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悪意の遺棄で離婚|慰謝料の相場と証拠の集め方

悪意の遺棄で離婚|慰謝料の相場と証拠の集め方

この記事で分かること

  • 悪意の遺棄にあたる行為とあたらない行為の違い
  • 同居・協力・扶助義務との関係
  • 離婚を進める協議・調停・裁判の手順
  • 慰謝料の金額を左右する要素と請求方法
  • 遺棄を証明するために集めておきたい証拠

悪意の遺棄とは、正当な理由なく夫婦の同居・協力・扶助の義務を放棄する行為で、相手が同意しなくても離婚が認められる法定離婚原因です。生活費の不払いや一方的な別居が典型例ですが、単身赴任や暴力からの避難など正当な理由のある別居は該当しません。慰謝料の金額は遺棄の期間や悪質さで変わり、請求には客観的な証拠が欠かせません。別居中は婚姻費用を請求すれば生活を守れます。早めに動くことが解決への近道です。

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悪意の遺棄とは?夫婦の義務との関係からわかりやすく解説

「悪意の遺棄」という言葉を、離婚を考えはじめてから初めて耳にした方も多いのではないでしょうか。聞き慣れない法律用語ですが、これは民法が定める法定離婚原因のひとつで、相手が同意しなくても離婚を認めてもらえる可能性がある重要な事由です。まずは、この言葉が何を指すのかを丁寧に押さえていきましょう。

悪意の遺棄とは、夫婦が本来果たすべき義務を、正当な理由もないのに一方的に放棄してしまう行為を指します。ここでいう義務とは、民法が定める同居義務・協力義務・扶助義務の三つです。夫婦は一緒に暮らし、互いに助け合い、生活を支え合う関係にあります。これらを理由なく投げ出せば、それは単なる別居やすれ違いではなく、法律上の問題として扱われることになるのです。

現在の法律では、裁判で離婚が認められる原因は四つに整理されています。不貞行為、悪意の遺棄、三年以上の生死不明、そして婚姻を継続し難い重大な事由です。悪意の遺棄はこのうちの二つ目にあたり、古くから離婚原因として位置づけられてきました。相手が離婚に応じないときでも、この事由が認められれば、裁判を通じて離婚を実現できるという点に大きな意味があります。

「悪意」という言葉は、日常では「悪い心」という意味で使われますが、法律の世界では少しニュアンスが異なります。ここでの悪意は、婚姻関係が壊れることをわかっていながら、あえてその状態を放置する意思を指します。つまり、家庭を壊すつもりで義務を怠っているかどうかが問われるのです。

もう少し具体的に、三つの義務がそれぞれ何を意味するのかを見ておきましょう。同居義務とは、正当な理由がない限り夫婦は一緒に暮らすべきだという義務です。協力義務とは、家事や育児、家計の維持などについて互いに手を取り合う義務を指します。そして扶助義務とは、生活の水準を互いに同じ程度に保てるよう、経済的に支え合う義務のことです。これらは夫婦であることの根幹をなすものであり、どれか一つを一方的に投げ出せば、婚姻関係そのものが揺らいでしまいます。

ここで押さえておきたいのは、悪意の遺棄は単なる「冷たい態度」や「性格の不一致」とは次元が違うという点です。夫婦の間に会話がない、気持ちが離れているといった状態は、それ自体では法律上の遺棄とはいえません。あくまで、生活を支える具体的な義務を、正当な理由なく果たさなくなったという行為があってはじめて、悪意の遺棄という評価が成り立つのです。問われるのは気持ちの温度ではなく、義務を果たしているかどうかという行動の中身だと考えると、輪郭がつかみやすくなります。

あなたが今、配偶者から生活費を渡されず苦しい思いをしていたり、突然家を出て行かれて連絡も取れなくなっていたりするのなら、それが悪意の遺棄にあたる可能性は十分にあります。この記事では、どのようなケースが該当するのか、離婚や慰謝料請求をどう進めればよいのかを、順を追って解説していきます。

悪意の遺棄
正当な理由なく夫婦の同居義務・協力義務・扶助義務を放棄する行為。民法が定める法定離婚原因の一つで、相手の同意がなくても離婚が認められる根拠になります。
婚姻費用
婚姻している間、夫婦が互いの生活を同じ水準に保つために分担する費用。別居中であっても、離婚が成立するまでは請求できます。

