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死亡事故が起きたら|遺族の手続きと解決までの流れ

死亡事故が起きたら|遺族の手続きと解決までの流れ

この記事で分かること

  • 遺族が取るべき対応の全体像と流れ
  • 事故直後・葬儀時に確認しておきたいこと
  • 保険会社からの賠償提示への対応
  • 加害者の刑事責任と被害者参加制度
  • 弁護士に相談するメリット

交通事故で家族を失った遺族は、深い悲しみのなかで手続きを進めることになりますが、すべてを一度に行う必要はありません。まずは葬儀を終え、心と体を休めることが大切です。保険会社の提示額は弁護士基準より低いことが多いため、すぐに応じず確認しましょう。遺族が取るべき対応の流れと、注意すべきポイントを弁護士がわかりやすく解説します。

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何から手をつければよいのか

突然の知らせを受けて、何が起きているのかもよく分からないまま数日が過ぎる。葬儀の準備に追われ、気がつけば保険会社から連絡が来ている。

何を聞かれているのかも分からないまま、書類に署名を求められる。そういう状況に置かれるご遺族を、これまで何人も見てきました。

この時期に、冷静な判断を求めるのは酷なことです。それでも、いくつか押さえておくと後で困らない点があります。

結論から申し上げます。急いでやるべきことは多くありません。刑事の手続きは警察と検察が進めますし、賠償の交渉は落ち着いてからで構いません。

いま必要なのは、証拠が消えないうちに確保しておくことと、期限のあるものを把握しておくこと。この二つだけです。

あとは、動ける範囲で少しずつ進めれば間に合います。

この記事では、事故の直後から解決までの流れを、遺族の立場で時系列に沿って整理します。金額の算定については、別の記事で扱っています。

読むのが負担であれば、目次から必要なところだけ見ていただいて構いません。

いま知りたいことが決まっているなら、そこだけで足ります。全部を理解しようとしなくてよいのです。

時期ごとの見取り図

時期 主にすること
事故直後 警察の窓口を確認、現場と映像の確保を依頼
数日以内 葬儀、死亡届、保険会社への一報
数週間 相続人の確認、当面の資金の手配
1〜3か月 刑事の進み具合を確認、資料の収集
3か月以降 賠償の交渉、必要なら訴訟

急ぐのは最初の二つだけです。あとは、体調と相談しながら進めれば足ります。

解決までには、一年から二年かかることも珍しくありません。長い付き合いになると考えて、無理のない進め方をしてください。

相手方に急かされても、こちらの速さで進めて構いません。

事故直後に確認しておきたいこと

後から取り返せない部分が、いくつかあります。

警察から聞いておくこと

担当する警察署と、事故を扱っている係の名前。そして、事故の状況について分かっている範囲。

この時点では捜査の途中ですので、詳しいことは教えてもらえません。それでも、窓口を押さえておけば後から問い合わせられます。

捜査が終われば、記録を取り寄せられる可能性が出てきます。そのときに、どこへ連絡すればよいかが分かります。

担当者の氏名を控えておくと、問い合わせが早く済みます。

相手方の情報

加害者の氏名と連絡先、加入している保険会社。交通事故証明書にも記載されますが、早い段階で分かっていれば手続きを進めやすくなります。

相手が任意保険に入っているかどうかは、その後の進め方を大きく左右します。

加入していなければ、自賠責への直接請求と本人への請求を組み合わせることになります。

現場の記録

時間が経てば、路面の痕跡は消えます。周辺の防犯カメラの映像も、一定期間で上書きされます。

ご遺族が現場に行くのは、精神的に重い作業です。可能であれば、親族や知人に依頼してください。所在だけでも警察に伝えておけば、照会してもらえます。

過失割合に争いが生じそうな事案では、この初動が結論を分けることがあります。

亡くなった方は、事故の状況を説明できません。だからこそ、客観的な記録が重要になります。

ご遺体の状況

司法解剖が行われることがあります。事故との因果関係を明らかにするための手続きです。結果は捜査の資料になりますので、後から記録として取り寄せられる可能性があります。

