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交通事故の見舞金とは?受け取るべき?示談金との関連性や金額相場も解説
この記事で分かること
- 交通事故の見舞金と慰謝料・損害賠償金・示談金は別物
- 交通事故の見舞金を受け取ると、示談金から差し引かれる・加害者が減刑される等の可能性あり
- 経済的理由で交通事故の見舞金が必要な場合には、代わりに仮渡金・内払金を利用する方法も
- 交通事故の見舞金に相場はなく、被害者が加害者に支払い請求する権利もない
- 交通事故の慰謝料・損害賠償金には相場があり、被害者が加害者に支払い請求する権利もある
- 交通事故の見舞金でお悩みの場合は、弁護士に相談するのがベスト
交通事故の見舞金を受け取ると、示談金から差し引かれる等の可能性があります。交通事故の見舞金に相場はなく、被害者が加害者に支払いを請求する権利もありませんが、交通事故の慰謝料・損害賠償金には一定の相場があり、支払いを請求する権利があります。見舞金などの交通事故問題は弁護士に相談するのがベストです。
交通事故の見舞金とは
交通事故に遭うと、加害者から見舞金を提示されることがあります。
これは「被害者に対し謝意や誠意を表すため」ためのお金です。加害者は、事故日から1週間程度の間に被害者を見舞う場合がありますが、この際に社会儀礼の一つとして、謝罪の意味を込めて提示するのが見舞金なのです。
もっとも、被害者へのお見舞いや見舞金の支払いは加害者にとって義務ではありません。あくまで加害者の任意、自由意志により行われるものなのです。
見舞金と慰謝料・損害賠償金は別物
交通事故で加害者から支払われる金銭には、見舞金の他、
- 慰謝料
- 損害賠償金
- 示談金
があります。
これらは、見舞金とは全くの別物です。
見舞金は、被害者が加害者に支払い請求する権利がない金銭であるのに対し、慰謝料・損害賠償金・示談金は、被害者が加害者に支払い請求する正当な権利のある金銭です。
交通事故の見舞金を受け取るリスク
見舞金が示談金・損害賠償金に影響することも
見舞金の受け取りは、被害者が最終的に受け取る示談金・損害賠償金に影響することがあります。
具体的には、「被害者は見舞金として受け取ったつもりだが、加害者は示談金・損害賠償金として支払ったつもりだった」というケースです。
例えば、加害者が見舞金を「示談金・損害賠償金の一部」として支払ったつもりのケースでは、後々の示談の際に損害賠償総額から見舞金を差し引いた金額でしか、示談金・損害賠償金を支払ってもらえないこともあるのです。
もっと悪いのは、加害者が見舞金を「示談金・損害賠償金の全額」として支払ったつもりのケースです。加害者が、被害者の見舞金受け取りにより示談が成立したと主張してくると、双方の認識の違いから解決まで長引くことがあります。
裁判での見舞金の扱い
では示談で解決せず、裁判になった場合の見舞金の扱いはどうなっているでしょうか?
これまでの裁判例では、
- 損害賠償総額から見舞金全額を差し引いたケース
- 損害賠償総額から見舞金の一部を差し引いたケース
- 損害賠償総額から見舞金を一切差し引かなかったケース
がそれぞれあります。
もっとも、見舞金を差し引くか差し引かないか、差し引くならばその金額はいくらかという点に一律の基準はないようです。
逆に言えば裁判での見舞金の扱いは、個々の事故態様や事情を踏まえて慎重に検討する必要があると言えるでしょう。
加害者が減刑される可能性あり
人身事故では、
- 刑事上の責任(懲役、禁錮、罰金など)
- 行政上の責任(免許取消、免許停止、自動車運転免許証の点数加算)
- 民事上の責任(損害賠償)
があります。
見舞金を受け取ると、加害者の刑事上の責任が軽くなり、減刑される可能性が出てきます。
刑事裁判においては、被告人(加害者)に関する様々な事情を考慮し処罰を軽くする「情状酌量」と呼ばれるものがありますが、交通事故では、示談が成立することでこの情状酌量をするケースが見受けられます。
見舞金受け取りは示談成立には及びませんが、裁判官の心証に影響しないとは言い切れません。
被害者が、加害者の運転の悪質さや事故後の対応などから厳罰を望む場合には、見舞金の受け取りを控えるべきだと言えるでしょう。
感情的になり示談交渉が難航する可能性あり
加害者が見舞金を持参した際に、相手の顔を見たことで事故の恐怖などを思い返し、加害者をなじりたくなることがあるかもしれません。しかし感情的になると、その後の示談交渉が難航する可能性があります。
加害者に怒りをぶつけたくなるのは自然なことですが、示談はあくまでも双方の合意によって成立するものですから、加害者がへそを曲げてしまうと解決まで長引いてしまいます。
自分には冷静な対応が難しいかもとお考えの場合には、見舞金の受け取りを断るというのも一つです。
交通事故の見舞金が経済的理由で必要な時は
仮渡金・内払請求を利用しよう
経済的理由により、交通事故の見舞金が即金で必要な時は、見舞金の代わりに
- 自賠責保険に仮渡金請求をする
