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わが子が交通事故に遭った――。これほど親にとってつらく、動揺する出来事はないでしょう。子供のけがが心配でたまらない一方で、「治療費はどうなるのか」「慰謝料は請求できるのか」「子供にも過失があると言われたらどうしよう」といった現実的な不安も、次々と押し寄せてくるはずです。
子供が交通事故の被害者になった場合、大人の事故とは違ったいくつかのポイントがあります。慰謝料の考え方、過失割合の評価、将来の収入(逸失利益)の計算、そして親自身が受け取れる慰謝料――。これらを正しく知っておかないと、本来受け取れるはずの賠償を取りこぼしてしまうことにもなりかねません。
この記事では、交通事故にくわしい弁護士の視点から、子供が交通事故に遭ったときの慰謝料や過失割合の考え方、子供特有の論点を、具体例を交えてわかりやすく解説します。お子さんのために適正な賠償を受けるための知識として、ぜひ役立ててください。
子供が交通事故に遭ったら、まず知っておきたいこと
子供が交通事故に遭ったとき、親としてまず気を配るべきは、当然ながらお子さんのけがの治療です。事故直後は外傷がなくても、後から痛みや異変が出ることがあります。子供は自分の症状をうまく言葉で伝えられないことも多いため、少しでも気になる様子があれば、必ず医療機関を受診させてください。普段と比べて元気がない、食欲がない、特定の動作を嫌がるといった様子も、体の不調のサインであることがあります。子供の小さな変化を見逃さないことが、適切な治療と、後の適正な賠償の両面で大切になります。
そのうえで、賠償の観点から知っておきたいのが、子供の事故には大人とは異なる特有の考え方がある、という点です。具体的には、次のような項目で、子供ならではの取り扱いがあります。
- 慰謝料……子供でも大人と同じ基準で請求できる。
- 過失割合……子供(とくに幼児)は手厚く保護され、過失相殺がされにくい。
- 逸失利益……収入のない子供は、平均賃金を基礎に将来の収入減を計算する。
- 親(近親者)の慰謝料……重い後遺障害や死亡の場合、親自身の慰謝料も問題になる。
これらを順に、くわしく見ていきましょう。
- 慰謝料
- 事故によって受けた精神的苦痛に対する補償。入通院慰謝料や後遺障害慰謝料などがある。
- 過失割合
- 事故の責任を当事者間でどう分けるかを示す比率。被害者側の過失分だけ賠償額が減らされる(過失相殺)。
そもそも過失割合がどのように決まるのか、その基本的な仕組みについては総論記事でくわしく解説しています。子供の事故の過失割合を理解する前提として、あわせて読んでおくとより深く理解できます。
子供の慰謝料は大人と同じように請求できる
「子供だから慰謝料は少ないのでは」と心配される方がいますが、それは誤解です。子供の慰謝料も、大人と同じ基準で算定されます。
交通事故の慰謝料には、けがの治療のために入院・通院した精神的苦痛に対する「入通院慰謝料」と、治療を続けても完治せず後遺障害が残った場合の「後遺障害慰謝料」があります。これらは、入通院の期間や日数、後遺障害の等級に応じて算定されるもので、被害者が子供だからといって減額されるわけではありません。
むしろ、慰謝料には自賠責基準・任意保険基準・弁護士基準という3つのものさしがあり、どの基準で計算するかによって金額が大きく変わります。もっとも高くなりやすいのは弁護士基準です。保険会社が最初に提示してくる金額は低めの基準によることが多いため、子供のためにも、その金額が適正かどうかを確認することが大切です。とくに通院が長引いたお子さんの場合、基準の違いによって慰謝料の差が数十万円単位になることもあります。お子さんの治療にしっかり向き合った分が、適正に評価されるようにしたいものです。
子供の過失割合は低く評価されやすい
交通事故では、被害者側にも過失があれば、その割合に応じて賠償額が減らされます(過失相殺)。しかし、子供が被害者の場合、この過失割合は大人より低く評価される傾向があります。
