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相続税対策|生前にできる節税方法と注意点を解説

この記事で分かること

  • 2024年税制改正後の最新ルール(暦年贈与7年加算・相続時精算課税110万円控除)
  • 効果が大きい主要4方法(生命保険・相続時精算課税・暦年贈与・小規模宅地等)の具体的な活用法
  • 財産規模が大きい家庭で追加検討する補助6方法と、その実用性
  • 財産規模別(5,000万〜1億円/1〜3億円/3億円超)の対策の優先順位
  • 失敗パターン3つ(家族関係悪化/税務署否認/対策の手遅れ)と専門家への相談タイミング

2024年税制改正後の暦年贈与7年加算・相続時精算課税110万円基礎控除、効果の大きい主要4方法(生命保険・相続時精算課税・暦年贈与・小規模宅地特例)の活用法、補助6方法(住宅資金・おしどり・結婚子育て資金・養子縁組・不動産活用など)、財産規模別の対策優先順位、令和4年最高裁判決を踏まえた失敗パターン3つ、税理士を中心とした専門家チームの組み方までを、実務目線で整理した解説です。

相続税対策を始める前に、知っておくべき大前提

「親の遺産が大きいので、相続税が心配」「自分が亡くなったときに家族に重い税負担を残したくない」と考えて、相続税対策の情報を探し始める方は多いです。ネット検索をすれば「10の節税方法」「節税テクニック完全ガイド」のような記事が大量に出てきますが、自分の財産規模や家族構成で何が有効なのかは、なかなか見えてきません。

結論から言えば、相続税対策には絶対の正解はなく、(1)財産規模、(2)家族構成、(3)対策に使える期間、(4)対策にかけられる手間と費用、の組み合わせで効果のある方法が決まります。財産5,000万円の家庭で有効な方法と、3億円の家庭で有効な方法は、まったく異なります。

本記事は、(1)2024年税制改正後の最新ルール、(2)効果が大きく多くの家庭で使える主要4方法の深掘り、(3)財産規模が大きい家庭で追加検討する補助的な6方法、(4)財産規模別の対策の優先順位、(5)失敗しがちな落とし穴と専門家への相談のタイミング、までを解説します。10個の方法を平等に並べるのではなく、効果の大きさと使いやすさで優先順位を付けて整理します。

2024年税制改正で何が変わったか、最新ルールを押さえる

相続税対策を考える上で、まず押さえるべきは2024年(令和6年)1月に施行された税制改正です。多くの記事は改正前の情報のままになっているため、注意が必要です。

変更点1:暦年贈与の相続税への加算期間が3年から7年に延長

最も大きな変更点が、暦年贈与の生前贈与加算の延長です。改正前は、被相続人の死亡前3年以内の贈与のみ相続財産に加算されていましたが、改正後は7年以内の贈与が加算対象になります。

ただし、影響を緩和するため、延長された4〜7年前の贈与については、合計100万円までは加算対象外とする経過措置があります。完全に7年加算になるのは、2031年1月1日以降に発生する相続からで、それまでは段階的に加算期間が伸びていく仕組みです。

この変更により、暦年贈与の節税効果は薄れました。早い段階(被相続人の健康状態が良いうち)から計画的に贈与を始める必要性が、より高まっています。

変更点2:相続時精算課税に年110万円の基礎控除が新設

もう一つの大きな変更が、相続時精算課税制度への年110万円の基礎控除の新設です。

相続時精算課税は、60歳以上の親・祖父母から18歳以上の子・孫への贈与について、累計2,500万円までを非課税にする一方、贈与者の死亡時に贈与財産を相続財産に加算する制度です。改正前はこの加算が「すべての贈与」を対象としていたため、節税効果が限定的でした。

2024年改正により、年110万円までの贈与は基礎控除の対象となり、相続財産への加算も贈与税の申告も不要になりました。これは暦年贈与の年110万円非課税枠と同じ水準ですが、決定的に違うのは「7年加算の対象外」である点です。

結果として、相続時精算課税制度の年110万円基礎控除は、暦年贈与より優れた節税手段になり得るケースが増えました。長期間の計画的贈与を予定している場合は、相続時精算課税の活用を真剣に検討する場面です。

