目次[非表示]
逮捕されてしまったとき、本人も家族も、頭をよぎるのはただ一つ——「いつ出てこられるのか」ということではないでしょうか。仕事はどうなるのか、家族との生活は、まわりにはどう説明すれば。先の見えない不安の中で、釈放のタイミングだけは何としても知っておきたい、というのが多くの方の本音だと思います。
実は、刑事手続きの中で釈放されるチャンスは一度きりではありません。逮捕直後から、起訴された後まで、いくつもの「解放のポイント」が存在します。そして、それぞれの場面で弁護士が適切に動くことで、身柄解放を早められる可能性があります。この記事では、釈放されるタイミングを時系列でひとつずつ解説し、早く出てくるために何ができるのかを、弁護士の視点でお伝えします。
釈放のタイミングは一度きりではない
まず全体像を押さえましょう。逮捕されてから釈放されるまでには、複数の分岐点があります。どこかの段階で釈放されれば、それ以降の身柄拘束は続きません。逆に、各段階で「まだ拘束が必要」と判断されると、次の段階へと進んでいきます。
| タイミング | どんなときに釈放されるか |
|---|---|
| 逮捕後48時間以内 | 警察が検察官へ送致しないと判断したとき |
| 送致後24時間以内 | 検察官が勾留を請求しないと判断したとき |
| 勾留質問のあと | 裁判官が勾留請求を却下したとき |
| 勾留中 | 準抗告や勾留取消しが認められたとき |
| 捜査終了時 | 不起訴処分となったとき |
| 起訴後 | 保釈が認められたとき |
このように、釈放のチャンスは何度も訪れます。「逮捕されたら最後、起訴まで出られない」と思い込んでいる方も多いのですが、それは正しくありません。早い段階で釈放されるケースもたくさんあるのです。大切なのは、それぞれのタイミングで、釈放に向けた働きかけをきちんと行うことです。
イメージしやすいように、たとえてみましょう。釈放までの道のりは、いくつもの「出口」がある長い廊下のようなものです。最初の出口(逮捕後72時間)で外に出られればそれが一番早く、そこを過ぎても次の出口(勾留却下)、その次の出口(不起訴)、さらに先の出口(保釈)と、解放のチャンスは続いていきます。どこかの出口で外に出られれば、それ以降の拘束は続きません。逆に、何もしなければどの出口も素通りして、もっとも奥の出口まで歩かされることになりかねません。だからこそ、一つひとつの出口で「ここで出られないか」と働きかけることが重要なのです。
逮捕後72時間以内に釈放されるケース
最初の釈放のチャンスは、逮捕からの72時間の中にあります。この時間制限の仕組みを知っておくと、見通しが立てやすくなります。
警察が送致しない場合(48時間以内)
逮捕した警察は、48時間以内に、事件を検察官へ送致するか、釈放するかを決めなければなりません。事件が軽微で、身柄を拘束し続ける必要がないと判断されれば、この段階で釈放され、在宅で捜査が続けられることがあります。いわゆる「微罪処分」で手続きが終わることもあります。
検察官が勾留請求しない場合(送致後24時間以内)
事件が検察官へ送致されると、検察官はさらに24時間以内に、勾留を請求するかどうかを判断します。検察官が「身柄を拘束し続ける必要はない」と考えれば、勾留請求をせずに釈放することがあります。この場合も、その後は在宅で捜査が進みます。
この逮捕からの72時間の流れや、勾留という手続きの仕組みについては、こちらの記事で詳しく解説しています。
この段階での釈放を引き寄せるには、逮捕直後から弁護士が動くことが効果的です。弁護人が検察官に対し、本人に定まった住居があること、逃亡や証拠隠滅のおそれがないこと、被害者との示談に向けて動いていることなどを伝えることで、勾留請求を見送ってもらえる可能性が高まります。
この72時間は、弁護活動にとって非常に重要な時間です。検察官が勾留を請求してしまう前に動けるかどうかで、その後の展開が大きく変わるからです。いったん勾留が決まってしまうと、解放のハードルは上がります。逆に、勾留請求の前に弁護人が説得力のある主張をできれば、長期の身柄拘束を入口で食い止められる可能性があるのです。だからこそ、逮捕されたらできるだけ早く弁護士に連絡することが、早期釈放の第一歩になります。家族が逮捕の知らせを受けたら、迷わず弁護士に相談するのが得策です。
勾留請求が却下されての釈放
検察官が勾留を請求しても、それがそのまま認められるとは限りません。勾留するかどうかを最終的に決めるのは、裁判官だからです。
検察官の勾留請求を受けて、裁判官は本人から直接話を聞いたうえで(勾留質問)、勾留の要件を満たすかどうかを判断します。住居が定まっていて、罪証隠滅や逃亡のおそれがないと判断されれば、裁判官は勾留請求を却下します。却下されれば、本人はその日のうちに釈放されます。
