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交通事故に遭うと、必ずといっていいほど問題になるのが「過失割合」です。この事故は自分が3割悪い、相手が7割悪い――そんなふうに責任の重さを数字で表したものが過失割合で、受け取れる賠償金の額を大きく左右します。
ここで、多くの方が抱く素朴な疑問があります。「そもそも、この過失割合って誰が決めているの?」という問いです。警察が決めるのか、保険会社が決めるのか、それとも裁判所なのか。実はこの点を正しく理解していないと、知らないうちに不利な割合を受け入れてしまうことがあります。
結論を先にお伝えします。過失割合は、最終的には事故の当事者(実際には双方の保険会社)の話し合いによる合意で決まることがほとんどです。警察が決めてくれるわけではありません。この「誰が決めるのか」という構造を知っているかどうかで、交渉への向き合い方は大きく変わります。この記事では、交通事故にくわしい弁護士の視点から、過失割合を実際に決めているのは誰なのか、その判断は何をもとに行われるのか、そして納得できないときにどう動けばよいのかを、わかりやすく解説します。
過失割合は誰が決めるのか?——結論は「当事者間の合意」
まず大前提として、過失割合は法律で「この事故なら何対何」と一律に決められているわけではありません。事故の状況は一つひとつ違うため、それぞれのケースに応じて、当事者の間で「この事故の責任はこう分けましょう」と合意して決めるのが基本です。
実際の交通事故では、被害者・加害者の双方がそれぞれ任意保険に加入していることが多く、その場合は双方の保険会社の担当者同士が話し合って過失割合を決めるのが一般的な流れです。当事者本人が直接交渉することは少なく、保険会社が代理人のように間に立ちます。
この話し合いがまとまり、双方が「その過失割合でよい」と合意すれば、それが示談の内容として確定します。逆に合意できなければ、後述するように、第三者の関与する手続き(あっせん・調停・裁判)に進むことになります。いったん示談が成立すると、原則としてあとから過失割合をやり直すことはできないため、合意の前によく検討することが大切です。
- 過失割合
- 事故当事者それぞれにどれだけの責任(過失)があったかを示す割合。賠償金の額に直接影響する。
- 示談
- 当事者間で賠償の内容(過失割合や賠償額)について合意し、紛争を解決すること。
そもそも過失割合とは何か、どのような要素で決まるのかという全体像については、総論記事でくわしく解説しています。「誰が決めるか」を理解する前提として、あわせて読んでおくとより深く理解できます。
よくある誤解:警察は過失割合を決めない
過失割合をめぐって、もっとも多い誤解がこれです。「事故のとき警察が来て現場を調べたのだから、警察が過失割合を決めてくれるはず」と思っている方は少なくありません。しかし、これは正しくありません。
警察の役割は、交通事故という事実を確認し、刑事手続き(加害者を処罰すべきか)や交通行政の観点から事故を処理することにあります。具体的には、現場で実況見分を行い、事故の状況を記録したり、交通違反の有無を判断したりします。しかし、民事の損害賠償における過失割合を決めることは、警察の仕事ではありません。
ですから、事故現場で警察官が「あなたのほうが悪そうですね」といった趣旨のことを口にしたとしても、それがそのまま過失割合になるわけではありません。過失割合はあくまで、事故の客観的な状況をもとに、当事者(保険会社)の間で決められるものなのです。現場での警察官の言葉に過度に動揺したり、その場で責任を認めるような発言をしたりしないよう、落ち着いて対応することが大切です。
実際に過失割合を決めるのは「保険会社」が多い
では、当事者本人に代わって実際に過失割合の交渉を担うのは誰かというと、多くの場合は任意保険の保険会社です。被害者・加害者がそれぞれ任意保険に入っていれば、保険会社の担当者(示談担当者)同士が、事故の状況をもとに過失割合を話し合います。
ここで知っておきたいのが、保険会社は被害者の味方ではない、という現実です。相手方の保険会社は、加害者の負担(=自社の支払い)をできるだけ抑えようとする立場にあります。そのため、被害者にとって不利な過失割合を提示してくることがあります。
とくに、被害者が任意保険に入っていなかったり、入っていても示談交渉を保険会社に任せられない契約だったりする場合は、被害者本人が相手方の保険会社と直接やりとりすることになります。交渉のプロである保険会社を相手に、一人で適正な過失割合を勝ち取るのは簡単ではありません。過失割合を保険会社任せにすることのリスクについては、こちらの記事でくわしく解説しています。