説明を受ける機会もありますが、つらければ他の親族に代わってもらってください。

無理に立ち会う必要はありません。

ワンポイントアドバイス
この時期にすべてを自分で背負う必要はありません。親族で役割を分け、動ける人に任せてください。保険会社への連絡や書類の取り寄せは、本人でなくても進められます。

葬儀と当面の手続き

葬儀にかかった費用は、損害として請求できます。

ただし、実際にかかった額がそのまま認められるわけではありません。一定の水準までとされるのが通常です。

相手方から示される額が実際より低い場合、なぜその水準なのかを尋ねてください。個別の事情があれば、上乗せを求める余地もあります。

地域の慣習や、参列者の規模も考慮されることがあります。

領収書は、すべて保管しておいてください。葬儀社への支払い、火葬や埋葬の費用、読経料。まとめて整理しておくと、後の請求で困りません。

墓石や仏壇の費用が含まれるかは、事案によって判断が分かれます。領収書だけは残しておいてください。

香典については、収入として差し引かれない扱いが一般的です。香典返しの費用は、原則として請求の対象外とされています。

受け取った香典があるからといって、賠償額が減ることはないということです。

相手方からそう主張されたら、争う余地があります。

並行して進む手続き

死亡届の提出、年金や健康保険の手続き、勤務先への連絡。これらは賠償とは別に進めることになります。

期限のあるものが含まれますので、市区町村の窓口で一覧を確認してください。まとめて案内してもらえます。

世帯主が亡くなった場合は、公共料金や契約の名義変更も必要になります。一度に片づけようとせず、優先順位を付けて進めてください。

親族で分担すれば、負担はかなり軽くなります。

保管しておきたい書類

  • 葬儀関係の領収書一式
  • 亡くなった方の収入が分かる資料。源泉徴収票や確定申告の控え
  • 戸籍謄本。相続人の範囲を示すもの
  • 交通事故証明書
  • 診断書や死亡診断書の写し
  • 保険会社とのやり取りの記録

