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同一労働同一賃金とは|正社員と非正規の待遇差への対応

この記事で分かること

  • 同一労働同一賃金は不合理な待遇差を禁じる考え方である
  • 仕事や責任の違いに応じた待遇差は合理的として認められる
  • 待遇は全体でなく一つひとつの要素ごとに合理性を見る
  • 賞与や手当や休暇などで待遇差が問題になりやすい
  • 見直しは差の洗い出しと理由の検討と是正の順で進める
  • 差の理由を説明できるようにし丁寧に伝えることが大切
  • 判断に迷えば企業法務にくわしい弁護士に相談する

同一労働同一賃金は、正社員とそうでない働き方の人との間で、不合理な待遇差を設けてはならないという考え方です。仕事や責任の違いに応じた差は認められますが、説明のつかない差は問題になります。待遇は一つひとつの要素ごとに合理性を見る必要があり、賞与や手当などで差が生じやすい点に注意が要ります。差の理由をあらかじめ整理し、働く人へ丁寧に説明することが、トラブルを防ぐうえで大切です。

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同一労働同一賃金とは|待遇差をめぐる考え方

同じような仕事をしているのに、正社員か、そうでないかによって、賃金や待遇に差がある。そうした状況は、これまで多くの職場で見られてきました。けれど、その差は本当に妥当なものなのでしょうか。近年、こうした待遇の差に厳しい目が向けられるようになりました。その背景にあるのが、同一労働同一賃金という考え方です。

同一労働同一賃金という言葉を、耳にしたことのある経営者の方は多いでしょう。しかし、それが具体的に何を求めているのか、自社は何に気をつければよいのかまでは、はっきりつかめていない、という方も少なくないはずです。まずは、この考え方が何を意味するのかという基本から、整理していきましょう。

同一労働同一賃金とは、正社員と、そうでない働き方をする人との間で、不合理な待遇の差を設けてはならない、という考え方をいいます。同じ会社のなかで、正社員と、パートや契約社員といった働き方の人とがいるとき、その待遇に、合理的な理由のない差があってはならない、というものです。働き方が違うというだけで、不当に低い待遇に置くことは許されない、という考え方が根底にあります。

この考え方は、決して特別なことを求めているわけではありません。同じ働きには同じように報いる、という、ごく素朴な公平さの感覚に根ざしています。もし自分が、同じ仕事をしているのに、雇われ方が違うというだけで低い待遇に置かれたら、と考えてみれば、その理不尽さは実感できるでしょう。同一労働同一賃金は、そうした素朴な公平さを、職場のなかで実現しようとするものなのです。

この素朴な公平さは、働く人の心にまっすぐ届くものです。理屈で説き伏せるまでもなく、多くの人が、それが当然だと感じるでしょう。だからこそ、不合理な待遇差は、働く人の納得を得にくく、放置すれば不満の種になります。会社が同一労働同一賃金に取り組むことは、この誰もが共有できる公平さの感覚に、正面から向き合うことなのだといえます。

もっとも、公平さの感覚に頼るだけでは、具体的な判断はできません。何が合理的で、何がそうでないかは、仕事の実態に即して、丁寧に見きわめる必要があります。素朴な感覚を出発点としつつ、そこから一歩踏み込んで、個々の待遇の合理性を具体的に検討していく。その両方があってはじめて、確かな見直しができるのです。

ここで大切なのは、あらゆる差が禁じられているわけではない、という点です。仕事の内容や責任の重さなどに違いがあれば、それに応じた待遇の差は認められます。問題とされるのは、あくまで「不合理な」差です。つまり、待遇に差をつけること自体がいけないのではなく、その差に合理的な説明がつかない場合が問題になる、ということです。この区別を、まず押さえておく必要があります。

言いかえれば、同一労働同一賃金が問うているのは、待遇の差そのものではなく、その差に納得のいく理由がつけられるかどうかです。仕事の中身も責任も違えば、待遇に差があってもおかしくありません。逆に、実態がほとんど同じなのに雇われ方だけで差をつけていれば、その差は説明が難しくなります。この「理由を説明できるか」という視点が、自社の待遇を点検するときの物差しになります。

