2019/12/6 449view

交通事故の加害者が飲酒運転だったら~補償の範囲や慰謝料・損害賠償を解説

この記事で分かること
  1. 加害者が飲酒運転の交通事故でも、被害者は補償を受けられる
  2. 飲酒運転は、酒気帯び運転と酒酔い運転の2種類
  3. 加害者が飲酒運転の交通事故における慰謝料・損害賠償金は増額される可能性も
  4. 慰謝料増額事由として認められるのは、被害者に通常の想定を超える精神的苦痛が生じているケースのみ
  5. 慰謝料増額事由として認められた場合の慰謝料金額は、個別の事情を総合的に見て判断される
  6. 加害者が飲酒運転の交通事故では、加害者の過失割合を上方修正できる場合がある
  7. 交通事故専門弁護士に相談すると、慰謝料増額や過失修正など飲酒運転の交通事故特有の問題にも適切に対処してもらえる

加害者が飲酒運転の交通事故でも、被害者は加害者の自動車保険から補償を受けることができます。飲酒運転事故の場合には、慰謝料増額事由や過失修正など専門知識を要する問題がありますので、交通事故専門の弁護士に相談するのがベストです。

飲酒運転の加害者による交通事故でも、被害者は被害の補償を受けられる

交通事故の損害賠償では、通常、被害者への補償は加害者の自賠責保険・任意保険でまかなわれます。では加害者が飲酒運転だった場合、加害者の保険から被害の補償を受けられるのでしょうか?

その答えはYESです。加害者が飲酒運転であっても、加害者の保険から被害の補償を受けられます。

では、加害者が飲酒運転の交通事故と通常の交通事故では、被害者の補償に何か違いはあるのでしょうか?

その答えもYESです。結論から言えば、加害者が飲酒運転の交通事故では、被害者は通常の交通事故よりも高額の慰謝料・損害賠償金を請求できる可能性があります。

本記事では、加害者が飲酒運転の交通事故で、被害者が請求できる補償の範囲や慰謝料・損害賠償金等について解説します。

ワンポイントアドバイス
加害者が飲酒運転の交通事故被害では、加害者の保険のほか、ご自身が加入している任意保険の「人身傷害保険」も使うことができます。もっとも、加害者からの賠償金と人身傷害保険の保険金の双方を重複して受け取ることはできないため、保険適用で悩まれた場合には、ご自身が加入している任意保険の約款を持って弁護士に相談するとよいでしょう。

飲酒運転の交通事故の定義と発生件数

加害者が飲酒運転の交通事故における慰謝料・損害賠償金について見ていく前に、まず、飲酒運転の交通事故の定義と発生件数について確認しましょう。

飲酒運転の法律上の定義

飲酒運転は、道路交通法において

  • 酒気帯び運転
  • 酒酔い運転

の2種類に分けられます。

酒気帯び運転とは

酒気帯び運転とは、呼気(吐き出す息)1リットル中のアルコール濃度が0.15mg以上となる状態のことです。

酒気帯び運転の検査は、警察官の検問や職務質問などの際に行われ、具体的な検査方法としては、アルコール検知器を使い呼気中のアルコール濃度を測定する形が採られています。

酒酔い運転とは

酒酔い運転とは、アルコールの影響により正常な運転ができないおそれがある状態のことです。

酒酔い運転には、酒気帯び運転のような呼気中のアルコール濃度の規定はなく、まっすぐに歩けない、話のやり取りがおかしいなど、その言動からアルコールの影響による注意力・判断力の低下が見られる状態のことです。

飲酒運転の交通事故発生件数は下げ止まり傾向

飲酒運転については、平成14年の道路交通法改正を始めとして、これまで関連法規の厳罰化が進んできました。

この厳罰化に一定の抑止効果があったのか、平成10年には21,061件だった飲酒運転による交通事故は徐々に減少し、平成30年には3,355件となりました。

しかし近年ではその減少幅は縮まっており、飲酒運転による交通事故発生件数は下げ止まり傾向にあります。政府は飲酒運転根絶を目標に掲げていますが、まだまだその道程は遠いのが現状です。

こうしたこと考えると、飲酒運転の交通事故に巻き込まれることは、誰の身に起こってもおかしくないと言えるでしょう。

参考リンク:厚生労働省「警察庁交通局配布資料」(飲酒運転事故関連統計資料)
参考リンク:警察庁「飲酒運転による交通事故件数の推移(平成20~30年)」

ワンポイントアドバイス
悪質な飲酒運転事故は、近年、社会問題として注目されるようになりました。こうした社会気運や厳罰化の流れを無視して飲酒運転を行い、他人に被害を与えた加害者には、被害者は相応の損害賠償を請求するべきです。そのためには、交通事故専門の弁護士に相談するとよいでしょう。

加害者の飲酒運転による交通事故の慰謝料・損害賠償金相場

では、不幸にも飲酒運転の交通事故に巻き込まれた場合、被害者の慰謝料・損害賠償金はどうなるでしょうか?