二つめは、逸失利益を算定する際の基礎になります。手元になければ、勤務先や税務署から取り寄せてください。

金額の規模を決める資料ですので、正確なものを用意する必要があります。

直近の一年分だけでなく、数年分あるとなお確実です。

誰が請求できるのか

ここを整理しておく必要があります。

二つの立場がある

一つは、亡くなった方が持っていた請求権を受け継ぐ立場です。本人の慰謝料や逸失利益がこれにあたり、相続人が引き継ぎます。

もう一つは、遺族自身が固有に持つ請求権です。近親者の慰謝料がこれにあたり、相続とは別に生じます。

この二つは性質が違いますので、分けて考えてください。

相手方の提示に、後者が含まれていないことがあります。こちらから挙げる必要があります。

内訳を出してもらい、費目ごとに確認してください。

相続人の確認

配偶者は常に相続人になります。加えて、子がいれば子が、いなければ父母が、それもいなければ兄弟姉妹が相続人となります。

複数いる場合、交渉や合意をどう進めるかを決めておく必要があります。全員が個別に動くと、話がまとまりません。

代表者を決め、あるいは一人に委任する形をとるのが現実的です。

親族の間で意見が分かれることもあります。早い段階で話し合っておくと、後の混乱を避けられます。

示談の成立には、相続人全員の同意が必要になるのが通常です。

固有の慰謝料を請求できる人

配偶者、子、父母が基本です。同居して生活を共にしていた親族が含まれることもあります。

相続人でなくても請求できる場合がありますので、該当しそうなら確認してください。

内縁の配偶者や、長く同居していた方が問題になることがあります。

該当しそうであれば、関係を示す資料を用意しておいてください。

保険会社からの連絡への対応

早ければ、事故から数日で連絡が入ります。

すぐに判断しない

この時期に、賠償の話を進められる状態ではありません。「まだ落ち着いていないので、後日あらためてお願いします」と伝えて構いません。

担当者も、その返答を想定しています。無礼になることはありません。

連絡を絶つのではなく、時期を先に延ばすだけです。

急かされても、応じる義務はありません。

記録を残す

誰と、いつ、何を話したか。短いメモで足ります。後から経緯を確認する場面が必ず来ます。

担当者の氏名と連絡先も控えておいてください。

途中で担当が代わることもあります。経緯を説明する場面で、記録が役に立ちます。

電話でのやり取りも、後から確認できるようにしておいてください。

署名を求められたら

内容を確認せずに署名しないでください。同意書や委任状を求められることがありますが、何に同意するのかを理解してから判断すべきです。

とくに、示談に関する書面は慎重に扱ってください。いったん取り交わしてしまえば、後から覆すことはできません。

判断に迷うのであれば、署名の前に第三者に見てもらってください。

相続人が複数いる場合は、全員で内容を確認してから決めてください。

当面の資金をどう確保するか

賠償金が支払われるのは、示談が成立してからです。それまでの間、葬儀費用や生活費の負担が生じます。

自賠責には、示談を待たずに一部を受け取れる仕組みがあります。死亡の事案では、まとまった額を先に受け取れますので、検討してください。

手続きは相手方の自賠責に対して行います。必要な書類は、保険会社に尋ねれば教えてもらえます。

後から受け取る賠償金から差し引かれますので、二重に受け取ることにはなりません。

亡くなった方が世帯の収入を支えていた場合、遺族年金の対象になることがあります。年金事務所に確認してください。

加入していた制度によって、受け取れる内容が変わります。

子どもがいるかどうかでも扱いが分かれますので、窓口で確認してください。

勤務中や通勤の途中であれば、労災の給付を受けられます。賠償とは別の制度ですので、あわせて手続きを進めてください。

生命保険についても、加入状況を確認してください。こちらは賠償とは無関係に支払われます。

加害者からの賠償を受け取っても、差し引かれることはありません。

刑事の手続きにどう関わるか

加害者の処分は、遺族の関心が最も強い部分です。

捜査の段階

事故の状況は、警察が捜査して明らかにします。遺族として事情を聴かれることもあります。

厳しい処分を求める気持ちがあるなら、その意向を明確に伝えてください。起訴するかどうかの判断で考慮されます。

死亡事故では、起訴されるのが通常です。飲酒運転やひき逃げが絡めば、より重い罪名が検討されます。

示談が成立していても、結論は変わらないことがほとんどです。被害の重さがそのまま判断に反映されます。

ただし、量刑の判断では考慮されます。実刑か執行猶予かの境目にある事案では、影響が出ることもあります。

処分結果の通知

起訴に至ったのか、公判はいつ開かれるのか、どういう判決が出たのか。こうした経過を遺族に知らせる仕組みが用意されています。担当の検察庁に申し出れば、案内してもらえます。