これは、子供は危険を察知して回避する能力が大人より低く、交通社会において保護されるべき立場にある、と考えられているためです。たとえば、同じように道路に飛び出した場合でも、大人なら一定の過失を問われる場面で、幼い子供であれば過失が小さく評価される、あるいはまったく問われないことがあります。子供は大人のように交通状況を的確に判断できず、興味のあるものに向かって突発的に動いてしまうことがある、という発達上の特性が考慮されているのです。
とくに、まだ幼い子供(おおむね6歳未満程度)については、そもそも過失相殺の前提となる能力がないとされ、過失相殺がされないのが原則です。子供の年齢が低いほど、手厚く保護される傾向にある、と理解しておくとよいでしょう。逆にいえば、保険会社が幼い子供にまで過失を主張してきた場合には、その主張が妥当かどうかを慎重に見極める必要があります。歩行中の子供が車にはねられた場合の過失割合は、車対歩行者の記事もあわせて参考になります。
過失相殺の対象になる年齢——事理弁識能力とは
子供の過失割合を考えるうえで、知っておきたいのが「事理弁識能力」という考え方です。これは、自分の行動の是非や危険を、ある程度わきまえることができる能力のことをいいます。
過失相殺がされるためには、被害者である子供に、この事理弁識能力が備わっている必要があるとされています。一般に、事理弁識能力はおおむね5〜6歳ごろに備わると考えられており、それより幼い子供には過失相殺がされないのが原則です。一方、事理弁識能力が備わっている年齢の子供であれば、過失相殺の対象にはなりますが、それでも大人より低く評価されます。
つまり、お子さんの年齢によって、そもそも過失相殺の対象になるのか、なるとしてどの程度評価されるのかが変わってきます。保険会社から「お子さんにも過失がある」と言われた場合でも、その評価が年齢に照らして妥当かどうかを、慎重に確認する必要があります。
親の付き添い不足が「被害者側の過失」になることも
子供の事故で見落とされがちなのが、親(監督者)の落ち度が「被害者側の過失」として考慮されることがある、という点です。これは少し意外に感じるかもしれません。
たとえば、幼い子供が親と一緒にいたにもかかわらず、親が手を離していたすきに道路へ飛び出してしまった、という場合、子供本人に過失相殺がされない年齢であっても、親の監督が不十分だったとして、その分が被害者側の過失として考慮されることがあります。これを「被害者側の過失」といいます。
このように、子供の事故では、子供本人の過失だけでなく、親の監督のあり方も過失割合に影響することがあります。とはいえ、どの程度が被害者側の過失として評価されるかは、事故の状況によって大きく異なります。保険会社の主張をうのみにせず、専門家に確認することをおすすめします。過失割合と賠償額・慰謝料の関係については、こちらの記事も参考になります。
子供の逸失利益はどう計算するのか
もしお子さんに後遺障害が残ってしまったり、最悪の場合亡くなってしまったりした場合には、逸失利益という損害が問題になります。逸失利益とは、事故がなければ将来得られたはずの収入のことです。
ここで難しいのが、子供はまだ働いておらず、現在の収入がないという点です。では、どうやって将来の収入を計算するのでしょうか。子供の逸失利益は、現在の収入がないため、賃金センサス(厚生労働省の賃金統計)の平均賃金を基礎として計算するのが一般的です。将来、平均的な収入を得られたはずだと考えて算定するわけです。
計算は、おおまかに「基礎収入(平均賃金) × 労働能力喪失率 × 就労可能期間に対応する係数」で行われます。子供の場合、就労を始める年齢(原則18歳)から働ける年齢(原則67歳)までの期間を基礎に計算されるため、期間が長く、逸失利益が高額になることがあります。
子供の逸失利益のイメージ
具体的なイメージをつかむために、考え方の流れを見てみましょう。たとえば、後遺障害が残ったお子さんの逸失利益を計算する場合、まず基礎となる平均賃金を賃金センサスから定めます。次に、後遺障害の等級に応じた労働能力喪失率を掛け、さらに18歳から67歳までといった就労可能期間に対応する係数を掛け合わせます。
子供は就労可能期間が長いぶん、この係数が大きくなりやすく、結果として逸失利益が高額になる傾向があります。つまり、後遺障害が残った子供の事故では、目の前の治療費や慰謝料以上に、この逸失利益が賠償の大きな部分を占めることがあるのです。だからこそ、逸失利益が適正に計算されているかどうかは、子供の将来にとって非常に重要なポイントになります。