この記事では、なぜ同一労働同一賃金が求められるのか、どんな差が問題になるのか、待遇差が問題になりやすいのはどんな場面か、そして会社はどう見直していけばよいのかまでを、弁護士の視点から順を追って見ていきます。自社の待遇のあり方を点検するうえでの、手がかりにしていただければと思います。

待遇の見直しと聞くと、身構えてしまう経営者の方もいるかもしれません。けれど、その本質は、自社の待遇に説明のつかない差がないかを点検し、あれば整えていく、というものです。決して、すべての待遇をそろえなければならない、という話ではありません。何が問われているのかを正しく理解すれば、必要以上に恐れることなく、落ち着いて向き合えるはずです。

なぜ同一労働同一賃金が求められるのか

同一労働同一賃金という考え方が広まってきた背景には、働き方をめぐる社会の変化があります。なぜ、こうした考え方が求められるようになったのか。その理由を知っておくと、この考え方の意味がより深く理解できます。背景を見ていきましょう。

かつては、正社員として長く一つの会社に勤める、という働き方が中心でした。しかし、時代とともに、パートや契約社員といった、さまざまな働き方が広がってきました。今では、そうした働き方の人が、職場の重要な戦力として活躍していることも珍しくありません。にもかかわらず、働き方が違うというだけで、待遇に大きな差があるのは公平とはいえない、という問題意識が高まってきたのです。

同じ仕事をし、同じように会社に貢献しているのに、雇われ方が違うというだけで待遇が低い。それでは、働く人の意欲も削がれてしまいますし、納得も得られません。働きに見合った待遇を保障することは、働く人の納得を得るうえでも、その力を十分に引き出すうえでも、大切なことだと考えられるようになりました。同一労働同一賃金は、こうした考え方を形にしたものだといえます。働く人が、自分は正当に扱われていると感じられるかどうかは、その働きぶりを大きく左右します。納得のいく待遇のもとでは、人は前向きに力を尽くせます。

働き方が多様になったということは、会社にとっても、さまざまな人材の力を活かせるということです。その力を十分に引き出すには、働きに見合った待遇で報いることが欠かせません。待遇に納得できなければ、どれだけ力のある人でも、その持てる力を存分には発揮できないでしょう。公平な待遇は、働く人のためであると同時に、会社が人材の力を活かすための土台でもあるのです。

会社にとっても、この考え方に取り組む意味は小さくありません。待遇の公平さが保たれている職場では、働く人が納得して力を発揮できます。逆に、不合理な待遇差があれば、不満がたまり、働く人の意欲が下がるだけでなく、トラブルの火種にもなりかねません。待遇のあり方を見直すことは、単なる義務としてだけでなく、健全な職場をつくるうえでも意義のあることなのです。

不合理な待遇差を放っておくと、それは職場に静かなひずみを生みます。低い待遇に置かれた人の不満は、口に出されないまま、少しずつ積み重なっていきます。そのひずみは、やがて意欲の低下や、人の離職といった形で表面化しかねません。待遇の公平さを保つことは、そうしたひずみを生まないための、目に見えにくいけれど大切な取り組みなのです。

問題となる「不合理な待遇差」とは

同一労働同一賃金で問題とされるのは、不合理な待遇差です。では、この「不合理な」差とは、どのようなものを指すのでしょうか。ここが、この考え方を理解するうえでの、最も大切なところです。じっくり見ていきましょう。

待遇に差があるかどうかを考えるとき、まず見るのは、仕事の内容や責任の重さ、働き方などに違いがあるかどうかです。正社員と、そうでない働き方の人とで、任される仕事の中身や、負う責任、配置転換の範囲などに違いがあれば、それに応じた待遇の差は、合理的なものとして認められます。差があること自体が問題なのではありません。

たとえば、正社員が、幅広い配置転換に応じたり、より重い責任を担ったりしているのであれば、その負担に見合った待遇の差は、合理的なものと考えられます。働き方や役割に実際の違いがある以上、それを待遇に反映すること自体は、不合理とはいえません。要は、差の大きさや内容が、その違いに見合ったものといえるか、という点が問われるのです。