知らずにいたいのであれば、申し出をしない限り通知が届くことはありません。

後から申し出ることもできますので、いま決められなくても構いません。

気持ちが変わったときに、あらためて連絡すれば足ります。

法廷で意見を述べる

公判が開かれれば、傍聴できます。そのうえで、心情や意見を述べる制度も設けられています。

さらに、手続きに参加して被告人に質問したり、量刑について意見を述べたりすることもできます。

利用するかどうかは、ご遺族の判断です。重荷に感じるようであれば、無理をして関わる必要はまったくありません。

代理人に法廷へ出てもらうという進め方もできます。自分が法廷に立たなくても、意見を届けることはできます。

書面で提出する方法も用意されています。手続きについては、担当の検察官が案内してくれます。

どの制度を使うかは、公判が始まる前に決めることになります。

記録の閲覧と謄写

裁判の記録を見たり、写しを取ったりできます。事故の状況について加害者がどう供述したかは、賠償の交渉でも材料になります。

過失割合に争いが生じそうなら、検討する価値があります。

加害者の説明が変遷している場合、その経緯自体が交渉の材料になります。

供述がどう変わったかは、記録を追えば分かります。

不自然な変遷があれば、その点を主張できます。

請求できる損害の中身

金額の算定は別の記事に譲りますが、何を請求できるのかだけ整理しておきます。

亡くなった方の損害

本人の慰謝料と、逸失利益です。逸失利益は、生きていれば得られたはずの収入から、本人が使ったであろう生活費を差し引いて算定します。

働いていた方であれば実際の収入が、家事に従事していた方であれば平均的な賃金が基礎になります。年齢が若いほど、働ける期間が長い分だけ額が積み上がります。

差し引かれる生活費の割合は、家族構成によって変わります。扶養していた家族が多いほど、割合は低く見られるのが通常です。

これらは相続人が引き継ぎます。

相続を放棄すると、この請求権も引き継げなくなります。判断の前に、影響を確認してください。

遺族固有の損害

近親者の慰謝料と、葬儀費用です。近親者の慰謝料は、亡くなった方の慰謝料とは別に生じます。

相手方の提示に含まれていないことがありますので、内訳を確認してください。

誰が請求できるかは、亡くなった方との関係によります。

事故から死亡までの損害

即死でない場合、入院や治療にかかった費用も請求できます。付き添いの費用や、その間の休業損害も対象です。

数日でも入院期間があれば、その分の慰謝料も生じます。

これらを漏らさず集計するには、医療機関の明細をそろえておく必要があります。

賠償の交渉はいつ始まるのか

治療の段階がありませんので、ケガの事案より早く動き出すことができます。

ただし、実務では四十九日を過ぎてから、という進め方が多くなります。ご遺族の心情に配慮するためです。

相手方の担当者も、その時期までは連絡を控えることが多いところです。

それより早く連絡が来たとしても、応じる義務はありません。

相手方から早く決着させたいと持ちかけられても、それに乗る義理はありません。こちらの準備が整ってからで構いません。

刑事が先に進むこともある

加害者が起訴されれば、判決が出るまでに数か月かかります。刑事の結果を見てから賠償の交渉に入る、という順序をとることもあります。

刑事で認定された事実は、賠償の交渉でも使えます。飲酒の数値、走行速度、事故後の行動。悪質な事情があれば、慰謝料の増額を主張する材料になります。

判決を待ってから交渉に入るという判断も、十分に合理的です。

時効までには、まだ時間があります。焦る必要はありません。

ただし、無期限ではありません。目安として、いつまでかは把握しておいてください。

示談を急がない

加害者側は、刑事の判断が下る前に示談を成立させたいと考えます。処分が軽くなる可能性があるためです。

その事情に合わせる義務は、遺族の側にはありません。金額に納得できないのであれば、応じないという判断で構いません。

処罰を望む気持ちがあるなら、示談に応じないことがその表れにもなります。

もっとも、示談に応じたからといって処罰を望んでいないことにはなりません。金銭の清算と処罰の希望は、別に扱われます。

示談書に、処罰を望まない旨を書かなければよいのです。求められても、応じる義務はありません。

進め方の順序

  1. 相続人を確認し、誰が窓口になるかを決める
  2. 当面の資金を確保する。自賠責の仮渡金、遺族年金、労災
  3. 刑事の進み具合を検察庁に確認する
  4. 捜査や裁判の記録を取り寄せる
  5. 損害額を集計し、請求の準備をする
  6. 相手方と交渉する。まとまらなければ訴訟を検討する

四番目までは、ご遺族だけでも進められます。五番目から先は、専門家の関与が効いてくる部分です。

死亡事故は、金額の規模が大きく争点も多い類型です。弁護士費用特約が付いていないかを、早めに確認してください。

亡くなった方の契約に付いていれば、ご遺族が使える場合もあります。

同居していた家族の契約も、あわせて確認してください。

期限のあるもの

落ち着いたら、時間の制約を確認しておいてください。

損害賠償を請求できる権利には、期間の定めがあります。自賠責への請求にも期限があります。加害者が判明していない場合に使える制度についても同様です。

刑事の手続きに関わる制度にも、申し出の時期があります。不起訴に納得できない場合の手続きも、期間が限られています。

制度ごとに起算点も期間も異なりますので、一覧にして把握しておくと安心です。

数年は先のことに思えますが、手続きを進めているうちに時間は過ぎていきます。

刑事の判決を待っていたら期限が近づいていた、という事態は避けたいところです。

加害者との関わり方

謝罪の申し出を受けることがあります。どう応じるかは、ご遺族の判断です。

会う義務はない

受け入れなければならない決まりは、どこにもありません。顔を合わせたくないのであれば、断ってまったく差し支えありません。断ったことで賠償額が下がることもありません。

