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残業代の計算方法|割増率と正しい支払いのルール

この記事で分かること

  • 残業代は通常の賃金に一定の割合を上乗せして支払う必要がある
  • 残業には法定労働時間を超えるものと所定時間を超えるものがある
  • 割増は時間外のほか深夜や休日の労働にも必要になる
  • 計算の土台となる基礎賃金は手当の実態で含める範囲が変わる
  • 残業時間は客観的に記録して正確に把握する
  • 未払いは退職後にさかのぼって請求されることがある
  • 計算方法に不安があれば専門家に確認するとよい

残業代は、法律で定めた時間を超えて働いた場合に、通常の賃金へ一定の割合を上乗せして支払うものです。深夜や休日の労働にも割増が必要になり、計算の土台となる基礎賃金は手当の実態で含める範囲が変わります。残業時間は客観的に記録し、正確に把握することが大切です。未払いは退職後にまとめて請求されることもあるため、日ごろから正しく計算し適切に支払っておくことが備えになります。

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残業代の計算方法|正しく支払うための基本

従業員に残業をしてもらったとき、その残業代をどう計算すればよいのか。経営者や労務の担当者にとって、これは避けて通れない問題です。なんとなくの感覚で処理していると、実は不足していた、あるいは払いすぎていた、ということが起こりかねません。残業代の計算には決まったルールがあり、それを正しく理解しておくことが、トラブルを防ぐ第一歩になります。

残業代の計算は、専門的で難しそうに見えるかもしれません。しかし、その仕組みを一つずつ紐解いていけば、基本的な考え方は決して複雑ではありません。まずは全体像をつかむことから始めてみましょう。

残業代は、単に「働いた時間ぶんの給料」を払えばよいというものではありません。法律で定められた時間を超えて働いてもらった場合には、通常の賃金に一定の割合を上乗せして支払うことが求められます。この上乗せがあるからこそ、会社は安易な長時間労働を避け、従業員の働きに正しく報いることになるのです。

残業代の計算は、一見すると細かくて面倒に感じられるかもしれません。しかし、この計算をおろそかにすると、後で思わぬ形で会社に跳ね返ってきます。残業代の未払いは、従業員から過去にさかのぼって請求される可能性があり、対象となる従業員が複数いれば、その負担は大きなものになります。逆に、日ごろから正しく計算し、きちんと支払っていれば、こうしたリスクとは無縁でいられます。残業代の計算を正しく理解しておくことは、会社を守るための堅実な備えなのです。

この記事では、残業代がどのような仕組みで計算されるのか、その基本的な考え方を弁護士の視点から見ていきます。計算の土台となる要素や、間違えやすいポイントを押さえておくことで、残業代をめぐる従業員とのトラブルを未然に防ぐことができます。正しい支払いは、従業員の信頼を得るうえでも欠かせません。

そもそも残業とは何か|法定労働時間との関係

残業代を理解するには、まず「残業」とは何を指すのかを押さえる必要があります。ここでいう残業には、実は二つの考え方があります。

日常の感覚では、「勤務時間を過ぎて働くこと」をまとめて残業と呼びがちです。しかし、残業代を正しく計算するうえでは、その残業が法律の上限を超えたものなのか、会社が定めた時間を超えただけのものなのかを区別する必要があります。この区別によって、法定の割増賃金が必要になるかどうかが変わってくるからです。まずは、この二つの考え方を整理しておきましょう。

一つは、法律で定められた労働時間を超えて働くことです。労働時間には、一日および一週間について、これを超えて働かせてはならないという上限が法律で定められています。この上限を超えて働いてもらった時間が、割増賃金の対象となる残業です。

この法律で定められた上限は、従業員の健康と生活を守るために設けられているものです。人が働ける時間には限りがあり、際限なく働かせれば心身をすり減らしてしまいます。そこで法律は、原則として働かせてよい時間に上限を定めています。ただし、一定の手続きを踏めば、この上限を超えて働いてもらうことも可能になります。その場合に、上限を超えた時間について割増賃金を支払うことが求められるのです。つまり、法定の上限を超える残業は、正しい手続きと、それに見合った割増賃金の支払いがあってはじめて認められるものだと理解しておく必要があります。