なお、悪意の遺棄は不貞行為と並んで、証拠さえそろえば裁判でも認められやすい離婚原因とされています。ただし、その「証拠さえそろえば」という部分が実は大きな壁になります。相手が否定したときに、それを覆すだけの材料を用意できているかどうかが、結果を大きく左右するのです。この記事を読み進めながら、自分のケースで何が言えるのかを一緒に整理していきましょう。

悪意の遺棄に該当するケース・該当しないケース

悪意の遺棄にあたるかどうかは、行為の外形だけでなく、その背景や事情によって判断されます。同じ「別居」でも、悪意の遺棄になる場合とならない場合があるのです。ここでは、典型的なパターンを具体的に見ていきましょう。

たとえば、同じように夫が家を出て別居しているケースを考えてみます。単身赴任のために家族と離れて暮らしているのなら、それは仕事上の必要に基づく別居であり、遺棄にはあたりません。一方、特に理由もなく突然家を出て、生活費も入れず連絡も絶っているのなら、同じ「別居」でも遺棄と評価される可能性が高くなります。外から見た形は似ていても、事情がまるで違えば結論も分かれるのです。この違いを意識しながら、次の具体例を読んでみてください。

もう一つ、判断を難しくするのが、別居に至るまでの経緯です。夫婦げんかの延長で一方が家を飛び出したものの、数日で戻ってきたというような場合、それを遺棄と呼ぶのは行き過ぎでしょう。反対に、けんかをきっかけに家を出て、そのまま何か月も生活費を止め、話し合いにも応じないとなれば、当初は感情的な家出であっても、途中から悪意の遺棄へと性質が変わっていったと評価される余地が出てきます。行為が始まった瞬間だけでなく、その後どう振る舞ったかまで含めて見られるのだ、という視点を持っておくと、自分の状況を客観的に捉えやすくなります。

悪意の遺棄にあたりやすい行為

まず、生活費をまったく渡さないケースです。収入があるにもかかわらず、配偶者や子どもの生活費を意図的に渡さず、経済的に追い詰める行為は、扶助義務の放棄として悪意の遺棄と評価されやすい典型例です。

次に、正当な理由なく家を出て行き、戻らないケースです。仕事や介護といった事情がないのに勝手に別居を始め、家庭に戻る意思を見せない場合は、同居義務に反する行為として問題になります。

さらに、健康な配偶者が働こうとせず、家計を顧みないケースも該当し得ます。理由もなく就労を拒み、家庭の経済的負担をすべて相手に押し付ける行為は、協力義務の放棄と見られます。

もう一つ見落とされがちなのが、家に相手を入れない、あるいは追い出すというかたちの遺棄です。鍵を替えて配偶者が帰れないようにしたり、荷物をまとめて出て行くよう迫ったりする行為も、同居を拒む一方的な振る舞いとして問題になります。自分が家を出るのではなく、相手を家庭から締め出すこともまた、遺棄の一類型になり得るのです。

あなたが「これは自分のケースにあてはまるのだろうか」と迷うときは、相手の行為に正当な理由があるかどうか、そして家庭を顧みない状態がある程度の期間続いているかどうかを手がかりにするとよいでしょう。一度きりの喧嘩や短期間の家出であれば遺棄とまではいえないことが多く、継続性が一つの目安になります。

悪意の遺棄にあたりにくい行為

一方で、正当な理由がある別居は悪意の遺棄にはなりません。単身赴任や病気の療養、あるいは相手の暴力から逃れるための避難などは、むしろ合理的な行動です。

また、夫婦で話し合って合意のうえ別居している場合も、一方的な放棄とはいえないため、悪意の遺棄には該当しにくいといえます。冷却期間を置くための別居や、互いの合意に基づいた住み分けは、むしろ関係を見つめ直す前向きな選択とも受け止められます。

加えて、経済的に余裕がなくて生活費を十分に渡せないという場合も、直ちに悪意の遺棄とはなりません。悪意の遺棄で問われるのは「渡せるのに渡さない」という意図的な放棄です。失業や病気などで収入が途絶え、やむを得ず生活費が不足しているのであれば、その事情は考慮されます。逆にいえば、収入が十分にあるのに意図的に渡さない場合と、渡したくても渡せない場合とでは、法律上の評価がまったく変わってくるということです。

このように、悪意の遺棄の判断は「何をしたか」だけでなく「なぜそうしたのか」まで踏み込んで行われます。表面的な行動が同じでも、背景にある事情次第で結論は分かれます。だからこそ、自分のケースを整理するときには、相手の行為とその理由をセットで振り返ることが欠かせないのです。