変更点3:その他の主な改正

細かい変更として、(1)教育資金一括贈与の特例は令和8年(2026年)3月31日をもって終了し、現在は新規利用不可(同日までに契約した既存口座は継続利用可)、(2)結婚・子育て資金一括贈与の特例の延長(令和9年3月31日まで)、(3)事業承継税制の特例措置の期限(特例承継計画の提出期限が令和8年3月末まで、適用は令和9年12月31日まで)、などがあります。

これらは利用条件・期限・対象財産が複雑なため、活用を検討する場合は税理士への相談が前提になります。

相続税対策の主要4方法|効果が大きく、多くの家庭で使える

ここからは、効果が大きく、多くの家庭で活用できる主要な4つの方法を深掘りします。これらは財産5,000万円から数億円規模まで、幅広く効果のある対策です。

方法1:生命保険の非課税枠を最大限活用する

最も手軽で効果の大きい対策が、生命保険の活用です。相続税法上、被相続人が契約者・被保険者で、相続人が受取人となる生命保険金には、500万円×法定相続人の数の非課税枠があります。

具体例で見ます。配偶者と子2人が相続人の場合、非課税枠は500万円×3=1,500万円。被相続人が1,500万円の終身保険に加入し、保険金受取人を相続人にしておけば、その1,500万円は相続財産から除外されます。仮に相続税率が30%の家庭なら、450万円(1,500万円×30%)の節税効果が出る計算です。

活用のポイントは3つあります。第1に、加入する保険の種類は「終身保険」が基本です。定期保険だと一定期間後に保障がなくなり、被相続人の高齢期に保険金が出ない事態になります。第2に、保険料の支払いは「一時払い」が効率的です。被相続人の財産を一時払いの保険料に置き換えることで、即座に相続財産を圧縮できます。第3に、受取人指定は配偶者よりも子にする方が、二次相続まで考えると有利になるケースが多いです。

注意点として、被相続人の年齢が高い場合は、新規の生命保険加入が難しいことがあります。70代後半以降は加入できる保険が限られたり、健康状態の告知が厳しくなったりします。生命保険の活用は、可能な限り早期(60代までが望ましい)に検討を始める対策です。

方法2:相続時精算課税の年110万円基礎控除を活用する

2024年改正で大きく変わったのが、この相続時精算課税制度です。改正後は、年110万円までの贈与が基礎控除の対象となり、贈与税の申告不要、かつ相続財産への加算対象外になりました。

具体例で見ます。65歳の親から30歳の子へ、毎年110万円ずつ20年間贈与した場合、累計2,200万円が相続財産から除外されます。仮に相続税率が30%の家庭なら、660万円の節税効果が出ます。

暦年贈与との比較で、相続時精算課税が有利になる主なケースは、(1)被相続人の年齢が比較的高く、7年以内の死亡可能性が高い、(2)長期間の計画的贈与を予定している、(3)将来値上がりが見込まれる財産を贈与する(贈与時の評価額で固定されるため)、です。

逆に注意点もあります。第1に、相続時精算課税を一度選択すると暦年贈与に戻せません。同じ贈与者からの贈与は、その後すべて相続時精算課税で処理する必要があります。第2に、110万円を超える贈与は、累計2,500万円までは非課税ですが、相続時に相続財産に加算されます。年110万円基礎控除の枠内で長期間使うのが、改正後の有効活用法です。第3に、2024年1月1日以降の贈与から適用されるため、それ以前の贈与は旧制度のルールで処理されます。

方法3:暦年贈与を計画的に活用する(改正後の使い方)

2024年改正で加算期間が3年から7年に延長された暦年贈与ですが、依然として節税の中心的な手段の一つです。改正後の使い方を整理します。

暦年贈与は、年110万円までの贈与には贈与税がかかりません。これを複数人(配偶者・子・孫・子の配偶者など)に長期間続けることで、相続財産を計画的に圧縮できます。

具体例で見ます。被相続人(70歳)が、子2人と孫4人の計6人に、毎年110万円ずつ10年間贈与した場合、累計6,600万円(110万円×6人×10年)が相続財産から除外されます。仮に相続税率が30%の家庭なら、1,980万円の節税効果です。