もう一つは、会社が独自に定めた所定の労働時間を超えて働くことです。会社によっては、法律の上限よりも短い時間を勤務時間として定めていることがあります。この会社の定めた時間は超えるものの、法律の上限には達していない時間についても、働いたぶんの賃金は支払う必要があります。ただし、この部分については、法律で定められた割増の上乗せが必ずしも必要になるわけではありません。この二つの違いを理解しておくことが、残業代を正しく計算するうえで重要になります。

この二種類の残業は、混同されやすいので注意が必要です。たとえば、会社が定めた勤務時間が法律の上限より短い場合、その勤務時間を超えて働いても、法律の上限に達するまでの部分は、法定の割増の対象にはなりません。もっとも、その部分についても働いたぶんの賃金を支払う必要はありますし、会社が独自に割増を設けることも可能です。一方、法律の上限を超えた部分は、法定の割増賃金の対象となります。自社の勤務時間が法律の上限とどういう関係にあるのかを整理しておくと、どの部分にどんな支払いが必要なのかが見えてきます。この区別があいまいだと、支払いに過不足が生じるおそれがあります。

割増賃金の仕組み|なぜ上乗せが必要なのか

法律で定められた時間を超える残業には、通常の賃金に一定の割合を上乗せした割増賃金を支払う必要があります。この割増という仕組みが、残業代の計算の中心となります。

割増賃金という言葉は聞き慣れないかもしれませんが、要するに「通常の賃金に一定の上乗せをした賃金」のことです。残業をしてもらった場合、その時間について、普段の時給に相当する額をそのまま払うのではなく、それに一定の割合を上乗せした額を払う。この上乗せの部分が、残業代を特徴づけるものになります。なぜこうした上乗せが必要とされるのか、その趣旨を理解しておくと、計算の意味もつかみやすくなります。

なぜ上乗せが求められるのか、疑問に思うかもしれません。これは、会社が安易に長時間労働をさせることを抑え、従業員の負担に見合った対価を支払わせるためです。通常より高い対価を払わなければならないとなれば、会社は不必要な残業を減らそうとします。また、法定の時間を超えて働く従業員にとっては、その負担に応じた上乗せを受け取ることが、正当な報いとなります。

この仕組みには、二つの意味が込められています。一つは、従業員を長時間労働から守るという意味です。残業に上乗せの負担があることで、会社は「できるだけ残業させないようにしよう」という動機を持ちます。もう一つは、負担に報いるという意味です。通常の時間を超えて働くことは、従業員にとって余分な負担ですから、それに見合った上乗せを支払うのが公正だという考え方です。この二つの意味を理解すると、なぜ割増賃金という仕組みがあるのかが腑に落ちるはずです。単なる決まりごととしてではなく、その趣旨を踏まえて対応することが大切です。

割増賃金が必要になる場面は、法定の労働時間を超える残業だけではありません。深夜の時間帯に働いた場合や、法律で定められた休日に働いた場合にも、それぞれ割増賃金の支払いが求められます。これらは、通常の時間帯や勤務日とは異なる負担を従業員に強いるものだからです。それぞれの場面で、上乗せの考え方が定められています。

深夜の時間帯の労働は、本来休むべき時間に働くことになるため、心身への負担が大きいものです。そのため、通常とは別に上乗せが求められます。また、法律で定められた休日の労働も、休むべき日に働くという点で、やはり特別な負担を伴います。これらの割増は、時間外労働の割増とは別に考えるものです。つまり、同じ残業でも、それが深夜に及んだり、休日に行われたりすれば、当てはまる割増が変わってくるのです。自社の従業員がどの時間帯に、どの日に働いているのかを把握し、それぞれの場面に応じた割増を正しく適用することが求められます。