- 任意保険に内払金請求をする
という方法もあります。
仮渡金請求とは
仮渡金請求とは、被害者が自賠責保険に当座の費用を支払ってもらう手続きです。仮渡金は、自動車損害賠償保障法に基づく制度によるもので、死亡の場合290万円、傷害の場合は程度に応じて5万円、20万円、40万円となっています。
注意すべきは、仮渡金は最終的な損害賠償総額から差し引かれるという点です。つまり仮渡金制度とは、早期に損害賠償金の一部を支払ってもらう制度なのです。
内払金請求とは
内払金請求とは、被害者が任意保険に損害賠償金の一部を支払ってもらう手続きです。
内払金は、任意保険会社が独自で設けている制度によるもので、請求時点での損害額が10万円以上であれば、その損害額全額が傷害による損害の保険金額(120万円)に達するまで支払われます(第2回目以降の内払いを請求する場合にも、その都度10万円以上の損害があることが必要です)。
内払金は、仮渡金と同様に最終的な損害賠償額から差し引かれます。ただし内払金は仮渡金と違い、法的根拠に基づいて行うものではないため、任意保険が請求に応じてくれない場合もあります。
交通事故における見舞金の相場
交通事故における見舞金の相場ですが、これといった明確な基準はありません。というのも見舞金は、あくまで加害者の任意で支払われるものだからです。
見舞金相場の参考になる対人臨時費用
しかし一つの考え方としては、任意保険の「対人臨時費用」を参考にするというものがあります。
対人臨時費用とは、交通事故で死傷した被害者への見舞金・香典などのために支払われる保険金です。
各保険会社の方針や被害者の入通院日数などにもよりますが、被害者1名につき2〜20万円程度としているところが多いです。
交通事故における慰謝料の相場
見舞金は、前述したとおり加害者が任意で支払うもののため、被害者には支払いを請求する権利はありません。けれども損害賠償金ならば、加害者に支払いを請求する権利が認められています。
では損害賠償金の中でも高額になりやすい「慰謝料」の相場はどのくらいしょうか?
結論から言えば、慰謝料の相場は
入通院慰謝料 | 治療期間 |
後遺障害慰謝料 | 後遺障害の等級 |
死亡慰謝料 | 被害者の立場(※弁護士基準の場合) |
に個別の事情などを勘案して計算します。以下で具体例を見てみましょう。
むちうち症(他覚症状なし)で通院3ヶ月の入通院慰謝料
むちうち症(他覚症状なし)で通院3ヶ月の入通院慰謝料の相場は、弁護士に依頼した場合で53万円です。
骨折で入院1ヶ月・通院5ヶ月の入通院慰謝料
骨折で入院1ヶ月・通院5ヶ月の場合の入通院慰謝料の相場は、弁護士に依頼した場合で141万円です。
むちうち症で後遺障害14級の後遺障害慰謝料
むちうち症で後遺障害14級の後遺障害慰謝料の相場は、弁護士に依頼した場合で110万円です。
頭部外傷による高次脳機能障害で後遺障害9級の後遺障害慰謝料
頭部外傷による高次脳機能障害で後遺障害9級の後遺障害慰謝料の相場は、弁護士に依頼した場合で690万円です。
交通事故の見舞金でお悩みの場合は弁護士に相談を!
まとめ:交通事故の見舞金に明確な金額相場はない
交通事故の見舞金を受け取るべきか否かは、後々に受け取る示談金・損害賠償金から見舞金が差し引かれるケースがあることや、加害者の減刑につながる可能性があるといったリスクを認識した上で決めましょう。
交通事故の見舞金は、加害者の被害者に対するお詫びの気持ちを表すために、加害者の任意、つまり自由意志で支払われるもので、被害者が加害者に支払いを請求する権利はなく明確な金額相場もありません。
一方、慰謝料を始めとする損害賠償金であれば、被害者に支払いを請求する正当な権利がありますし、一定の金額相場もあります。弁護士に依頼すると、保険会社の提示する金額よりも高額な慰謝料・損害賠償金を請求できますので、弁護士に相談すると有利な解決につながります。
弁護士は交通事故の見舞金に詳しい
交通事故専門の弁護士は見舞金に精通しており、保険会社との示談交渉・訴訟で見舞金の差し引きが問題となっても、被害者の事故態様や事情に似た裁判例を引くなどし、被害者に有利な主張を行ってくれます。
交通事故の示談交渉・訴訟では、見舞金の他に慰謝料・損害賠償金・過失割合・後遺障害等級認定なども問題となります。これらは非常に専門的な分野であり、素人が一人で対応するのは困難ですが、交通事故専門の弁護士であれば豊かな法的知識と経験でスムーズな解決に導いてくれます。
見舞金など交通事故問題でお悩みの場合には、ぜひ弁護士に相談しましょう。いまは初回法律相談料を無料にしていたり、着手金ゼロの完全成果報酬型にしたりしている弁護士も多いです。弁護士は昔よりもずっと身近な存在になっていますので、一人で悩まず、プロの手を借りて納得のいく解決を勝ち取りましょう。
無料相談を活用し、十分な慰謝料獲得を
- 保険会社が提示した慰謝料・過失割合に納得が行かない
- 保険会社が治療打ち切りを通告してきた
- 適正な後遺障害認定を受けたい
- 交通事故の加害者が許せない