問題になるのは、そうした違いによって説明できない差です。仕事の内容も責任もほとんど変わらないのに、雇われ方が違うというだけで待遇に差がある。そうした、合理的な理由で説明できない差が、不合理な待遇差として問題とされます。言いかえれば、その差に、誰もが納得できるような理由がつけられるかどうかが、判断の分かれ目になるということです。

ここで注意したいのは、待遇を全体としてまとめて比べるのではなく、一つひとつの待遇ごとに考える、という点です。基本の賃金、賞与、さまざまな手当、休暇など、待遇にはいろいろな要素があります。それぞれについて、なぜその差があるのか、その差に合理的な理由があるのかを、個別に見ていく必要があります。全体としてバランスがとれているから問題ない、という考え方では足りないのです。

この点は、とりわけ誤解されやすいところです。あの人は基本の賃金が低いぶん、別の面で報いているから全体では釣り合っている、といった考え方が通じるとはかぎりません。待遇の一つひとつには、それぞれ支給される理由があります。その理由に照らして、個々の待遇ごとに合理性が問われるのです。全体の帳尻が合っているかどうかとは、別の話だと理解しておく必要があります。

この「不合理かどうか」の判断は、実際にはとても難しいものです。何をもって合理的とするかは、仕事の実態や、待遇の性質によって変わってきます。自社の待遇に不合理な差がないかを見きわめるには、専門的な検討が欠かせません。判断に迷うときは、企業の法務にくわしい専門家に相談することをおすすめします。

待遇差が問題になりやすい場面

不合理な待遇差は、さまざまな待遇の要素をめぐって問題になりえます。どんな場面で問題になりやすいのかを知っておくと、自社の待遇を点検する際の手がかりになります。問題になりやすい待遇の要素を、いくつか見ていきましょう。

待遇差が問題になりやすい場面として、たとえば次のようなものが挙げられます。いずれも、待遇の重要な要素であり、正社員とそうでない人とで差がつきやすいところです。

  • 賞与について、働き方によって支給の有無や額に差がある場合。
  • 各種の手当について、一方には支給され、他方には支給されない場合。
  • 休暇について、取得できる範囲や条件に差がある場合。
  • 福利厚生の利用について、待遇に差が設けられている場合。

これらの待遇の要素について、正社員とそうでない人との間に差があるとき、その差に合理的な理由があるかどうかが問われます。とりわけ、手当のように、支給される理由がはっきりしているものについては、その理由が働き方の違う人にも当てはまるのに支給されていない、といった場合には、不合理な差と見られやすくなります。

大切なのは、それぞれの待遇について、なぜその差があるのかを、きちんと説明できるかどうかです。差があること自体が悪いのではなく、その差の理由を説明できないことが問題になります。自社の待遇を一つひとつ見直し、差の理由を整理しておくことが、点検の第一歩になります。説明のつかない差が見つかれば、それは見直しの対象になりえます。

差の理由を整理する作業は、自社の待遇を見つめ直すよい機会にもなります。ふだんは当たり前になっている待遇の差も、あらためて「なぜこの差があるのか」と問い直してみると、実ははっきりした理由がないまま続いていた、ということも少なくありません。惰性で続いてきた差に気づき、その根拠を見つめ直すこと。それ自体が、公平な待遇に向けた大切な一歩になります。

読者のなかには、「自社の待遇に、問題のある差がないだろうか」と気になった方もいるかもしれません。待遇の要素は多岐にわたり、一つひとつの合理性を判断するのは容易ではありません。不安を感じたら、自己判断で済ませず、専門家の目を通して点検してもらうと安心です。

自社では合理的だと思っている差でも、専門家の目で見れば、説明が難しいと判断されることもあります。逆に、問題があるのではと不安に思っていた差が、実は合理的な範囲だと分かって安心できることもあります。いずれにしても、思い込みで判断せず、専門的な視点から点検してもらうことで、自社の待遇の状況を、より確かにつかむことができます。