これについては本記事冒頭でも述べたとおり、加害者が飲酒運転の交通事故であっても、被害者への慰謝料・損害賠償金は加害者の自賠責保険・任意保険から支払ってもらうことが可能です。

というのも自動車保険の保険金制度においては、被害者救済という観点から、加害者が飲酒運転という法律に背く行為を行ったとしても、被害者への補償をすべきだとされているからです。

飲酒運転は、慰謝料増額事由になりうる

そこで気になるのは、加害者が飲酒運転の交通事故における慰謝料・損害賠償金の相場です。

実は加害者が飲酒運転の交通事故では、通常の交通事故よりも、被害者への慰謝料・損害賠償金が増額される可能性があります。

慰謝料とは

慰謝料とは、被害者が受けた肉体的・精神的苦痛に対する損害賠償金です。

交通事故の場合、

  • 入通院慰謝料(交通事故により怪我を負い、入通院したことに対する慰謝料)
  • 後遺障害慰謝料(交通事故により後遺障害を負ったことに対する慰謝料)
  • 死亡慰謝料(交通事故により死亡したことに対する慰謝料)

の3種類の慰謝料があります。

慰謝料増額事由とは

慰謝料には一定の基準・相場があります。しかし、個別の事情を斟酌して、金額を増減させることもできます。このうち慰謝料を増額させる事情のことを「慰謝料増額事由」といいます。

「慰謝料増額事由」に当てはまる事情とは、具体的には、

  • 加害者の過失が重大、事故態様が悪質
  • 加害者の態度が悪い

などが挙げられます。

飲酒運転は、「加害者の過失が重大、事故態様が悪質」であるとして、慰謝料増額事由に該当する場合があります。

飲酒運転が慰謝料増額事由として認められるケース

もっとも、すべての飲酒運転の交通事故が、慰謝料増額事由ありと認められるわけではありません。

加害者の飲酒量や、加害者が過去に飲酒事故を起こしていたか否か、起こしていたならばその回数などを総合的に見て、被害者に通常の想定を超える精神的苦痛が生じているケースのみが、慰謝料増額事由ありとして認められます。

慰謝料はどのくらい増額する?

飲酒運転が慰謝料増額事由として認められた場合の慰謝料金額ですが、これといった一律の相場はありません。

実際の裁判例などを見ても、怪我や後遺障害の程度など、個別の事情を総合的に見て判断されています。

ワンポイントアドバイス
慰謝料増額事由があったとしても、どのくらいの増額を請求できるかは事案ごとに違います。したがって、これまでの裁判例を把握しつつ適切な請求ができるよう、交通事故専門の弁護士などに相談することをお薦めします。

加害者が飲酒運転の場合の交通事故過失割合

加害者が飲酒運転の交通事故では、過失割合が被害者に有利になり、結果として慰謝料・損害賠償金も被害者に有利な金額になる場合があります。

交通事故の過失割合の定義

交通事故では、事故が起きたことに対する加害者と被害者の責任の割合を、100:0や80:20などの比率で表します。この比率を、「過失割合」と言います。

示談や裁判で過失割合を決める際には、事故態様ごとに基準となる過失割合を示した「民事交通訴訟における過失相殺率の認定基準(全訂5版)」という本を用います。これは、東京地方裁判所交通専門部の裁判官が過去の裁判例をもとに作成したものです。

この本に示された基本過失割合は、案件ごとの個別具体的な事情(修正要素)を踏まえ、-5、+10などに修正できます。

慰謝料・損害賠償金は過失割合分だけ減額される

交通事故の損害賠償では、被害者の過失割合分だけ慰謝料・損害賠償金を減額する「過失相殺」が行われます。例えば、過失割合が加害者80:被害者20で損害総額が1000万円であれば、その20%に当たる200万円が減額され、実際に支払われる金額は800万円となります。

過失相殺を考えると、過失割合は、交通事故の示談・裁判において非常に重大な問題と言えます。

飲酒運転は過失割合の修正要素になる場合が

飲酒していると、注意力や思考力が落ち、安全運転が通常より難しくなります。つまり交通事故を起こす可能性が高いのです。

そのため飲酒運転は、修正要素となる

  • 著しい過失(事故態様ごとに通常想定されている程度を超えるような過失)
  • 重過失:(「著しい過失」よりも更に重い、故意に比肩する重大な過失)