もらい事故では自分の保険会社が交渉してくれない
ここで、見落とされがちな重要なポイントをお伝えします。あなたの過失がまったくない「もらい事故」(過失割合10対0)の場合、自分が加入している保険会社は、相手との示談交渉を代行できないのです。意外に思われるかもしれませんが、これには理由があります。
保険会社が示談交渉を代行できるのは、自社が保険金を支払う立場にあるからです。あなたに過失がゼロであれば、あなたの保険会社は相手に賠償金を支払う必要がなく、当事者ではありません。当事者でない保険会社が代わりに交渉すると、弁護士でない者が報酬を得て他人の交渉を行う行為(いわゆる非弁行為)にあたるおそれがあるため、法律上できないのです。
このとき頼りになるのが、任意保険に付帯していることの多い弁護士費用特約です。この特約を使えば、一定額まで弁護士費用を保険でまかなえるため、自己負担をほとんどかけずに弁護士へ依頼できます。もらい事故で相手方の保険会社と直接やりとりすることになったら、まず自分の保険に弁護士費用特約が付いていないかを確認してみましょう。
過失割合の判断は何をもとに行われるのか
過失割合は当事者の話し合いで決まるとはいえ、まったくの主観で「なんとなくこのくらい」と決めているわけではありません。判断のもとになる、いくつかの客観的な材料があります。
- 実況見分調書……警察が事故現場で作成する、事故状況を記録した書面。車の位置関係や当事者の説明が記載されます。
- ドライブレコーダーの映像……事故の瞬間を記録した映像。過失割合をめぐる争いで決定的な証拠になることがあります。
- 事故現場の写真・目撃者の証言……現場の状況や、第三者から見た事故の様子を裏づける材料。
- 過去の裁判例にもとづく基準……似たような事故で、過去にどう判断されたかをまとめた基準。
とりわけ、事故の状況を公的に記録した実況見分調書は、過失割合を判断するうえで重要な役割を果たします。だからこそ、実況見分の段階での説明が後の過失割合に影響するのです。実況見分への臨み方については、別記事でくわしく解説しています。
「別冊判例タイムズ」と過失割合の基準
過失割合の話し合いで、保険会社や弁護士が実際に参考にしているのが、過去の膨大な裁判例を類型別に整理した基準です。代表的なものに「別冊判例タイムズ」と呼ばれる資料があり、事故の状況ごとに、おおよその過失割合の目安が示されています。
たとえば「信号のある交差点で、直進車と右折車が衝突した場合」「一時停止規制のある道路から出てきた車と、優先道路を走る車の事故」といったように、事故のパターンごとに基本となる過失割合が定められています。さらに、夜間だった、速度超過があった、横断歩道上だった、などの個別の事情に応じて、その割合を修正していく仕組みになっています。
修正要素のイメージを、いくつか挙げてみましょう。
| 修正要素の例 | 過失割合への影響(イメージ) |
|---|---|
| 相手に著しい速度超過 | 相手の過失が加算される |
| 夜間の事故 | 状況により歩行者側に不利に働くことがある |
| 横断歩道上の事故 | 歩行者が手厚く保護される |
| 相手のわき見・スマホ操作 | 相手の過失が加算される |
これらはあくまでイメージで、実際の加算・減算の幅は事故類型ごとに細かく定められています。どの修正要素が自分の事故に当てはまるかを正しく拾えるかどうかで、過失割合は数%単位で動きます。
この基準は専門的で、どの類型に当てはまるか、どの修正要素が適用されるかの判断には経験が必要です。保険会社が提示した過失割合が、本当に自分の事故状況に合った基準にもとづいているのか――それを見極めるには、専門的な知識が欠かせません。車対車の事故など、類型ごとの過失割合の考え方は別記事でも解説しています。
当事者だけで決まらない場合の手続き
双方の話し合いで過失割合に折り合いがつかない場合は、第三者が関与する手続きに進むことになります。主な選択肢を整理しておきましょう。
| 手続き | 概要 |
|---|---|
| 示談あっせん(ADR) | 交通事故紛争処理センターなどの第三者機関が間に入り、和解を仲介する |
| 民事調停 | 簡易裁判所で、調停委員を交えて話し合いによる解決を図る |
| 訴訟(裁判) | 裁判所が証拠にもとづいて過失割合を判断し、判決を下す |
これらの手続きでは、中立の第三者や裁判所が関与するため、保険会社の一方的な提示に縛られず、より公平な判断を求めることができます。とくに裁判になれば、最終的に過失割合を決めるのは裁判所です。当事者の合意ではなく、証拠にもとづいた判断が下されることになります。どの手続きにもメリットと負担の両面があるため、自分の事案ではどれが適しているかを見極めることが大切です。