勾留請求の却下は、近年その件数が増えているとも言われます。「逮捕されたら必ず勾留される」わけではないのです。だからこそ、この段階で弁護人がしっかり主張することには、大きな意味があります。
勾留質問は、本人が裁判官と直接話せる重要な機会です。ここで本人が、事実を率直に認め、深く反省していること、定まった住居があり家族の監督を受けられることなどを伝えられれば、裁判官の判断に良い影響を与えられます。とはいえ、何をどう話せばよいか、本人が一人で適切に判断するのは難しいものです。事前に弁護人と打ち合わせ、勾留質問にどう臨むかを準備しておくことが、却下を引き寄せるうえで効果的です。弁護人が提出する意見書とあわせて、本人の言葉と弁護人の主張が噛み合うことで、説得力が増します。
勾留中に早期釈放を求める方法
勾留が認められてしまっても、あきらめる必要はありません。勾留の途中で釈放を求める手段が用意されています。
準抗告
勾留の決定そのものに対して、不服を申し立てる手続きが準抗告です。弁護人が「この事件で勾留を続ける必要はない」と主張し、別の裁判官の判断を求めます。準抗告が認められれば、勾留が取り消され、釈放されます。
勾留の取消し・勾留理由開示
勾留の理由がなくなったときには、勾留の取消しを請求できます。たとえば、被害者と示談が成立して罪証隠滅のおそれがなくなった、といった事情の変化があれば、取消しが認められる可能性があります。また、勾留の理由を公開の法廷で明らかにするよう求める「勾留理由開示」という手続きを通じて、釈放につなげていくこともあります。
- 準抗告:勾留決定への不服申立て。別の裁判官が判断
- 勾留取消し:勾留の理由・必要がなくなったときに請求
- 勾留の執行停止:病気や家族の事情など、一時的に身柄拘束を解く制度
これらの手続きは、いずれも専門的な判断と書面の作成が必要です。本人や家族だけで進めるのは難しく、弁護人の力が欠かせません。勾留されたという事実だけで「もう打つ手はない」とあきらめてしまう方もいますが、それは大きな誤解です。勾留された後にも、釈放を求める手段はいくつも残されています。
不起訴による釈放
捜査が終わり、検察官が「起訴しない」と判断すれば(不起訴処分)、その時点で身柄は解放されます。これは、刑事事件における大きなゴールのひとつです。
不起訴になれば刑事裁判は開かれず、前科もつきません。身柄拘束も終わり、日常生活に戻ることができます。とくに、被害者がいる事件では、示談が成立しているかどうかが不起訴になるかどうかを大きく左右します。検察官は、被害者が加害者を許している(宥恕している)という事実を重視するからです。この不起訴による釈放は、本人にとっても家族にとっても、もっとも望ましい形の解放だといえます。
起訴と不起訴では、その後の人生がまるで変わってきます。両者の違いと、不起訴を目指す意味については、こちらの記事で詳しく整理しています。
不起訴を勝ち取るためには、捜査の段階から弁護人が被害者と示談交渉を進め、反省や再発防止の姿勢を検察官に伝えていくことが重要です。釈放のためにも、不起訴を目指す弁護活動には大きな意味があります。
具体例を挙げてみましょう。たとえば、店舗で商品を盗んでしまった窃盗事件で、勾留されている本人に代わって弁護人が被害店舗と交渉し、被害額を弁償したうえで示談を成立させたとします。被害店舗が「処罰までは望まない」という意思を示せば、検察官は不起訴とする可能性が高まり、その時点で本人は釈放されます。一方、示談ができずに被害感情が強く残っていれば、起訴されて勾留がさらに続くこともあります。同じ事件でも、示談の成否によって釈放のタイミングが大きく変わるのです。
不起訴による釈放を目指すなら、捜査の早い段階から動き出すことが肝心です。起訴・不起訴の判断は、勾留期間が満了する頃に下されます。その判断までに示談をまとめ、有利な事情を整えておく必要があるため、時間との勝負になります。
起訴された後の保釈による釈放
残念ながら起訴されてしまった場合でも、まだ釈放の道は残されています。それが「保釈」です。
保釈とは、一定の保証金(保釈金)を納めることを条件に、勾留されている被告人を釈放する制度です。保釈が認められれば、本人は自宅に戻り、裁判には在宅で出席できるようになります。仕事や家庭生活を続けながら、裁判に臨めるようになるのです。保釈金は、本人が逃げたり証拠を隠したりしなければ、裁判が終わった後に返還されます。
保釈の仕組みや、認められるための条件については、こちらの記事で詳しく解説しています。
保釈金の金額や、返還のタイミングについて不安な方は、こちらも参考になります。
保釈には、いくつかの種類があります。一定の重い罪を除き、原則として認めなければならない「権利保釈」、裁判所の裁量で認められる「裁量保釈」などです。弁護人は、本人の事件がどの保釈にあたるかを見極めたうえで、保証金の額や身元引受人の存在、住居の制限など、保釈を認めてもらうための条件を整えて請求します。起訴された直後に保釈を請求し、できるだけ早く本人を自宅に戻すことを目指すのが一般的な流れです。