に当たるとして、加害者の過失割合を上方修正する場合があります。

この場合の修正値は、酒気帯び運転が「著しい過失」として+10%程度、酒酔い運転が重過失として+20%程度とされています。

ただし飲酒運転は、必ずしも過失割合を修正されるとは限りません。裁判所が、飲酒の影響は事故に影響を及ぼしていないとして、過失割合を修正しないと判断したケースもあります。

ワンポイントアドバイス
過失相殺は、損害額が大きいほど重大な問題となります。後遺障害の残る交通事故被害では、1億円、2億円という損害額になることもありますが、加害者の過失割合が重過失として+20%と修正されれば、被害者は、損害額1億円ならば2,000万円、2億円ならば4,000万円も多くの賠償を受け取れます。

飲酒運転で交通事故を起こした加害者への行政処分・刑事処分

加害者が飲酒運転の交通事故では、加害者は被害者への損害賠償という民事処分のほかに、行政処分、刑事処分を受けます。

行政処分

交通事故において行政処分とは、都道府県の公安委員会により

  • 免許停止(免許が停止し、一定期間の運転が禁じられる)
  • 免許取消(免許が取り消され、一定期間は免許を取ることができない)

などの処分を受けることを言います。

これは、酒気帯び運転と酒酔い運転で処分内容が違います。

酒気帯び運転

酒気帯び運転では、

  • 呼気中アルコール濃度が1リットルあたり0.15mg以上、0.25mg未満:免許停止90日(前歴及びその他の累積点数がない場合)
  • 呼気中アルコール濃度が1リットルあたり0.25mg以上:免許取消2年(前歴及びその他の累積点数がない場合)

です。

酒酔い運転

酒酔い運転では、免許取消3年(前歴及びその他の累積点数がない場合)です。

刑事処分

刑事処分とは、罪を犯したとして、裁判を経て刑罰を科せられる処分を言います。

こちらも行政処分同様に、酒気帯び運転と酒酔い運転で処分内容が異なります。

酒気帯び運転

酒気帯び運転をした場合、車両等を運転した者に対しては、3年以下の懲役又は50万円以下の罰金が科せられます。

酒酔い運転

酒酔い運転をした場合、車両等を運転した者に対しては、5年以下の懲役又は100万円以下の罰金が科せられます。

ワンポイントアドバイス
飲酒事故の加害者には刑事処分が下されるのが基本ですが、なかには不起訴として刑事罰が科されない場合もあります。そのような時、被害者は「検察審査会」に不起訴の当否を審査してもらうよう申し立てることもできます。なお申し立ての際には、交通事故や刑事事件に詳しい弁護士に相談するのがベストです。

加害者が飲酒運転の交通事故を、弁護士に相談すべき理由

被害者が動かなければ、慰謝料増額や過失修正は望めない

加害者が飲酒運転の交通事故において、被害者が有利な慰謝料・損害賠償金を勝ち取るためには、慰謝料増額事由や過失割合の修正についてきちんと理論立てて主張する必要があります。

加害者の保険会社は、親身に見えても結局は加害者側の立場です。支払う損害賠償金を極力少なくしたいというのが本当のところですので、被害者が動かなければ、飲酒運転事故のような悪質な事故であっても、慰謝料増額や加害者の過失割合の上方修正は望めないのが実情です。

弁護士は被害者代理人として飲酒運転事故に適切に対処

しかし、素人の被害者が一人で対処しようと思っても、百戦錬磨の保険会社と交渉するのは困難です。

というのも交通事故の示談交渉・裁判は、飲酒のない通常の事故でさえ、法的知識、医学的知識、自動車工学知識など様々な専門的知識が必要であるところ、そこに加害者飲酒という特殊事情が加われば、より一層の専門的知識やテクニックが必要だからです。

その点、交通事故専門の弁護士は、交通事故に関する深い知識と豊かな経験があり、被害者代理人として飲酒運転事故にも適切に対処してくれます。具体的には、加害者がどの程度飲酒していたのか、飲酒が事故にどれほど悪影響を及ぼしたか等について、法的根拠をもとに立証するなどしてくれます。

初回相談料を無料にしている弁護士も

今は交通事故の法律相談を初回無料にしていたり、着手金なしの完全報酬型で受任してくれたりする弁護士も増えています。

また、ご自身の加入する任意保険に弁護士費用特約を付帯していれば、示談交渉や裁判にかかる弁護士費用や法律相談料を、ご自身の任意保険から支払ってもらうこともできます。

弁護士は、けっして敷居の高い存在ではありません。一人で悩むよりも、弁護士という専門家のサポートを得て、納得のいく解決を目指しましょう。

交通事故に巻き込まれたら弁護士に相談を
無料相談を活用し、十分な慰謝料獲得を
保険会社が提示した慰謝料・過失割合に納得が行かない
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適正な後遺障害認定を受けたい
交通事故の加害者が許せない
上記に当てはまるなら弁護士に相談