたときは、まず給与明細や契約書を見返し、固定残業代がはっきり区別されているか、対応する時間が示されているか、超過分をきちんと精算しているかを確かめてみてください。この三点を点検するだけでも、多くのリスクに気づくことができます。

点検の際には、給与明細だけでなく、就業規則や賃金規程まで見返すことをおすすめします。契約書と規程の記載が食い違っていたり、規程には固定残業代の定めがないのに給与には組み込まれていたり、といったちぐはぐが見つかることもあります。文書のあいだで内容がそろっているかを確かめることは、制度の土台を固めるうえで欠かせません。細かな確認の積み重ねが、大きなトラブルを防ぐことにつながります。

制度の設計や見直しに迷ったときは、専門家の力を借りるのも一つの方法です。労働に関する法律は細かく、判断に迷う場面も少なくありません。第三者の目で確認してもらうことで、思わぬ落とし穴を避けられます。会社を守るためにも、あいまいなまま放置せず、きちんと整えておくことをおすすめします。

制度の見直しは、面倒に感じられるかもしれません。しかし、後になって未払い残業代を請求される事態と比べれば、その手間ははるかに軽いものです。問題が起きてから対応するのは、時間も費用も、そして精神的な負担も大きくなりがちです。何事もなく運用できている今のうちに点検し、整えておく。それが、結果として会社にとって最も負担の少ない道になります。転ばぬ先の杖として、制度の確認を習慣にしておきたいところです。

固定残業代に関するよくある質問

固定残業代を払えば、残業代の追加払いは不要になりますか

いいえ、そうではありません。固定残業代は、あらかじめ決めた時間分の残業代を先に払っているにすぎません。その時間を超えて残業が発生した場合には、超えた分の残業代を追加で支払う必要があります。固定分を払っているから追加は一切不要、という考え方は誤りですので、注意してください。

固定残業代が無効になると、どうなりますか

固定残業代が無効と判断されると、その金額は残業代として認められず、通常の賃金の一部として扱われることがあります。その結果、あらためて残業代を計算し直し、未払い分を支払わなければならなくなる可能性があります。無効とされないためには、金額の区別や対応時間の明示、超過分の精算といった条件を満たしておくことが欠かせません。

求人票に固定残業代と書いてあれば問題ありませんか

求人票に記載があること自体は望ましいことですが、それだけで十分とは言えません。実際の契約書や就業規則で固定残業代の内容が明確に定められ、給与明細でも区別して示され、超過分がきちんと精算されている必要があります。記載と実態が伴ってはじめて、制度として有効に機能します。表示の有無だけで安心せず、中身を整えておくことが大切です。

固定残業代の仕組みで不安があるときは、どこに相談すればよいですか

自社の制度が法的に有効かどうか判断に迷う場合や、従業員から未払い残業代を請求された場合には、労働問題にくわしい弁護士に相談することをおすすめします。制度の設計段階から相談しておけば、無効とされるリスクを抑えられますし、トラブルが起きた際にも、状況に応じた適切な対応を検討できます。日ごろから相談できる体制を整えておくと安心です。

固定残業代と実際の残業時間が合わなくなったら、どうすればよいですか

業務の変化などで、当初決めた固定残業代と実際の残業時間が合わなくなることはよくあります。その場合は、まず実態を確認したうえで、制度の内容を見直すことを検討します。固定分を超える残業が続いているなら、超過分を確実に精算しつつ、固定残業代そのものの水準を実態に合わせて調整することが望まれます。ただし、金額や対応時間の変更は労働条件にかかわるため、進め方には配慮が必要です。判断に迷うときは専門家に相談するとよいでしょう。

企業の法的対応は弁護士に相談を
法的リスクを低減し、安定したビジネス運用を実現
  • ライバル企業や顧客から訴訟を起こされた
  • 取引の中で法令違反が発覚した
  • 契約書作成時の法務チェック
  • ネット上での風評被害・誹謗中傷
  • M&A・事業展開・リストラ時の法的リスクの確認
掲載2,000以上事務所 初回相談無料の事務所多数 全国対応

かんたん3ステップで相談できます

1
お住まいの
地域を選ぶ
2
事務所を
比べて選ぶ
3
無料相談を
申し込む
上記に当てはまるなら弁護士に相談
企業法務に強い弁護士を探す