起訴後も身柄拘束が続くと、勾留期間はさらに長期化します。仕事を失ったり、家庭に深刻な影響が出たりするリスクも高まります。保釈によって早期に身柄を解放できれば、こうした不利益を大きく減らせます。だからこそ、起訴されてしまった場合でも、すぐに保釈を目指して動くことが重要なのです。
「釈放」と「在宅事件」の関係を整理する
ここで、ひとつ整理しておきたいことがあります。「釈放されること」と「事件が終わること」は、必ずしも同じではないという点です。釈放には、大きく分けて2つの意味合いがあります。
ひとつは、捜査がまだ続いているけれど、身柄拘束だけを解いて在宅で進める、というパターンです。逮捕後72時間以内の釈放や、勾留請求が却下されての釈放がこれにあたります。この場合、本人は自宅に戻れますが、事件そのものは終わっておらず、引き続き捜査の対象です。これを「在宅事件」と呼びます。
もうひとつは、事件の決着とともに身柄が解放されるパターンです。不起訴処分によって事件が終わり、釈放される場合がこれにあたります。この場合は、もう刑事手続きの心配をする必要がなくなります。
| 釈放の種類 | 身柄 | 事件の状態 |
|---|---|---|
| 在宅事件への切替 | 自宅に戻れる | 捜査は継続中 |
| 不起訴での釈放 | 自宅に戻れる | 事件は終了(前科なし) |
| 保釈での釈放 | 自宅に戻れる | 裁判が続く |
同じ「釈放」でも、その後にやるべきことはまったく違います。在宅事件として釈放されたのか、不起訴で完全に終わったのかを正しく理解しておくことが、その後の対応を誤らないために大切です。自分の釈放がどの種類なのか分からないときは、弁護士に確認しましょう。釈放の知らせを受けて安心するのは当然ですが、それが「事件の終わり」を意味するのか「一時的な解放」にすぎないのかで、心構えはまったく変わってきます。ここを取り違えると、その後の手続きで思わぬ不利益を招くこともあるため、注意が必要です。
早期釈放のために弁護士ができること
ここまで見てきたように、釈放のタイミングは何度も訪れます。そして、そのどの場面でも、弁護士の働きかけが結果を左右します。弁護士が早期に介入することで、次のような活動が可能になります。
| 段階 | 弁護士の活動 |
|---|---|
| 逮捕直後 | 検察官に勾留請求をしないよう働きかける |
| 勾留質問前 | 裁判官に意見書を出し、勾留却下を求める |
| 勾留中 | 準抗告・勾留取消しで早期釈放を求める |
| 捜査中 | 被害者と示談し、不起訴・釈放を目指す |
| 起訴後 | 保釈を請求し、身柄解放を実現する |
とくに、被害者との示談は、釈放を引き寄せる大きな要素です。示談が成立すれば、勾留の必要性が下がり、不起訴の可能性も高まります。しかし、被害者との交渉を本人や家族が直接行うのは、現実的には困難です。弁護士が間に入ることで、はじめて冷静な話し合いが可能になります。どの弁護士に相談すればよいか迷ったら、刑事事件の経験が豊富な弁護士を選ぶことが大切です。
釈放を早めるための弁護活動は、スピードがものを言います。同じ主張でも、勾留が決まる前に行うのと、決まった後に行うのとでは、効果がまったく違います。「もう少し様子を見てから」と迷っている間にも、手続きは刻々と進んでいきます。一日でも早く専門家の力を借りることが、結果的に一日でも早い解放につながるのです。
釈放された後に気をつけること
無事に釈放されても、それで事件が終わったとは限りません。釈放には種類があり、その後の手続きが残っている場合があるからです。
たとえば、勾留請求が却下されて釈放された場合や、起訴前の段階で釈放された場合は、その後も在宅で捜査が続きます。釈放されたからといって油断せず、呼び出しにはきちんと応じ、弁護人と連携しながら対応を続けることが大切です。保釈で釈放された場合は、裁判に必ず出席する義務があり、決められた約束(住居の制限など)を守らなければ、保釈が取り消されてしまうこともあります。
とくに気をつけたいのが、釈放された解放感から、被害者や関係者に自分から連絡を取ってしまうことです。よかれと思って謝罪に向かったり、事情を聞こうとしたりしても、それが「証拠隠滅」や「被害者への接触」と受け取られ、かえって不利になることがあります。被害者とのやり取りは、必ず弁護人を通じて行うようにしましょう。釈放後にどう振る舞うべきか迷ったときは、自己判断で動く前に弁護人に相談することが、せっかく得た解放を無駄にしないためのポイントです。
釈放された本人を支える家族にとっても、その後の対応は重要です。家族が逮捕されてどう動けばよいか分からないという方は、こちらの記事もあわせてご覧ください。
釈放のタイミングに関するよくある質問
逮捕されたら、何日くらいで釈放されますか?