ただし、被相続人が77歳以降に贈与した分は、7年加算ルールにより相続財産に戻されます。被相続人の年齢と健康状態を踏まえて、早期着手するほど効果が大きくなる仕組みです。

注意点として、(1)毎年同じ時期に同じ金額を贈与し続けると、税務署から「定期贈与」(契約済みの金額を毎年分割しているだけ)と認定されるリスクがあります。贈与の時期や金額を少し変える、贈与契約書を毎年作成する、などの対応が必要です。(2)孫への贈与は、被相続人の死亡時に孫が相続人でなければ7年加算の対象外になります。これは孫贈与の大きなメリットです。

暦年贈与と相続時精算課税は併用できないため(同じ贈与者からの贈与)、どちらを選ぶかは、被相続人の年齢、健康状態、贈与する財産の種類、贈与の継続期間、で判断します。

方法4:小規模宅地等の特例で土地評価を大幅減額する

被相続人の自宅や事業用土地に対する、強力な評価減の特例が「小規模宅地等の特例」です。一定の要件を満たす土地について、相続税評価額を最大80%減額できます。

特例の対象となる土地は3種類です。第1に、特定居住用宅地(被相続人が住んでいた自宅の土地)で、330平米まで80%減額。第2に、特定事業用宅地(被相続人が事業に使っていた土地)で、400平米まで80%減額。第3に、貸付事業用宅地(被相続人が賃貸していた土地)で、200平米まで50%減額。

具体例で見ます。被相続人の自宅の土地(評価額4,000万円、200平米)を配偶者または同居の子が相続し、特定居住用宅地の要件を満たせば、評価額が4,000万円×(1-0.8)=800万円に圧縮されます。3,200万円の評価減で、相続税率30%なら960万円の節税効果です。

適用要件は、土地の種類により異なります。特定居住用宅地の場合、(1)配偶者が取得する、(2)同居していた親族が取得して引き続き居住・所有する、(3)別居でも一定の要件を満たす親族(いわゆる「家なき子」特例)が取得する、のいずれかが必要です。「家なき子」特例は、被相続人に配偶者・同居親族がいないこと、取得者が過去3年以内に自己または親族の所有する家屋に居住していないこと、などの要件があり、適用判断が複雑です。

注意点として、(1)相続税の申告期限(10か月)までに、原則として遺産分割が完了している必要があります。未分割のまま申告すると特例が適用されず、後日の修正申告で適用を受ける形になります。(2)特例適用後の相続税が0円になる場合でも、申告自体は必要です。申告しないと特例が適用されません。(3)複数の土地がある場合、限度面積の調整計算が必要で、税理士の関与が事実上必須です。

小規模宅地等の特例は、要件を満たせば極めて効果が大きい一方、判断ミスで適用漏れになるリスクもあるため、相続開始前から税理士と協議し、相続時の取得者を計画的に決めておくことが推奨されます。

補助的な6つの方法|財産規模が大きい家庭で追加検討する

主要4方法に加えて、財産規模が大きい家庭、または特定の状況にある家庭で効果のある6つの方法を紹介します。これらは適用条件や手間が大きく、税理士との連携が前提になります。

方法5:住宅取得等資金贈与の特例(子・孫への住宅資金贈与)

父母・祖父母から18歳以上の子・孫への住宅取得資金の贈与について、一定額まで非課税にする特例です。2024年以降は、省エネ等住宅で1,000万円まで、それ以外の住宅で500万円までが非課税枠の標準です。

活用ポイントは、子・孫の住宅取得時期と合わせて計画する点です。住宅購入を予定している子・孫がいるなら、暦年贈与の年110万円とは別枠で活用できるため、節税効果が大きくなります。例えば、子の住宅購入時に500万円を贈与すれば、暦年贈与+住宅資金贈与で年610万円までが非課税になります。

注意点として、(1)贈与を受けた年の翌年3月15日までに居住することが要件、(2)床面積など住宅自体に要件がある、(3)贈与税の申告が必要(非課税でも申告必須)、です。要件を満たさないと特例が適用されず、通常の贈与税が課税されます。

方法6:配偶者への居住用不動産贈与の特例(おしどり贈与)