補足
割増賃金には、時間外の労働に対するもの、深夜の労働に対するもの、休日の労働に対するものがあります。これらが重なる場合、たとえば深夜に時間外労働をした場合などには、上乗せの考え方も重なってきます。どの場面にどの割増が当てはまるのかを整理しておくことが大切です。

残業代計算の土台となる基礎賃金

残業代を計算するには、その土台となる一時間あたりの賃金を求める必要があります。この基礎となる賃金に、割増の考え方を当てはめて、残業代が算出されます。

この一時間あたりの賃金は、残業代計算のすべての出発点となる、いわば土台の数字です。ここが正確でなければ、そこから計算されるすべての残業代がずれてしまいます。そして、この土台を求めるうえで特に重要になるのが、どの賃金を基礎に含めるかという点です。給料のなかには、基礎に含めるものと、除いてよいものがあり、この振り分けを正しく行うことが、正確な計算の鍵を握ります。順に見ていきましょう。

月給制の場合、月の給料をもとに、一時間あたりの賃金を計算することになります。ここで注意したいのは、すべての手当がこの計算の土台に含まれるわけではないという点です。給料のなかには、残業代を計算する際の基礎から除いてよいとされているものがあります。

一時間あたりの賃金を求めるには、月の給料を、月の所定の労働時間で割るという考え方が基本になります。ここで用いる給料の額を正しく把握することが、計算の出発点です。月によって労働日数が変わることもあるため、どのように一時間あたりの賃金を求めるかには一定の考え方が定められています。この土台となる金額を誤ると、そこから計算されるすべての残業代がずれてしまいます。だからこそ、基礎となる賃金をどう求めるかは、残業代計算のなかでも特に慎重に扱うべき部分なのです。

たとえば、通勤にかかる費用を補うための手当や、家族の状況に応じて支給される手当、住まいに関して支給される手当などは、一定の条件のもとで基礎から除くことができるとされています。これらは、労働そのものへの対価というより、個々の従業員の事情に応じて支給されるものだからです。一方で、こうした性質を持たない手当は、原則として基礎に含めて計算する必要があります。

基礎に含めるか除くかの考え方を整理すると、次のようになります。ポイントは、その手当が「働きそのものへの対価」なのか、「個々の従業員の事情に応じたもの」なのかという点にあります。

手当の性質 基礎への扱い
通勤・家族・住まいなど個々の事情に応じた手当 一定の条件のもとで基礎から除ける
労働への対価としての性質を持つ手当 原則として基礎に含める

ただし、この区別は手当の名前だけで決まるものではありません。同じ名前の手当でも、その実態によって扱いが変わることがあります。名前が「住宅手当」であっても、実態が労働への対価に近ければ、基礎に含めなければならない場合もあるのです。あくまで、その手当がどういう性質のものなのかという実態に基づいて判断する必要があります。

この基礎賃金の計算を誤ると、残業代全体が正しく算出できません。どの手当を含め、どの手当を除くのかは、手当の名前ではなく、その実態によって判断されます。名前だけで安易に判断せず、その手当がどういう性質のものなのかを見極めることが大切です。

残業代を計算する基本の流れ

ここまでの内容を踏まえて、残業代を計算する基本的な流れを整理しておきましょう。順を追って考えると、複雑に見える計算も理解しやすくなります。

残業代の計算は、いくつかの要素が絡み合うため、一見すると難しそうに感じられます。しかし、一つずつ順番に処理していけば、決して手に負えないものではありません。全体の流れを頭に入れておくと、どの段階で何を確認すればよいのかが見えてきます。

  1. 給料のうち、残業代の基礎に含める部分を確定する。
  2. その基礎をもとに、一時間あたりの賃金を計算する。
  3. 従業員が実際に残業した時間を、正確に把握する。
  4. 残業の種類に応じた割増の考え方を、一時間あたりの賃金に当てはめる。
  5. 割増を反映した金額に残業時間を掛けて、残業代を算出する。