顔を見るのがつらい、話を聞く気になれない。当然の感情です。

周囲から会うよう促されても、無理をする必要はありません。

時間が経ってから応じることもできる

事故の直後は無理でも、月日が経てば気持ちが変わることがあります。そのときにあらためて受け入れる、という進め方もできます。

加害者側が何度も連絡してくるようであれば、代理人や保険会社を通すよう伝えてください。

執拗な接触は、それ自体が負担になります。はっきり伝えて構いません。

手紙が届いた場合

読むかどうかも自由です。開封せずに保管しておき、後で読むという方もいます。

内容に納得できないのであれば、その旨を刑事の手続きで伝えることもできます。

受け取った事実が、示談に応じたことを意味するわけではありません。

誠意をどう測るか

言葉より、行動で判断してください。賠償を進めているか、事実を認めているか、再発防止のために何かしているか。

形だけの謝罪であれば、処罰を望む意思を明確に伝えてください。

捜査の段階でも、公判でも、その意思を述べる機会は用意されています。

遺族の心のケア

手続きの話だけでは済まない部分です。

突然の別れは、時間が経っても癒えるものではありません。眠れない、食事が取れない、何も手につかない。こうした状態が続くことがあります。

自分を責めてしまう方も多くいます。あの日引き止めていれば、別の道を通っていれば。しかし、事故を起こしたのは加害者です。ご遺族に落ち度があったわけではありません。

それでも自分を責めてしまうのが、人の心です。無理に打ち消そうとしなくても構いません。

ただ、その気持ちから示談の条件を軽く受け入れてしまうことだけは避けてください。判断が鈍っていると感じるなら、誰かに間に入ってもらうほうが安全です。冷静に見てくれる人が一人いるだけで、結果が変わります。親族でも、専門家でも構いません。頼ることは、諦めることではありません。むしろ、守るべきものを守るための手段です。