婚姻期間20年以上の配偶者間で、居住用不動産(または取得資金)を贈与する場合、2,000万円まで贈与税が非課税になる特例です。暦年贈与の基礎控除110万円と合わせて、年2,110万円までを一括で配偶者に贈与できます。

この特例の最大のメリットは、配偶者への居住用不動産の贈与は、相続税の生前贈与加算(7年加算)の対象外になる点です。被相続人の死亡直前であっても、この特例を使った贈与は加算されません。

活用シーンは、(1)被相続人の主な財産が自宅で、配偶者の老後の生活基盤として自宅を確実に確保したい、(2)将来の遺産分割で配偶者と子の意見対立を予防したい、(3)被相続人の健康状態が悪化し、相続が近い見込みの状況、などです。

注意点として、(1)同一の配偶者からの特例適用は一生に一度のみ、(2)贈与税は非課税でも不動産取得税・登録免許税はかかる(取得税は3%、登録免許税は2%が標準)、(3)2,000万円を超える部分には通常の贈与税が課税される、です。

方法7:教育資金一括贈与の特例(令和8年3月で終了)

父母・祖父母から30歳未満の子・孫への教育資金の贈与について、1,500万円まで非課税にする特例ですが、本制度は令和8年(2026年)3月31日をもって終了しました。新規の口座開設・贈与契約は現在できません。

ただし、令和8年3月31日までに教育資金管理契約を締結している場合は、引き続き本制度の適用を受けられます。既存契約の利用条件として、(1)金融機関で開設した専用口座から教育費を支出する、(2)受贈者が30歳になった時点で残額があると贈与税が課税される、(3)贈与者の死亡時に残額があると、原則として相続財産に加算される、というルールが続きます。

本制度の終了後、教育資金を贈与する選択肢は、(1)暦年贈与の年110万円基礎控除を活用する、(2)必要な都度の教育費の援助(扶養義務の範囲内であれば贈与税の対象外)、(3)相続時精算課税の年110万円基礎控除(2024年改正で新設)、などです。実際の教育費を都度支援する方法でも、贈与税はかからないことが多いため、本特例の終了による実害は限定的です。

方法8:結婚・子育て資金一括贈与の特例

父母・祖父母から18歳以上50歳未満の子・孫への結婚・子育て資金の贈与について、1,000万円まで非課税にする特例です(令和9年3月31日まで延長中)。結婚関連は300万円が上限です。

教育資金一括贈与と同様、金融機関で専用口座の開設が必要で、手続きが煩雑です。受贈者が50歳になった時点で残額があると贈与税が課税されます。

活用シーンは限定的で、結婚・出産・育児にまとまった資金支援を予定しており、暦年贈与では時間的に間に合わない場合の選択肢になります。本制度も、必要な都度の援助(扶養義務の範囲内)であれば贈与税は元々かからないため、一括贈与する明確な事情がない限り、暦年贈与や都度支援の方が手続き面で簡便です。

方法9:養子縁組による法定相続人の追加

法定相続人を増やすことで、(1)基礎控除(3,000万円+600万円×法定相続人)を拡大する、(2)生命保険の非課税枠(500万円×法定相続人)を拡大する、(3)相続税の累進税率の適用区分を有利にする、という効果が得られます。

具体例で見ます。配偶者と子1人の家庭が、孫1人と養子縁組すると、法定相続人は3人になります。基礎控除は4,200万円(子1人時)から4,800万円に増え、生命保険非課税枠も1,000万円から1,500万円に増えます。

ただし、相続税の計算上は養子の数に制限があります。被相続人に実子がいる場合は養子1人まで、実子がいない場合は養子2人まで、法定相続人として算入できます。3人以上の養子を取っても、相続税の計算では使えません。

注意点として、(1)養子縁組は税務上の目的だけでなく、親子関係を実際に作る法律行為で、相続関係に長期的な影響があります。(2)孫を養子にした場合、相続税が2割加算されるため、節税効果が完全には出ない場合があります。(3)家族間の感情的トラブルにつながるリスクもあります。