この流れのなかで、どの段階も正確さが求められます。特に、基礎に含める賃金の確定と、残業時間の正確な把握は、計算の土台となる重要な部分です。ここがあいまいだと、算出される残業代も不正確になってしまいます。

逆に言えば、この二つをきちんと押さえておけば、残業代の計算は大きく間違えることがなくなります。基礎となる賃金を正しく確定し、残業時間を正確に把握する。この二つの土台がしっかりしていれば、あとはそこに割増の考え方を当てはめていくだけです。複雑に見える残業代の計算も、一つひとつの要素に分解して考えれば、決して手に負えないものではありません。まずは、この二つの土台を正確に押さえることを心がけましょう。

また、残業時間の把握については、実際に働いた時間を客観的に記録しておくことが欠かせません。従業員の自己申告だけに頼っていると、後で「もっと働いていた」という食い違いが生じることがあります。勤務時間を客観的に記録する仕組みを整えておくことが、正確な残業代の計算と、トラブルの予防につながります。

こうした記録は、日々こまめに残しておくことが大切です。後からまとめて振り返ろうとしても、正確な時間は分からなくなってしまいます。日常的に記録する習慣を根づかせておきましょう。

残業代の計算でよくある間違い

残業代の計算では、いくつか間違えやすいポイントがあります。こうした間違いは、意図せずとも未払いを生み、後で大きなトラブルにつながることがあります。注意すべき点を押さえておきましょう。特に間違いが起きやすいのは、次のような点です

  • 基礎に含めるべき手当を除いて計算し、残業代が不足する。
  • 始業前や終業後の労働時間を数えず、残業時間がもれる。
  • 複数の割増が重なる場合に、一方の上乗せを見落とす。
  • 給料に残業代を含めているが、その区別があいまいになっている。

これらはいずれも、悪意なく生じるものばかりです。だからこそ、自社の計算方法にこうした落とし穴がないかを、あらためて確認しておくことが大切です。以下で、主なものを詳しく見ていきます。

まず多いのが、基礎賃金の計算を誤るケースです。本来は基礎に含めるべき手当を除いて計算してしまうと、算出される残業代が実際より少なくなります。手当の名前だけで判断し、除いてよいものかを正しく確かめないことが、この間違いの原因になりがちです。

「この手当は基礎から除いてよい」と思い込んで計算していると、それが積み重なって、大きな未払いにつながることがあります。一回あたりの差は小さくても、対象となる従業員が多く、期間が長くなれば、その総額は無視できないものになります。基礎に含める手当を正しく判断することは、こうした未払いを防ぐうえで欠かせません。自社の給料に含まれる手当について、一つひとつその性質を確認し、基礎に含めるべきものを見落としていないかを点検しておくことをおすすめします。

注意
「残業代を含んだ給料」として支払っているつもりでも、その仕組みが正しく整っていなければ、別途残業代の支払いを求められることがあります。あらかじめ一定の残業代を給料に含める方法をとる場合は、その部分が明確に区別されているかなど、要件を満たしているかを確認する必要があります。

次に、残業時間の把握が不正確なケースです。始業前の準備や終業後の後片付けなど、実際には働いているのに労働時間として数えていない時間があると、残業代の計算からもれてしまいます。何が労働時間に当たるのかを正しく理解し、もれなく把握することが大切です。

労働時間に当たるかどうかは、会社の指示のもとで働いているかどうかがひとつの目安になります。制服への着替えが義務づけられていてそれに時間がかかる場合や、業務に必要な準備を始業前に行っている場合など、一見すると勤務時間の外に見える時間でも、実態として会社の指揮のもとにあれば労働時間に含まれ得ます。こうした時間を「勤務時間ではない」と決めつけて計算からもれさせると、残業代の未払いにつながります。何が労働時間に当たるのかを正しく理解し、実態に即してもれなく把握することが、正確な残業代計算の前提となります。