ただし、これらの手続きには時間や手間がかかり、法的な主張・立証も必要になります。どの手続きを選ぶべきか、勝算はどの程度かといった見通しを立てるには、専門家の助けがあると安心です。
なぜ被害者は不利になりやすいのか
ここまで読んでお気づきのとおり、過失割合をめぐる構造は、被害者にとって必ずしも有利ではありません。その理由を整理しておきましょう。
第一に、過失割合の話し合いの主導権を、交渉のプロである保険会社が握っていることです。相手方の保険会社は日々多くの示談を扱っており、過失割合の基準にも精通しています。一方、被害者にとっては交通事故そのものが初めての経験で、知識も交渉力も及びません。
第二に、相手方の保険会社は「自社の支払いを減らす」という立場上、被害者の過失を多めに見積もろうとする傾向があることです。提示された数字が「基準どおり」だと言われても、その類型の選び方や修正要素の評価が、被害者に不利に偏っていることもあります。
こうした構造を踏まえると、被害者が適正な過失割合を実現するには、自分でも基準を理解するか、専門家の力を借りることが有効です。過失割合は賠償額に直結するため、ここで妥協するかどうかが最終的な受取額を大きく左右します。過失割合と賠償額・過失相殺の関係については、こちらの記事も参考にしてください。
過失割合に納得できないときの動き方
提示された過失割合に納得できないとき、被害者にできることはあります。泣き寝入りする必要はありません。
まずは、提示された過失割合の根拠を確認し、自分の認識や手元の証拠(ドラレコ映像、現場写真など)と照らし合わせてみましょう。事実と違う前提で過失割合が決められている場合は、その点を具体的に指摘して反論できます。それでも保険会社が応じない場合は、示談あっせんや調停、訴訟といった手続きを検討することになります。
具体例:提示された過失割合をくつがえせたケース
たとえば、信号のある交差点で直進していたところ、対向の右折車と衝突した事故を考えてみましょう。相手方の保険会社は当初、「あなたにもスピードの出しすぎがあった」として、被害者に3割の過失があると提示してきました。しかし、被害者のドライブレコーダーには、自分が制限速度内で走行していたことと、相手が強引に右折してきた様子が記録されていました。
この映像を根拠に、被害者側が「速度超過の事実はなく、むしろ相手の右折方法に問題があった」と主張したところ、過失割合が見直され、被害者の過失が大幅に減ったとします。提示された3割をそのまま受け入れていれば、賠償額はその分減っていたはずです。客観的な証拠があれば、保険会社の提示をくつがえせる余地は十分にあるのです。
このケースのポイントは、被害者が「提示された数字をうのみにせず、根拠を確認して反論した」ことにあります。証拠を示しながら筋道立てて主張することが、適正な過失割合の実現につながります。
こうした交渉や手続きを被害者一人で進めるのは負担が大きいため、弁護士に依頼するのも有力な選択肢です。弁護士は過失割合の基準に精通しており、適切な証拠をもとに、被害者に有利な主張を組み立てることができます。納得できない過失割合への具体的な対処法は、こちらの記事でくわしく紹介しています。
事故の被害に遭われた方へ
過失割合がどう決まるかを理解したうえで、次に気になるのは「自分は最終的にいくら受け取れるのか」という点でしょう。慰謝料の概算は、入院・通院の期間などからおおよその目安をつかむことができます。
以下の計算ツールを使えば、ご自身のケースでの慰謝料の目安をその場で確認できます。最終的な受取額は過失割合によって調整されますが、まずは賠償全体の見通しを持つために、慰謝料の概算を把握しておきましょう。
交通事故 慰謝料の3基準比較シミュレーター
自賠責基準
¥120,000
任意保険基準
¥150,000
弁護士基準
¥530,000
※ 簡易計算です。実際の金額は治療実日数・後遺障害の有無・休業損害などにより異なります。任意保険基準は各社非公開のため業界平均値で算出しています。
表示された金額に幅があるのは、自賠責基準・任意保険基準・弁護士基準で計算結果が変わるためです。保険会社が最初に提示してくる金額は低めであることが多いので、過失割合とあわせて、提示された示談金をそのまま受け入れる前に一度確認しておくと安心です。
交通事故 慰謝料の3基準比較シミュレーター
自賠責基準
¥120,000
任意保険基準
¥150,000
弁護士基準
¥530,000
※ 簡易計算です。実際の金額は治療実日数・後遺障害の有無・休業損害などにより異なります。任意保険基準は各社非公開のため業界平均値で算出しています。
よくある質問(FAQ)
過失割合は警察に決めてもらえますか?