家族関係に十分配慮した上で、税理士と弁護士の両方の助言を得て進めるべき対策です。

方法10:不動産による相続税評価額の圧縮

現金1億円より、不動産1億円(時価)の方が、相続税の評価額が低くなる仕組みを利用した節税です。

不動産の相続税評価額は、土地が路線価方式または倍率方式で評価され、時価の70〜80%程度になります。建物は固定資産税評価額で評価され、時価の60〜70%程度です。賃貸不動産はさらに、貸家建付地評価・貸家評価により評価が下がります。

具体例で見ます。現金1億円を保有していると、相続税評価額は1億円。これを1億円の賃貸マンション(土地6,000万円+建物4,000万円)に換えた場合、土地の評価は4,800万円程度(路線価で約8割)、建物は2,800万円程度(固定資産税評価)、さらに貸家建付地・貸家評価で各2割減程度、最終的に約6,000万円程度の評価額になります。4,000万円の評価減で、相続税率30%なら1,200万円の節税効果です。

ただし、不動産による節税には大きなリスクがあります。第1に、不動産価格の変動リスクで、購入価格が値下がりすれば節税以上の損失が出ます。第2に、賃貸経営のリスク(空室・修繕費・テナントトラブル)があります。第3に、流動性が低く、相続人が現金化したくても時間がかかります。第4に、過度な節税目的の不動産取得は、税務署から「相続税対策のみが目的」と認定され、特例が適用されない判例も出ています(令和4年最高裁判決など)。

節税効果だけで判断せず、不動産投資としての合理性、賃貸需要、長期的な保有計画を含めて、慎重な検討が求められる対策です。

財産規模別に見る、対策の優先順位

ここまで主要4方法と補助的6方法を見てきました。実際にどれを選ぶかは、財産規模・家族構成で大きく変わります。財産規模別に優先順位を整理します。

財産規模5,000万円〜1億円|主要4方法で十分なケースが多い

財産規模5,000万円から1億円程度の家庭では、相続税の基礎控除(配偶者+子2人で4,800万円、子のみ2人で4,200万円)を超える分について、効率的に対策を進めます。

優先順位は、(1)生命保険の非課税枠の活用(500万円×法定相続人)を最大限使う、(2)小規模宅地等の特例の適用要件を整える(自宅の取得者を計画的に決める)、(3)暦年贈与を計画的に開始する(被相続人の年齢が高い場合は、相続時精算課税の年110万円基礎控除も検討)、です。

この財産規模では、主要4方法だけで十分な節税効果が得られるケースが多いです。住宅資金贈与は、子・孫の人生計画と合わせて活用できるなら追加検討します。教育資金については、本特例(教育資金一括贈与)は令和8年3月で終了したため、暦年贈与や都度支援の活用が中心になります。養子縁組や不動産による評価圧縮は、家族関係を変える・流動性が下がるなどのコストが大きいため、優先度は低めです。

税理士への依頼費用は、相続税申告で25万〜50万円、生前対策のコンサルティングで20万〜50万円程度。費用対効果の観点では、節税効果が費用を十分に上回るケースが多いです。

財産規模1億〜3億円|主要4方法+補助方法の併用が効果的

財産規模1億円から3億円の家庭では、主要4方法に加えて、補助的な方法も組み合わせて活用します。

優先順位は、(1)主要4方法を最大限使う、(2)配偶者へのおしどり贈与で配偶者の生活基盤を確保しつつ財産を移転する、(3)住宅取得等資金贈与で子・孫の住宅購入と合わせて贈与する、(4)結婚・子育て資金一括贈与で孫世代への財産移転を計画する(令和9年3月31日まで)、(5)必要に応じて養子縁組も検討する、です。

この財産規模では、二次相続(配偶者の死亡後の相続)まで見据えた対策が重要になります。一次相続で配偶者の取得を多くしすぎると、二次相続で相続税が増える可能性があるため、税理士による試算が不可欠です。

税理士への依頼費用は、相続税申告で50万〜100万円、生前対策のコンサルティングで30万〜100万円程度。長期的な対策計画を立てるなら、複数年契約での顧問契約も選択肢になります。

財産規模3億円以上|事業承継・国際相続を視野に入れた専門対策

財産規模3億円を超える家庭では、相続税の最高税率55%が現実的に適用される財産が出てきます。この規模になると、主要・補助の10方法だけでは対応しきれない部分が出てきます。