悪意の遺棄を理由に離婚を進める手順

悪意の遺棄があったからといって、自動的に離婚が成立するわけではありません。日本の離婚制度には決められた段階があり、その順序に沿って進めていく必要があります。ここでは、実際の流れを確認しておきましょう。

離婚を考えはじめたばかりの方は、「悪意の遺棄という立派な理由があるのだから、すぐに離婚できるはずだ」と思うかもしれません。しかし現実には、相手が離婚に同意しない限り、いくつかの段階を踏む必要があります。逆にいえば、相手が話し合いに応じてくれるなら、悪意の遺棄という理由を持ち出すまでもなく、協議で円満に離婚できることも多いのです。手続きの選択は、相手の態度によって変わってくると考えてください。

  1. まずは夫婦での話し合い、つまり協議離婚を試みます。相手が応じるなら、これが最も早く負担の少ない方法です。
  2. 話し合いがまとまらない、あるいは相手と連絡が取れない場合は、家庭裁判所に離婚調停を申し立てます。調停委員を介して話し合いを進める手続きです。
  3. 調停でも合意に至らなければ、離婚訴訟へと進みます。ここで悪意の遺棄が法定離婚原因として認められれば、相手が反対しても離婚が認められます。

この流れの中で大切なのは、いきなり裁判を起こすことはできないという点です。原則として調停を経てからでなければ訴訟に進めない仕組みになっているため、段階を踏むことを意識してください。これを調停前置主義と呼びます。相手が話し合いに応じそうにないからと、いきなり裁判に飛びつくことはできないのです。

もっとも、悪意の遺棄のケースでは、相手がそもそも連絡を絶っていることも珍しくありません。家を出て行方がわからない、電話にもメッセージにも一切応じないという状況です。こうした場合でも調停を申し立てること自体は可能で、相手が出頭しなければ調停は不成立となり、訴訟へ進む道が開けます。相手が逃げているからといって離婚できないわけではない、という点は覚えておくと安心です。

また、協議や調停で離婚がまとまる場合には、離婚の条件を書面にしっかり残しておくことが欠かせません。慰謝料をいつまでにいくら支払うのか、養育費や財産分与をどうするのかといった取り決めを、口約束で済ませてしまうと、後で「そんな約束はしていない」と反故にされる恐れがあります。特に金銭の支払いを伴う取り決めは、強制執行にもつながる形で残しておくと、約束が守られなかったときの備えになります。せっかく合意にこぎ着けても、その内容が曖昧では意味が半減してしまうのです。

ワンポイントアドバイス
相手の所在がわからない場合でも、あきらめる必要はありません。調停の申立てには相手の住所が必要ですが、住民票の追跡などで居所をたどれることもあります。それでも所在が判明しないときは、公示送達という方法で訴訟を進められる場合があります。一人で抱え込まず、早い段階で専門家に状況を伝えることが解決への近道です。

悪意の遺棄で請求できる慰謝料と請求の方法

悪意の遺棄は、離婚原因になるだけでなく、慰謝料請求の根拠にもなります。理由なく生活費を止められたり、置き去りにされたりすれば、精神的にも経済的にも大きな苦痛を受けます。その損害を金銭で償わせるのが慰謝料です。

慰謝料の金額は、遺棄の期間の長さや悪質さ、子どもの有無、経済的に受けた打撃の大きさなどを総合的に考慮して決められます。長期間にわたって放置されていた場合や、幼い子を抱えて生活が困窮した場合などは、より高い評価につながりやすい傾向があります。もっとも、金額は事案ごとの事情によって幅があるため、一律にいくらと決まっているわけではありません。

請求の方法としては、まず相手に直接請求する形から、調停や訴訟の中で離婚とあわせて請求する形まであります。離婚と慰謝料はセットで扱われることが多く、手続きの中で一緒に解決を目指すのが一般的です。

慰謝料の金額を左右する要素を、もう少し掘り下げて見ておきましょう。第一に、遺棄がどれくらいの期間続いたかです。数か月と数年では、相手が受けた苦痛の大きさが大きく異なると評価されます。第二に、行為の悪質さです。生活費を止めたうえに他の異性と暮らしていた、幼い子を置き去りにしたといった事情があれば、悪質性が高いと判断されやすくなります。