また、割増が重なる場合の考え方を見落とすこともあります。深夜に時間外労働をしたときなど、複数の割増が当てはまる場面では、それぞれの上乗せを正しく反映させる必要があります。一方の割増だけを反映して、もう一方を見落とすと、支払いが不足してしまいます。

たとえば、法定の時間を超える残業が、深夜の時間帯にまで及んだ場合を考えてみましょう。この場合、時間外労働に対する上乗せと、深夜労働に対する上乗せの両方が当てはまります。ところが、時間外労働の割増だけを反映して、深夜労働の割増を忘れてしまうと、本来支払うべき額に届きません。夜遅くまで残業してもらうことが多い職場では、こうした重なりが日常的に生じます。どの場面でどの割増が重なるのかを整理して理解し、もれなく反映させることが、正確な支払いのために欠かせません。

残業代の未払いが招くリスク

残業代の計算を誤り、支払いが不足していると、会社は思わぬリスクを負うことになります。未払いの残業代は、後からまとめて請求される可能性があるものです。

残業代の未払いは、その場では表面化しないことが多いだけに、かえって危険です。問題がないように見えていても、水面下で未払いが積み重なっていることがあるのです。そして、それがある日突然、請求という形で表に出てきます。どのようなリスクがあるのかを知っておくことは、そうならないための備えにつながります。

従業員は、支払われるべき残業代が支払われていない場合、その不足分を会社に請求することができます。この請求は、退職した後になされることも少なくありません。在職中は言い出しにくかった従業員が、辞めた後で過去にさかのぼって請求してくる、というケースは実際によく見られます。

在職中の従業員は、会社との関係を気にして、残業代の不足に気づいていても、なかなか声を上げにくいものです。しかし、退職して会社との関係がなくなれば、そうした遠慮は消えます。そこで、辞めた後に、在職中の未払い分をまとめて請求してくる、ということが起こるのです。会社としては、「これまで何も言われなかったから問題ない」と考えるのは危険です。声を上げていなかっただけで、不満が積み重なっていることもあります。日ごろから正しく残業代を支払っておくことが、こうした後々の請求を防ぐ、最も確実な方法なのです。

しかも、こうした請求は一人だけにとどまらないことがあります。同じ計算方法で残業代を支払っていた場合、ほかの従業員も同様に未払いがあることになります。一人の請求をきっかけに、次々と同様の請求が生じれば、会社が負担する金額は大きくふくらみます。日ごろから正しく計算し、適切に支払っておくことが、こうしたリスクを避ける最善の方法です。

残業代の計算方法に誤りがある場合、それは特定の一人だけの問題ではなく、同じ方法で計算されていた全員に共通する問題です。つまり、一人の従業員が未払いに気づいて請求すれば、それは氷山の一角であり、水面下には同様の未払いが多数存在することになります。もし、退職した従業員の請求をきっかけに計算方法の誤りが明らかになれば、在職中の従業員からも同様の請求が生じかねません。こうした事態は、会社にとって大きな痛手です。だからこそ、問題が表面化してから慌てるのではなく、日ごろから計算方法が正しいかを点検し、適切に支払っておくことが重要なのです。

残業代の計算や支払いの仕組みに不安がある場合は、専門家に相談して確認しておくことをおすすめします。自社の計算方法が正しいか、給料に残業代を含める仕組みが要件を満たしているかなどを、あらかじめ点検しておけば、後で大きな問題になるのを防げます。

残業代をめぐる問題は、いったん請求という形で表面化すると、対応に大きな労力がかかります。それに比べれば、事前に自社の計算方法を点検しておく手間は、はるかに小さなものです。まだ問題が起きていない今のうちに確認しておくことが、結果的に会社を守ることにつながります。

残業代の計算に関するよくある質問

すべての手当を含めて残業代を計算しなければなりませんか

そうではありません。給料に含まれる手当のなかには、残業代を計算する際の基礎から除いてよいとされているものがあります。通勤にかかる費用の手当や、家族の状況に応じた手当、住まいに関する手当などが、一定の条件のもとでこれに当たります。ただし、除いてよいかどうかは手当の名前ではなく、その実態によって判断されます。労働への対価としての性質を持つ手当は、原則として基礎に含める必要があります。名前だけで安易に判断しないことが大切です。