追加で検討すべき対策は、(1)事業承継税制の活用(オーナー経営者の場合)、(2)資産管理会社の設立による財産の法人化、(3)国際相続を視野に入れた対策(海外資産・海外居住者がいる場合)、(4)家族信託・民事信託の活用、(5)信託銀行を活用した遺産整理・遺言信託、などです。

事業承継税制の特例措置は、令和9年12月31日までの相続が対象で、特例承継計画の提出期限は令和8年3月末です。事業承継を予定する経営者には、極めて重要な期限です。

この財産規模では、税理士1人での対応は困難で、税理士+弁護士+(必要に応じて)司法書士・公認会計士の連携が前提になります。年間の専門家費用は100万〜500万円程度、または成果報酬型での契約になることもあります。

対策の落とし穴と、避けるべき失敗パターン

相続税対策で失敗する典型的なパターンを、3つ整理します。

落とし穴1:節税だけを追求し、家族関係を悪化させる

最も多い失敗が、節税効果を追い求めるあまり、家族関係に亀裂を入れるケースです。具体例として、(1)特定の子だけに多額の生前贈与をして、他の子が遺留分侵害を主張、(2)養子縁組で孫を養子にした結果、子の感情的な反発を招く、(3)不動産の集中相続で、相続人間の格差が大きくなり遺産分割で対立、などがあります。

節税効果と家族関係のバランスを取るには、(1)生前贈与は子全員に公平に行う、(2)遺言書で意思を明確にする、(3)生命保険を活用して特定の相続人に直接渡せる仕組みを作る、などの工夫が有効です。

落とし穴2:税務署に「節税のみが目的」と認定されるリスク

近年、過度な相続税対策が税務署に否認される判例が増えています。最も有名なのが、令和4年4月の最高裁判決で、相続税対策として高額な賃貸不動産を購入した事案で、路線価評価が否定され時価評価(購入価格に近い金額)で課税された事例です。

否認されやすい典型は、(1)被相続人の死亡直前(数か月〜1年以内)に大規模な不動産投資を行った、(2)被相続人の年齢・健康状態から見て、節税以外の合理性が乏しい取引、(3)取引後すぐに相続人が不動産を売却している、などです。

税務署に否認されないためには、(1)相続税対策は早期(被相続人が健康な時期)から始める、(2)節税以外の合理性(賃貸経営の継続、家族の居住、事業承継など)を確保する、(3)税理士と相談しながら、過度なリスクを避ける、ことが大切です。

落とし穴3:対策が間に合わず、効果が出ない

相続税対策は時間が味方になる仕組みです。暦年贈与は加算期間(7年)を超える分が節税効果として残るため、被相続人の死亡まで7年以上の期間が必要になります。生命保険も、被相続人の年齢が高くなると加入できる保険が限られます。

失敗パターンは、被相続人が80歳を超えてから対策を考え始め、暦年贈与しても7年加算で全額相続財産に戻される、生命保険にも加入できない、というケースです。この場合、有効な対策は小規模宅地等の特例の活用、相続時精算課税の年110万円基礎控除、配偶者へのおしどり贈与、などに限られます。

理想は、被相続人が60代のうちから対策を始めることです。70代でも遅くはありませんが、80代以降は手段が大きく制限されます。「対策はまだ早い」と先送りせず、健康なうちから計画を始める姿勢が大切です。

専門家への相談タイミング|誰に・いつ・何を相談するか

相続税対策は、自分一人で完結する範囲には限界があります。税理士、弁護士、司法書士、金融機関の各専門家の役割と、相談のタイミングを整理します。

税理士|相続税対策の中心、最初に相談すべき専門家

相続税対策で最初に相談すべきは、税理士です。財産規模が相続税の基礎控除(3,000万円+600万円×法定相続人)を超える、または将来超える可能性がある段階で、税理士の関与を開始します。

税理士が扱う相続税対策の範囲は、(1)現在の財産評価と相続税の試算、(2)生前贈与の計画立案(暦年贈与、相続時精算課税、各種特例の組み合わせ)、(3)小規模宅地等の特例の適用準備、(4)生命保険の活用設計、(5)二次相続まで見据えた長期的な税負担最適化、です。