会社が待遇差を見直すときの考え方

自社の待遇に不合理な差があるかもしれない。そう気づいたとき、会社はどう見直していけばよいのでしょうか。やみくもに手をつけるのではなく、順序立てて進めることが大切です。見直しの進め方を見ていきましょう。

待遇の見直しは、おおむね次のような流れで進めていくことになります。一つずつ、着実に進めていくことが大切です。

  1. 正社員とそうでない人との間で、待遇にどんな差があるかを洗い出す。
  2. それぞれの差について、合理的な理由があるかを検討する。
  3. 合理的な理由の説明が難しい差については、是正を検討する。
  4. 見直した内容を、社内のきまりに反映し、周知する。

まず行うべきは、現状の把握です。正社員と、そうでない働き方の人との間に、どんな待遇の差があるのかを、一つひとつ洗い出します。基本の賃金、賞与、手当、休暇など、待遇の要素ごとに、どこにどんな差があるのかを、もれなく整理していきます。この現状把握が、見直しの出発点になります。

現状の洗い出しは、思いのほか手間のかかる作業です。待遇の要素は多く、しかも人によって適用されるものが異なることもあります。それでも、この作業を丁寧に行うことが、見直し全体の質を左右します。どこにどんな差があるのかが正確につかめていなければ、その先の検討も的外れになりかねません。急がば回れで、まずは現状を正確に把握することに力を注ぎたいところです。

次に、洗い出した差の一つひとつについて、合理的な理由があるかを検討します。その差は、仕事の内容や責任の違いによって説明できるのか。誰もが納得できる理由があるのか。こうした観点から、差の合理性を丁寧に見ていきます。ここで、理由の説明が難しい差が見つかれば、それは是正を考えるべき対象ということになります。

ここで焦って、いきなり大きな変更に踏み切る必要はありません。まずは、どこに説明の難しい差があるのかを見きわめ、優先順位をつけて、順に手をつけていけばよいのです。一度にすべてを完璧に整えようとすると、かえって混乱を招きます。落ち着いて、一つずつ着実に見直していく。その積み重ねが、確かな是正につながります。

合理性を検討する際には、その待遇が何のために設けられているのかを、あらためて考えることが役立ちます。たとえば、ある手当が、特定の負担に報いるために支給されているのであれば、同じ負担を負う人には、働き方が違っても支給されてしかるべき、という見方になります。待遇の目的にさかのぼって考えることで、その差が合理的かどうかが、見えやすくなるのです。

そして、是正が必要と判断した差については、待遇を見直していきます。見直しの内容は、社内のきまりにきちんと反映し、働く人に周知することが大切です。見直しの過程では、待遇の性質や、それを支える理由を丁寧に見きわめる必要があり、専門的な判断を要する場面も少なくありません。迷ったときは、専門家の力を借りながら進めるのが確実です。

是正といっても、必ずしも待遇を一律に引き上げることだけを意味するわけではありません。差の理由をより明確にすることで合理性を説明できるようにする、といった対応が考えられる場合もあります。どのような見直しがふさわしいかは、待遇の性質や差の理由によって変わってきます。画一的に考えるのではなく、個々の事情に応じた検討が求められるのです。

待遇差をめぐるトラブルを避けるために

待遇差は、扱いを誤ると、働く人との深刻なトラブルにつながりかねません。しかし、あらかじめ備えておけば、多くのトラブルは防げます。どうすれば余計な争いを避けられるのか、その工夫を見ていきましょう。日ごろの取り組みが、いざというときに生きてきます。

まず大切なのは、それぞれの待遇について、なぜその差があるのかを、きちんと説明できるようにしておくことです。待遇に差を設けるのであれば、その理由を明確にし、いつでも説明できる状態にしておく。そうしておけば、働く人から問われたときにも、納得のいく説明ができます。理由のあいまいな差は、不信やトラブルの温床になります。

注意
合理的な理由の説明がつかない待遇差を放置すると、法律上の問題を招くおそれがあります。後になって差の是正を求められたり、働く人との関係が悪化したりすることにもなりかねません。待遇差の理由は、あらかじめ整理し、説明できるようにしておくことが大切です。