ここで気をつけたいのは、除いてよいとされる手当であっても、無条件に除けるわけではないという点です。それぞれの手当について、除くための条件が定められており、その条件を満たしている必要があります。たとえば、名目上は個々の事情に応じた手当となっていても、実際には全員に一律に支給されているような場合は、除くための条件を満たさず、基礎に含めなければならないことがあります。自社の手当が、除くための条件を本当に満たしているのかを、実態に照らして確認することが大切です。

残業代を給料に含めて支払うことはできますか

一定の要件を満たせば、あらかじめ決まった額の残業代を給料に含めて支払う方法をとることは可能です。ただし、この方法を用いるには、給料のうちどの部分が残業代に当たるのかが明確に区別されていることなど、いくつかの条件を満たす必要があります。この区別があいまいなまま「給料に含んでいる」としても、その主張は認められず、別途残業代の支払いを求められることがあります。この方法を使う場合は、要件を満たしているかを慎重に確認することが大切です。

この方法をめぐるトラブルは、実際に少なくありません。会社は「残業代は給料に含めて払っている」と考えているのに、その区別が明確でなかったために、後で別途の支払いを求められる、というケースです。給料のなかで残業代に当たる部分がはっきりと区別されていなければ、たとえ会社にそのつもりがあっても、残業代を払ったとは認められないことがあります。また、実際の残業が、あらかじめ含めた額に見合う時間を超えた場合には、その超えた分について追加で支払う必要があります。この方法を採用する場合は、こうした要件をきちんと満たしているか、専門家に確認しておくと安心です。

従業員の自己申告だけで残業時間を管理してよいですか

自己申告だけに頼る管理は、避けたほうがよいでしょう。残業時間の把握は、実際に働いた時間を客観的に記録することが基本です。自己申告だけだと、実態と食い違いが生じたり、後で「もっと働いていた」と主張されたりするおそれがあります。勤務時間を客観的に記録する仕組みを整え、実際の労働時間を正確に把握しておくことが、正しい残業代の計算と、従業員とのトラブルの予防につながります。

客観的な記録があれば、後で残業時間をめぐって争いになったときにも、会社は実態に基づいて説明ができます。逆に、自己申告に頼っていて客観的な記録がないと、従業員が「実際にはもっと働いていた」と主張したときに、それを覆すのが難しくなります。また、自己申告制のもとでは、従業員が実際の残業を申告しづらい雰囲気があると、正確な把握ができません。勤務時間を客観的に記録する仕組みを整えることは、残業代を正しく計算するためだけでなく、従業員と会社の双方が実態を共有し、無用な争いを避けるためにも役立ちます。労働時間の管理は、労務管理の基本として、しっかり整えておきたいところです。

残業代の未払いはいつまでさかのぼって請求されますか

未払いの残業代を請求できる期間には、法律で定められた区切りがあります。この期間内であれば、従業員は過去にさかのぼって未払い分を請求することができます。在職中だけでなく、退職した後に請求されることも少なくありません。過去の分をまとめて請求されると、会社の負担は大きくなります。そうした事態を避けるためにも、日ごろから残業代を正しく計算し、適切に支払っておくことが何よりの備えになります。

この請求できる期間は、決して短いものではありません。そのため、もし計算方法に誤りがあれば、相当の期間にわたる未払い分がまとめて請求される可能性があります。しかも、それが複数の従業員に及べば、会社が負担する総額は非常に大きなものになりかねません。こうしたリスクは、日々の正しい計算と支払いによって、確実に減らすことができます。残業代の計算は、目先の手間としては小さくないかもしれませんが、それを怠ったときのリスクの大きさを考えれば、正確に行う価値は十分にあります。自社の計算方法に不安があれば、早めに点検しておくことをおすすめします。

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