なお、逸失利益の計算にあたって、男女どちらの平均賃金を基礎にするかなどをめぐっては、議論や考え方の積み重ねがあります。専門的な論点であり、計算結果が大きく変わることもあるため、子供の後遺障害が問題になるケースでは、必ず専門家に確認することをおすすめします。
逸失利益の計算方法や相場については、専門の記事でくわしく図解しています。子供に後遺障害が残った場合は、慰謝料だけでなく、この逸失利益まで含めて適正に請求することが重要です。
後遺障害が残った場合と親(近親者)の慰謝料
子供に重い後遺障害が残ったり、亡くなったりした場合には、子供本人の慰謝料に加えて、親など近親者の慰謝料が認められることがあります。
わが子が交通事故で重い障害を負ったり命を落としたりしたときの親の精神的苦痛は、計り知れないものです。法律も、こうした近親者の苦痛を一定の範囲で慰謝料として評価しています。とくに、子供が亡くなった死亡事故では、本人の慰謝料とは別に、遺族である親や兄弟に固有の慰謝料が認められます。また、死亡には至らなくても、重度の後遺障害が残り、親が受ける精神的苦痛が死亡に比肩するほど大きいと評価される場合には、親の慰謝料が認められることがあります。
死亡事故における慰謝料や、遺族が請求できる賠償の考え方については、別記事でくわしく解説しています。万が一の重大な事案では、本人と遺族それぞれの損害を適正に評価してもらうことが重要です。
子供が加害者になってしまった場合は
ここまでは子供が被害者の場合を解説してきましたが、逆に、お子さんが自転車などで事故を起こし、加害者になってしまうこともあります。子供が加害者の場合は、責任能力の有無によって、子供本人や親が賠償責任を負うことになり、被害者の場合とはまったく異なる対応が必要になります。
とくに自転車事故では、子供が加害者になり、高額な賠償を求められるケースもあります。立場が変わったときのために、子供が加害者になった場合の責任や備えについても知っておくと安心です。くわしくは別記事で解説しています。
子供の交通事故で親が取るべき対応
お子さんが交通事故に遭ったとき、親としてどう動けばよいのか、手順としてまとめておきます。
子供は自分の症状をうまく説明できないことが多く、また後遺障害の評価も慎重に行う必要があります。とくに、将来にわたって子供の人生に影響するような後遺障害が残った場合は、賠償の見通しが子供の将来を大きく左右します。だからこそ、保険会社の提示をそのまま受け入れるのではなく、専門家の目で確認してもらうことが大切です。
事故の被害に遭われた方へ
お子さんの慰謝料がいくらになるのか、まずはおおよその目安を知っておきたい、という親御さんも多いでしょう。慰謝料の概算は、入院・通院の期間などからつかむことができます。
以下の計算ツールを使えば、ご自身のお子さんのケースでの慰謝料の目安をその場で確認できます。最終的な受取額は過失割合によって調整されますが、まずは賠償全体の見通しを持つために、慰謝料の概算を把握しておきましょう。
交通事故 慰謝料の3基準比較シミュレーター
自賠責基準
¥120,000
任意保険基準
¥150,000
弁護士基準
¥530,000
※ 簡易計算です。実際の金額は治療実日数・後遺障害の有無・休業損害などにより異なります。任意保険基準は各社非公開のため業界平均値で算出しています。
表示された金額に幅があるのは、自賠責基準・任意保険基準・弁護士基準で計算結果が変わるためです。保険会社が最初に提示してくる金額は低めであることが多いので、お子さんのためにも、提示された示談金をそのまま受け入れる前に一度確認しておくと安心です。
交通事故 慰謝料の3基準比較シミュレーター
自賠責基準
¥120,000
任意保険基準
¥150,000
弁護士基準
¥530,000
※ 簡易計算です。実際の金額は治療実日数・後遺障害の有無・休業損害などにより異なります。任意保険基準は各社非公開のため業界平均値で算出しています。
よくある質問(FAQ)
子供の慰謝料は大人より少なくなりますか?