いいえ、警察は民事の過失割合を決めません。警察の役割は事故の事実確認や刑事・行政上の処理であり、損害賠償における責任の割り振りは管轄外です。ただし、警察が作成する実況見分調書は、過失割合を判断するうえで重要な証拠になります。
相手の保険会社が提示した過失割合に従うしかないのですか?
従う義務はありません。相手方の保険会社は自社の支払いを抑える立場にあり、提示された割合が常に適正とは限りません。根拠を確認し、自分の認識や証拠と食い違う場合は反論できます。合意できなければ、示談あっせんや調停、訴訟で第三者の判断を求めることもできます。
過失割合はいつの時点で決まりますか?
過失割合は、治療が終わって損害額が確定したあと、示談交渉の中で話し合われ、双方が合意した時点で確定するのが一般的です。事故直後に決まるものではありません。焦って早期に合意するより、損害の全体像が見えてから、根拠を確認して決めることが大切です。
裁判になったら過失割合は誰が決めますか?
裁判になれば、最終的に過失割合を判断するのは裁判所です。当事者の合意ではなく、提出された証拠にもとづいて裁判所が判断を下します。保険会社の一方的な提示に縛られない公平な判断を求められる反面、時間や手間、立証の負担がかかるため、見通しを立てたうえで臨むことが重要です。
過失割合に納得できないとき、弁護士に相談したほうがよいですか?
はい、過失割合の基準は専門的で、被害者一人で適正な割合を主張するのは容易ではありません。弁護士は基準に精通しており、証拠をもとに有利な主張を組み立てられます。多くの法律事務所では初回相談を無料で受け付けているので、提示された過失割合に疑問があれば、一度相談してみることをおすすめします。
もらい事故なのに自分の保険会社が交渉してくれません。なぜですか?
あなたの過失がゼロのもらい事故では、自分の保険会社は相手に賠償金を支払う立場にないため、当事者として示談交渉を代行できません。これは弁護士でない者が報酬を得て他人の交渉を行うこと(非弁行為)を避けるためのルールによるものです。この場合は、任意保険に弁護士費用特約が付いていれば、自己負担を抑えて弁護士に依頼できます。完全な被害者であるもらい事故ほど、相手方の保険会社と一人で交渉することになりやすいので、特約の有無を確認しておきましょう。
過失割合は警察が決めるものと思われがちですが、実際には、最終的に当事者間(多くは保険会社同士)の交渉によって決まります。警察は事故の事実を記録するだけで、過失の割合そのものを判定する役割は担っていません。つまり、提示された過失割合は交渉次第で変わりうるということです。保険会社の主張を受け入れる前に、その割合に妥当な根拠があるのかを確認することが大切です。納得できない場合は、弁護士に相談し、過去の裁判例や証拠にもとづいて適正な割合を主張していくことで、賠償額の改善につながることがあります。
あなたの慰謝料はいくら?3基準で比較診断
自賠責基準
¥120,000
任意保険基準
¥150,000
弁護士基準
¥530,000
※ 簡易計算です。実際の金額は治療実日数・後遺障害の有無・休業損害などにより異なります。任意保険基準は各社非公開のため業界平均値で算出しています。