税理士への相談料は、初回30分から1時間で5,000円〜1万円程度、または初回無料の事務所もあります。生前対策のコンサルティング料は、財産規模により20万〜100万円程度。相続税申告まで含めると、遺産総額の0.5〜1.0%が標準的です。

税理士を選ぶときの注意点は、相続税申告に習熟しているかどうかです。税理士は税務全般を扱うため、所得税・法人税中心の事務所だと相続税の経験が浅いことがあります。確認ポイントは、(1)相続税申告の年間件数(10件以上が一つの目安)、(2)相続専門を謳う事務所か、(3)書面添付制度を活用しているか、です。

弁護士|紛争予防、遺言書作成、遺留分対策で関与

相続税対策に並行して必要になるのが、紛争予防と遺言書の作成です。相続税対策で財産配分が偏ると、遺留分侵害の問題が発生しやすいため、弁護士の関与が不可欠になる場面があります。

弁護士が扱う相続税対策との関連業務は、(1)遺言書の作成支援(公正証書遺言)、(2)遺留分に配慮した財産配分の設計、(3)養子縁組の法的判断、(4)家族信託・民事信託の組成、(5)将来の遺産分割協議で揉めないための家族間調整、です。

弁護士への相談タイミングは、(1)遺言書を作成する、(2)財産配分で家族間の意見対立が予想される、(3)養子縁組を検討する、(4)複雑な家族信託を組成する、などの場面です。

税理士と弁護士が連携できる事務所、または相互に紹介し合う体制が整っているかは、専門家選びの大切な観点です。

司法書士|不動産の名義変更・登記関連

不動産が主な財産で、生前に名義変更や登記を伴う対策をする場合は、司法書士の関与が必要です。

具体的な業務は、(1)配偶者へのおしどり贈与の登記、(2)生前の不動産売却・購入の登記、(3)家族信託の登記、(4)将来の相続登記の準備、です。

司法書士への費用は、登記1件あたり5万〜10万円程度。複数の不動産を扱う場合は、案件ごとに見積もりを取ります。

金融機関|遺言信託・資産運用との一体的対策

信託銀行や大手銀行は、相続税対策と資産運用の一体的なサービスを提供しています。具体的には、(1)遺言信託(遺言書の保管+執行)、(2)生命保険商品の販売(税対策に特化した一時払い終身保険など)、(3)家族信託の組成支援、(4)資産運用と相続対策の総合提案、です。

金融機関の強みは、ワンストップで複数の対策をパッケージ化できる利便性です。費用は他の士業より割高ですが、複数の専門家を個別に探す手間を省けます。

ただし、金融機関が販売する商品は自社の利益にもつながるため、本当に依頼者にとって最適な提案かは、別途税理士のセカンドオピニオンを取ることが推奨されます。

ベストな組み合わせ

財産規模・家族構成によって組み合わせは変わりますが、典型的な体制は次の通りです。

財産5,000万円〜1億円なら、税理士1人で対応可能なケースが大半。必要に応じて司法書士に登記を依頼。

財産1億〜3億円なら、税理士+弁護士の連携が標準。司法書士と金融機関は補助的に活用。

財産3億円以上なら、税理士+弁護士+(必要に応じて)司法書士+金融機関のチーム対応。事業承継絡みなら公認会計士も加わります。

読者へのまとめ|相続税対策で今日から始めるべきこと

本記事の最後に、相続税対策を考え始めた方が今すぐ取るべき行動を、優先順位順に整理します。

今日中にすべきこと|財産の概略を把握する

まずは、自分(または被相続人になる予定の親)の財産の概略を把握します。(1)預貯金の口座と概算残高、(2)不動産の所在と概算評価額(固定資産税納税通知書で確認可能)、(3)株式・投資信託などの有価証券、(4)生命保険の契約内容、(5)借入金の有無、をリストアップします。