いいえ、子供の慰謝料も大人と同じ基準で算定されます。入通院慰謝料や後遺障害慰謝料は、入通院の期間や後遺障害の等級に応じて決まるもので、被害者が子供だからといって減額されるわけではありません。ただし、自賠責基準・任意保険基準・弁護士基準のどれで計算するかで金額が変わるため、提示額が適正か確認することが大切です。
子供にも過失があると言われました。本当に過失相殺されるのですか?
子供が被害者の場合、過失割合は大人より低く評価される傾向があります。とくに、おおむね6歳未満の幼児には、過失相殺の前提となる事理弁識能力がないとされ、過失相殺がされないのが原則です。事理弁識能力が備わる年齢の子供でも、過失は小さく評価されます。保険会社の主張する過失割合が年齢に照らして妥当か、専門家に確認することをおすすめします。
親の不注意も過失になると聞きました。どういうことですか?
幼い子供の事故では、親など監督者の落ち度が「被害者側の過失」として考慮されることがあります。たとえば、親が手を離したすきに子供が道路に飛び出した場合などです。ただし、どの程度が被害者側の過失として評価されるかは事故の状況によって異なるため、保険会社の主張をうのみにせず、確認することが大切です。
子供の将来の収入(逸失利益)はどう計算されますか?
子供は現在の収入がないため、賃金センサス(厚生労働省の賃金統計)の平均賃金を基礎に逸失利益を計算するのが一般的です。原則として18歳から67歳までの就労可能期間を基礎に算定されるため、期間が長く、後遺障害が残った場合の逸失利益は高額になることがあります。適正に計算されているか、専門家に確認するとよいでしょう。
子供の事故でも弁護士に相談したほうがよいですか?
はい、子供の事故は慰謝料・過失割合・逸失利益・親の慰謝料など、特有の論点が多く、適正な賠償を受けるには専門的な知識が必要です。とくに後遺障害が残った場合は、賠償の見通しが子供の将来を左右します。多くの法律事務所では初回相談を無料で受け付けており、弁護士費用特約が使えれば自己負担を抑えて依頼できることもあります。不安があれば、一度相談してみることをおすすめします。
子供がまだ小さく、後遺障害が残るか分かりません。どうすればよいですか?
成長過程にある子供の後遺障害は、症状が固定するまで時間がかかったり、評価が難しかったりすることがあります。焦って早期に示談してしまうと、後から判明した症状について十分な賠償を受けられなくなるおそれがあります。お子さんの状態をしっかり経過観察し、適切な時期に後遺障害の評価を受けることが大切です。判断に迷うときは、早めに弁護士へ相談しておくと、適切な時期に適切な手続きを進められます。
治療費は誰が支払うのですか?
交通事故のけがの治療費は、最終的には加害者側(その保険会社)が負担すべきものです。多くのケースでは、相手方の保険会社が病院に直接治療費を支払う対応をとります。ただし、過失割合や事故の状況によっては、対応が変わることもあります。治療費の支払いについて不安がある場合は、相手方の保険会社に確認するとともに、必要に応じて専門家に相談しましょう。なお、お子さんの治療を最優先に、必要な通院は途中でやめないことが大切です。
子供が交通事故に遭った場合、慰謝料や逸失利益の算定には大人とは異なる配慮が必要になります。とくに後遺障害が残ったときの逸失利益は、将来の進学や就職の可能性をふまえて算定されるため、計算が複雑になりがちです。また、子供自身は事故状況をうまく説明できないことも多く、過失割合の判断でも保護者のサポートが欠かせません。子供の将来に関わる大切な問題だからこそ、保険会社の提示をうのみにせず、弁護士に相談して適正な賠償を見極めることをおすすめします。
あなたの慰謝料はいくら?3基準で比較診断
自賠責基準
¥120,000
任意保険基準
¥150,000
弁護士基準
¥530,000
※ 簡易計算です。実際の金額は治療実日数・後遺障害の有無・休業損害などにより異なります。任意保険基準は各社非公開のため業界平均値で算出しています。