第三に、経済的な打撃の深刻さです。遺棄によって生活が立ちゆかなくなり、借金を重ねた、子どもの進学をあきらめざるを得なかったといった具体的な損害があれば、それも考慮されます。第四に、婚姻期間や子どもの有無です。長年連れ添った末の遺棄や、養育すべき子がいる状況での遺棄は、より重く受け止められる傾向があります。

ただし、注意しておきたいのは、これらの要素はあくまで評価の目安であって、金額が機械的に決まるわけではないという点です。同じような状況に見えても、証拠の揃い方や相手の対応によって結果は変わります。だからこそ、まずは自分のケースにどんな事情があるのかを整理し、それを裏づける材料を集めることが、適正な金額を実現する第一歩になります。

慰謝料が認められにくいケース
別居に相手方も合意していた場合や、あなたの側にも家庭を顧みない事情があった場合には、慰謝料が認められにくくなったり、金額が抑えられたりすることがあります。また、遺棄の事実を裏づける証拠がまったくなく、相手が全面的に否定しているような状況でも、請求は通りにくくなります。

実際の交渉や裁判では、相手が「自分にも言い分がある」と反論してくることがほとんどです。生活費を渡さなかったのはあなたが先に家を出たからだ、別居はお互いに納得していたはずだ、といった主張がなされる場面も少なくありません。こうした反論に備える意味でも、遺棄が一方的で正当な理由のないものであったことを示す材料を、あらかじめ手元に整えておくことが重要になります。

悪意の遺棄を証明するための証拠集め

悪意の遺棄を理由に離婚や慰謝料を認めてもらうには、その事実を裏づける証拠が欠かせません。相手が「遺棄などしていない」と否定した場合、証拠がなければ主張は通りにくくなります。ここでは、どのような証拠が役立つのかを整理します。

生活費を渡してもらえなかったことを示すには、預金通帳の記録や家計簿、相手とのやり取りが残るメッセージなどが有効です。振込が途絶えた時期がはっきりわかれば、経済的放棄の裏づけになります。逆に、いつからいつまで、どれくらいの不足があったのかがあいまいだと、相手に「渡していた」と反論されたときに押し返しにくくなります。

別居や家出の事実を示すには、相手が家を出た日付の記録、住民票の異動、あるいは戻るよう求めたのに応じなかったことがわかるメッセージのやり取りなどが役立ちます。特に、あなたが「戻ってきてほしい」「生活費を入れてほしい」と伝えた記録は重要です。これがあれば、相手が話し合いを拒み、あえて義務を放棄し続けたという「悪意」の裏づけになるからです。

証拠を集めるときのコツは、できるだけ客観的で日付のわかるものを残すことです。相手の言い分を録音したものや、送受信の日時が記録に残るメッセージは、後から否定されにくい強い証拠になります。逆に、あなたの記憶や日記だけでは、相手が争った場合に決め手を欠くことがあります。感情的なメモではなく、事実を淡々と積み上げる意識が大切です。

とはいえ、はじめから完璧な証拠をそろえる必要はありません。今あるものから少しずつ整理していけば十分です。通帳を見返して振込が止まった時期を書き出す、残っているメッセージを日付順に並べてみる、といった小さな作業の積み重ねが、やがて全体像を描く手がかりになります。何が足りないのか、どこを補えばよいのかは、専門家に見てもらうことではっきりします。まずは手元にある材料を持ち寄るところから始めてみてください。

注意
証拠を集めたい一心で、相手のスマートフォンを無断で操作したり、相手の私物を勝手に持ち出したりするのは避けましょう。集め方によっては、かえってあなたの側が不利になったり、別のトラブルを招いたりする恐れがあります。証拠収集の方法に迷ったら、動き出す前に専門家へ相談するのが安全です。

また、証拠は一つだけよりも複数を組み合わせるほうが説得力を増します。通帳の記録とメッセージのやり取り、別居の時期を示す資料をそろえて示せば、遺棄の事実が立体的に浮かび上がります。バラバラの断片ではなく、時系列に沿って整理した「物語」として提示できるよう準備しておくと、手続きが格段に進めやすくなります。

  • 生活費の不払いを示す通帳・家計簿・送金履歴
  • 別居や家出の時期がわかる記録やメッセージ
  • 戻るよう求めたのに拒まれたことを示すやり取り
  • 就労を拒んでいた状況がわかる記録

