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交通事故のよくある原因~平成29年警察庁交通局統計から
この記事で分かること
- 交通事故のよくある原因の約7割が安全運転義務違反に関係する
- 交通事故の原因は、示談交渉時における過失割合の決定に影響する
- 交通事故の原因が、過失割合にどう影響するかは、専門家である弁護士に相談を!
交通事故のよくある原因の約7割が、安全運転義務違反に関係するものです。事故原因は、示談交渉時における過失割合の決定に影響しますが、具体的にどのように影響するのかを素人が判断するのは困難です。したがって、交通事故に精通した弁護士に相談することがオススメです。
目次[非表示]
交通事故のよくある原因には、どんなものがある?
交通事故のよくある原因の約7割が、安全運転義務違反に関係する
交通事故を起こそうと思って起こすドライバーは、まず誰もいないでしょう。しかし、それでも起こってしまうのが交通事故の怖いところです。
では、交通事故のよくある原因には、いったいどのようなものがあるのでしょうか?
結論から言えば、交通事故のよくある原因の約7割が、安全運転義務違反に関するものです。
本記事では警察庁交通局の統計(※)をもとに、安全運転義務違反に関するものなど、交通事故によくある原因を1〜10位までにランキングした上で、その原因が示談交渉における過失割合の決定に及ぼす影響についてご説明いたします。
(※)警察庁交通局「平成29年中の交通事故の発生状況」19ページ「(2)法令違反別の状況 ◎原付以上運転者(第1当事者)の法令違反別交通事故件数の推移」より
交通事故のよくある原因ランキング
平成29年警察庁交通局統計によれば、交通事故のよくある原因トップ10は以下の通りです。
- 第1位 安全不確認
- 第2位 脇見運転
- 第3位 動静不注視
- 第4位 漫然運転
- 第5位 運転操作不適
- 第6位 交差点安全進行義務違反
- 第7位 一時不停止
- 第8位 信号無視
- 第9位 歩行者妨害等
- 第10位 優先通行妨害
第1位から第5位までが安全運転義務違反に関するものです。安全運転義務とは道路交通法第70条(※)に定められているもので、簡単に言うと、ドライバーは自動車のハンドル等を確実に操作し、道路状況等に応じて、他人に危害を及ぼさないような速度と方法で運転しなければならない、というものです。
道路交通法第70条
車両等の運転者は、当該車両等のハンドル、ブレーキその他の装置を確実に操作し、かつ、道路、交通及び当該車両等の状況に応じ、他人に危害を及ぼさないような速度と方法で運転しなければならない。
それでは、個々の原因についてもう少し詳しく見ていきましょう。
第1位 安全不確認
安全不確認とは、「安全確認が足りないこと」を指します。例えば、交差点で一時停止や減速をしたものの、その後の目視が不十分で、自転車や歩行者を見落とした、といった場合です。
これによる事故は年間で137,214件発生しており、事故原因ランキングでは第1位となっています。
安全確認は、し過ぎるということはありません。「たぶん大丈夫だろう」という考えではなく、落ち着いてしっかりと周囲を見るようにしましょう。
第2位 脇見運転
脇見運転とは、「前方を見ずに運転すること」です。例えば、携帯電話やカーナビを操作したり、車外の看板などに気を取られて前方を見ずに運転したり、といった場合です。
これによる事故は、年間で69,815件発生しており、事故原因ランキングでは第2位となっています。
交通事故はほんの少しの気の緩みからも起こってしまいます。例え一瞬であっても、道路状況から目を離さず、気を引き締めて運転しましょう。
第3位 動静不注視
動静不注視とは、「安全確認をし、歩行者や相手車両の存在に気づいたものの、相手の動きを注視せず判断を誤ること」を指します。例えば、右折時に対向車を確認していたにも関わらず、「自分が先に行けはず」、「相手が停止するはず」と自分に都合よく判断し相手の動きをきちんと見ずに行動してしまった、というような場合です。
これによる事故は、年間で50,567件発生しており、事故原因ランキングは第3位となっています。
歩行者や相手車両を確認したら、十分に注意をはらい、正確な情報を取得して安全な対処方法を考えましょう。また、思い込みで運転しないことも重要です。
第4位 漫然運転
漫然運転とは、「集中力・注意力が低下した状態で運転すること」を言います。例えば、ぼんやりと考え事をしていたり、同乗者と雑談に気を取られて信号を見落としたり、といった場合です。
これによる事故は、年間で38,350件発生しており、事故原因ランキングでは第4位です。
自動車の運転は、周囲の様々な情報を収集・処理し、適切な判断を下す作業の連続です。したがって、注意力を欠く状態での運転は、まさに命取りです。他のことに気を取られず運転に集中することが大切ですが、どうしても疲れて集中力が落ちてしまったときには、適宜に休憩を挟むなど工夫し、コンディションを整えて運転するようにしましょう。
第5位 運転操作不適
運転操作不適とは、ハンドル操作ミスやブレーキとアクセルの踏み間違いなど、「運転操作ミス」のことです。
これによる事故は、年間で29,475件発生しており、事故原因ランキングでは第5位です。
運転操作不適は、ドライバーが慌てていたり、不意の状況でパニックになったり、といった際に起こりやすいため、交通状況に応じた速度で走行し、かつ、車間距離を充分にとり不意な交通状況の変化にも対処できるようゆとりを持った運転を心がけましょう。