財産総額が相続税の基礎控除(3,000万円+600万円×法定相続人)を超えるかどうかが、対策を本格的に考えるべきかどうかの分かれ目です。

1か月以内にすべきこと|税理士の初回相談を予約する

財産総額が基礎控除を超えるなら、相続専門の税理士事務所に初回相談を予約します。複数の事務所を比較するため、最低2か所、できれば3か所での相談がお勧めです。

相談時に持参する資料は、(1)財産リスト、(2)家族構成図(相続人の構成)、(3)既存の対策(生命保険、贈与履歴など)、(4)将来の希望(誰に何を残したいか)、です。これらがあれば、30分〜1時間で具体的な相続税試算と対策提案を受けられます。

3か月以内に対策を開始する

税理士との相談で対策方針が決まったら、3か月以内に実行に移します。生命保険の加入、暦年贈与の開始、小規模宅地等の特例の準備、おしどり贈与の検討、など、優先度の高い対策から着手します。

対策は時間が味方です。被相続人(または自分)が健康な時期に早く始めるほど、選択肢が広く、効果も大きくなります。「まだ早い」と先送りせず、健康なうちに動き出すことが大切です。

財産規模が大きい・家族関係が複雑な場合|専門家チームを組む

財産規模が1億円を超える、または家族関係が複雑(再婚家庭、事業承継、海外資産など)な場合は、税理士1人ではなく、弁護士・司法書士を含む専門家チームでの対応を考えます。

最初の窓口は、相続専門の税理士または弁護士。そこから必要な他士業を紹介してもらう、またはワンストップ型の事務所を選ぶ方法があります。

緊急性がある場合|被相続人の健康状態が悪化している

被相続人(親)の健康状態が悪化し、相続が近い見込みの場合は、対策の選択肢が大きく制限されます。それでもまだできる対策は、(1)配偶者へのおしどり贈与(7年加算の対象外)、(2)小規模宅地等の特例の適用要件を整える、(3)遺言書の作成、(4)相続時精算課税の年110万円基礎控除の活用、などです。

このような緊急時こそ、相続専門の税理士・弁護士への即時相談が必要です。1〜2週間の遅れが、数百万〜数千万円の節税効果の差につながることもあります。

相続税対策は、節税だけが目的ではなく、家族が財産をめぐって争わないための仕組み作りでもあります。財産規模に応じた適切な方法を、信頼できる専門家と一緒に計画的に進めることが、本人と家族の双方にとっての最善の道筋になります。

ワンポイントアドバイス
相続税対策で最も大切なのは、「効果の大きい主要4方法から優先的に取り組む」視点です。(1)生命保険の非課税枠(500万円×法定相続人)の活用、(2)2024年改正で使い勝手が向上した相続時精算課税の年110万円基礎控除、(3)暦年贈与の計画的活用(7年加算ルールに注意)、(4)小規模宅地等の特例による土地評価の最大80%減額、の4つは、財産規模5,000万円から数億円規模まで幅広く効果があります。財産規模1億円を超えたら、これに加えて、おしどり贈与・住宅資金贈与・結婚子育て資金贈与(令和9年3月まで)・養子縁組・不動産活用なども検討します。教育資金一括贈与の特例は令和8年3月で終了したため、教育費は暦年贈与や都度支援で対応します。2024年税制改正の重要ポイントは2つ。1つ目は、暦年贈与の相続税加算期間が3年から7年に延長された点(段階的に2031年まで延長)。2つ目は、相続時精算課税に年110万円の基礎控除が新設され、7年加算の対象外になった点。被相続人の年齢が高い場合は、相続時精算課税の方が有利になるケースが増えました。最も避けるべき失敗は、(a)節税効果を追求するあまり家族関係を悪化させる、(b)被相続人の死亡直前の大規模な節税対策が税務署に否認される(令和4年最高裁判決)、(c)対策を先送りして手遅れになる、の3つです。対策は被相続人が60代のうちから始めるのが理想で、70代でも遅くありませんが、80代以降は選択肢が大きく制限されます。財産が相続税の基礎控除(3,000万円+600万円×法定相続人)を超えるなら、相続専門の税理士への早期相談から始めることが、効果的な対策の出発点になります。

あなたの相続税はいくら?無料診断

5,000万円
2人

基礎控除額

4,200万円

課税対象額

800万円

相続税の総額(概算)

80万円

申告が必要です

※ 配偶者の税額軽減・小規模宅地等の特例を考慮しない概算です。実際の税額は個別事情により異なります。

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