これらの証拠は、思い立ったときにまとめて用意できるものばかりではありません。通帳の記録は時間が経つと取り寄せにくくなることもありますし、メッセージのやり取りは端末を替えると失われてしまうこともあります。今この瞬間に残っている情報こそが貴重な証拠になり得るのだと考え、気づいた時点で保存しておく習慣をつけておくと安心です。スクリーンショットを撮る、画面を印刷しておくといった手間を惜しまないことが、後々の大きな備えになります。

婚姻費用の請求と生活の立て直し

悪意の遺棄で苦しい状況に置かれているとき、離婚の話を進める前に、まず目の前の生活を守ることが大切です。ここで知っておきたいのが婚姻費用という仕組みです。生活の基盤が揺らいでいる状態では、冷静な判断も難しくなります。だからこそ、離婚そのものより先に、暮らしを立て直す手立てを知っておく必要があるのです。

婚姻費用とは、夫婦が婚姻している間、収入の多い側が少ない側の生活費を分担する義務のことです。たとえ別居していても、離婚が成立するまでは夫婦であることに変わりはありません。したがって、生活費を渡さない相手に対しては、婚姻費用の分担を請求することができます。

相手が任意に応じない場合は、家庭裁判所に婚姻費用分担請求の調停を申し立てる方法があります。これによって、離婚の話し合いが長引いても、その間の生活費を確保する道が開けます。あなたが経済的に追い詰められて不利な条件で離婚に応じてしまう、という事態を避けるためにも、この制度は心強い支えになります。

婚姻費用を請求するうえで意識しておきたいのは、請求した時点からの分が対象になりやすいという点です。過去にさかのぼって請求するのは難しい面があるため、生活費を止められたと感じたら、できるだけ早く請求の意思を示しておくことが肝心です。内容証明郵便で請求したり、調停を申し立てたりして、請求した日付を明確に残しておきましょう。

婚姻費用と慰謝料は別のものだという点も押さえておいてください。婚姻費用は離婚が成立するまでの生活費であり、慰謝料は遺棄によって受けた精神的苦痛への償いです。この二つは性質が異なるため、両方をあわせて請求することができます。目の前の生活を婚姻費用で支えながら、離婚と慰謝料の話し合いを腰を据えて進める、という組み立てが現実的です。

経済的な不安があると、どうしても「早く終わらせたい」という気持ちが先に立ち、相手の言い値で妥協してしまいがちです。しかし、婚姻費用という後ろ盾があれば、焦らずに交渉のテーブルにつくことができます。生活の土台を確保することは、結果として離婚条件そのものを有利にすることにもつながるのです。

もし子どもがいる場合には、婚姻費用の中に子どもの生活費や教育費も含まれてくるため、確保できる金額はその分だけ大きくなります。遺棄によって幼い子を抱えたまま経済的に取り残されたようなケースでは、この点がとりわけ重要になります。相手が親としての責任を放り出しているのなら、なおさら遠慮する必要はありません。子どもの暮らしを守ることは、あなた自身の権利であると同時に、子どもに対する当然の務めでもあります。分担を求めることをためらわず、堂々と手続きを進めてください。

弁護士に相談すべき理由と適切なタイミング

悪意の遺棄をめぐる問題は、感情的な対立が激しくなりやすく、当事者だけで冷静に進めるのが難しい場面が少なくありません。専門家の力を借りることで、負担を減らしながら有利に進められる可能性が高まります。

そもそも、遺棄をしている相手というのは、話し合いに前向きでないことがほとんどです。生活費を渡さない、連絡に応じない、家に戻らないという相手を、あなた一人の力で交渉のテーブルに引き出すのは容易ではありません。感情のこじれた相手と直接やり取りを重ねるうちに、疲れ果ててしまう方も多いのが実情です。第三者である弁護士が窓口に立つことで、相手も無視を続けにくくなり、話し合いが動き出すきっかけになります。

弁護士に相談すれば、あなたのケースが悪意の遺棄にあたるのかどうかの見通しを立ててもらえます。また、どんな証拠を集めればよいか、慰謝料としてどの程度を見込めるかといった、実務的なアドバイスも得られます。相手との交渉や書面のやり取りを任せられれば、精神的な負担も大きく軽くなります。