次に、働き方の違う人にも、待遇の内容やその理由を、ていねいに伝えることが大切です。自分の待遇がなぜこうなっているのかが分からないままでは、働く人は不満を抱きやすくなります。待遇の考え方をきちんと説明し、理解を得る努力を重ねることで、無用な行き違いを防げます。説明を尽くす姿勢が、信頼を保つ土台になります。

説明を尽くすことは、手間のかかることかもしれません。しかし、その手間を惜しんで一方的に進めれば、たとえ待遇そのものが妥当でも、進め方への不満が残ります。逆に、丁寧に説明を重ねれば、多少の差があっても、働く人は納得しやすくなります。何を決めるかと同じくらい、どう伝え、どう理解を得るかが、待遇をめぐっては大切なのです。

待遇についての説明は、一方的な通告であってはなりません。働く人の疑問や不満に耳を傾け、それに丁寧に答えていく双方向のやりとりが大切です。自分の声が聞き入れられていると感じられれば、働く人の納得は深まります。反対に、説明という名の押しつけに終われば、かえって不信を招きかねません。伝えることと、聴くこと。その両方を大切にしたいところです。

また、待遇に関する定めを、社内のきまりとして整えておくことも欠かせません。誰にどんな待遇を適用するのか、その理由は何かを、きまりとして明確にしておく。そうすれば、対応がぶれずにすみ、公平さも保たれます。あいまいな運用は、人によって扱いがまちまちになり、不公平だという不満を招きます。きまりを整えることが、公平な待遇の土台になるのです。きまりとして明文化されていれば、担当者が変わっても、対応の一貫性が保たれます。

社内のきまりは、いわば待遇の設計図のようなものです。設計図がしっかりしていれば、建物が傾くことはありません。同じように、待遇のきまりが整っていれば、対応が場当たり的になることも、人によって扱いがぶれることもありません。きまりを整えるという地道な作業が、公平な待遇を長く保つための、確かな土台になるのです。

会社が取り組むべきことと専門家の活用

ここまで、同一労働同一賃金の考え方と、トラブルを避けるための工夫を見てきました。最後に、会社としてどう取り組んでいけばよいか、そして専門家をどう活かせばよいかを整理しておきましょう。前向きに取り組むことが、健全な職場につながります。

まず心がけたいのは、待遇のあり方を、折にふれて点検することです。一度見直して終わり、というものではありません。仕事の内容や働き方は、時とともに変わっていきます。それに伴って、これまで合理的だった差が、そうでなくなることもあります。定期的に待遇を見直し、実態に合った公平なものに保っていく姿勢が求められます。

とりわけ、組織の体制を変えたときや、働き方の制度を見直したときは、待遇の点検の好機です。仕事の割り振りや役割が変われば、それまで合理的だった差の前提も変わります。大きな変化があったときには、待遇のあり方もあわせて見直す。そうした習慣を持っておくと、待遇の不合理な差が、知らぬ間に生じてしまうのを防げます。

待遇の差は、意図してつくられるとはかぎりません。制度を少しずつ変えていくうちに、気づけば説明のつかない差が生じていた、ということも起こりえます。だからこそ、折にふれて全体を見渡し、差が生じていないかを確かめる習慣が役立ちます。定期的な点検は、そうした無自覚な差を早めに見つけ、正すための備えになるのです。

次に、待遇の見直しは、専門的な判断を要することを踏まえ、無理に自社だけで抱え込まないことです。何が不合理な差にあたるのかの判断は、簡単ではありません。あいまいなまま進めて、後で問題が見つかれば、かえって大きな手間がかかります。判断に迷う点は、専門家に確かめながら進めるのが、結局は確実で安心なのです。

専門家に相談することは、単に問題を避けるためだけのものではありません。自社の待遇のどこに強みがあり、どこに見直しの余地があるのかを、客観的につかむ機会にもなります。第三者の視点が入ることで、内側からは見えにくかった点にも気づけます。専門家の力は、守りのためだけでなく、よりよい待遇づくりを前に進めるうえでも役立つのです。