第6位 交差点安全進行義務違反
交差点安全進行義務違反とは、「『交差点を進行する際は自動車や歩行者に注意し、かつ、できる限り安全な速度と方法で進行しなければならない』という自動車を運転する際の義務に違反すること」を言います。
これによる事故は、年間で27,724件発生しており、事故原因ランキングでは第6位です。
交差点は、信号を守っていればいいというだけではなく、自動車や歩行者に充分な注意をはらった上で走行しましょう。
第7位 一時不停止
一時不停止とは、「一時停止の指定がある場所で一時停止しないこと」を指します。
これによる事故は、年間で17,990件発生しており、事故原因ランキングでは第7位です。
一時停止の指示がある場所は、交通量が多く幅員が広い道路に接する道路や、見通しの悪い交差点など、交通事故が起こる危険性が高い場所が多いです。したがって、きちんと指示通りに一時停止をしなければなりませんが、怖いのは、一時停止をしたつもりで一時停止できていなかった場合があるということです。
正しく一時停止するためには、例え停止線が交差点のかなり手前に引かれていたとしても、必ず停止線の手前でしなければなりません。それは、その道路に自動車が進入した場合に、自動車が曲がりきれるか否かまで計算された上で、停止線が引かれているからです。また、自動車を停止させ安全確認をする際には、2〜3秒の時間は取りましょう。そして自動車を停止させた後は、急発進せず、すぐに停止できる速度で走行することが大切です。
第8位 信号無視
信号無視とは、「信号機の表示に反して通行すること」です。
これによる事故は、年間13,590件発生しており、事故原因ランキングでは第8位です。
例えば、赤信号に変わってすぐだからと言って、自動車を無理やり交差点に進入してはいけません。信号の遵守は、交通ルールの基本です。
第9位 歩行者妨害等
歩行者妨害等とは、「横断歩道を横断しようとする歩行者がいる状況で、車両が一時停止をしないこと」を指します。
これによる事故は、年間12,487件発生しており、事故原因ランキングでは第9位です。
道路を横断しようとする歩行者は、自動車よりも優先されます。ドライバーは、歩行者優先というきまりを常に意識して走行することが重要です。
第10位 優先通行妨害
優先通行妨害とは、「自動車が道路を通行する際に、『どちらの自動車(歩行者)の通行が優先されるか』というきまりを無視したり誤ったりすること」を言います。
これによる事故は、年間11,198件発生しており、事故原因ランキングでは第10位です。
信号機のない交差点では、道路標識などによって示された優先道路や、幅員の広い道路、徐行や一時停止の標識がない道路の通行が優先されます。また、これらで優先関係が定まらない時は「左方優先」となりますので、優先関係に注意して運転するようにしましょう。
交通事故の原因は、示談交渉時における過失割合の決定に影響する!
過失割合とは?
これまで、交通事故のよくある原因のランキングトップ10を見てきました。
これらの事故原因は、被害者と加害者の過失割合を決める際に重要な要素となりますが、事故原因と過失割合の関係についてご説明する前に、まずは過失割合がどのようなものか、簡単にご説明しましょう。
交通事故における過失割合は、「民事交通事故訴訟における過失相殺率の認定基準」(判例タイムズ社)という本を基準に定められます。この本では、交通事故の態様を類型化して基本となる過失割合を算出しており、そこに個別の事情を修正要素として加えるものとしています。
示談交渉時には、この本の内容を参考にして、最終的な過失割合を決定します。
事故原因と過失割合の関係
では、事故原因と過失割合の関係について、事故原因ランキング第8位の信号無視を例にとって考えてみましょう。
十字路の交差点で、A車両が前方の青信号に従って交差点内に進入。一方、A車両の左方から直進してきたB車両は、前方が赤信号にも関わらず停車せず、信号無視をしてそのまま交差点内に進入。これによる事故の基本となる過失割合は、0(A車両):100(B車両)です。つまり、B車両の信号無視という事故原因が、本事案の過失割合に影響したのです。
しかし、信号を守ったA車両にも、著しい過失や重過失があれば、その過失割合は0ではなく、10ないしは20%の過失割合ありと修正されてしまいます。著しい過失の例としては、事故原因ランキング第2位の脇見運転等による著しい前方不注視や、第5位の運転操作不適(ハンドル操作ミス等)が著しいことが挙げられます(重過失については詳細を割愛します)。
このように、事故原因は過失割合の決定に重大な影響を与えるのです。
交通事故が起きた原因については、弁護士に相談を
これまで見てきたとおり、交通事故の原因には様々なものがありました。
交通事故が起こってしまった場合、相手方と過失割合や損害賠償額についてハードな示談交渉をすることになりますが、そこで重要なポイントとなるのが、本記事でご説明してきた事故原因です。けれども、個別の事故原因が過失割合にどのように影響するのか、素人が見極めるのは非常に困難です。
そこで弁護士の出番です。
交通事故に精通した弁護士は、個別の事故原因や事故状況をきちんと把握した上で、相談者・依頼者に有利な形で解決できるよう適切なサポートをしてくれます。
交通事故問題でお悩みの場合には、専門家である弁護士に相談し、より納得できる形の解決を目指しましょう!
無料相談を活用し、十分な慰謝料獲得を
- 保険会社が提示した慰謝料・過失割合に納得が行かない
- 保険会社が治療打ち切りを通告してきた
- 適正な後遺障害認定を受けたい
- 交通事故の加害者が許せない