事件によって大きく異なります。軽微な事件で勾留されなければ、数日以内に釈放されることもあります。一方、勾留されて起訴まで進むと、釈放までに3週間以上かかることもあります。早期釈放を目指すには、弁護人の働きかけが重要です。
釈放されれば、もう罪に問われないということですか?
いいえ、必ずしもそうではありません。釈放は「身柄拘束を解く」ことであり、事件そのものが終わったとは限りません。不起訴が確定すれば罪に問われませんが、釈放後も在宅で捜査が続き、後に起訴されることもあります。
勾留されてしまったら、もう早く出ることはできませんか?
そんなことはありません。勾留された後でも、準抗告や勾留取消し、起訴後であれば保釈といった手段で、早期釈放を目指せます。あきらめずに弁護人と対応を進めることが大切です。
保釈金が用意できないと、釈放されませんか?
保釈には保釈金が必要ですが、金額は事件や本人の状況によって決まります。すぐに用意できない場合の対応もあるため、まずは弁護士に相談してみてください。保釈金は、裁判終了後に原則として返還されます。
家族が釈放を早めるためにできることはありますか?
家族が身元引受人となり、本人を監督することを約束するのは、釈放を後押しする有力な事情になります。また、被害者への謝罪や示談に向けた費用の準備など、家族の協力が役立つ場面も多くあります。具体的には弁護士と相談しながら進めるとよいでしょう。
釈放されたことは、会社や周囲に知られてしまいますか?
釈放そのものが公表されるわけではありません。ただし、長期間勾留されていれば、その間に事情を知られてしまう可能性は高まります。だからこそ、早期の釈放を目指すことが、社会生活への影響を抑えることにつながります。
勾留が10日で終わらず、延長されることもありますか?
あります。勾留は原則10日間ですが、捜査が終わらない場合、検察官の請求で最大10日間延長されることがあります。延長されると、それだけ釈放までの時間が延びます。延長を避けるためにも、弁護人が早期の処分や示談に向けて動くことが重要です。
釈放された後、また逮捕されることはありますか?
別の事実について新たに逮捕される可能性は、理論上はあります。また、在宅事件として釈放された後に起訴されることもあります。釈放されたからといって油断せず、弁護人と連携を続けることが大切です。
まとめ|釈放のチャンスを逃さないために
逮捕されても、釈放のチャンスは一度きりではありません。逮捕後72時間以内の釈放、勾留請求の却下、勾留中の準抗告、不起訴、そして起訴後の保釈——いくつもの解放のポイントが存在します。どの段階で釈放されるかによって、本人や家族の負担は大きく変わってきます。
そして、これらのどの場面でも、弁護士の働きかけが結果を左右します。「待っていれば自然に出られる」のではなく、各段階で適切に主張してこそ、早期の釈放が実現します。大切な人が逮捕され、いつ出てこられるのかと不安な日々を過ごしている方は、一人で抱え込まず、できるだけ早く刑事事件にくわしい弁護士に相談してください。一日でも早い解放に向けて、できることは必ずあります。釈放のチャンスは何度も訪れますが、そのどれもが、誰かが動いてはじめて開かれる扉です。あきらめずに、その扉をひとつずつ開けていきましょう。