また、同一労働同一賃金への取り組みを、前向きにとらえることも大切です。待遇の公平さを整えることは、働く人の納得と意欲を高め、職場を健全にすることにつながります。義務として渋々取り組むのではなく、よりよい職場をつくる機会としてとらえれば、その取り組みは会社の力にもなっていきます。見直しは、会社を強くする営みでもあるのです。

公平な待遇が根づいた職場では、働き方の違う人どうしの間に、無用なわだかまりが生まれにくくなります。それぞれが、自分の待遇に納得して働けるからです。そうした職場では、立場を超えて力を合わせやすく、組織としてのまとまりも生まれます。待遇の見直しは、こうした一体感のある職場づくりにもつながっていく。そう考えれば、その取り組みの意義は、いっそう大きく感じられるはずです。

待遇のあり方の点検や見直しに不安があるときは、企業の法務にくわしい弁護士に相談することをおすすめします。専門家の力を借りれば、不合理な差の有無を的確に見きわめられますし、見直しや社内のきまりの整備も、法律の要請に沿った形で進められます。日ごろから相談できる関係を築いておくと、待遇をめぐる問題にも落ち着いて対応できます。

同一労働同一賃金に関するよくある質問

正社員と非正規で待遇に差をつけること自体が、問題なのですか

待遇に差をつけること自体が問題なのではありません。問題とされるのは、合理的な理由で説明できない不合理な差です。仕事の内容や責任の重さ、働き方などに違いがあれば、それに応じた待遇の差は認められます。大切なのは、その差に、誰もが納得できる合理的な理由があるかどうかです。差の理由を説明できるようにしておくことが、対応の基本になります。

ただし、合理的な理由があるかどうかは、会社が「ある」と思えばよい、というものではありません。誰が見ても納得できるだけの、客観的な説明がつくかどうかが問われます。会社の一方的な言い分だけでは、合理的な理由とは認められないこともあります。差を設けるのであれば、その理由を、客観的に説明できる形で整理しておくことが大切です。

どんな待遇について、待遇差が問題になりやすいですか

賞与や各種の手当、休暇、福利厚生の利用など、さまざまな待遇の要素について問題になりえます。とりわけ、支給される理由がはっきりしている手当などは、その理由が働き方の違う人にも当てはまるのに支給されていない場合、不合理な差と見られやすくなります。待遇は全体でまとめてではなく、一つひとつの要素ごとに、差の合理性を考える必要があります。

手当のなかには、その名目からして、支給の理由がはっきりしているものがあります。そうした手当について、同じ事情にある人に支給されていなければ、その差は説明が難しくなりがちです。自社の手当について、それぞれ何のために支給しているのかを見直し、その理由が働き方の違う人にも当てはまらないかを、点検してみるとよいでしょう。

自社の待遇を見直すには、何から始めればよいですか

まずは、正社員とそうでない働き方の人との間に、どんな待遇の差があるかを洗い出すことから始めます。そのうえで、それぞれの差に合理的な理由があるかを検討し、説明の難しい差については是正を考えます。見直した内容は、社内のきまりに反映し、周知します。判断が難しい場面も多いため、専門家に確認しながら進めると安心です。

待遇差の扱いで不安があるときは、どこに相談すればよいですか

自社の待遇に不合理な差がないか、どう見直せばよいかで判断に迷うときは、企業の法務にくわしい弁護士に相談することをおすすめします。放置すると、後からの是正の求めや、働く人とのトラブルを招きかねません。平時から相談できる体制を整えておけば、待遇をめぐる問題が生じたときにも、慌てず適切に対応を進めやすくなります。

待遇をめぐる問題は、いったんこじれると、解決に大きな労力を要します。だからこそ、問題が大きくなる前の、早い段階で手を打つことが肝心です。日ごろから相談できる相手がいれば、気になる点をその都度確かめられ、芽のうちに対処できます。そうした継続的な備えが、深刻なトラブルを未然に防ぐことにつながっていくのです。

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