体調に変化があれば、医療機関を受診してください。事故によって生じた精神的な症状であれば、治療費を請求できる場合もあります。

診断を受けて記録に残しておくことが、請求の前提になります。我慢し続けても、誰の得にもなりません。

眠れない状態が続くようなら、早めに相談してください。

かかりつけの医師に話すところからで構いません。

同じ立場の方が集まる場や、被害者を支援する団体もあります。行政の窓口で案内を受けられますので、必要であれば尋ねてみてください。

同じ経験をした人にしか分からないことがあります。話すことで楽になる方もいれば、そっとしておいてほしい方もいます。どちらでも構いません。

周囲から「そろそろ前を向いたら」と言われることもあります。従う必要はありません。

時間の感じ方は、人それぞれです。

手続きを進めることと、気持ちを整理することは、同じ速さでは進みません。無理に合わせようとしないでください。

手続きが片づいても、気持ちが追いつかないのは当然です。逆に、気持ちが落ち着く前に期限が来ることもあります。そのときは、誰かに代わってもらってください。

親族でも、代理人でも構いません。一人で背負うものではありません。

書類の作成や、相手方とのやり取りは、代わりに進められる部分です。

交渉がまとまらない場合

死亡事故は、金額の規模が大きい分だけ争いになりやすい類型です。

よく争点になる部分

一つめは、逸失利益の算定です。基礎となる収入をいくらと見るか、生活費をどれだけ差し引くか、何歳まで働けたとみるか。どれも金額に直結します。

若い方や、収入の高かった方の事案では、ここだけで数千万円の差が生じることもあります。

二つめは、過失割合です。亡くなった方に落ち度があったと主張されることがあります。本人が説明できない以上、こちらが資料で示すことになります。

実況見分の記録やドライブレコーダーの映像が、頼りになります。

三つめは、慰謝料の水準です。相手方が用いる基準は、裁判で用いられるものより低いのが一般的です。

提示を受けたら、どの基準で計算したのかを尋ねてください。根拠を示せない項目が出てくれば、その部分は動かせる可能性があります。

紛争処理の機関

費用をかけずに第三者の判断を求める方法があります。争点が絞られている事案では有効です。

相手方の保険会社は、原則としてこの機関の判断に従うことになっています。

訴訟

最終的な手段です。裁判所が証拠にもとづいて判断します。裁判で用いられる水準で算定されますので、金額が上がる可能性があります。

ただし、時間も費用もかかります。ご遺族にとっては、事故を思い出し続ける期間が延びることも意味します。

判決まで進まず、途中の和解で終わることも多くあります。見込まれる増額分と、費やす負担を比べて判断することになります。

弁護士費用特約が付いていれば、この判断の前提が変わります。

刑事の記録が武器になる

死亡事故では、加害者が起訴されるのが通常です。公判の記録には、事故の状況について詳しい認定が残ります。

過失割合を争う場面では、この資料が決め手になることがあります。取り寄せる方法を確認しておいてください。

捜査の段階では制限がありますが、刑事の手続きが終われば範囲が広がります。

よくある質問

まず何をすればよいですか

急いでやるべきことは多くありません。警察の窓口を確認し、現場の記録が消えないうちに確保してもらうこと。そして、期限のあるものを把握しておくことです。賠償の交渉は、落ち着いてからで構いません。

保険会社から連絡が来ました。応じるべきですか

すぐに判断する必要はありません。「後日あらためて」と伝えて構いません。署名を求められても、内容を確認してから判断してください。示談は一度成立すると、やり直しがききません。

葬儀費用は請求できますか

できます。ただし、実際にかかった額がそのまま認められるとは限らず、一定の水準までとされるのが通常です。領収書はすべて保管しておいてください。

誰が請求できるのですか

亡くなった方の請求権を受け継ぐ立場と、遺族自身が固有に持つ請求権の二つがあります。前者は相続人が、後者は配偶者、子、父母が基本です。複数いる場合は、代表者を決めて進めるのが現実的です。

賠償金が支払われるまで生活が苦しいです

自賠責には、示談を待たずに一部を受け取れる仕組みがあります。遺族年金や労災の給付、生命保険についても確認してください。賠償とは別の制度として進められます。

加害者の処分を知ることはできますか

できます。起訴されたかどうか、裁判の日程、判決の内容を通知してもらう仕組みがあります。担当の検察庁に申し出てください。

裁判で意見を述べたいのですが

心情や意見を述べる制度があります。さらに、手続きに参加して被告人に質問することもできます。手続きの進め方は、担当している検察官に尋ねてください。負担に感じるのであれば、利用しないという選択も当然あります。

相続を放棄するか迷っています

亡くなった方に借金があった場合などに問題になります。ただし、放棄すると賠償の請求権も引き継げなくなります。遺族固有の慰謝料は別に請求できますが、本人の慰謝料と逸失利益は受け取れません。決める前に、どこまで影響が及ぶかを確かめてください。放棄には期限もありますので、早めに動く必要があります。

借金の額と、受け取れる賠償の額を比べて判断することになります。

逸失利益はどう計算されるのですか

生きていれば得られたはずの収入から、本人が使ったであろう生活費を差し引いて算定します。働いていた方なら実際の収入が、家事に従事していた方なら平均的な賃金が基礎になります。差し引く割合は家族構成によって変わり、扶養していた家族が多いほど低く見られるのが通常です。

年齢が若いほど働ける期間が長く、金額は大きくなります。

解決までどのくらいかかりますか

一年から二年かかることも珍しくありません。加害者が起訴されれば、判決を待ってから交渉に入ることもあります。長期戦になる前提で、無理のない進め方をしてください。

訴訟まで進めば、さらに時間がかかります。

示談を急かされています

応じる義務はありません。加害者側は刑事の判断が下る前に成立させたいと考えますが、その事情に合わせる必要はありません。金額に納得できないのであれば、断って構いません。

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