もう一つ見逃せないのが、離婚に伴って決めるべきことが遺棄の問題だけにとどまらない、という点です。子どもがいれば親権や養育費、面会交流をどうするかを取り決める必要がありますし、これまで築いた財産をどう分けるかという問題も出てきます。これらを一つひとつ自分で調べて交渉するのは、大きな労力を要します。弁護士に依頼すれば、こうした付随する問題も含めて全体を見通しながら進められるため、抜け落ちなく解決に向かうことができます。

相談のタイミングは、早ければ早いほど選択肢が広がります。生活費を止められた、家を出て行かれたと感じた段階で相談しておけば、証拠を計画的に集められますし、婚姻費用の請求など初動の対応も遅れずに済みます。迷っているうちに時間が過ぎてしまう前に、一度専門家の意見を聞いてみることをおすすめします。

特に、相手が話し合いに応じない、あるいは所在すらつかめないという状況では、当事者だけでできることには限界があります。相手の居所を調べる、公示送達で手続きを進めるといった対応は、専門的な知識がなければ判断が難しいものです。こうした場面こそ、弁護士の存在が大きな支えになります。

費用の面が気になって相談をためらう方も多いかもしれません。相談料や依頼にかかる費用の仕組みは事務所によって異なりますが、初回の相談を無料で受け付けているところもあります。まずは費用の目安や進め方を確認するだけでも、今後の見通しがぐっと立てやすくなります。慰謝料が認められれば、その回収によって費用の負担感が和らぐケースもあります。

悪意の遺棄は、被害を受けている側が我慢を強いられがちな問題です。しかし、法律はあなたを守るための仕組みを用意しています。離婚を進めるにせよ、まずは生活を立て直すにせよ、正しい順序と適切な備えがあれば、状況は必ず前に進みます。一人で悩み続けるより、専門家とともに一歩ずつ整理していくことを考えてみてください。

今つらい状況にいる方ほど、「自分さえ我慢すれば」と考えてしまいがちです。けれども、生活費を渡さない、家庭を顧みないという相手の振る舞いは、あなたが甘んじて受け入れなければならないものではありません。悪意の遺棄という法的な枠組みは、まさにそうした一方的な放棄から配偶者を守るために設けられています。遠慮せずに権利を主張してよいのだと、まずは自分に許してあげてください。そのうえで、確かな知識と味方を得ながら、次の一歩を踏み出していきましょう。

よくある質問

相手が生活費を少しだけ渡している場合も悪意の遺棄になりますか

金額が生活を維持できないほど不十分で、意図的に少なくしていると認められる場合には、悪意の遺棄と評価される余地があります。ただし、渡している事実がある分、判断は個別の事情によって分かれます。金額の妥当性や相手の収入との比較が重要になるため、記録を残したうえで専門家に相談するとよいでしょう。

自分が家を出た側でも悪意の遺棄を主張できますか

家を出た理由が正当であれば、あなたが悪意の遺棄をしたことにはなりません。相手の暴力やモラハラから逃れるための別居などは、むしろ身を守るための合理的な行動です。逆に、そうした事情を無視して相手から遺棄だと主張されても、正当な理由を示せれば反論できます。

悪意の遺棄の慰謝料に時効はありますか

慰謝料請求権には消滅時効があり、権利を行使できることを知った時から一定期間が過ぎると請求できなくなります。遺棄の状態が続いている場合の起算点の考え方は複雑なため、早めに手続きを進めることが安全です。時効が心配なときは、判断を先延ばしにせず、状況を整理して専門家に相談しておくと安心できます。

別居してどれくらい経てば悪意の遺棄と認められますか

何か月あるいは何年で必ず認められる、という明確な線引きがあるわけではありません。期間の長さは判断材料の一つにすぎず、生活費を渡さない意図の有無や、戻る意思を見せているかどうかといった事情とあわせて総合的に評価されます。短期間でも悪質な放棄なら認められることがある一方、長く別居していても事情次第では遺棄と認められないこともあります。

相手が病気で働けない場合でも悪意の遺棄になりますか

病気やけがで働けず、そのために生活費を渡せないのであれば、意図的な放棄とはいえないため悪意の遺棄にはあたりにくいといえます。悪意の遺棄で問われるのは、あくまで正当な理由なく義務を怠ったかどうかです。ただし、働ける状態なのに療養を口実にして家計を顧みないような場合は、事情を精査したうえで判断されることになります。

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判例の中央値:200万円

※ 過去の裁判例に基づく相場の目安です。実際の慰謝料額は個別事情により大きく変動します。性格の不一致のみでは慰謝料請求が認められない場合が多い点にご注意ください。

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